「SEALDs、SEALDs KANSAI、SEALDs TOKAI、 SEALDs RYUKYU。私たちはこの国の自由と民主主義を守る立場から、今回の辺野古の埋立に関する一連の政府の手続きに反対します」
2015年11月13日(金)と14日、SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)には神戸・JR元町駅前で、14日(土)には、名古屋・名駅前、東京・新宿アルタ前、沖縄・辺野古米海兵隊キャンプ・シュワブゲート前にて、「SEALDs 辺野古新基地建設に反対する全国一斉緊急行動」が決行された。両日はあいにくの雨天だったが、大勢の観衆を集めた。沖縄では、途中から右翼の街宣車による妨害も入ったが、若者たちはそれをものともせず、辺野古移設反対を訴えた。
新宿アルタ前では沖縄選出の赤嶺政賢衆議院議員と糸数慶子参議院議員が登壇した。糸数氏は、「アメリカの在沖縄総領事は、辺野古移設について、『基地負担を軽減し、日米同盟を強化する在日米軍再編計画の中では、小さな問題にすぎない』と言い、沖縄の8割の民意を否定した。許すことはできない」と声を上げた。
名古屋では3500人(主催者発表)が集まった。SEALDs TOKAIのげんさんは、「理想の対義語は現実、と習った。理想とは、安保法制のない、軍備増強のない日本。だが、現実には安保法制が成立して、戦争により近づいた」と危惧した。
福山哲郎参議院議員は、「安保法案の採決は無効だ。あれを認めたら、日本の議会制民主主義が崩壊する」と憤った。共産党の志位和夫委員長は、来年の参院選の争点を「立憲主義か、独裁政治か」とし、「1人区は全部、勝たなければならない」と野党共闘の必要性を主張した。
沖縄では、SEALDs RYUKYUが、初めて辺野古の米海兵隊キャンプシュワブのゲート前で抗議集会を開催した。鹿児島大学教授の木村朗氏は、「戦後の日本は、沖縄の犠牲と差別の上に、憲法9条平和主義を享受してきた。あまりにも理不尽。日米は、二重の植民地主義を沖縄に仕向けてきた」と述べ、本土の人間として反省を表明した
各集会でスピーチをした学生たちも、沖縄に突きつけられた基地の問題に、自分が今まで無自覚すぎたと語る。また、自分は沖縄生まれではないから、住んでいないからと、反対運動に参加することをためらう心理が働くことも率直に話した。
しかし、私人になりすまして行政不服審査申請をした沖縄防衛局のやり方や、警視庁の機動隊まで繰り出した反対市民に対する弾圧などを見て、学生たちは、「これは沖縄だけの問題ではない、民主主義と人権の危機が迫っている」と強く感じたという。
4つの集会には、名護市長の稲嶺進氏から、「政府は沖縄県民の民意を無視し続け、建設を強行し進めるが、私は今後とも、政府のいかなる圧力にも屈せず、基地は作らせない信念を貫き、不退転の決意でい続ける。がんばりましょう」のメッセージが届けられていた。
『小さな問題にすぎない』と在沖縄総領事エレンライク氏、反対8割の民意を否定
11月14日、東京・新宿アルタ前の『No base 辺野古緊急アピール」では、冒頭でSEALDsより、辺野古新基地建設に関する一連の手続きの抗議声明文を読み上げた。
▲米軍キャンプ・シュワブゲート前の座り込み抗議に参加している赤嶺政賢衆議院議員(中央)と糸数慶子参議院議員(左)
衆議院議員の赤嶺政賢氏がスピーチに立ち、「学生時代、沖縄復帰運動を新宿でやった。1972年の日本復帰後、米軍はなくなると考えていたが、まったく変わらなかった」と前置きをすると、集まった市民に次のように呼びかけた。
「沖縄では、以前は対立していた保守派も、今は『オール沖縄』で一緒になって日米両政府と闘っている。辺野古の本体工事開始、という報道は嘘だ。まだ、海には土砂ひとつ投げ込まれていない。稲嶺名護市長の許可がないと、埋め立てる土砂も集められない。翁長知事は、設計変更は認めない。これから政府は翁長知事を裁判に訴えるが、われわれは裁判官の心を揺り動かすためにも声を上げましょう」
