日刊IWJガイド・非会員版「日本は、ウクライナ紛争で顕在化してきた世界秩序構造変化を見据えた『代理戦争に巻き込まれない、させない』外交安全保障政策を進めるべき」2022.12.17号~No.3747号


┏━━【目次】━━━━
■「反撃能力の保有」、NATO基準「GDP2%の防衛費」、「同志国」との連携、何よりも米国の属国であることを確定させる、米軍指揮下に自衛隊を組み込む「統合司令本部」の創設! 戦後日本の安全保障政策の「歴史的分岐点」となる「安保3文書」の改定を、岸田内閣は閣議決定だけで決めてしまう! 中国外交部は「根拠なく中国を貶めている、軍事力増強の口実を見つけるために『中国の脅威』を誇張することは、失敗する運命にある」と強く批判! 日本は「厳しさを増すわが国周辺の安全保障」だけではなく、ウクライナ紛争で顕在化してきた世界秩序構造変化を見据えた「代理戦争に巻き込まれない」「代理戦争をさせない」外交安全保障政策を進めるべき!

■IWJが経済的に大ピンチです! 第13期が始まった8月から11月末までの4ヶ月間で、累積の不足額は931万7470円に! 今月の月間目標額390万円とを合計すると、12月末までに1321万7470円が必要です! 1年の3分の1に相当する4ヶ月間で約1000万円が不足していますから、このペースだと、第13期が終わる頃には、3000万円近く不足することに! このままですとIWJは確実に倒産です! 活動規模を縮小するしかありません。それでも皆さまの支持・応援、そしてご寄付・カンパによるご支援がなければ縮小しても活動は継続できません! 今後とも精いっぱい頑張ってまいりますので、緊急のご支援のほど、よろしくお願いします!

■【中継番組表】

■「米中の衝突は広範な分野と地域にわたって数年から数十年継続し、一方が戦いを放棄し、他方への従属を認めたときにのみ終了できる」! 高強度戦争になれば「中国は日本軍に対する大規模な攻撃を検討し、戦域における米国の最も有能な同盟国の1つを機能不全に陥れることもあり得る」! ランド研究所(2022)『大国戦争の再発――米国と中国の間の体系的衝突のシナリオ』をご紹介します。

■<IWJ取材報告>「統一教会問題は国際的な組織犯罪としての対応が必要、文科省はどこまで徹底して向き合うのか?」とのIWJ記者の質問に「まずは解散請求の要請ができるかどうかだ」と永岡大臣!!~12.16永岡桂子 文部科学大臣 定例記者会見

■【スタッフ募集・事務班】中継スタッフやテキストスタッフと連携して、IWJの行動予定を組み立てる重要なセクションである事務班のスタッフを募集します。PC操作のスキルがあり、スケジュール調整のためにアポ取りのコミュニケーションスキルのある方、歓迎です! これまでの社会経験も生かせます! 時給は1200円からのスタートです。IWJの動画・記事のコンテンツの視聴・購読経験が一定以上あり、共感できた方に限ります。

■【スタッフ募集・テキスト(赤反映担当)班】記者として日刊IWJガイドや記事の執筆、エディターとして編集業務を行っていただける方を募集します。特に深夜業務での校正作業を厭わない方は、優遇し、最優先で募集します! 深夜に及んだ場合は、社用車での帰宅が可能です。時給はスタート時は1300円から、能力・実績次第で昇給します。深夜業務は法にのっとった割り増し残業代を支払います。『サビ残』は一切ありません! IWJの動画・記事のコンテンツの視聴・購読経験が一定以上あり、共感できた方に限ります。

■【スタッフ募集・テキスト(パワポ作成担当)班】書物や資料を読み砕いていく読解力やリサーチ能力が必要とされる「岩上安身によるインタビュー」のパワポ作成に責任をもってかかわっていただける方を募集します。時給は1500円から、能力・実績に応じて昇給します。

■【スタッフ募集・動画班】岩上安身によるインタビューを撮影・編集したり、大臣会見やビデオカメラによる現場取材と中継、撮影した動画の編集を行うスタッフを募集します。PCによる動画の編集作業の基本ができる方、特にYouTubeの撮影・編集などの経験のある方を特に優遇し、最優先で募集します! 経験が少なくとも、意欲ある若い方、研修を受ければ習熟していけるとの自信や情熱がある方も歓迎です! 時給は1300円からのスタートです。IWJの動画・記事のコンテンツの視聴・購読経験が一定以上あり、共感できた方に限ります。
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■「反撃能力の保有」、NATO基準「GDP2%の防衛費」、「同志国」との連携、何よりも米国の属国であることを確定させる、米軍指揮下に自衛隊を組み込む「統合司令本部」の創設! 戦後日本の安全保障政策の「歴史的分岐点」となる「安保3文書」の改定を、岸田内閣は閣議決定だけで決めてしまう! 中国外交部は「根拠なく中国を貶めている、軍事力増強の口実を見つけるために『中国の脅威』を誇張することは、失敗する運命にある」と強く批判! 日本は「厳しさを増すわが国周辺の安全保障」だけではなく、ウクライナ紛争で顕在化してきた世界秩序構造変化を見据えた「代理戦争に巻き込まれない」「代理戦争をさせない」外交安全保障政策を進めるべき!

 おはようございます。IWJ編集部です。

 岸田内閣は12月16日、「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」と「防衛力整備計画」の、「安保3文書」の改定を閣議決定しました。

 「国家安全保障戦略」では、2027年までに5年間で43兆円、NATO基準「GDP2%の防衛費」、「スタンド・オフ防衛能力等を活用した反撃能力の保有」などが示されました。「日米同盟の強化」のほか、「自由で開かれた国際秩序の維持・発展と同盟国・同志国等との連携の強化」が掲げられ、さらに「中国・北朝鮮・ロシア」の3カ国を名指しで「脅威・懸念」の対象と明記しました。

 日本にとって、最も近い隣の国々であり、核保有国である3カ国を名指しで「敵」と示すことが、賢明な安全保障政策なのか、はなはだ疑問です。

 「自由で開かれた国際秩序の維持・発展と同盟国・同志国等との連携の強化」とは、何を指すのでしょうか。「国家防衛戦略」や「防衛力整備計画」には、具体的な国家の名前が上がっていますが、すでにインドが「同盟国・同志国」かどうかは疑わしく、ウクライナ紛争後、ロシア・中国へ接近している中東諸国や、米中対立を嫌う東南アジア諸国などが参加すると期待できるかどうか疑問です。

 NATO基準の「GDP2%の防衛費」はいかにも「数値ありき」です。米国がNATO諸国に「GDP2%の防衛費」を求めたとされていますが、日本もNATO並みに米国軍需企業から武器を買いなさいと、米国から要求されているようにしか聞こえせん。「自由で開かれた国際秩序の維持・発展と同盟国・同志国等」に参加するためには、「GDP2%の防衛費」を支払うことが条件だといわんばかりです。

 相手領内への「反撃能力」は、敵国が打ち上げるミサイルの「上がり端」を叩く能力とする理解もあります。

 敵国のミサイルの「上がり端」を叩くなら、先に我が国のミサイルが相手の領内に到達するという神業を実現しなくてはなりません。そんなことをどうやって成し得るのでしょうか?

