2015年1月21日14時30分より、原子力規制委員会・田中俊一委員長の定例記者会見が開催された。東京電力福島第一、第二原子力発電所で人身事故、柏崎刈羽原子力発電所で重傷を負う事故が続いて起きたことについて、田中委員長は「根本的に分析して、対策を立ててもらいたい」と要請。「まず事業者の責任、事業者がきちっとやっていただきたい」とコメントした。
IWJは、これまで田中委員長が事業者に対し、安全性向上のための取り組みを要望してきたことに触れ、それにもかかわらず、今回の事故が起きてしまったことについて質問。田中委員長は、「対策は取られてきて、その進捗もあると思いますけども、やっぱり不十分なところがあったっていうことかと思います」と回答した。
新潟県が田中委員長宛てに要請書を提出し、原子力災害対策指針の見直しなどについて、知事が委員長との面談を求めていることに関し、委員長は「今、お会いして、何か言うことが意味があれば、絶対会わないなんていうことは言ってないんですけどね」と答え、「都道府県知事も50人ぐらいいるけど、彼だけがそういうことをさかんに言いますよね」。「彼は彼一流のいろんなことを言いますので」と発言した。
- 日時 2015年1月21日(水) 14:30~
- 場所 原子力規制委員会(東京都港区)
東電で相次ぐ人身事故「根本的な分析や対策をしてもらいたい」
東京電力福島第一、第二原子力発電所で人身事故、柏崎刈羽で重傷を負う事故が続いて起きたことについて、田中委員長は「いろんなことが関係してきている」とし、東電に「根本的に分析して、対策を立ててもらいたい」と要請した。
田中委員長は、2011年の事故以降、現場監督できるような熟練者の被曝線量が限度を超え、人手が不足していること、いまだにタイベックに全面マスクという過酷な作業環境が続いていること等、いろいろな原因が絡みあって今回の人身事故につながったと自身の考えを述べた。
これまでの電力会社の社長との面談などで、安全性向上のために経営層が積極的に関わることや、安全のための投資を惜しまないでほしいということを、田中委員長は事業者に要望してきた。にもかかわらず、また人身事故が起こってしまった。このことについてIWJが質問。委員長は、「対策は取られてきて、その進捗もあると思いますけども、やっぱり不十分なところがあったっていうことかと思います」と回答した。
今回の事故に関して、「根本的な分析や対策をしてもらいたい」と委員長は要請。ただし、正式に規制委や規制庁として何かを表明するわけではなく、その趣旨を事業者に伝えてもらうように、規制庁福島第一事故対策室長に「お願いしてあります」と言うにとどまった。
今回の一連の東電での人身事故は、高所作業時に安全帯を使用していなかったり、注意すべき事柄が手順書に書かれていない等、直接放射能とは関係ない労働災害だから「私どもの規制の対象ではないんです」と田中委員長は言う。厚労省、労基署がまず立ち入り等するという考えだ。
しかし、放射線や放射能が関わる部分が労働環境を悪くしているのは事実。「そういう点で、われわれとしては、できることを申し上げている」と田中委員長は述べた。
「まず、事業者の責任ですからね」
事故の防止対策に何をしたらよいのか。田中委員長は、「まず、事業者の責任ですからね、こういうことは、事業者がそういうことで、きちっとやっていただきたいということです」と言う。
今後、安全文化の問題で2月に東電廣瀬直己社長とも会う機会があるという。それまで「もう少し様子は見たいと思います」。「あんまりこちらから、いろいろ言ったって、事態が解決できるわけではないし、実際、事業やるのは我々じゃないですから」と答えた。
サブドレンの本格運用を承認、海洋放出へ向けて進む
福島第一原子力発電所の汚染水対策の一つ、地下水をくみ上げ浄化し、海洋放水する”サブドレン”の本格運用を、21日午前に開催された定例の規制委員会会合で認可した。
十分に浄化し、水質を分析してから海洋放出するとはいえ、地元には不安や誤解が生じるおそれがある。しかし、これらを払拭するために、規制庁として現地説明会や情報発信することは「ありません」と言う。安全規制上、問題ないと認めたから、それ以上のアクションはないと説明し、あくまで実際の実施は事業者がやることだと述べた。
ALPS処理水の海洋放出「安全上の問題というより、風評被害とかそっちのほうの問題」
多核種除去設備”ALPS”による汚染水の浄化は、福島第一原子力発電所における重要な汚染水対策の一つだ。この処理水は62種類の放射能を除去するが、現存する技術上、トリチウムは除去できない。そのため、トリチウム水は、現在はタンクに溜め続けている。
トリチウム水は、環境や生体に影響ないレベルに希釈し、海洋放出するほうが、タンクを作り続けて溜め続けるより、全体のリスクは下がると規制委は考えている。実際問題として、既存の世界中の原子力施設からはこれより多量に放出されているし、自然発生するトリチウムも桁違いに多い。それに比べると、問題ないという考えだ。
ただし、トリチウム水の扱いに関しては、「我々(規制委)の関与するところではなく、事業者やエネ庁とかがきちっとやっていただくしかないと思います」と田中委員長は述べ、「安全上の問題があれば我々がやりますけども、安全上は問題がないという判断をしています」。「安全上の問題というよりは、たぶん風評被害とかそっちのほうの問題だと思うんです」とコメントした。
泉田新潟県知事が面談要請
新潟県が田中委員長宛てに要請書を提出し、原子力災害対策指針の見直しなどについて、知事が委員長との面談を求めているという。
これまでにも面談を求められていたが受けていなかった。今回、面談するつもりはあるのかどうか記者が質問。委員長は「今、お会いして、何か言うことが意味があれば、絶対会わないなんていうことは言ってないんですけどね」と答え、「都道府県知事も50人ぐらいいるけど、彼だけがそういうことをさかんに言いますよね」。「彼は彼一流のいろんなことを言いますので」と発言した。
事業者との面談は、安全文化の醸成についてのトップマネジメントの重要性を確認するということで行っている。知事との面談とは同列ではないという考えだ。
将来的に会う可能性については、「会い方もいろいろあると思うんで、それは状況を見て判断することになると思いますけどね」と答えた。