2013/01/19 【千葉】「放射線対策と原発の明日」 小林泰彦さん VS 小出裕章さん  

記事公開日:2013.1.19
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 2013年1月19日(土)19時より、千葉県柏市の柏市民文化会館で「『放射線対策と原発の明日』小林泰彦さん VS 小出裕章さん」が開かれた。日本原子力研究開発機構の研究職である小林泰彦氏は、「発がんリスクは、放射能だけではなく、他の要因も考慮する」とする立場だ。「しかし、被曝は避けるべき。低線量被曝の新説では、新たなメカニズムによる危険性も言われ始めた」と講演した。京都大学の小出裕章氏は「柏市の放射能汚染は、行政の定めた放射能管理区域に匹敵する。それを放置する政府と東電は厳罰に値する。とにかく、子どもの被曝だけは避けなければならない」と話した。

■内容

  • 講演 小林泰彦氏(日本原子力研究開発機構〔JAEA〕高崎量子応用研究所 量子ビーム応用研究部門)「柏地域の子どもたちのための真っ当な放射線対策とは ~ 被害を最小にするための基礎知識」
  • 講演 小出裕章氏(京都大学原子炉実験所)「原子力利用と被曝」
  • 対談 小林泰彦氏×小出裕章氏
  • 質疑応答

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 主催者からの挨拶に続いて、小林泰彦氏の講演が始まった。小林氏は「放射能は自然の物理現象で、宇宙そのもの。日本での自然界の放射線量は2.15ミリシーベルト/年。それに医療放射線が2.3ミリシーベルト/年で、年間約4.5ミリシーベルトの放射線量である」と話し、放射線利用の現状、放射線被曝の健康への影響、放射線防護の情報の流れなどを説明した。また、放射能と発がんの因果関係について、放射能の影響を確定する難しさを語り、喫煙者のがん発症率を例に挙げて解説した。

 小林氏は「胎児では、高線量被曝より低線量被曝の方が危険だ、と言う研究もある。最近では『低線量の放射線の生物への影響は、高線量の影響の縮刷版ではない』と言われ始めた。これは、教科書を書き直すくらいの研究成果だ」とし、「生体応答の寄与が、放射線の影響を左右する。放射線が当たった細胞と当たっていない細胞が、細胞間情報伝達を行い、細胞集団全体として応答することに起因する」と、そのメカニズムを説明した。また、「外部被曝より、内部被曝の方が危険、というのは間違い」と指摘して、理由を解説した。最後に「放射能は浴びない方がいい。今後、被曝線量の測定と公開、リスク評価、そして評価に基づいた関係者との対話と合意形成が必要。お互い歩み寄り、自分たちで納得して決めることだ」とまとめて、講演を終えた。

 次に、小出裕章氏が登壇した。「ここ柏市は、放射線管理区域に匹敵する放射能汚染地域だ。これをどう考えるのか」と聴衆に問いかけ、福島第一原発の事故現場の写真を見せて解説をした。小出氏は「広島の原爆には800グラムのウランを使ったが、100万キロワット発電する原発には年間1トンのウランが必要だ。核分裂では約200種類の核生成物が生まれ、その中のセシウム137が一番危険性がある」と述べ、福島第一原発事故のセシウムの飛散量と、事故後に広がった放射性プルーム(放射性雲)の汚染状況、その経過を説明した。

 続けて、小出氏は「普段、自分は放射線管理区域で仕事をしている。そこでは飲食、睡眠はできない。出入室の際には、1平方メートルあたり4万ベクレルを管理しきい値にして、厳重に管理される。ところが、柏市全体、建物、木々などが、その数値に近い値で汚染されている」と話し、低線量被曝に話題を移して、次のように語った。「被曝量とがん発生率は比例する、というが、いろいろな説があり、広島原爆の疫学調査では、低線量被曝の方が危険という報告もある。米国科学アカデミーのBEIR-VII報告(2005年)では、『被曝のリスクは低線量に至るまで直線的に存在し続け、しきい値はない』としている。ICRPも、2007年に『100ミリシーベルト以下の被曝でも身体に影響する』と勧告している」。

 小出氏は「はたして、日本は法治国家か。国は、放射能汚染の基準改悪について、『今は、非常時だから』と言い逃れをしている。福島の原発事故を引き起こした最大の犯罪者は、政府と東電だ。そして、失われる土地、強いられる被曝、崩壊する1次産業、崩壊する生活がある。被曝による健康被害か、避難による生活の崩壊か、人々に選ばせるのか」と、政府と東電について批判した。次に、放射線によるがん死の年齢依存性について、「30歳くらいまでが、放射線の感受性が高い。そこからどんどん感度は低くなり、55歳だと依存度がなくなる。だが、子どもは依存度はとても高い。子どもの被曝は、絶対避けなくてはならない」と強調して、講演を終えた。

 後半の対談に移り、まず、コーディネーターより、放射線の安全基準値について質問が投げかけられた。小林氏は「自分の個人的立場で言うと、柏市が公表している数値では、まったく心配していない。だが、長い時間、生活をする場では、放射線の軽減を行うほうがいい」と話した。小出氏は「柏市全体、1平方メートルあたり4万ベクレルを越え、年間1ミリシーベルトになる。ゆえに、柏市民には、逃げてほしい」と答えた。

 次に、コーディネーターは「小林氏と小出氏は、同じ原子力を研究しているが、意見にだいぶ開きがある。それはなぜか」と訊いた。小林氏が「小出氏の資料には、間違いが多々ある」と、その例を挙げて指摘すると、小出氏は、専門用語を多用しながら反論した。また、小林氏は「低線量被曝によるリスクはある。そのリスクの大きさを、どうやって算出するかが課題」と話した。内部被曝について、小出氏は「内部被曝も、外部被曝も、どちらも危険。ただ、内部被曝はコントロールが難しいという点で、注意が必要だ」と述べて、これには小林氏も同意した。【IWJテキストスタッフ・関根/奥松】

■リンク
・主催 1.19 柏講演実行委員会
・告知 「放射線対策と原発の明日」小林泰彦さんVS小出裕章さん|小出裕章氏講演会情報

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