 またこれは先制攻撃ではないというのですが、どうやって、相手のミサイルが打ち上げ準備に入っているという情報を得るのでしょうか? 現状を見れば、情報を得るのはもっぱら米国の衛星頼みであり、米国から「ミサイルを撃て!」という指示がきたなら、その通りに何の疑問も抱かず、逡巡することもなく、条件反射のように発射ボタンを押すことになるでしょう。

 その米国の「命令」を「鉄板」にしたのが、自衛隊を米軍指揮下に入れる「統合司令本部」の創設です。日本が米国の属国であり、自衛隊が米国と米軍を守る「米衛隊」に他ならないことを、岸田政権は念押しするように閣議決定した、ということです。これは自ら主権を放棄した、という以外の何ものでもありません。

 「国家防衛戦略」は、上記のトピックに加え「統合司令本部」の創設、「防衛力整備計画」では必要な装備品などが示されています。

※「国家安全保障戦略について」(令和4年12月16日 国家安全保障会議・閣議決定)
https://www.cas.go.jp/jp/siryou/221216anzenhoshounss-j.pdf

※「国家防衛戦略(概要)」(2022年防衛省)
https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/strategy/pdf/outline.pdf

※「防衛力整備計画について」(令和4年12月16日、国家安全保障会議決定、閣議決定)
https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/plan/pdf/plan.pdf

 「統合司令本部」の創設については、上述した通り、自衛隊を米軍の指揮系統システムに組み込むものです。IWJは、自衛隊の指揮権を放棄し、自衛隊を米インド太平洋軍の「二軍」にしてしまう「統合司令本部」の創設を、主権国家としてありえないとして、これまでも強く批判してきました。東アジア共同体研究所上級研究員の須川清司氏への取材もしています。ぜひ、あわせてお読みください。

※はじめに~台湾有事を見据え、日本政府は、米国のインド太平洋軍司令官と作戦を調整する「統合司令部」と「統合司令官」を2024年に新設する方針! 政府は自衛隊の指揮権を放棄し、自衛隊を米インド太平洋軍の「二軍」とするつもりなのか!?(日刊IWJガイド、2022年10月31日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51473#idx-1

※はじめに~日本が米軍の指揮下に! 国家主権の放棄か!? 反撃能力の保有を決定した政府が、米軍と指揮系統システムを一体化させる米国製の「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」を検討! IWJ記者の取材に東アジア共同体研究所上級研究員の須川清司氏は「アメリカに管理される、主権の放棄という面があるが、今の国防族の連中の顔ぶれを見ると、アメリカの方がまともな判断をする可能性も高い」と指摘! 一方、維新、国民に続き、立憲民主も反撃能力保有容認か!?(日刊IWJガイド、2022年12月6日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51619#idx-1

※<IWJ取材報告>反撃能力を保有し「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」を構築するのは、自衛隊が米軍の指揮系統下に入る主権の放棄では!? IWJ記者の質問に浜田大臣は「現時点で答える段階にはない」!!~12.6 浜田靖一 防衛大臣 定例記者会見(日刊IWJガイド、2022年12月7日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51621#idx-6

 立憲民主党は16日、「政府から一切の具体的説明も、国会での議論も、国民的合意もないままに、政府がこれまでの防衛政策を大きく転換させる『反撃能力の保有』『防衛費 GDP 比 2%』を記載したことは、大きな問題であり、立憲民主党は容認できません」と声明を出しました。

 「1)反撃能力の保有に反対
 ・我が国に対する攻撃の着手の判断は現実的に困難
 ・いわゆる存立危機事態において、我が国による相手国領域内への攻撃を否定していない
 ・専守防衛を逸脱する可能性

 2)防衛予算倍増
 ・11兆円に倍増させようとする方針は、積み上げになっていない『数字ありき』の額であり、合理性に欠けています。国会での説明も議論もなし」

 しかし、立憲民主党は「中国・北朝鮮・ロシア」への敵視や、統合司令本部の問題には言及していません。

※【代表声明】政府が示した「安保三文書」の問題点について(声明)(2022年12月16日、立憲民主党 代表 泉健太)
https://cdp-japan.jp/news/20221216_5104

 岸田総理は、16日午後6時から記者会見を開き、「安保3文書」の改定を閣議決定したと報告しました。

 「本日新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略および防衛力整備計画の3つの文章を閣議決定いたしました。

 私はかねてより、世界は歴史的分岐点にあると申し上げてきました。この30年間、世界はグローバル化が進展し、世界の一体化・連携が進んできました。

 しかしながら、近年、国際社会におけるパワーバランスの変化などによって、国と国の対立、むき出しの国益の競争も顕著となり、グローバル化の中での分断が激しくなっています。国際社会は協調と分断、協力と対立が複雑に絡み合う時代に入ってきています。

 その分断が最も激しく現れたのが、ロシアによるウクライナ侵略という暴挙であり、残念ながら、我が国周辺国地域においても、核ミサイル能力の強化あるいは、急激な軍備増強、力による一方的な現状変更の試みなどの動きが一層顕著になっています。

 今年一年間を振り返っても、5年ぶりに弾道ミサイルが、我が国上空を通過いたしました。我が国のEEZ内に着弾する弾道ミサイルもありました。さらに核実験に向けた準備の兆候もあります。

 そして有事と平時、軍事と非軍事の境目が曖昧になり、安全保障の範囲は伝統的な外交防衛のみならず、経済、技術などにも広がっています。

 この歴史の転換期を前にしても、国家国民を守り抜くとの、総理大臣としての使命を断固として果たしていく、こうした決意を持って昨年末から18回のNSC(安全保障会議)大臣会合での議論を重ね、新たな国家安全保障戦略の策定と防衛力の抜本的強化を含む安全保障の諸課題に対する答えを出させて頂きました」

