「罪証隠滅のおそれがある」との理由で検察が保釈に反対し、裁判官がその主張に引きずられて保釈を認めず、自白しない被疑者を長く身柄拘束したあげく、検事の言いなりに調書を作成させられ、署名させられるという、日本の司法の悪弊、「人質司法」。
保釈中の日産自動車元会長カルロス・ゴーン氏のレバノン逃亡と、1月8日に首都ベイルートで行われたゴーン氏自身による逮捕後初の記者会見を通じて、密室で長期間身柄を拘束して自白を強要し、有罪に追い込む「人質司法」と呼ばれる前近代的な日本の刑事司法の悪弊が世界中の注目を集めている。
日本の刑事司法では基本的に否認をすると、初公判まで出られないというこの「人質司法」が半ば常態化しているため、容疑者は早く自由の身になりたいあまりに、虚偽の自白をし、真犯人は自分ではないのに、自分であると虚偽の記述がなされた検面調書(検事の面前取る調書、これは法定での証言よりも有効であると判断されがちである)に署名してしまう。そうすると、その検面調書が、法廷での証言よりも有力な証拠とみなされ、否認しても裁判官に認められず、有罪となってしまう。こうした刑事司法の歪みが冤罪事件の温床にもなっている。
岩上安身はIWJの設立以前よりこの「人質司法」の問題点を追及し続けてきた。
岩上安身は2010年4月25日、当時民主党の小沢一郎代表の資金管理団体「陸山会」に対する政治資金規正法違反の容疑(陸山会事件)で、東京地検に逮捕され、起訴された小沢氏の元秘書・衆議院議員石川知裕氏へのインタビューを行った。
最高裁判所は2014年9月30日付で石川氏の上記の上告を棄却し、禁錮2年・執行猶予3年が確定している。
- 石川元議員、有罪確定へ 陸山会事件(日本経済新聞、2014年10月1日)
岩上安身は「嫌疑になった(陸山会土地取引の)政治資金規正法にかかわる被疑事実はあったのか?」とずばり質問。元衆議院議員石川知裕氏は「実際に小沢先生個人から4億円を預かったのは事実。ただそれがいかがわしいお金でそれを隠すという意図があったかどうかが焦点。そういう事は全くない」と全面否定した。
また、石川氏は検事から驚くような言葉があったことを明らかにした。水谷建設について、検事と話したときに「裁判と事実は違う」と言われたというのだ。さらに、石川氏が「水谷建設(から5,000万円受け取ったという事実は)、絶対ありません」と言っても、「検察としては立証に足りうる証拠を積み上げている。必ずしも事実が裁判の結果とイコールとはいえない」と言われたことも明かした。