岩上「本日は河合弘之弁護士にお話をうかがいます」。
河合弘之弁護士「よろしくお願いします」
岩上「河合弁護士は、ミサイルの脅威があるなら新幹線よりもまず高浜原発を停めろ、として裁判をされています」
岩上「北朝鮮は本日午前6時57分頃、再びミサイルを発射。ミサイルは北海道上空を通過、午前7時16分頃、襟裳岬から東に約2200kmも離れた太平洋上に落下したと推定されます。飛行距離は3700kmで、グアムに届くことをアピールしたものと思われます」
岩上「8月29日には北朝鮮は新型中距離弾道ミサイル「火星12」を発射。飛行距離は2700km。今回も同型とみられ、飛行距離は1000km増です。今回も前回同様、あちこちでJアラートを鳴らし新幹線を停止するなどの措置をとりました」
河合氏「2つの視点があります。安倍さんが危機を煽り、人気回復を狙っていること。もうひとつは本当に危機意識を持っているということ。僕は危なくないとは思っていない。危ないなら新幹線より原発を停めるべきだと思っている。制裁直後の実験は、やはり異常事態」
岩上「日本もかつて石油禁輸で戦争に突っ込みました。これを思い出すと、危ない気もします」。河合氏「金正恩とトランプ、非常に危険な人間同士が脅迫しあっていると何が起こるかわからない。物の弾みで一発撃てばあとはもう大変なことになりますよね」
河合氏「地下鉄や新幹線を停めながら、なぜ原発を動かしているのか。原発のほうが何万倍も危険。新幹線は何十万人も害されるわけではない。原発は1年の運転で広島型原爆の1000倍の放射性物質が溜め込まれる。原発を攻撃すれば、原爆より酷い被害が出ます」
河合氏「原発は、敵国のための核弾頭。自国にのみ向けられた核兵器なんです。核攻撃されなくても、通常兵器でも危ないんだよ、と僕は強調している。裁判は水戸喜世子さんが起こしました。時間がなかったので、仮処分リスクも考え、ひとりで裁判を起こしたんです」
河合氏「高浜原発を裁判で選んだのは、現在動いているからです。一番狙いやすいのは、一番近い高浜なんです。運転中の原発は文字通り沸騰している。これが襲われれば即時に爆発的被害が発生する。停めてある原発も危険だが、危険度が違うんです」
河合氏「申し立て人の個人的な人格権が侵害されるということです。高浜原発が襲われれば琵琶湖が汚染され、関西1500万人の人が飲んでいる水が飲めなくなる。関西経済圏も壊滅します」
岩上「高浜原発には本来の2倍の使用済み核燃料が保管されてもいます」
河合氏「裁判所も判断がしやすいと思う。地震は科学論争だが、ミサイルの危険だけを理由にしています。政府があれだけ危ないと言っているんですから『忖度』すればいい。今発令されている破壊措置命令は自衛隊法83条『人命又は財産に対する被害を防止』のため」
河合氏「破壊措置命令が常時発令されているということは、政府が公式で危険を認めているということ。裁判所は危険性について『そんなことない』と言うのか、『危ないから原発を停めろ』と言うのか。防衛省が危ないと言っているんだから原発を停めようということ」
河合氏「破壊措置命令が出ている間は原発を停めろ、と言っています。破壊措置命令が解除されれば申し立てを取り下げると、条件付きで申請しています。関電側は『新規制基準にミサイルは入っていない』『イージス艦とPAC3で守ってくれる』などと言っています」
河合氏「また、『具体的な危険性がない』と関電は言っています」
岩上「では政府は適当なことを言っている、ということになりますね」。
河合氏「日本には武力攻撃事態対処法があり、政府は原発停止を命じられる。今はこれが始動していないと主張している」
河合氏「しかし、宣戦布告でもあれば時間的余裕があるが、北朝鮮のミサイルは7分で到着する。それでは間に合わないから自衛隊法で破壊措置命令を作ったんです。僕は破壊措置命令のことを言っているんだから、武力攻撃事態対処法で反論してくるな、ということ」
岩上「我々は今日、規制庁に取材したところ、『安全だという通達があったので対処していない』と言っていました。防衛省は取材に『手の内を明かせない』と逃げ、世耕経産大臣は『突発的な武力攻撃の場合は事業者が判断する』と」
河合氏「無責任ですね」
河合氏「規制庁は『ミサイル防衛は一時業者が対処できるものではないので想定しません、従って新規制基準にミサイル攻撃に耐えられること、という条件は入れていない』と言っています」