 岸田総理は、我が国の防衛力を抜本的に改革するために5年間で43兆円を投入して、その後もGDP比2%の防衛費の維持を目指すこと、その財源については、将来世代に先送りする国債発行ではなく、歳出削減努力と法人税などの増税で賄う方針を示しました。

 岸田総理は、「国民の命と暮らしと事業を守り抜く上でまず優先されるべきは、我が国にとって望ましい国際環境安全保障環境を作るための外交的努力です。今後とも、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を重視しつつ、日米同盟を基軸とし、多国間協力を推進する積極的な外交をさらに強化していきます」と外交努力を強調しました。しかし、ここには価値観を異にする「他者」との共存という視点が抜け落ちています。「自由、民主主義、人権法の支配といった普遍的価値を重視しつつ、日米同盟を基軸」と限定してしまえば、対露制裁に参加しているのが米国の同盟国に限られているのと同様に、日本が「外交努力」をする相手は、米国とその同盟国だけになってしまいます。

 「価値観」があうかどうかだけで、外交を限定することは日本にとっては不可能です。「価値観」があわない国であっても、それが産油国であれば、石油の輸入のためにつきあわざるをえません。同じことはあらゆる資源の輸入、食糧の輸入、工業製品の輸出相手に対しても言えることです。貿易相手に同じ「価値観」を求めていたら、日本のようなエネルギー資源もない、食糧自給もできない、加工品を輸出して外貨を稼ぐしか生きる道がない国は、たちまち立ち行かなくなることは明白です。

 岸田総理は、「防衛力の強化は外交における説得力にもつながります」と、外交努力の裏付けとしても防衛力が必要だと訴えました。

 岸田総理は、「現在の自衛隊の能力でわが国に対する脅威を抑止できるか」、「極めて現実的なシミュレーション」を行い、現状の自衛隊の能力は不十分であり、新たな能力が必要だと訴えました。

 「新たにどのような能力が必要なのか具体例をあげたいと思います。

 一つ目は反撃能力の保有です。これまで構築してきたミサイル防衛体制の重要性は変わりません。しかし、極超音速核兵器や変則軌道で飛翔するミサイルなどミサイル技術は急速に進化をしています。また1度に大量のミサイルを発射する飽和攻撃の可能性もあります。こうした厳しい環境において相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力となる反撃能力は、今後不可欠となる能力です。

 二つ目は、宇宙サイバー電磁波等の新たな領域への対応です。軍事と非軍事、平時と有事の境目が曖昧になり、ハイブリッド戦が展開され、グレーゾーン事態が恒常的に生起している厳しい安全保障環境において、宇宙サイバー電磁波との新たな領域でも我が国の能力を両面で強化していきます。

 三つ目は、南西地域の防衛体制の強化です。安全保障環境の変化に即して、南西地域の陸上自衛隊の中核となる部隊を倍増すると共に日本全国から部隊を迅速に展開するための輸送機や輸送船舶を増強します。これは万一、有事が発生した場合の国民保護の観点からも重要です。

 さらに、尖閣諸島を守るための海上保安庁の能力増強や、防衛大臣による海保の統制要領を含む自衛隊との連携強化といった取り組みも進めていきますが、こうした取り組みを始め、弾薬等の充実、十分な整備費の確保、隊員の処遇改善などを含め、今後5年間で43兆円程度の防衛力整備計画を実行します」

 岸田総理は、ロシアを日本が直面する「脅威・懸念」として、わざわざ名指ししておきながら、自衛隊の南西シフトを強調しています。これでは対中国に対する防衛体制を固めることにはなっても、有事の際には極東の北方から攻めてくると予想されるロシアに対し、備えを薄くすると言っているようなもので、はなはだしく矛盾しています。

 岸田総理はまた、「自衛隊の抑止力対処力を向上させることで武力攻撃そのものの可能性を低下させることができる」と強調しました。

 「防衛力の抜本的強化」と、それを補完する「研究開発や公共インフラ整備」などの取り組みを含め、2027年には防衛費が「(現在の)GDP比2%」に達すると述べました。2028年以降も、防衛力を維持するために年間4兆円が必要であり、その財源は歳出改革で4分の3、残りを法人税に求める予定だと述べました。

 会見後の質疑で記者から「GDP比2%、43兆円」は数字ありきではないかと問われ、岸田総理は「防衛力の抜本的強化」と、それを補完する取り組みを積み上げていった数字であり、数字ありきではないと強弁しつつ、NATO各国が2%基準を目指していること、国際的な協力体制の足並みを揃える面もあると、事実上「数字ありき」であることを認めました。

 岸田総理は「戦後の安全保障政策を大きく転換する」改定だと認めながらも、「日本国憲法、国際法、国内法の範囲内での対応」だと強弁しました。

 「安倍政権において成立した平和安全法制によって、いかなる事態においても切れ目なく対応できる体制がすでに法律的あるいは理論的に整っていますが、今回新たな3文書を取りまとめることで、実践面からも安全保障体制を強化することとなります。

 まさにこの3文書とそれにもとづく安全保障政策は、戦後の安全保障政策を大きく転換するものであります。

 もちろんこれは、日本国憲法、国際法、国内法の範囲内での対応であることは言うまでもありません。

 非核三原則や、専守防衛の堅持、平和国家としての日本の歩みは今後とも不変です」

 しかし、「反撃能力」について、どういったタイミングで反撃するのかと問われ、岸田総理は「防衛の機微に関することだから」として、「私から申し上げることはしない」と回答をしませんでした。「専守防衛の堅持」になるとは思えません。

 岸田総理は発表の最後に、「ウクライナの粘り強さ」に言及し、国民の理解と協力を求めました。

 「防衛力の強化は国民の皆さんのご協力とご理解なくしては、達成することはかないません。我々一人一人が主体的に国を守るという意識を持つことの大切さは、ウクライナの粘り強さがよく示しています。我が国の安保政策の大きな転換点にあたって、我々が未来の世代に責任を果たすために国民の皆さまのご協力を改めてお願いを申し上げます」

 これは、ウクライナの惨状を理解した上での、深く意図した発言だったのでしょうか。12月15日、岩上安身がインタビューした元外務省国際情報局長・孫崎享氏は、日本もやみくもにこのまま米国に付き従っていくと「ウクライナと同じことになるんですよ」と指摘しています。「ウクライナの粘り強さ」に学べとは、ウクライナと同様に日本が戦場となり、「米国の代理戦争」を引き受けろ、と言っているようにしか聞こえません。

