「嫌韓」、「反中国」を謳い、面白半分で差別を煽動する「ヘイト本」があらゆる書店で山積みになっている。電車の中吊り広告に並ぶ見出しも同様だ。「売れる」のだという。
こうした状況に危機感をもつ22の出版社が11月1日、神保町「STORAGE」で「戦争前夜 本の街で『平和』を考える」と題した本の即売会を開催する。これに伴い、10月16日、出版社の代表者らが趣旨説明の記者会見を開いた。
(IWJ・原佑介)
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「嫌韓」、「反中国」を謳い、面白半分で差別を煽動する「ヘイト本」があらゆる書店で山積みになっている。電車の中吊り広告に並ぶ見出しも同様だ。「売れる」のだという。
こうした状況に危機感をもつ22の出版社が11月1日、神保町「STORAGE」で「戦争前夜 本の街で『平和』を考える」と題した本の即売会を開催する。これに伴い、10月16日、出版社の代表者らが趣旨説明の記者会見を開いた。
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■ハイライト
会見者はコモンズ代表の大江正章氏、あけび書房の代表取締役・久保則之氏、高文研編集部の眞鍋かおる氏。司会を務めたのは週刊金曜日発行人の北村肇氏だ。即売会には、他にもデイズ・ジャパン、現代書館、三一書房、かもがわ出版など22社が参加する。各社の平和や人権、差別、社会保障問題などをテーマにした本が並ぶ。
会見で大江氏は、ヘイト本が溢れかえる原因を「ひとつは編集者の知的劣化、感性の摩滅が大きい」と分析。「女、子ども、老人、障害者など、ジャーナリストは一番弱いところに立つのが大事だと教わったが、今、そうした感覚を持っている人間が少ない」。
さらに、「ふたつめは、売れなきゃ困るから。弱者の立場に立って論証する本は手間がかかるし、特にバブルがはじけて以降は、手間に見合う売上も得られなくなってきた」と指摘する。
「文春や講談社など、大手出版社の人と話すと、彼ら自身が嫌韓、反中国ではない。『売れるから作っている』。そういう文化に、大手だけでなく中堅出版社も汚染されきていることが問題だ」
生存権を規定した憲法25条を主なテーマに本を出版してきたという久保氏は、生活保護受給者に対するヘイトスピーチが蔓延していると指摘する。
「生活保護をめぐる嘘は大手を振っている。近年、不正受給バッシングによって生活保護を受けづらくなる状況になったが、厚労省の統計によると、不正受給は全体のわずか0.5%に過ぎない」
「しかし」と久保氏は続ける。「厚労省は生活保護バッシングに口を出さず、不正受給キャンペーンを野放しにしている。メディアはほとんど無口で、ほとんど大本営発表に入り込んでいる」。
こうした状況を改善するため、メディアに関わる人間には「ジャーナリスト魂をちゃんと持っているかどうか」が問われるという。
久保氏は「(ジャーナリストの信念が)ゆらぐ原因の一つは、経済的要因が大きい。苦しい思いをしていると、儲かる本を作りたいと思うようになるし、こういう状況だと、慰安婦関係の本を出すのはためらいがちになる自分がいたりもする。揺らぐ理由はいろんなことがある。背骨をしっかりさせるものを常に堅持させないといけない」と語った。
眞鍋氏は、「長い目で見ると、かつての細川護熙首相の『侵略戦争発言※』と、『村山談話』に保守派からバックラッシュが続いてきていた、とイメージしてきた。嫌韓流の前には小林よしのりの『戦争論』がベストセラーになった。こうしたことが積み上がってきたのが、今の状況につながったのではないか」と分析する。
編集者として「見出し」の重要性を知る眞鍋氏は、「一番ウケる見出しは何か、と考えて、現場の人は電車の中吊り広告みたいなもの(ヘイト的な見出し)を作っているんだろうと思う。(ヘイト本の依頼主が)もし版元の出版社だった場合、自分なら作るのを拒否するかと言われると、心もとない。自分の弱さを抱えながらどうすればいいか、書店でヘイト本が平積みにされているのを見て考えている」と告白した。
平積みされるヘイト本に対向するにはどうすればいいか。会見者の見解は、「いい本であって、かつ売れる本を作ること」で一致した。北村氏は、「民主的に相談して作った本よりも、一人が情熱で描き上げた本のほうが売れる」と経験則を語り、「我々は情熱で負けているのかもしれない。『(ヘイト本など)買っている方がバカだ』と思ってはいけない。我々は情熱を持って対向しなければならない」と訴えた。
※1993年、当時の細川護熙総理は、8月10日の記者会見で、「私自身は(先の戦争は)侵略戦争であった、間違った戦争であったと認識している」と発言。 また、8月23日に行われた国会の所信表明でも「わが国の侵略行為や植民地支配などが、多くの人々に耐え難い苦しみと悲しみをもたらした」と謝意を表明した。
IWJは会見で、ヘイト本が「売れ」て、社会的に右傾化していることと、安倍政権が戦争関連法を整え、政治的に右傾化していることにどのような因果関係があるかを質問した。
北村氏は「日本会議のようなものが長い時間をかけて歴史歪曲を社会に根付かせようとしてきた。メディアを取り込むこともそう。そして今、ある種の花が開いた。マッチをつければ点火する状況が時間をかけて作られていて、第2次安倍政権で一斉に毒花が咲いた」との見方を示した。
(…会員ページにつづく)
北村氏「日本会議のようなものが長い時間をかけて歴史歪曲を社会に根付かせようとしてきた。メディアを取り込むこともそう。そして今、ある種の花が開いた。マッチをつければ点火する状況が時間をかけて作られていて、第2次安倍政権で一斉に毒花が咲いた」
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