「100万円単位で収支報告書が合わないのは、大変なこと。普通だったら大騒ぎになり、収支を合わせるはずだ。単純なミスとは言い難い」──神戸学院大学法学部教授の上脇博之(かみわき・ひろし)氏は、芋づる式に発覚する自民党議員たちの収支報告書の不記載には「何かカラクリがある」と指摘した。
自民党議員の不正を告発し続ける上脇氏に、高市早苗総務大臣の計925万円の闇金(やみがね)疑惑について、2016年5月18日、岩上安身が聞いた。さらに、「米国連邦議会立法調査官」という高市氏の経歴についての疑問や、奈良県第3選挙区選出の奥野信亮(しんすけ)自民党衆議院議員の政治資金疑惑にも迫った。
夏の参議院選挙が刻一刻と迫る中、その選挙を管轄する総務省を仕切る高市総務大臣自身に、政治資金規正法違反の疑惑が生じている。
自民党奈良県支部連は2012年、高市氏が代表を務める第2選挙区支部宛に交付金440万円を、翌2013年には435万円を支出している。また、奈良県薬剤師連盟と奈良県選挙区第1支部は5万円ずつ、計10万円を支出。だが、第2選挙区支部の収支報告書には、それらの記載は一切ない。
さらに、奈良県トラック運送事業政治連盟が、高市氏の政治団体「新時代政策研究会」にパーティー券購入代金40万円を支出しているが、それも同会の収支報告書には記載がない。これらの875万円+50万円=925万円が闇金になっているのではないかとして、上脇氏が共同代表を務める「政治資金オンブズマン」と「落選運動を支援する会」が、5月10日、奈良地検に刑事告発を行った。
インタビューが行われた後の5月25日、奈良地検は告発のあった不記載金のうち、自民党奈良県支部連からの寄付金875万円について、告発を受理した。
刑事告発について、高市大臣は5月31日の定例記者会見で、IWJの質問に答え、「単純なミス」「『自民党奈良県連』には、振り込みをしたときには、その旨を書面で通知してほしい、とお話しました」と述べるにとどまり、自身の責任について明言を避けた。
18日のインタビューで上脇氏は、「高市氏はテレビ局への電波停止を言う前に、自身が大臣や議員として、ふさわしいのだろうか。政治資金についての言い訳が矛盾するような人は、一度けじめをつけていただきたい」と苦言を呈した。
告発が受理された後の高市大臣の弁明を聞いても、言い訳は「矛盾」を深めるばかりだ。
さらに上脇氏は、計327万5400円が闇金になっていると言われる、奈良県第3区選出の奥野衆議院議員の不正、東京オリンピックの裏金疑惑(この部分はIWJ会員限定)についても忌憚のない意見を述べた。
- 日時 2016年5月18日(水) 14:00~
- 場所 神戸学院大学(兵庫県神戸市)
選挙とメディアが管轄の高市早苗総務大臣に計925万円の疑惑。自民党の奥野議員、江島議員、岸議員にも同様の手口が芋づる式に発覚! 確信犯の闇金作りか!?