 孫崎享氏は、12月15日の岩上安身によるインタビューで、以下のように指摘しています。

孫崎氏「これ(ウクライナ紛争)、日本でも同じことが起こるんですよ。例えば、ロシアの戦車がいますよね。それを『撃て』と。じゃ、その『撃て』という指示がどこから来るのか。

 当然ながら、(ロシアの戦車の位置などの情報は)情報衛星で取っているわけです。その情報衛星は誰が運営しているかと言ったら、ウクライナ人が運営してるわけじゃないわけだから、アメリカですよね。

 だから、戦争で『どこに撃て』という指示は、ウクライナは引き金を引いてるかもしれないけれども、指示はアメリカから来ているわけですよ。

 例えばロシア(領内のロシア空軍基地の)飛行場に(ウクライナ側がドローンで)撃ちましたよね。『このポイントに撃った方がいい』というのをウクライナ人が判断しましたか。してないんですよ。

 おそらく、それと同じことは東アジアで起こるんですよ。日本がミサイルみたいなものを持つ。その時に、どこかに、目的地に向かって撃つ。しかし、その目的地を日本人自身が判断はできないんですよ」

 岩上は「しかも、いざ実際に有事となった時には、指揮命令系統は自衛隊は米軍下に入るということを、ほぼほぼ決定している、閣議決定で。国会で全然審議しないままにですよ。こんなことは主権国家としてありえない」と応じました。

 孫崎氏は、「『運命をともにする』という時に、アメリカは、運命を共にしてないですよね。戦場になってガチャガチャになるのは日本だけで、アメリカ本土は全然ガチャガチャにならない。ウクライナと同じことですよね。それをもっと考えなきゃ」と述べています。

 しかし、岸田総理は記者会見で「統合司令本部」に言及せず、居並ぶ記者たちの誰一人として「統合司令本部」に触れませんでした。米国に追従して「中国・北朝鮮・ロシア」を敵視するリスクについても誰一人声をあげませんでした。岩上安身は、この会見に参加できていません。メディアがこんな状態では、日本は危機的な状況に追い込まれていきます。

※はじめに~<インタビュー報告>「ウクライナと同じで戦場になってガチャガチャになるのは日本だけ、アメリカは運命共同体ではないということをもっと考えるべき」「コロナ禍も明けぬ中、2月にはウクライナ紛争が勃発! 7月には安倍元総理銃撃事件を発端に統一教会問題が再燃! 統一教会と北朝鮮のミサイルが結びつく! 激動の2022年を振り返る!」岩上安身による元外務省国際情報局長 孫崎享氏インタビューを生配信しました。(日刊IWJガイド、2022年12月17日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51652#idx-1

 ウクライナ紛争のシナリオになったかのような描いたランド研究所が、今年発表した『大国間戦争の再来–米中間の体系的衝突のシナリオ』について、本日の日刊IWJガイドでも扱っています。このレポートの内容とウクライナ紛争と、岸田内閣が閣議決定した「安保3文書」の改定内容をあわせてみると、まさに、衛星情報を把握する米軍が自衛隊に、ミサイル打撃ポイントを指示して自衛隊が打ち込み、日本列島に報復攻撃がされて「ガチャガチャ」になる近未来がありありと浮かび上がってきます。

 日本にとって、まさに最も近い国々であり、核保有国である3カ国を名指しで「敵」と示すことが、本当に賢明な安全保障政策なのでしょうか。

 中国外交部の汪文斌報道官は、14日の定例記者会見で、『AFP』記者に「中国は日本にとって脅威なのでしょうか?」と問われ、「根拠なく中国の信用を傷つけている」と強い不快感を示しました。汪報道官は「軍事力増強の言い訳を見つけるために『中国の脅威』を誇張することは、失敗する運命にある」とも述べています。

AFP記者「日本は今週、過去数十年で最大の防衛予算を発表すると予想されている。公式には、日本側が『中国からの脅威』と呼ぶものに直面するためだとされています。あなたはどのように対応しますか?中国は日本にとって脅威なのでしょうか?」

王文斌報道官「中国は常に、アジア太平洋と世界の平和と安定を維持することに全力を尽くしています。中国はすべての国の発展のためのパートナーであり、機会です。日本側は事実を無視し、中日関係と両国の共通理解へのコミットメントから逸脱し、根拠なく中国を貶めています。中国は断固としてこれに反対し、外交ルートを通じて日本側に繰り返し、我々の立場を明らかにしてきました。

 中国と日本は、近接した隣国であり、この地域の重要な国家です。日中両国の友好協力関係を維持・発展させることは、両国と両国民の根本的な利益にかないます。我々は日本側に対し、中日間の4つの政治文書の原則を遵守し、その政策に効果的に反映し、両国が協力的なパートナーであり、互いに脅威を与えないという政治的コンセンサスに基づいて行動することを、改めて強く求めます。アジア近隣諸国の安全保障上の懸念を尊重し、軍事安全保障の分野で慎重に行動することを改めて強く求めます。軍事力増強の口実を見つけるために『中国の脅威』を誇張することは、失敗する運命にあります」

※2022年12月14日の王文彬報道官定例記者会見(中国外交部、2022年12月14日)
https://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/xwfw_665399/s2510_665401/2511_665403/202212/t20221214_10990475.html

 日本は、「近年急激に厳しさを増す我が国周辺の安全保障環境」だけではなく、ウクライナ紛争後に起こっている世界秩序の大きな変化をも見据えて、「代理戦争に巻き込まれない」「代理戦争をさせない」外交安全保障政策を進めていくべきです。

■IWJが経済的に大ピンチです! 第13期が始まった8月から11月末までの4ヶ月間で、累積の不足額は931万7470円に! 今月の月間目標額390万円とを合計すると、12月末までに1321万7470円が必要です! 1年の3分の1に相当する4ヶ月間で約1000万円が不足していますから、このペースだと、第13期が終わる頃には、3000万円近く不足することに! このままですとIWJは確実に倒産です! 活動規模を縮小するしかありません。それでも皆さまの支持・応援、そしてご寄付・カンパによるご支援がなければ縮小しても活動は継続できません! 今後とも精いっぱい頑張ってまいりますので、緊急のご支援のほど、よろしくお願いします!

