「今なお、毎時320マイクロシーベルトもある大熊町。政府は、そこに住民を帰還させようとしている」。広瀬隆氏は「そこの住民には人権がないのか」と嘆いた。
2013年9月21日、青森市にあるねぶたの家ワ・ラッセにおいて、広瀬隆氏講演会「福島・原発・憲法 今、私たちが知るべきこと」が行われた。広瀬氏は、福島第一原発周辺の実態、放射能汚染水問題、さらに、明治維新以降の日本の侵略の歴史と、そこで培われた愛国心について説明。その系譜を受け継ぐ、現在の安倍政権の目論み、自民党の改憲草案の真相など、多岐にわたって話をした。
- 日時 2013年9月21日(土)
- 場所 ねぶたの家ワ・ラッセ(青森県青森市)
- 主催 青森県保険医協会(告知 なくそう原発・核燃、あおもりネットワーク)
2013年7月。今も高線量の大熊町
冒頭、広瀬氏は3.11以降の日本の社会について、「本当に、震災復興の火事場泥棒ばかりだ」と声を荒げた。そして、「日本は危ない。本当に危ないのは人権問題だ」と述べ、今年7月25日に、『DAYS JAPAN』編集長の広河隆一氏や物理学者の藤田祐幸氏らと、福島県の広野町、楢葉町、富岡町、双葉町、浪江町などに調査に入った時の写真を、会場のスクリーンに映し出した。
福島第一原発から3キロ離れた双葉北小学校での空間線量が、毎時8マイクロシーベルト。双葉町農民広場では、毎時55マイクロシーベルト(土壌検査で1平方メートル当たり1700万ベクレル)。これらを示した計測器の写真を見せて、広瀬氏は「政府も自治体も、こんな町に住民を帰還させようとしている」と憤った。
そして、「原発から2キロ離れた大熊町の広域避難場所では、毎時320マイクロシーベルトもあった。自分たちも危ないと思い、すぐ逃げた。もし、住民が2年半、そこにいたとしたら致死量の7シーベルトに相当する。それなら、今、原発事故現場で働く約3000人の作業員たちは、どうなるのか」と危惧した。
いずれ首都圏の地下水も汚染
広瀬氏は、福島第一原発の汚染水漏えいについて、解決策がないこと、原発の地下の水脈が関東地方へも向かっていることなどを解説し、「いずれ首都圏の地下水も汚染される」と警告した。
また、『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』(岩波書店)に記載がある、ウクライナの子どもの健康調査などについて紹介。「ベラルーシの村では事故から10年後、セシウムによる心筋梗塞の発症率が増加。これは、福島第一原発での作業員の死因第1位が、心筋梗塞であることとリンクする」と語った。
続いて、山本太郎参議院議員とドイツ取材に行った際のDVDを上映した。広瀬氏は「ドイツは、9年後に脱原発を達成する。なぜ、日本でできないのか。人は、食べ物の問題で意識が変わることが多い。とにかく、たくさんの人たちに、原発の危険性をわかってもらう努力をするべきだ」と述べ、ドイツのキール海洋研究所が作成した太平洋の放射能汚染シミュレーション図や、気仙沼で津波にさらわれた漁船が、2年半後に福井沖に流されてきた記事を紹介して、海洋汚染の拡大にも警鐘を鳴らした。
犠牲者を語らず、侵略で培われた愛国主義
次に、広瀬氏は「今の日本のひどい状況というのは、実は戦前から続いている」と述べ、「明治維新の時、戊辰戦争で薩長連合の兵士らは、東北で乱暴狼藉の限りを尽くした。勝利した官軍側の戦死者だけを祀ったのが、靖国神社の前身、東京招魂社。以後、日清戦争、日露戦争、第二次世界大戦など、侵略戦争をした軍人たちも英霊として祀っている。敗軍の犠牲者のことを何も議論せず、このように愛国精神を高揚させてきた」と、明治維新からの日本の侵略の歴史を紐解いた。
その上で、広瀬氏は「今、それを復活させようとしているのが安倍晋三だ」と断言。さらに、日本維新の会の橋下徹氏や石原慎太郎氏による従軍慰安婦を巡る発言、朝鮮人労働者の強制連行の史実などを織り交ぜて紹介し、旧日本軍が関わった数々の蛮行を糾弾した。
休憩後も、広瀬氏の舌鋒は衰えることを知らず、安倍首相の私的ブレーンである元外務事務次官の柳井俊二氏、JR東海元会長の葛西敬之氏らによる原発推進の実態を明かした。また、「1945年の敗戦後、日本に強制連行されていた朝鮮人たちは帰還した。その中には、のちに韓国大統領となる李明博(イ・ミョンバク)氏がいた。彼は韓国大統領として初めて竹島に上陸したが、こういう背景があることを知らなくてはいけない」と、さまざまなエピソードを語った。
日本国憲法は決してGHQの押し付けではない
