自動車損害保険の不正請求問題で社長・副社長辞任に至り、店舗前街路樹を故意に枯らせた疑惑まで噴出したビッグモーター問題について、2023年8月7日、立憲民主党による関係省庁ヒアリングが、東京都千代田区の衆議院第二議員会館で行われ、IWJが中継した。
はじめに国土交通省、金融庁、消費者庁が説明したこれまでの経緯をまとめると、以下のようになる。
2021年11月、ビッグモーター社員から「工場長の指示で過剰修理費を保険会社に請求している」旨の通報があり、2022年2月、大手損保3社(損保ジャパン、三井住友海上、東京海上日動)が調査開始。過剰請求が確認され、6月、3社は顧客への紹介を停止。
同じ6月、3社はビッグモーターに自主調査を依頼。ビッグモーターは、(1)過失が原因(連携ミス、経験不足等)、(2)組織的関与はない、(3)再発防止策(社長メッセージ等)を報告。損保ジャパンはこれを受け、7月に顧客への紹介を再開したが、新たな不正発覚で9月に紹介を再停止。
東京海上日動と三井住友海上は過失が原因との報告に納得せず、2022年8月、より深度ある調査をビッグモーターに依頼。12月、ビッグモーターは、外部弁護士による特別調査委員会を設置。2023年7月18日、委員会による「板金塗装整備における保険金請求において不適切な行為があった」旨の調査結果を公表。
報告された不適切行為の例は、ゴルフボールを靴下に入れて車体を叩いたり、損傷箇所報告の写真撮影で無傷の個所を損傷に見せかけたりするなど。原因として、不合理な目標値設定などが指摘された。
2023年7月25日、損保ジャパンは不正請求を認識できなかったことを受け、社外弁護士による調査委員会設置を発表。同日、ビッグモーター社長・副社長が辞任。
国交省は7月26日、ビッグモーター本社をヒアリング、28日に34事業場に立入検査。財務省関東財務局は7月28日、ビッグモーターにヒアリング。31日、金融庁は損保7社に、報告徴求命令(※)発出。関東財務局はビッグモーターに報告徴求命令発出。8月3日、消費者庁がビッグモーターに報告を求める。
※報告徴求命令とは、金融庁が金融機関に、不適切取引や債務超過など経営を揺るがす問題で、事実関係や財務状況などの報告を法律にもとづき要求すること。
一方、店舗前の街路樹の枯死問題に関しては、2023年7月24日に問題が報道され、26日、ビッグモーターが「全店舗の客の出入口の前後10mについては、歩道を含め雑草やごみを取り除く活動をしている」とコメント。国交省は26日、直轄国道沿いのビッグモーター店舗前の植樹の枯死状況を調査。111店舗のうち、植樹に枯死があるのは10店舗。今後、枯死箇所で除草剤が確認されれば被害届を出し、原因者が特定されれば、損害賠償等請求予定。
消費者庁は「公益通報者保護法」の説明と、ビッグモーターに関する消費生活相談件数を報告。2013年度の260件が年々急増し、2022年度は1459件に至っている。10年間で総計8627件に上る。
続いて、立憲民主党議員による質疑応答が行われた。
長妻昭政調会長が、国交省への相談や行政処分の件数、金融庁の不祥事件届け出件数などについて確認を求め、熊谷裕人(ひろと)参議院議員は、自らがビッグモーターに自動車を売った際に支払いを求められた「瑕疵担保損害保険」の問題点の確認を求めた。
城井崇(きいたかし)衆議院議員は、不正行為への金融機関、損保会社の加担可能性を指摘。その上で、板金塗装不正の、車検業務という「みなし公務員」業務への影響、金融庁の検査の甘さ、急増した消費生活相談の内容把握について質問。
小宮山泰子衆議院議員は、組織的関与の調査方法や、自動車オーナーの被害対応を質問。特に、消費者庁への相談件数が急増する中で、各相談について所管省庁が把握する仕組みや責任の所在について質問した際、各省庁の回答が不十分だったため問題視され、長妻政調会長は「(消費生活相談を主管する)消費者庁には反省はないのか」とまで厳しく指摘した。
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