 おはようございます。IWJ代表の岩上安身です。

 いつもIWJをご支援いただきまして、誠にありがとうございます。

 第13期が始まった8月から先月11月末までの4ヶ月間で、月間目標を下回る月が続き、この4ヶ月間の累積の不足額は931万7470円にまで膨れ上がりました。

 12月に入り、8月から始まったIWJの第13期も、5ヶ月目を迎えました。1年の3分の1にあたる約4ヶ月間で1000万円近くが目標額よりも不足していますから、このペースだと、第13期が終わる頃には、3000万円近く不足することになりそうです。このままですと、IWJは確実に倒産です。

 12月は、上記の累積の不足額932万770円に、12月分のご寄付・カンパの目標額390万円を加えた1321万7470円が、12月末までに必要となります。大変困難な、厳しい見通しです。

 IWJの規模と活動に、抜本的な改革が必要であり、規模を縮小し、コンパクトで最優先の情報をお届けする体制を再構築したいと思っています。今よりコンパクトなスペースのオフィスに移転することも真剣に検討中です。

 人員、活動ともに引き締めて行いますが、情報の質の部分は落としてはなりません。その分、発行する情報の量をコンパクトにせざるを得なくなるかもしれません。

 12月1日から14日までの14日間のご寄付・カンパ額は、61件で75万9400円です。

 ご寄付・カンパをお寄せくださった皆さま、誠にありがとうございます。

 皆さまにはぜひ、ご支援いただきたく、IWJの存続のために、会員登録と緊急のご寄付・カンパによるご支援をどうぞよろしくお願いしたく存じます。

 どうかIWJ会員の皆さま全員のお力で、IWJをお支えください!

 皆さまにおかれましても、コロナ禍での経済的な打撃、そしてこのところの物価上昇に悩まされていることとお察しいたします。

 しかし、ご寄付が急減してしまうと、IWJは活動していけなくなってしまいます。IWJの運営は会員の方々の会費とご寄付・カンパの両輪によって成り立っていますが、それが成り立たなくなってしまいます。

 IWJは、市民の皆さま、お一人お一人が会員となっていただくことと、ご寄付・カンパをいただくことで、政治権力におもねり、広告スポンサーに牛耳られている記者クラブメディアとは一線を画した、独立市民メディアとしての活動を貫いてきました!

 権力に不都合であっても、真実を追及し、権力の監視を行う「ウォッチドッグ」の役割を果たし続けることが可能になります。これも、市民の皆さまのお支えがあってのことです。

 また、大新聞、大手テレビが、足並みをそろえてウクライナ紛争において情報操作を行っている現状を御覧になればわかるように、権力と大資本から距離を置く独立メディアが存在しないと、真実はまったくわからなくなってしまいます。それは結局のところ、めぐりめぐって、私たち自身の生存や生活を、脅かすことになります。

 10月17日の日刊IWJガイドを読んでいただければわかる通り、ウクライナ紛争と対露制裁によって、米国の同盟国は、欧州も日本も「巻き添え被害」にあっています。欧州の市民はその真実に気づき、ドイツやチェコのプラハだけではなく、パリにおいても市民が立ち上がって反NATOの抗議の声をあげていますが、欧州のマスメディアも日本のマスメディアも、そうした動きを意図的に報じようとしません。

 我々のような独立メディアが存在しなければ、この事態を人々が知るすべもないのです。独自の視点で真実の報道を続けるIWJの存在価値を、ご理解いただき、お支払いいただければと思います。

※日本のマスメディアが伝えない欧州の現実! インドメディア『WION』が、フランスの「反NATO」デモをレポート!「NATOから離脱しよう!」、「Let’s get out of NATO!」「NATOのためにフランスはウクライナの『巻き添え被害』を受けている」! フランスの高級紙『ル・モンド』は、石油会社従業員による賃上げデモを報じるも、「反NATO」デモはスルー!? 米英NATOウクライナのために、『巻き添え被害』を恐れているのは日本も同じ!! メディアの情報操作によって、その事実にすら気づかない日本国民!(日刊IWJガイド、2022年10月17日号)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51419#idx-6

 日刊IWJガイド11月23日号でお伝えしたように、17日付のロシアメディア『RIAノーボスチ』は、11月11日までにロシア軍が撤退したヘルソン州で、親ロシアの活動家39人が、ウクライナの治安部隊に射殺されたと報じました。しかし、ヘルソンの粛清を西側メディアはまったく伝えていません。

※ヘルソンでウクライナ軍が親ロシアの活動家住民39人を射殺! 74人が連行され行方不明! 日本のマスコミを含む西側主要メディアはこの事実をまったく伝えず! ウクライナ側に一方的に偏った視点の西側の政府発表や偏向報道を改め、今こそ普遍的な人権の視点を!(日刊IWJガイド11月23日号)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51564#idx-4

 また、改憲による緊急事態条項の創設は、統一教会が自民党の背中を押して、実現に向けて推進してきた政策です。統一教会という「反日・反社会的カルト」を、日本社会から追放し、政治への介入をやめさせるとともに、この危険な緊急事態条項の憲法への導入を阻止するために、私と、IWJのスタッフは、全力で立ち向かいたいと思います!

 皆さまにはぜひ、ご支援いただきたく、IWJの存続のために、会員登録と緊急のご寄付・カンパによるご支援をどうぞよろしくお願いしたく存じます。

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 どうか、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます!

岩上安身


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◆中継番組表◆

**2022.12.17 Sat.**

調整中

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◆中継番組表◆

**2022.12.18 Sun.**

あくまで予定ですので、変更、中止、追加などがある場合があります。また電波状況によっては、安定した中継ができない場合もございますので、ご了承ください。

【IWJ・Ch5】13:00~「有害化学物質PFAS汚染の原因究明・立入調査・排出停止を求める市民集会」
視聴URL: https://twitcasting.tv/iwj_ch5

 「米軍基地PFAS汚染に関する横須賀市への要請18団体」主催の集会を中継します。これまでIWJが報じてきたPFAS関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/pfas
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【IWJ・エリアCh1・大阪】14:00~「とめよう!改憲 とめよう!大軍拡『防衛3文書』を斬る! 憲法講演会 ―講演:青井美帆氏(学習院大学法科大学院教授)」
視聴URL: https://twitcasting.tv/iwj_areach1

 「とめよう改憲!おおさかネットワーク」主催の講演会を中継します。これまでIWJが報じてきた改憲関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e6%94%b9%e6%86%b2

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◆昨日アップした記事はこちらです◆

統一教会から北朝鮮への資金の流れについてのIWJ記者の質問に、佐藤優氏「ビジネスの浮いたお金が兵器開発に使われた可能性はある」~12.14「ウクライナ戦争」「旧統一教会に関連しての宗教と政治について」東京大地塾
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/512922

「統一教会問題は国際的な組織犯罪としての対応が必要、文科省はどこまで徹底して向き合うのか?」とのIWJ記者の質問に「まずは解散請求の要請ができるかどうかだ」と永岡大臣!!~12.16永岡桂子 文部科学大臣 定例記者会見
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/512956

