緊急時の運転炉からの燃料取り出し「通常5年は冷却」から一転、「3カ月でできる」~田中俊一原子力規制委員長定例会見 2014.11.5

記事公開日:2014.11.5取材地: テキスト動画
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 2014年11月5日(水)14時30分から原子力規制庁庁舎にて、田中俊一規制委員会定例記者会見が行われた。運転中している炉からの燃料取り出し移送は、緊急時には、3カ月の冷却でできるという考えを示した。

■全編動画

審査書案の作成は一斉に書き始めるものではない

 高浜原子力発電所は、新規制基準適合性審査の設置変更許可審査がおおむね終わっており、審査書案の作成段階に進んでいる。その詳細について米谷仁・規制庁総務課長は、審査を進めながら、審査官それぞれが審査書案の作業を進めていくので、どこかの時点で一斉に審査書案を書き始めるものではないと説明。ただし、最終的には委員会で承認することになる。

福島第一4号機の使用済燃料取り出し完了について

 東京電力福島第一原子力発電所4号機の、使用済燃料プールに収められていた使用済燃料1331体の取り出しが、11月5日に終わった。残りは新燃料の22体だ。

 委員長は、「トラブルなく終わり、良かった」「相当緊張感を持って行ったのだと思う」と感想を述べた。これから3号機、2号機、1号機と燃料を取り出していくことになるが、「だんだん難しくなる。引き続いて緊張感を持って行う必要があると思う」と述べた。

事故は想定通りに行かない~防災訓練について

 11月2日~3日にかけて行われた原子力総合防災訓練は、今年2014年から新たに設けられた内閣防災がとりまとめる。

 今回の訓練では住民避難に道路が使えず、船で避難するシナリオだった。ところが、実際の訓練では天候が悪化し、船での避難はできなかった。これについて記者が質問。委員長は、「事故は想定通りに行かない」「その時にその状況で判断。適切なことができるかどうか、力量を試す上では非常に良かった」と評した。

 訓練では、官邸、内閣府、規制庁の各会議、会見等が報道公開されたが、ERCは非公開、映像のみの提供だった。訓練で情報開示が不透明だと、本当の災害時にどうなるのか疑問だと記者が質問。米谷仁・規制庁総務課長は、「対外的に公開できない設備があるので、原則取材は不可」だと答え、可能な範囲で映像提供したと説明した。

 委員長は、「本番の時に隠してしまうというのは考え過ぎだ」と言う。その上で、「緊急時に情報がばらばらに出れば、かえって混乱してしまう。メディアの皆さんも、一体感をもって国民のためにメディアの力を発揮してほしい」と発言した。

燃料は乾式キャスク貯蔵のほうが安全

 燃料は燃料プールに貯蔵するより、乾式キャスク貯蔵のほうが安全上もセキュリティ上も好ましいと委員長は説明する。10月29日に行われた瓜生道明九州電力社長との安全文化向上に向けた取組みについての意見交換会の場で、委員長は九州電力に、乾式キャスク貯蔵に取り組むよう意見している。

 九州電力は、すでに燃料プールに貯蔵する方式の申請をしているが、委員長は乾式キャスクに取り組むよう努力してほしいという意味だと発言。実際にどちらの方法を取り入れるかは、「事業者がどう判断するか」であり、「今後の審査状況」によるため、現時点で決断はできないということだ。

運転中している炉からの燃料取り出しは3カ月でできる

 九州電力川内原発の審査で、火山噴火の前兆をとらえてから、燃料を運び出すことが確認されている。その際、運転中の炉から取り出した燃料は、通常燃料プールで5年程度冷却してから運びだすと委員長は説明。そのため、燃料は「5年冷却しないと運び出せない」という考えが世間に広まっている。委員長は、通常5年冷却してからと言っており、もっと早く運び出すこともありうると発言している。

 ところが、今日の会見では、火山噴火の予知に絡んで、3カ月で運び出せると発言。記者がその根拠は何かと質問すると、「緊急時にはそれなりに急いで運び出すこともある」「それなりの方法も考えないといけない」と主張、これについてあまり検討したことはなく、これからの課題だと答えた。

 運転炉から取り出した燃料を運び出す前に、どの程度の冷却期間が必要なのか、委員長の発言に根拠はなく、混乱を招く発言だ。

火山噴火から燃料の防護、石棺も一つの方法

 火山噴火の前兆をとらえた場合、燃料を運び出すとしているが、他にも「いろいろな方法があると思う」と委員長は言う。燃料をどこへ運ぶか、搬送先の問題もあるため、チェルノブイリで実績のある石棺も一つの方法だという。「知恵を出せば、いろいろ考えられる」と委員長は発言した。

火山学会は夜も寝ないで観測してもらいたい

 日本火山学会が川内原子力発電所の審査結果を踏まえ「巨大噴火の予測の監視に関する提言」を公表。日本火山学会は、規制委の火山評価ガイドを見直すべきと提言していると記者が指摘した。

 委員長は、川内原子力発電所について、専門家の意見も踏まえ「火山の影響は十分調べている」と言う。その上で、今後30年から40年の原子炉運転期間中にカルデラ噴火のような大きな噴火が起こる可能性はほぼないという結論に達した。しかし、念には念を入れ、観測をしていくということになった。

 記者がカルデラ噴火が起こった時にどうするのかと執拗に質問。委員長は、カルデラ噴火のような巨大な噴火で数千万人も亡くなるとも言われているとし、「そんなとんでもないことが起こるかもということを平気で言わないでほしい」と、逆に記者を叱咤した。

 その上で、「火山学会は必至になり、夜も寝ないで観測し、我が国のため、国民のためにがんばってもらわないと困る」と火山学会に意見した。

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