広瀬氏は、現在の日本国憲法について、次のように述べた。「終戦直後、元首相の近衛文麿が憲法草案作りに走ったが、アメリカはこれを阻止。その後、NHK初代会長の高野岩三郎氏らと憲法研究会を結成した憲法学者の鈴木安蔵氏が、1945年12月28日、独自の憲法草案を毎日新聞に発表。GHQはこれに注目して、民政局のマイロ・ラウエル課長が翻訳にとりかかった」。
さらに、「GHQが鈴木安蔵草案を土台に憲法を作ると、吉田茂元首相と白州次郎氏が『押し付け憲法だ』と難癖をつけて民主化を妨害したが、これが『彼らはGHQに抵抗した』と美化された」とし、連合国の極東委員会が普通選挙制と大臣文民制を加えさせたことなども挙げて、「日本国憲法は、最終的に日本国民の意志が作ったもの。決して、アメリカからの押しつけではない」と話した。
その後、話題は2006年の教育基本法の改悪(愛国心、公共、伝統などを重視する方針に転換)に移った。広瀬氏は「2003年、東京都の君が代・日の丸強制(東京都教育委員会「10・23通達」)では、2008年までに388人の教職員が抵抗して懲戒処分を受けた」と右傾化する日本を嘆いた。そして、「今回の参院選での山本太郎氏当選は、国民の願いの証明だ。自分はまだ、あきらめていない。あきらめていたら、ここに来ていない。昨年の6月29日、首相官邸前には原発再稼働に反対する20万人が集まった。みんながやろうという意志を示せば、安倍政権も倒せないはずはない」と主張した。
最後に、広瀬氏は一触即発の危機にある福島第一原発の4号機燃料プールについて言及し、原発の再稼働がどんなに危険なことかを訴えた。「再稼働するということは、また核燃料を高温にすること。再稼働は絶対させてはならない。そのために、老人は駆け回る」と拳を振り上げ、講演を終了した。
広瀬氏は、福島第一原発周辺の実態、放射能汚染水問題、さらに、明治維新以降の日本の侵略の歴史と、そこで培われた愛国心について説明。
近衛文麿グループ「民主主義って何だ???」(笑)
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ーー自衛の名において、日本は満州事変に、戦い出したわけですが、戦争には自衛戦争と、侵略戦争という区別を、どうも日本はしているようであると。
しかし、我々の “パリ不戦条約” は、その区別なし。「戦争は全て放棄する」と。こういう話だと。ところが日本はそれを「区別」して、戦争を分けて考えている。これは、日本という国は、おかしな国だと。おかしな国というよりは、信じられない国だというんで、昭和の時代というのは、この満州事変を契機にしまして、非常に国際的に信用を失って、そして、あとはみなさんご存知のように太平洋戦争の道へと突っ走っていくということになるわけでございます。
ですから、そういう意味では、このせっかく結んだ不戦条約と。これ、でかい国は全部入ってますから、15カ国みな入っておりますから、せっかく結んで、人類が新しい理想のもとに歩き出した時に、「日本が自ら先に破ってしまった」という結果になったわけでございます。ーー。
一ーその議会の記録を調べてみますと、幣原さんのほうから言ったみたいです。幣原さんは、何を言ったかというと、この、まさに “昭和3年のパリ不戦条約” のときのことを言って、そして、日本はこの精神をもういっぺん取り戻して、戦後日本を作りたいと。
ーーアメリカはもう昭和天皇を、戦争の責任者にはしないというふうにしてましたけども、ソ連とか他の国は、天皇の戦争責任を追及する声が非常に強かったわけです。そこで、なんとかこれを躱さなきゃいけないというので、マッカーサーが、この8条(9条:第1章に条文が追加されたため、第2章の第8条であった本条は繰り下がって第9条となった)を憲法を取り入れることによって、世界の国々を納得させることができるというふうに、幣原さんと話し合った。ーー。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/83295#comment-688769
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「日本はGHQの介入が始まる前に、『2種類の憲法草案』を自主的に作っていた。ひとつは戦前と変わらない保守的なもの。もうひとつは先進的なもの。GHQは “先進的な方” を高く評価し、現行憲法の下敷きにした。決して、アメリカに押し付けられたわけではない!」──。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/208226