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■「米中の衝突は広範な分野と地域にわたって数年から数十年継続し、一方が戦いを放棄し、他方への従属を認めたときにのみ終了できる」! 高強度戦争になれば「中国は日本軍に対する大規模な攻撃を検討し、戦域における米国の最も有能な同盟国の1つを機能不全に陥れることもあり得る」! ランド研究所(2022)『大国戦争の再発――米国と中国の間の体系的衝突のシナリオ』をご紹介します。

 ウクライナ紛争が継続する中、12月16日に岸田内閣によって「安保文3書」が閣議決定されました。その内容については別稿で詳しくお伝えしますが、国会で審議することもなく、閣議決定で日本の安全保障の大枠を書き換えてしまう非常に慌ただしい動きの背景には、米中対立の激化があることは明白です。

 ウクライナ紛争のシナリオを示したランド研究所の2019年のレポート『ロシアの力を使い果たさせる』は、まさに米国による代理戦争のシナリオです。IWJでは順次仮訳を進めていますので、ぜひ御覧ください。

 Extendとは、範囲・領土を「拡張する」、勢力を「伸ばす、広げる」という意味が一般的です。しかし、この仮訳では、「extend」が持つ、相手に「全力を出させる」という意味を用いることにします。相手に「全力を出させる」ことから、文字通りロシアの軍事費の支出を増やし、国力を「疲弊させる」、経済的に「力を使い果たさせる」、という意味で仮訳します。

※<検証! ランド研究所報告書>ウクライナ紛争はランド研究所の青写真通り!? 米国ランド研究所の衝撃的な報告書『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争(Extending Russia -Competing from Advantageous Ground)』の翻訳・検証シリーズ開始!(その1)サマリー(概要)の抜粋の仮訳!(日刊IWJガイド、2022.12.10号)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51634#idx-4

※米国の最も有力な軍事シンクタンクであるランド研究所による2019年のレポート『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争』には、現在進行中のウクライナ紛争の、米国の戦略シナリオが掲載されていた!? IWJは、全300ページに及ぶ報告書の抜粋仮訳を進めています!(日刊IWJガイド、2022.8.22号)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51210#idx-3

 そのランド研究所が今年(2022年)、『大国戦争の再発――米国と中国の間の体系的衝突のシナリオ(仮訳、The Return of Great Power War ――Scenarios of Systemic Conflict Between the United States and China)』と題するレポートを公開しています。ティモシー・R・ヒース、クリステン・ガンネス、トリスタン・フィナッツォによる連名報告となっています。

※Rand Corporation(2022)The Return of Great Power War――Scenarios of Systemic Conflict Between the United States and China『大国戦争の再発――米国と中国の間の体系的衝突のシナリオ)』
https://www.rand.org/pubs/research_reports/RRA830-1.html

 レポートでは、中国と米国の間の体系的な衝突のありうるシナリオが示されています。

 米中衝突は、低強度の慢性的な地域的戦争から高強度の戦争にエスカレートする可能性が高いこと、その衝突は海・陸・空だけではなく、サイバー空間と宇宙空間に及び、経済や民生の領域に及ぶ「多くの領域にまたがる米中両軍の連続的な関連性と地理的に分散した衝突」となり、数年から数十年長く続き、「一方が戦いを放棄し、他方への従属を認めたときにのみ終了可能」だとします。対等な共存はありえないと、最初から結論を決めてかかる絶望的なシナリオです。

 もう少し詳しくみると、世界各地で、特に習近平政権が進めてきた「一帯一路」上の各地域や、インド太平洋・北極海までも、低強度の「米中代理戦争」が慢性的に起き、その戦闘は、国家対国家だけではなく、内乱、非政府組織による政権転覆なども含みます。

 米中戦争は、「台湾有事」などというレベルをはるかに超えています。ウクライナ紛争でさえ、米中衝突の1コマに過ぎないのかと思わせる内容です。

 こうした低強度戦争のエスカレーションを抑えることは困難であり、いずれ米中が直接対決する高強度戦争に発展し、その時には、「インド太平洋地域全体で中国の大規模なミサイル攻撃」が行われるだろうと、レポートは予告しています。

 「米国との戦争は、おそらくアジアにおける米国の重要な同盟国との戦争を伴うだろう。中国の指導者はおそらく、中国の近くに拠点を置き、中国の脆弱な海岸を脅かすことができる高性能の軍艦や航空機などの主要な米国の軍事資産を破壊するよう軍に指示するだろうからである。米国とその同盟国がもたらす危険の重大性から、これは他のすべての脅威の優先順位を著しく低下させることを意味する」(p.127)

 レポートは、日本列島全体が中国軍の攻撃対象となり、破壊的なミサイル攻撃が行なわれる可能性があると指摘します。

 「東南アジアの米国の同盟国やパートナー、例えばフィリピン、シンガポール、あるいはその他のパートナーも、同様の目標を念頭に置いている。いずれの場合も、中国の戦争目的は、戦域全体における米国の戦闘力の破壊を最優先とするものであろう。戦争に至るまで中国と日本との確執がエスカレートし続けた場合、中国は日本軍に対する大規模な攻撃を検討し、戦域における米国の最も有能な同盟国の1つを機能不全に陥れることもあり得るだろう。その結果、地域全体の米軍と同盟軍および施設に対する壊滅的な先制攻撃から始まる広範囲な戦争になる可能性がある」(p.135)

 無理な防衛費増で、やみくもにミサイル配備を進めようとする岸田政権のあわただしい動きは、中国を打倒するために、日本をはじめとする同盟国を動員しようともくろむ米国内の動きと無関係なはずがありません。

 日本に強い影響力を行使する米国の思惑を知るためにも、IWJはランド研究所の『大国戦争の再来――米国と中国の間の体系的衝突のシナリオ』の仮訳を進めて、皆さんにご紹介していきます。

 ランド研究所のウェブサイトで示された概要の仮訳は、以下の通りです。

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「<研究課題>

1.中国が米国と体系的な衝突を起こした場合、中国の安全保障目標はどのように変化するのか?

2.そのような状況において、人民解放軍はどのように軍隊を運用し、近代化することができるのか。

3.中国軍と米軍の衝突はどこで、どのように展開される可能性があるのか。

4.中国軍のどのような特徴が、米軍との体系的な戦争を可能にし、あるいは妨げているのだろうか?