河合氏「イスラエルは周りが敵だらけだから、原爆は持っていても原発は持っていません。日本の原発推進論者は平和ボケだから海沿いに原発を並べられたわけだけど、隣国に核兵器、ミサイル保有国が出てきたら、路線変更し、平和ボケから脱しなきゃダメですよ」
河合氏「北朝鮮は日本の原発のことをよく知っています。『日本は数多くの原発がある。広島・長崎原爆より酷い被害を被るぞ』と北朝鮮の機関紙で言っているんです。ゾッとしましたよ。脅しではあるが嘘ではない。北朝鮮は原発を狙わない、というのは平和ボケです」
河合氏「新規制基準は、10万年、100万年に一回の地震・火山にも耐えられるように求めている。原発が危険なので、それだけ安全要求が強いんです。では、金正恩が高浜原発を撃つ確率は10万年、100万年に一回でしょうか?僕は1%はあると思うんですよ」
河合氏「1%というのは、日常生活では無視していい確率です。でも、国防、安全保障というのは、1%でも無視してはいけない。1%でも原発が狙われる可能性があるなら原発を停めなければいけない。愛国を名乗り、国を考える者ほど『原発を停めろ』と言うべきだ」
河合氏「イージスアショアに何百億円もかかりますが、原発停めるのに費用はいりません」。岩上「内閣官房は、発射されれば分析が間に合わないので、12道県にとりあえずJアラートを鳴らしているというのです。こんなので撃ち落とせるはずがありません」
河合氏「政府とメディアはミサイル危機と原発をあえて切り離しています。原子力ムラにマスコミも組み込まれている証拠です。最近、『飽和攻撃』というものを知った。つまり持っているものを全部撃つということ」。岩上「迎撃できませんね」
河合氏「ミサイルをロフテッド軌道で撃つと、マッハ20。これを撃ち落とすことがどれだけ大変か。これをイージス艦で撃ち漏らしたらPAC3というが、PAC3の射程は20km」。
岩上「しかも上に撃てばその分距離を使うので、半径で言えば1〜2kmです」
河合氏「PAC3を移動しましたが、原発はノーガード。自民党の竹下亘総務会長は『島根にミサイル撃っても意味ない』と言いましたが、島根原発はもっとも県庁所在地に近い原発。島根選出の議員でもこの意識です。平和ボケしているということです」
岩上「小野寺防衛大臣の持論は『敵基地攻撃論』。ミサイル発射前に攻撃することを検討すべきだと」。河合氏「ミサイル発射台は今、移動式です。100発中1発破壊しても、残りの99が日本に飛んでくる」
岩上「先制攻撃の誘惑レースになりますよね」
河合氏「ミサイル攻撃の場合はうずくまれという。放射能の場合はとにかく逃げなければいけない。これらは矛盾するので、無理なんです。ミサイル攻撃による原発事故からの避難はすごい難しい。不可能で、みんなパニックに陥るだけです。原発停めるほうが重要です」
河合氏「とりあえずは動いている原発は全部停めるべき。3000km上から見れば、よりどりみどりで狙えますから。中長期的に安全保障を考えるなら、アキレス腱を早く取り除くべき。使用済み核燃料も隠し、原発は冷温停止しないと真の意味の国防にはならない」
河合氏「北朝鮮をどう封じ込めるか、ということについて発言する気はない。僕はあなたみたいに国際政治に詳しくないし、原発から日本を救うことをライフワークと考えている。北朝鮮、米国、韓国がどうでも、とにかく日本が一番やることは原発を停めること」
岩上「原発ゼロ・自然エネルギーの推進連盟の創設にも関わっているんですね」。河合氏「欧米は電気自動車に走っています。電気自動車の電気も原発や化石燃料ではダメなんです。安価で安全な電気が取れる前提で自動車メーカーは進んでいる。日本も切り替えるべき」
岩上「産業革命に匹敵する衝撃ですよね。エンジンがなくなる」。河合氏「第四の革命と言われています。日本は出遅れましたが、日本は自然エネルギーの可能性も秘めているし、技術もある。僕は、日本の自動車メーカーは4年間の遅れを取り戻せると思っています」
河合氏「原発とミサイル危機を結びつけて伝えないマスメディアが悪いんです」
岩上「北朝鮮のミサイル危機を機に、原発を考えるキッカケになればと思います」
河合氏「IWJ、頑張ってください」。岩上「ありがとうございます。河合先生も頑張ってください」
※2017年9月15日のインタビュー再配信実況テキストを並べてツイ録化しました。