2月22日、沖縄県名護市のキャンプ・シュワブのゲート前で、沖縄平和運動センターの山城博治氏ほか1名の男性が、刑事特別法(以下、刑特法)違反の容疑で逮捕されてから間もない3月5日、新たな逮捕劇に発展しかねない騒動が起きた。
「ただことではないぞ」
IWJの中継カメラがゲート前に到着した夕方17時半頃、ゲート前では、10名前後の市民が、防衛局職員とみられる男性に対し、強く抗議する姿があった。基地境界を示す黄色い線(イエローライン)の外側にいる市民と、イエローラインの内側にいる防衛局職員らの間で起きていた対立は、市民らの所持品であるブルーシートをめぐってのことだった。
▲イエローラインの外側から抗議する山城博治氏と市民
米兵、軍警、県警らがグルになった「おとり作戦」
騒動の顛末について、IWJは山城氏に説明を求めた。
「17時頃、防衛局職員が10人くらい出てきて、(フェンスに)張っていたブルーシートを剥がしたり、金具で(紐を)切ったりし始めた。人の物に勝手に触るなと抗議したが、10分ほどで全部剥がし終わった後、彼らはブルーシートを基地の敷地内に持ち込んだ。責任者らしき人物が、『返すから、山城さん取りにこい』と。イエローラインの内側に入ってこいと」
▲撤去したブルーシートを基地内に運ぶ職員
▲軍警とその後ろに立つ米兵たち
22日の逮捕劇の争点となった、イエローラインを自ら越えろという指示を防衛局側から出したといい、山城氏は「おとり作戦」が実行されようとしたのではと、推測する。
「イエローラインより向こうに入ったら、パクる予定だった。前回と同じように、軍警が10名くらい、すぐそこに立っていた。『これは危ない』と生理的に感じた。ピリピリとした空気が流れていて、案の定、(機動隊の)バスの向こう側に、赤い腕章を付けた米兵が5~6人立っていた。
彼らが指揮をして、けしかけて、私たちを逮捕させる。おびき寄せるのは防衛局の仕事。一旦(線の内側に)入ったら、後ろから囲い込むのは機動隊の仕事。分業ができていたんです、恐ろしい」
山城氏は、目の前に並ぶ米兵や軍警、機動隊らとその数を見て、「おとり作戦」という見立ての根拠は間違っていないだろうと分析し、憤りを込めて訴えた。
「警察、防衛局、米兵、米軍がグルになって、私たちをどうにか捕まえようという腹をもっていたということ。ブルーシートは猿芝居にすぎない。彼らは堂々とやる」
刑特法の濫用を防げ
2月23日、20時頃、山城氏ともう1名の男性は、「勾留する理由なし」との判断を下した那覇地検によって、釈放された。しかし、この逮捕は、山城氏らに逮捕状が示されなかったという異例のケース。刑特法違反の法的根拠が明確に示されていないまま、逮捕、釈放に至り、幕を閉じている。それについて山城氏は、刑特法の濫用を懸念する。