 著者らは、関連要因に関する現在および過去のデータ、予想される傾向、研究にもとづく推測を慎重に総合し、中国が世界の優位に近づいたという仮想条件下での体系的な米中衝突のシナリオをいくつか分析している。今後数年間の国際安全保障と戦争の潜在的な軌道、中国の将来の戦争に対するアプローチ、先行する大国の関連する経験、国家間戦争のパターンに関する学術・研究成果をもとに、著者らは米中間の勢力移行戦争の可能性を探っている。

 著者らは、米中間の体系的な衝突(systemic U.S.-China conflict)について2つのシナリオを描いている。

 第一のシナリオは、世界の大部分、多くの領域、そして何年にもわたって展開される低強度の衝突(Low-intensity conflict)を想定している。

 もう一つは、低強度戦争(low-intensity war)から発展した高強度戦争(high-intensity war)である。高強度戦争シナリオは、敵対国の戦闘能力を破壊するための両国の積極的な行動を想定しており、最も破壊的なレベルまでエスカレートする危険性が極めて高いものである。

 いずれのシナリオも、米中両軍が戦力を維持する一方で、さまざまな非伝統的脅威に対処し、困窮したパートナー(IWJ注:同盟国など)からの支援要請に応えるために大きな負担を強いられる、深く分裂した国際情勢の中で発生するものである。著者の分析は、中国が世界の優位に立ちつつある仮想的な衝突の状況を対象としているが、著者の発見は、現在でも潜在的な不測の事態に対する防衛計画に役立つものである。

<主要な発見>

・米中間の体系的な衝突は、おそらく全世界に広がり、サイバースペースや宇宙空間を含むすべての領域に及ぶだろう。このような衝突は、慢性的で体系的な形態をとり、場合によっては数年間継続する。衝突は、一方が戦いを放棄し、他方への従属を認めたときにのみ終了する。

・米中両軍は、戦争努力の維持、国境を越えた広範な脅威への対応、およびパートナー国の安全保障上の課題への対処を支援するための要求が競合するため、体系的な衝突において多大な負担を強いられる可能性がある。

・低強度戦争(low-intensity war)は、主にパートナー国や非国家組織を通じて行われる大規模な戦闘を特徴とする可能性がある。どちらかがこのような戦闘の決定的でない性質に嫌気がさし、戦争を終結させるためにより積極的な行動を求める可能性があるため、エスカレーションのリスクは高いままである。

・高強度戦争(high-intensity war)で米軍と戦うために、中国共産党は低コスト、低リスクの兵器と長距離精密攻撃、サイバー作戦、非正規部隊への支援などの方法に依存する作戦を好むかもしれない。

・このような戦争は、より控えめな戦争目的を念頭に置いて始まるかもしれないが、相手を支配しようとする原動力から、エスカレートする誘惑に抗することは困難であろう。戦闘は、米国の軍事力を粉砕することを目的として、インド太平洋地域全体で中国の大規模なミサイル攻撃を特徴とする可能性がある。

<提言>

・計画立案者は、中国との低強度または高強度の戦争について、より広範な不測の事態を考慮すべきであり、台湾などのような火種を越えて戦闘オプションを実行することができる。

・計画立案者は、米中衝突の見通しを、特定の一点での戦闘や衝突としてではなく、多くの領域にまたがる米中両軍の連続的な関連性と地理的に分散した衝突として考慮すべきである。このような衝突(conflict)は何年も続く可能性があり、同盟国やパートナーからの安全保障支援に対する競合する要求にすでに対処し、深刻な国境を越えた脅威にも取り組む可能性がある米軍に深刻なストレスを与えることになる。

・米国は、米中紛争のシナリオとして高強度戦争よりも可能性の高い低強度戦争への対応力を強化することを検討する必要がある。

・計画立案者は、中東やインド洋にある重要なチョークポイントを防衛し、確保する能力を確保すべきである。

・計画立案者は、同盟関係の構築と、情報の優位性を獲得し、長距離攻撃能力を緩和するのに役立つ武器とプラットフォームに焦点を当てるべきである」

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■<IWJ取材報告>「統一教会問題は国際的な組織犯罪としての対応が必要、文科省はどこまで徹底して向き合うのか?」とのIWJ記者の質問に「まずは解散請求の要請ができるかどうかだ」と永岡大臣!!~12.16永岡桂子 文部科学大臣 定例記者会見

 12月16日午前11時40分より、東京都千代田区の文部科学省にて、永岡桂子文部科学大臣の定例記者会見が開催されました。

 質疑応答にて、IWJ記者は統一教会問題について、以下の通り質問しました。

IWJ記者「全国霊感商法対策弁護士連絡会は、被害者救済法が成立した12月10日の記者会見で、『これは第1ステップに過ぎない』と述べ、児童虐待や教育の問題、海外の邦人保護、宗教法人法の改正から、政治家と統一教会との関係の問題などと並んで、北朝鮮や南米など、海外への送金、日本の国家安全保障を脅かす問題に至るまで、省庁横断的な取り組みの必要性を指摘しました。

 韓国の本部の指示で集められた、日本の統一教会の資金が、韓国の本部から北朝鮮へ送られ、数千億円もの資金が北朝鮮の核ミサイル開発に使われた可能性が指摘されています。

 統一教会問題は今後、国内の一宗教法人の問題で済ませることはできず、国際的な組織犯罪としての対応が必要になってくると思われますが、文部科学省はこの点について、どこまで徹底して向き合う覚悟でいるのか、ぜひ永岡大臣のお考えをお聞かせください」

 この質問に対し、永岡大臣は以下の通り答えました。

永岡大臣「いろいろな問題があるということは承知をしております。

 しかしながら、今、私たち、この文部科学省の中で、宗教法人法にもとづきまして、報告徴収・質問権の、これはしっかりとやっていかなければいけないということで、実行しているところでございます。

 そういう中でいろいろな問題というのは、この、私たちがやっております、『解散請求の要請ができるかどうか』というところには関わっているかと思っておりますので、まずはそちらをしっかりとやると。それで、いろいろな問題がありますね。やはり『宗教2世』の問題であるとか、あります。いろいろとそういう問題はありますね。

 しかしながら、それを文部科学省の大臣として、大くくりに『こうやらなきゃ』というような話ではないので、それはまた政府全体でしっかり考えて、対応していくということになりますので、御承知いただければと思っております」

 会見冒頭、永岡大臣からは、インターカルト日本語学校訪問(12月13日)、東北大学訪問(12月15日)」、そして、岸田文雄総理による国際宇宙ステーション(ISS)滞在中の若田光一宇宙飛行士とのリアルタイム交信への参加(12月16日)の3件について、報告がありました。

