2017年7月8日、東京都新宿区の日本キリスト教会館にて、沖縄の基地を引き取る会・東京主催により、シンポジウム「私たちはなぜ沖縄の基地を引き取るのか」が開催された。大阪、福岡、新潟、東京で活動している4団体のメンバーが登壇し、会を立ち上げた経緯や、その後の活動状況、本土へ基地を引き取ることの必要性を語った。
(取材・文:大下由美、記事構成:岩上安身)
※8月5日テキストを追加しました。
2017年7月8日、東京都新宿区の日本キリスト教会館にて、沖縄の基地を引き取る会・東京主催により、シンポジウム「私たちはなぜ沖縄の基地を引き取るのか」が開催された。大阪、福岡、新潟、東京で活動している4団体のメンバーが登壇し、会を立ち上げた経緯や、その後の活動状況、本土へ基地を引き取ることの必要性を語った。
■ハイライト
沖縄には日米安全保障条約のもとに在日米軍基地の約7割が集中し、辺野古新基地建設問題をはじめ過大な負担が今なおしわ寄せされているが、沖縄以外の本土の人間は、我が事としてこの苦痛を実感できているだろうか。どこか、遠い場所で起こっているよそよそしい出来事として、「他人事」としてすませていないだろうか。
内閣府が平成26年度に行った調査によると、8割を超える国民が「日米安全保障条約は日本の平和と安全に役立っている」と答えている。
日米安保条約を国民の大半が容認しており、そのメリット(があるとしての話だが)を受容していると感じているにもかかわらず、安保を結んでいることによるデメリットについては、とたんに多くの人が口を閉ざす。
沖縄へ米軍基地の負担が集中している現実はよく承知しているはずである。本土の国民は、もし自分の周りで新基地建設となると、おそらくは大反対するであろう。容認派の8割の人々を含めて、である。
本土でそのようなうねりが盛り上がったら、それは日米安保そのものの見直しや、在日米軍の駐留の在り方を定めた、きわめて日本にとって不平等な日米地位協定の改定を求める声を呼びさますことになるに違いない。
それがわかっているからこそ、米国も日本政府も、沖縄に負担が集中する現状に変更を加えない。そして、そのような日米政府のやり方と沖縄の苦しみを見て見ぬふりをすることで、日米安保は成り立っているともいえる。
「それは不公平であり、沖縄の人々への差別である」という、そもそも論に立って声を上げる人々が現れた。彼らは、安保廃棄、全米軍の国外退去という実現困難な課題をふりかざすのではなく、「日米安保容認が8割」という現実をふまえた上で、まずはこの本土と沖縄の格差を埋める努力を始めようと呼びかけたのだ。
「民主主義の理念にのっとり米軍基地を本土に引き取ることが本来の姿である」として、「本土に米軍基地を引き取る」ことを目標に、2015年頃から運動を始めたのである。
2017年7月8日、東京都新宿区の日本キリスト教会館にて、沖縄の基地を引き取る会・東京主催により、シンポジウム「私たちはなぜ沖縄の基地を引き取るのか」が開催された。大阪、福岡、新潟、東京で活動している4団体のメンバーが登壇し、会を立ち上げた経緯や、その後の活動状況、本土へ基地を引き取ることの必要性を語った。
「基地を引き取る」という考えは、「基地は日本にそもそも必要ない」という日米安保反対派の意見と真っ向から対峙することになる。
どの団体も、そうした反対派からの反発を受けることがあるとのことだが、反対派の中にも、会の主旨に共感して活動に参加してくれる人が意外にも少なくないという。
むしろ問題なのは、日米安保は容認するが、沖縄の負担には目をつぶり、耳をふさぎ続けているマジョリティーの方であろう。
「沖縄の一方的な米軍基地負担の原因を真剣に考える本土の人は少なく、根底には、『植民地主義』による差別意識があるのではないか」と、「引き取る行動・大阪」の松本亜季氏、「本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会」の里村和歌子氏は指摘した。
大阪、福岡、新潟、東京など各地で結成された各団体は、米軍基地の引き取りにより「まずは辺野古の新基地建設を止めることができるはずだ」という共通の悲願を抱いている。この4団体に長崎県の団体を加えた5団体は、今年4月に「辺野古を止める!全国基地引き取り緊急連絡会」を発足した。
こうして「米軍基地は本土で引き取るから、沖縄にこれ以上押し付けることをやめて!」という声が一石を投じることになるかどうか。沖縄県民の反対にもかかわらず辺野古で着々と進む米軍新基地建設の強行を食い止める一助となるかどうか。ぜひ以下のシンポジウムの内容をお聞きいただきたい。