今年4月、「パナマ文書」の流出によって、世界中の富裕層やグローバル大企業による「タックス・ヘイヴン」(租税回避地)利用の実態が明らかとなった。一般の市民が真面目にコツコツと税金を納める一方で、一部の特権的な富裕層やグローバル企業層だけが租税逃れを行い、私腹を肥やしていたのである。絶対に許されることではない。
2016年10月26日、この「タックス・ヘイヴン」問題の第一人者で、市民団体「タックス・ジャスティス・ネットワーク」代表のジョン・クリステンセン氏が来日。東京都千代田区の弁護士会館で講演を行った。
- 日時 2016年10月26日(水) 18:30~
- 場所 弁護士会館(東京都千代田区)
- 主催 日本弁護士連合会(告知)
クリステンセン氏は講演の冒頭、40年間にわたり「タックス・ヘイヴン」の問題に関わってきた結論として、「(タックス・ヘイヴンによる租税逃れは)私たちの世界を非常に損なうものです。人権も損ないますし、投資の資金の流れも損ないます。そして、社会を不安定にさせるものです」と語った。
そのうえでクリステンセン氏は、1945年から2012年にかけての、アメリカにおける税収の割合をグラフで提示。現在のアメリカの状態を次のように説明した。
「1945年では給与所得税は全体からみると少ない割合であったのに対し、2012年になると非常に大きな割合になっています。それに対して法人税はゆるやかに減ってきており、物品税や相続税、資産に対する税も減ってきています」
▲講演するジョン・クリステンセン氏――10月26日、東京都千代田区
アメリカはこの70年間、一貫して所得税を増やして法人税を減らすという、企業優先の経済政策を行ってきた。日本も戦後、基本的にこの方針を踏襲。特に現在の安倍政権は、法人税を減らす一方で消費税を8%に引き上げるなど、「アベノミクス」「一億総活躍社会」というスローガンのもと、庶民の家計に負担をしわ寄せし、打撃を与える経済政策を次々と実行している。
一握りの富裕層や大企業に富を集中させ、中間層を没落させる消費税増税や「タックス・ヘイヴン」の問題について、岩上安身はこれまで、中央大学名誉教授の富岡幸雄氏や政治経済研究所理事の合田寛氏などにインタビューを行っているので、ぜひあわせてご覧いただきたい。