※インターカルト日本語学校ウェブサイト
https://incul-lp.com/?utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=brand&gclid=Cj0KCQiAqOucBhDrARIsAPCQL1a-7XScMfwxBZETiZHCq4x8M9DioO21b8-oetn4QV1ITO5EU8F8JwsaAitGEALw_wcB

※東北大学ウェブサイト
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/

※岸田内閣総理大臣と若田光一宇宙飛行士のISS交信(VIPコール)(JAXAイベントライブ配信専用チャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=iIVpzL4XkIA

 会見の詳細は、ぜひ全編動画を御覧ください。

※「統一教会問題は国際的な組織犯罪としての対応が必要、文科省はどこまで徹底して向き合うのか?」とのIWJ記者の質問に「まずは解散請求の要請ができるかどうかだ」と永岡大臣!!~12.16永岡桂子 文部科学大臣 定例記者会見
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/512956

■【スタッフ募集・事務班】中継スタッフやテキストスタッフと連携して、IWJの行動予定を組み立てる重要なセクションである事務班のスタッフを募集します。PC操作のスキルがあり、スケジュール調整のためにアポ取りのコミュニケーションスキルのある方、歓迎です! これまでの社会経験も生かせます! 時給は1200円からのスタートです。IWJの動画・記事のコンテンツの視聴・購読経験が一定以上あり、共感できた方に限ります。

 スケジューリングする事務班は、中継スタッフやテキストスタッフと連携して、IWJの行動予定を組み立てる重要なセクションです。PCの操作のスキルとスケジュールのためにアポ取りのためのコミュニケーションスキルは、最低限必要になります。時として動画班のように、カメラをもって取材現場に行く場合もあります。スタート時は時給1200円からで能力・実績に応じて昇給します。

 ご応募の資格は、第一に穏やかな性格で明るく協調性のある方。第二にトラブルなく対外的な交渉をできるコミュニケーション能力の高い方。第三にPCスキルがある方です。

 入社ご希望の方は、下記のURLのスタッフ募集フォームにご記入の上、履歴書、職務経歴書(書式自由)を添付の上、admin@iwj.co.jp までお送りください。

※スタッフ募集フォーム
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■【スタッフ募集・テキスト(赤反映担当)班】記者として日刊IWJガイドや記事の執筆、エディターとして編集業務を行っていただける方を募集します。特に深夜業務での校正作業を厭わない方は、優遇し、最優先で募集します! 深夜に及んだ場合は、社用車での帰宅が可能です。時給はスタート時は1300円から、能力・実績次第で昇給します。深夜業務は法にのっとった割り増し残業代を支払います。『サビ残』は一切ありません! IWJの動画・記事のコンテンツの視聴・購読経験が一定以上あり、共感できた方に限ります。

 日刊IWJガイドや記事の執筆、編集などの作業のうち、主に日刊IWJガイド校了前の赤反映業務に携わってもらいます。パソコンのスキルが必要です。時に深夜まで及ぶことがありますが、社用車での帰宅、あるいは自宅への送りが可能です。

 雇用形態はアルバイトまたは契約社員で時給1300円からのスタートになります。能力と実績次第で昇給します。正社員登用の途もあります。在宅勤務や業務委託契約も相談に応じます。残業代、深夜残業代もきっちりお支払いします。

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■【スタッフ募集・テキスト(パワポ作成担当)班】書物や資料を読み砕いていく読解力やリサーチ能力が必要とされる「岩上安身によるインタビュー」のパワポ作成に責任をもってかかわっていただける方を募集します。時給は1500円から、能力・実績に応じて昇給します。

 テキスト班で「岩上安身によるインタビュー」のためのパワーポイント作成に責任をもって携わっていただける方を募集します。時給は1500円です。雇用形態はアルバイト又は契約社員からのスタートになります。正社員登用の途もあります。業務委託契約も相談に応じます。残業代、深夜残業代もきっちりお支払いします。

 パワポ作成には、書物や資料を読み砕いていく読解力やリサーチ能力が必要なため、基礎的な学力や広範な教養・知識力が必要です。優れた人員を募集します。

 入社ご希望の方は、下記のURLのスタッフ募集フォームにご記入の上、履歴書、職務経歴書(書式自由)を添付の上、admin@iwj.co.jp までお送りください。

※スタッフ募集フォーム
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdiPIiSuiFyoVpF_HRNqdbKlIucA_Vdk6DEWqCq7mCQM6O1kw/viewform

■【スタッフ募集・動画班】岩上安身によるインタビューを撮影・編集したり、大臣会見やビデオカメラによる現場取材と中継、撮影した動画の編集を行うスタッフを募集します。PCによる動画の編集作業の基本ができる方、特にYouTubeの撮影・編集などの経験のある方を特に優遇し、最優先で募集します! 経験が少なくとも、意欲ある若い方、研修を受ければ習熟していけるとの自信や情熱がある方も歓迎です! 時給は1300円からのスタートです。IWJの動画・記事のコンテンツの視聴・購読経験が一定以上あり、共感できた方に限ります。

 動画班で、大臣会見やシンポジウムなどの中継・取材を行い、撮影した動画へのスーパー挿入やハイライトの作成等の動画編集を行うスタッフを募集します。

 PCによる動画の編集作業の経験がある方を特に優遇し、最優先で募集します。

 経験が少なくとも、意欲ある若い方、PC操作やカメラの撮影にも、研修を受ければ習熟していけるとの自信や情熱がある方も歓迎です。もちろん、必要な研修はIWJ内にて教えていきます!

 時給は経験・ノウハウのある方ならば1300円から、能力・実績次第で昇給します。超過勤務の残業手当や深夜業務による手当は法にのっとった割り増し残業代を支払います。

 雇用形態はアルバイトまたは契約社員で時給1300円からのスタートになります。能力と実績次第で昇給します。正社員登用の途もあります。定年退職(65歳)となれば勤務年数に応じ満額の退職金をお出しできるよう会社が積み立てています。

 他方、副業としての雇用や業務委託契約、外注も相談に応じます。残業代、深夜残業代もきっちりお支払いします。

 入社ご希望の方は、下記のURLのスタッフ募集フォームにご記入の上、履歴書、職務経歴書(書式自由)を添付の上、admin@iwj.co.jp までお送りください。

※スタッフ募集フォーム
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdiPIiSuiFyoVpF_HRNqdbKlIucA_Vdk6DEWqCq7mCQM6O1kw/viewform

 それでは、本日も1日、よろしくお願いします。

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IWJ編集部(岩上安身、六反田千恵、城石裕幸、尾内達也、浜本信貴、前田啓、中村尚貴)

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