続いて、参議院議員の糸数慶子氏にマイクが渡された。糸数氏は、「4人に1人が戦死した沖縄戦の場所で、8割の県民が新しい基地に反対している。しかし、在沖縄総領事ジョエル・エレンライク氏は、『基地負担を軽減し、日米同盟を強化する在日米軍再編計画の中では、小さな問題にすぎない』(11月15日・共同通信インタビュー )と述べ、8割の民意を否定した。許すことはできない」とし、来週、翁長知事らが渡米して、米議会で新基地建設反対を訴えることを伝えた。
法治国家ではなくなった日本
沖縄防衛局の行政不服申請に対し、94人の行政法研究者の抗議声明に名を連ねた、専修大学教授の白藤博行氏が演台に上がると、「たった5日間で、日本に約400人いる行政法学者のうち100人から同意が集まった」とこの問題の大きさを示した。「沖縄では米兵が少女を強姦しても、車をぶつけても、基地に逃げ込めば日本では裁けないという法律がある。沖縄の人たちは、憲法で守られた人権すら、ままならないのだ」と語気を強めた。
「国は、翁長知事の出した埋立承認の取消(=埋め立て禁止)を取り消せと言い、翁長知事は拒否した。そのため、知事の埋立承認の取消を、国が知事の代わりに『取消の取消』ができるように代執行手続きをする。また、沖縄防衛局が私人になりすまし、国交相を相手に行政不服申請をするという前代未聞の愚挙に出た。工事を中断させないためだ。これでは法治国家ではない」
沖縄に基地を作らせない安全保障のあり方を探る
SEALDsのさくらさんは、「平和がどれだけ尊いものなのか。戦争がどれだけ悲惨なものなのかを、辺野古の反対運動をする沖縄の人たちの真剣な姿から教えられた」と語り、「多くの犠牲の上で生きる1人の人間として、この現実は許せない。安倍政権に対して、この国の民主主義は生きていることを見せつけてやりましょう」と声を上げた。
大学4回生の男子学生は、「自分は沖縄に生まれたわけじゃないから関係ない、と済ませたくない。戦後70年、多くの日本人は、この国のあり方を無意識に他人事にしてきた」と指摘する。また、「沖縄で起きていることに共感するにも、現実を知らなければならない。沖縄に基地を作らせない安全保障のあり方も、あるはずだ。『お前はどうするんだ?』と自問を繰り返し、そのためにも常に路上に足を運び、声を上げ続けたい」と熱い思いを噛み締めるように語った。
諦めなければ勝利は必ず訪れる
▲キャンプ・シュワブゲート前でシュプレヒコールを上げるSEALDs RYUKYUのメンバーたち
同じく、14日13時より、SEALDs RYUKYU(シールズ琉球、自由と民主主義のための琉球・沖縄学生緊急行動)は、名護市辺野古の基地ゲート前での、初めての抗議行動を行った。
名桜大学3年の玉城愛さんがマイクを握ると、米議会でロビー活動を行う「島めぐり会議」の訪米団に参加して、明日から渡米することを報告。「辺野古新基地から世界の命を奪うことを懸念し、『誰にも命を奪われたくない。誰の命も奪いたくない』をモットーに、安保や基地のことをフランクに話せる環境にしていきたい」と話した。
ママの会・沖縄のメンバーは、「米軍と共存し、基地への疑問もない生活だった。それが当たり前だと思っていたが、違和感を感じるようになった。それが、今の独裁的な政治を見て、オール沖縄の民意を無視する政府への危機感に変わった。母として、子どもたちを守ることが大人の責任だ」と語った。そして、「反対行動に参加する私たちは痛めつけられ、痛い身体で仕事に通う。これが民主主義の国なのか」と涙声で訴えた。
世界で一番米兵がいる国は日本だ。その数は5万6000人