▲神戸学院大学・上脇博之教授
岩上安身(以下、岩上)「これより、神戸学院大学法学部教授の上脇博之氏に、高市早苗総務大臣の計925万円の闇金疑惑を告発したことについて、お話をうかがいます。よろしくお願いします。
マスメディアは、舛添東京都知事の政治資金問題を、連日、蜂の巣を突いたように報じています。また、金銭授受疑惑の甘利明議員は、睡眠障害で今も国会を欠席中ですが、衆参同日選に備えて支持者への根回しを行っているとも伝え聞きます。
5月10日、上脇氏が共同代表を務める政治資金オンブズマンと、落選運動を支援する会は、奈良地検に高市総務大臣を刑事告発しました。しかし、それがほとんど報道されていません。パナマ文書や東京五輪の招致疑惑も同様です。メディアの異常は際立っています」
上脇博之氏(以下、上脇・敬称略)「メディアは他社が消極的な問題にも、もっと取り組むべきです」
岩上「つまり、メディアが報じるところに真実があるのではなく、報じないところに大きな真実がある。それをネットメディアがフォローし、IWJをはじめ、弁護士などが注意喚起を促しています。2ヵ月後には参議院選挙ですが、高市総務相の管轄は選挙とメディアです。日本は本当に危機的なところにきています」
上脇「高市氏が代表の、自民党奈良県第2選挙区支部の政治資金収支報告書には、同奈良県連の寄付金の記載がない。また、奥野信亮(しんすけ)自民党議員にも、同様の事案が見つかりました。私たちは、奥野議員も政治資金規制法違反容疑で告発した。山口県でも、江島潔衆院議員と岸信夫衆院議員に同じものが見つかった。同様の『単純ミス』が複数見つかるのは、自民党議員たちに共通した金銭感覚があるということです」
岩上「悪く言えば手口が似ているのですね。代々受け継がれてきたやり方で、罪の意識が薄いのかもしれない。『政治資金オンブズマン』は5月10日、高市氏を奈良地検に告発しましたね。同議員は当選7回。神戸大学経営学部卒で松下政経塾出身です。米国連邦議会のCongressional fellowという経歴に関しては、IWJは高市氏に取材しました。それは、あとで触れます。
高市氏は、近畿大学経済学部教授や自民党広報部本部長、通産省副大臣、内閣特命担当大臣(小泉・福田・麻生内閣)、情報調査局長、政調会長など、大変な要職を歴任しています。総務相として選挙やメディアに大きな影響力を持つ高市氏の、政治資金報告書に計875万円(+50万円。後述)の不記載があったのですね」
上脇「自民党の奈良県支部連は、2012年、高市氏が代表の、第2選挙区支部に交付金440万円を支出した。これは合法です。しかし、第2選挙区支部の収支報告書には記載がない。2013年の435万円もない。つまり、払った記録はあるが、受け取っていないことになり、何に支出したかが不明です。表に出せない使い方で、闇金とは書けないので、入金自体を記載しなかったのではないでしょうか」
会計責任者・木下氏のつじつまの合わない釈明! 「記載の必要がないと思い込んでいた」「総務省の収支報告書作成ソフトが使いにくいから」
▲高市早苗総務相(高市早苗議員HPより)
岩上「舛添都知事の問題を見ると、政治家は、公私混同で乱費してしまうことがあるとわかります。高市氏には、さらに50万円の不記載もあったといいます」
上脇「奈良県薬剤師連盟と奈良県選挙区第1支部が、第2支部に5万円ずつ。また、奈良県トラック運送事業政治連盟が、高市氏の政治団体『新時代政策研究会』にパーティー券の代金40万円を支出したが、同会の収支報告書には記載がありません。875万円+50万円=925万円が闇金になっています」
岩上「自民党奈良県第2選挙区支部と新時代政策研究会の会計責任者、木下氏に取材をしたところ、『事務担当者が、交付金は記載の必要がないと思っていた』『繰越金が合わないことは各年5月末時点でわかっていた。告発されて、その理由が初めてわかった』『総務省の収支報告書のソフトが使いにくい』と答えました。自民党県連のお金は餅代みたいなもので、黙って使えると思い込んでいたのでしょうか」
上脇氏「そうかもしれないが、違法です。思い込んでいたと言うが、記載してある年度もあるので不可解です。今まで『記載するお金』と『記載しなくていいお金』を使い分けていたのではないかと憶測します。
高市氏は口座を2つ持っているらしいのです。それらを使い分けているのではないでしょうか。支払い側が間違えて、記載しない方の(裏)口座に支払ってしまった可能性も考えられますね。
収支報告書が合わないのは大変なこと。普通だったら大騒ぎになり、高市氏に相談して収支を合わせるはずです。単純なミスとは言い難い。会計責任者は会計帳簿をつけています。担当者が記載する必要がないと思い込んでいたのなら、『ソフトが使いにくいのでミスした』という言い訳は矛盾します」
岩上「これだけで、高市総務相の法的責任は果たせたのでしょうか」