「政治家、マスコミ、学者などは、電力、鉄鋼、メガバンクなどの原発利益共同体が経営する家畜小屋のブタ。だから、ブタの尻ばかり叩いても、原発利益共同体は痛くも痒くもない。汚染水をめぐって、国は全面支援するというが、東電は民間企業だ。税金で賄うことはおかしい。破綻させるべき」と、吉井氏は東電への国費投入を痛烈に批判した。
2013年10月5日、京都市中京区の職員会館かもがわで開催された「原発問題講演会」で、前共産党衆議院議員の吉井英勝氏が話をした。京都大学工学部原子核工学科を卒業している吉井氏は、2004年のスマトラ島沖地震の際、大津波で起こったインドのマドラス原発事故に注目。日本の原発の安全性に懸念を抱き、国会で2005年から原発の地震と津波対策を強く訴えていた。
- 日時 2013年10月5日(土)
- 場所 職員会館かもがわ(京都府京都市)
- 主催 日本ベトナム友好協会京都府連合会
いまだ収束にはほど遠い福島第一原発
吉井氏は「今なお、福島から15万人が避難中で、大阪にも5000人が避難してきている。彼らは被災地に残った人たちに対し、良心の呵責を感じて追い込まれている。本来、このように地域社会を分断することがあってはならない。われわれは『東電が真の犯人だ』ということを認識しなくてはならない」と話した。
続けて吉井氏は、実際に現場で目の当たりにした、まったく収束していない福島第一原発の現状を語った。問題になっている1日400トンの汚染水を貯蔵するタンクの不作為な構造や、安倍首相の汚染水コントロール発言の嘘を指摘。「安倍首相のあの発言が、将来、自分自身の身に降りかかってくることは明らかだ」と話した。
また、「汚染水問題の解決は不可能だ」と述べ、福島第一原発が安全神話に基づいた建設計画でコストカットを第一に考えて作られたことや、1000億円かかるという遮蔽壁の建設を、利益を優先して実行しなかったことなど、東電の過失を指摘した。
国際原子力開発株式会社と原発セールスマンと化した安倍首相
吉井氏は「原発は1基5000億円、2基1兆円の巨大ビジネス。3.11前の2010年、原発輸出を推し進める国際原子力開発株式会社が設立されている。2006年の第1次安倍内閣の時に原子力立国計画を立て、原発の新増設と輸出を押し進めるため、大臣はセールスマンになったが、民主党政権になっても、その姿勢は変わらなかったのだ」。
「3.11発災の2ヶ月後、当時の菅元首相は『この事故を踏まえた最高技術の原発輸出を押し進める』と、自民党の小野寺議員の質問主意書に回答した。第2次安倍政権では原発輸出が成長戦略の大きな柱になり、安倍首相自ら『営業課長』になった」と批判。原発輸出は、国策として途切れなく続いていたことを明らかにした。
さらに、「電気が足りないから再稼働が必要、という根拠はない。原発輸出と再稼働は表裏一体だからだ」と背景を語った。その上で、「湯川秀樹博士は、原発に反対して原子力委員を辞任した。正力松太郎読売新聞社主や、中曽根康弘議員らが強引に原発推進へ突き進んだ。1969年の外交政策文書には『核兵器は作らないが、いつでもできる能力は持つ』とあり、核抑止力としての原発政策で、日本は進んできた」と核開発の歴史を解説した。
大地震と津波被害を過小評価していた国と原子力行政
そして、吉井氏は「2004年12月のスマトラ島沖地震で、インド洋の大津波によりマドラス原発の機械室が損傷した事実から、日本における原発事故の懸念を、私は国会で何度も質問している」と述べた。また、「2004年の小泉政権下では、香川県の多度津大型振動台(原発機器の耐震テスト設備。その後、廃止された)で、古くなった原発機器検査をしていなかったことがわかった」と指摘。
「原発には数100キロメートルの配管が巡っている。古くなると15ミリの厚さの鋼鉄製配管でも、摩耗して3ミリくらいに薄くなってしまう」と、配管や圧力容器の劣化の実態を解説。さらに、全電源喪失時の対策の有無を国会で質問した時の、原子力安全委員長の答弁などを話した。
そして、「今になって反原発を訴える小泉元首相は、多度津振動台を売り飛ばした張本人だ。310億円で作った施設を、行政改革を理由に、2億7700万円で今治造船へ売り飛ばした。また、私は第1次安倍内閣の時も、国会で原発の津波被害について質問している」と述べて、当時の原子力安全・保安院の確信犯的な答弁内容を批判した。
原発事故は人災。利益しか考えていない東電
次に、吉井氏は東電の地震・津波対策の不備を明かした。「東電は、津波は想定外だったと盛んに言う。なぜかというと、想定内だと対策をしていないことになるからだ。免責を目論み、今回の賠償を逃れようとしている。しかし、2008年の東電の会議で、地震災害対策などは議題に上がっていた。3.11以前の歴代政権がとるべき対策をとらなかったから、こういう結果になったのだ」と強調。その上で、次のように述べた。「冷却水が核燃料を覆っていたら、ベントをしても放射性物質は漏出しない。しかし、菅元首相の現場介入。海水注入を最後まで決行しなかった東電の欲ぼけ。これらが、事故を大惨事に至らしめた最大の要因だ」。
また、「原発は、粗利2.9%の総括原価方式。それで潤う電力会社、原発メーカー、ゼネコン、資材供給、メガバンクで構成された利益共同体が政治を動かし、官僚に天下りという『汚職の先物取り引き』をする。マスコミも学者も立地市町村も、金で抱き込む」と、その利益構造を述べた。さらに、「政治家、マスコミ、学者などは、電力、鉄鋼、メガバンクの原発利益共同体が経営する家畜小屋で飼育されているブタだ。ブタの尻ばっかり叩いても、原発利益共同体は痛くも痒くもない。福島第一原発の汚染水対策で国は全面支援するというが、東電は民間企業。税金で賄うことはおかしい。まず破綻せるべきだ」と痛烈に批判した。
最後に、吉井氏は「原発再稼働を止めるためには、再生可能エネルギーの爆発的普及と、地産地消による地域電力の活性化と売電システムの確立しかない」と持論を述べて、講演を終了した。