2016年1月24日投開票予定の宜野湾市長選挙に出馬表明をした、志村恵一郎氏がスピーチに立った。市長選の争点は沖縄の建白書の実現だと言い、「普天間飛行場の廃止、辺野古移転反対、オスプレイ配備の拒否を掲げて、翁長知事とともに闘う」と力を込め、支援を求めた。
さらに来年の参議院選挙に、オール沖縄で出馬する元宜野湾市長の伊波洋一氏がマイクを引き継ぐと、「本土復帰前の沖縄では、高校生が米軍や基地に反対運動をした。だが、復帰後も状況は変わらなかった」と話し、その理由は、日本は独立国家ではなくアメリカの従属国家だからだと指摘した「安全保障が憲法より上で、9条もないがしろにする。安倍政権はそれを如実に示した」。
今や、日本以外にアメリカに従う国はない、とも伊波氏は言う。「世界で一番米兵がいる国は日本で、その人数は5万6000人だ。1990年代まではドイツに20万人の米兵がいたが、今は4万人。同盟国イギリスには1万弱、東南アジアには、シンガポールに200人ほど。日本国民は、その状況を何とも思わないが、責任は政治の怠慢にある。つまり、民主主義が根付いていないのだ。この辺野古の問題は、それを気づかせる突破口だ」。
再び、学生のスピーチになった。現政権が恐れるものは世論の高まりだと指摘した学生は、「安倍首相、この国はあなたのものではない。この戦いには負けない、あきらめない」と訴えた。沖縄県名護市出身で、ロングアイランド大学名誉教授の比嘉良治氏は、「インターネットもあって、今、ニューヨークでもかなり沖縄のことは注目されている。自信を持って活動してください」と学生たちを労った。
弾圧は抵抗を呼び、抵抗は友を呼ぶ
「警視庁の機動隊員が辺野古に派遣されて、反対運動をする人々を弾圧するニュースを見て我慢できず、本土から来た」という若者は、自由と民主主義を守るために、辺野古新基地建設に反対するという意志を表明した。
鹿児島大学教授の木村朗氏が、「弾圧は抵抗を呼び、抵抗は友を呼ぶ、というプラカードに勇気をもらった。今、われわれは戦後最大の岐路にいる。改憲クーデターが近づきつつある。民主主義からファシズムへ、平和国家から戦争国家への転換点にいる」と警鐘を鳴らした。その一方で、新しい民主主義革命も進行中だという木村氏は、沖縄から全国に広がりつつある、政治への覚醒に期待を示した。
「戦後の日本は、沖縄の犠牲と差別の上に、憲法9条平和主義を享受してきた。あまりにも理不尽で不条理な、日米から無意識の、二重の植民地主義を沖縄に仕向けてきた。翁長知事が、国連人権理事会で『沖縄は日米両政府にないがしろにされている。人権が侵害されている』と訴えたが、まさにその通りだ。沖縄が、再び(戦争で出撃拠点となり)悪魔の島と言われないようにしよう」
友だちに政治の話題を出せない自分
最後のスピーチを行った琉球大学の女子学生は、「身体を張って抗議をする人たちを排除する機動隊員。彼らにも、それぞれ家族も生活もある。なぜ、こんな対立が起こるのか。悲しさと苛立ちで胸がいっぱいになる」と心情を明かすと、「思いを共有する難しさもある。政治の話題を、友だちに話すことを恐れる自分がいる。抗議行動への参加を躊躇する自分もいるが、暖かく迎えてくれる沖縄の人たちに励まされる。あきらめずに、自分の意志に素直に従って行動したい」と語った。
IWJでは、SEALDs RYUKYUの主催者、元山仁士郎さんにぶら下がりインタビューを行った。
「辺野古での活動は、若い私たちには敷居が高い。『なんだ若者たちが』、という視線もある。しかし、SEALDs KANSAIのメンバーの励ましもあり、今日の開催に至った。達成感があった」と主催者は言う。中高生など、若い人たちに向けたメッセージを求めると、「話したい、勉強したいと思う子たちもいるはずだ。そういう彼らにも応えていきたい」と話した。
採決は無効だ。認めたら日本の議会制民主主義が崩壊する