「今は、傍観している場合ではない」「今、権力の暴走を止めなければ、日本国民は民主主義、立憲主義を失う」――憲法学者17人が雨に濡れる国会議事堂前で「魂のトーク」を展開 2015.7.3

記事公開日:2015.7.13取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

※7月13日テキストを追加しました!

 「安全保障関連法案を違憲視する学者は、一部にすぎない」──。安倍政権の中には、今なお、メディアへの出演時などに、このような発言をする大臣がいる。しかし、これは明らかに嘘だと言わざるを得ない。

 学問分野の垣根を越えて、2015年6月に発足した「安全保障関連法案に反対する学者の会」の賛同人(学者・研究者)の数は、6月下旬には7000人を超えた。憲法学者に限れば、圧倒的多数が安保法案を「憲法違反」と見ていることは、メディアのアンケート結果や主要学者の当該発言などから容易に想像できる。

 2015年7月3日、安保法案が審議されている国会議事堂の前で、雨の中、午後3時から約3時間にわたり、この法案に強く反対する憲法学者ら17人が順番にリレートークを展開した。17人は憲法学者の威信をかけて、「怒りの言葉」を口にした。

 各人10分ほどのトークは、安倍政治の「非立憲性」を非難するものが多かったが、どの学者も仲間の話との重複を避けており、全体の進捗に冗長さはほとんどない。通して聞けば、憲法学者の目に、今の安保法制がどう映っているかの全体像が理解できるものとなっていた。

 前半と最後に、歌手活動も展開する女性憲法学者が「美声」を披露。とても硬派な集会に、ささやかな花が添えられる一幕もあった。

記事目次

■ハイライト

  • あいさつ 永山茂樹氏(呼びかけ人、東海大学教授)/石埼学氏(呼びかけ人、龍谷大学教授)
  • スピーチ 本村伸子氏(衆議院議員、日本共産党)/福島みずほ氏(参議院議員、社民党)/稲正樹氏(国際基督教大学客員教授・元教授)/山本太郎氏(参議院議員、生活の党)/メッセージ代読/中川律氏(埼玉大学准教授)/武井由起子氏(弁護士、明日の自由を守る若手弁護士の会)/志田陽子氏(武蔵野美術大学教授)/山岸良太氏(弁護士、日本弁護士連合会憲法問題対策本部本部長代行)/三輪隆氏(元埼玉大学教授)/大津浩氏(成城大学教授)/渡邊弘氏(活水女子大学准教授)/清水雅彦氏(日本体育大学教授)/藤野美都子氏(福島県立医科大学教授)/石川裕一郎氏(聖学院大学教授)/齊藤小百合氏(恵泉女学園大学教授)/永山茂樹氏/メッセージ代読渡辺洋氏(神戸学院大学教授)/長峯信彦氏(愛知大学教授)/武器使用について 三輪隆氏/石埼学氏/藤井正希氏(群馬大学准教授)/建石真公子氏(法政大学教授)
  • 歌 志田陽子氏ほか/あいさつ 石埼学氏
  • 日時 2015年7月3日(金)15:00〜18:00
  • 場所 国会議事堂正門前北庭側(東京・永田町)
  • 呼びかけ人 石埼学氏(龍谷大学教授)/永山茂樹氏(東海大学教授)/西原博史氏(早稲田大学教授)
  • 詳細 安保関連法案に反対する憲法学者リレートーク (石埼学氏、Facebook)

「今は、傍観している場合ではない」

 冒頭、あいさつに立った呼びかけ人のひとり、龍谷大学教授の石埼学氏は、集会を開いた理由をこう語った。

 「東京大学名誉教授の樋口陽一先生らが、国会前で、安保法案に反対する抗議行動をしている動画を見て心が打たれた。『自分も何かをやりたい』と思い立ち、今日のこの集まりを実施するに至った」

 大学の研究室を飛び出し、ここに来た理由は、個々の憲法学者で異なるはず、と言う石埼氏は、「私の場合、断じて許せないのは、ここまで明確に憲法に違反している法案が、強行採決されようとしている点だ」とし、この問題は、与党が数の力で押し切るのを傍観していて、あとから「あの採決は憲法違反だ」と裁判所に訴えればいい、というレベルのものではないと口調を強める。

 石埼氏は、早稲田大学教授の長谷部恭男氏や、慶応義塾大学名誉教授の小林節氏ら、3人の憲法学者がそろって衆議院の憲法審査会で、「安保法案は違憲」と断じたことや、憲法審査会の地方公聴会でも同じ見方が噴出していることを取り上げた。そして、「各種の世論調査でも、多くの市民が『違憲』と見ていることが判明している。それなのに、安保法案を成立させようとする動きは、立法行為そのものが違憲であることを物語っている」と訴えた。

 また、石埼氏は、同じく呼びかけ人である早稲田大学教授の西原博史氏からのメッセージを読み上げ、「今、権力の暴走を止めなければ、日本国民は民主主義、立憲主義を失う」との危機感を伝えた。

「安保法案に違和感を持つ自民党議員もいるはず」

 続いて、応援に駆けつけた野党議員らが登壇。社民党の福島みずほ参議院議員は、「今日は、憲法学者のみなさんが生命をかけ、国会正門前でリレートークをすることに敬意を表する」とし、安倍内閣は最悪の内閣だ、と言明。「歴代の自民党政権が違憲としてきた集団的自衛権の行使を、(国民の過半数の賛成が必要となる)明文改憲を行わず、今の日本国憲法下で(解釈だけで)やってしまおうとしているためだ」と話した。

 福島氏は、「このまま憲法が意味なき存在になったら、(日本は)どうなってしまうのか」と言い重ね、国会運営から規範が失われつつある現状を強く懸念。「時の最高権力者である総理大臣こそ、9条で『戦争をしない』と定めた憲法を守らねばならない」と力を込めた。

 その後、到着した生活の党と山本太郎となかまたちの山本太郎参議院議員は、「自民党の国会議員の中には、今回の安保法案に強い違和感を覚えている人が、少なからずいるはず」と指摘。そういう人たちが表立って反対を表明しないのは、反対したら、次の選挙で自民党から推薦を得られないからだとし、「永田町は、国民の利益でなく、議員の利益で動いている」と明言した。

安倍政権は、自ら「非立憲性」を示している

 リレートークの1番手は、国際基督教大学教授の稲正樹氏が務めた。「今回の安保法制を、政府・与党が『平和安全法制』と呼んでいること自体が問題だ」とし、「憲法の規範性を極限まで切り詰め、自衛隊の活動枠を世界規模にして、日本を戦争国家に変貌させようとする、いくつもの法案をパッケージで通す動きを『平和安全法制』と呼ぶことには、真実を虚偽の言葉で隠ぺいし、主権者・国民を愚弄する行為にほかならない」と批判した。

 そして、先般の参議院予算委員会での福島みずほ議員による、「安保法案は戦争法案だ」との発言に対し、自民党理事が修正を求めたことを話題にして(福島氏は修正を拒否)、「私はこの話を聞いて、戦前に斉藤隆夫議員(立憲民政党)が、国会議事堂の中で反軍演説をして除名された一件を連想した」とも語った。

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