高層マンション建設を巡り、建設会社である明和地所株式会社から訴えられた国立市が、敗訴して2008年に建設会社に賠償金を支払った件で、一部の住民が上原公子(ひろこ)元市長に賠償額を請求するよう求めていた裁判で、最高裁は2016年12月13日付で、上原氏の上告を退けた。これにより、上原氏に賠償金支払いを命じる高裁判決が確定した。
都市景観をめぐり、市民間で論争となった一連の訴訟は、約4500万円の賠償を当時の市長である上原氏個人に負わせるという結果になった。
この判決を受けて、元小金井市長である佐藤和雄氏ら4人は「一般社団法人 くにたち上原景観基金1万人の会」を設立。全国に呼びかけ、5000万円の基金作りに乗り出すことを、2017年2月11日発表した。上原氏個人には賠償負担をさせず、基金作りの活動を通して、今回の司法判決の誤りを照らし、住民自治運動を盛り上げていくことが狙いとした。
- 上原求償裁判・報告 上原公子氏(元国立市市長)/窪田之喜氏(弁護士、弁護団団長)
- 「くにたち上原景観基金1万人の会」発足について
社団法人設立・代表と事務局の紹介 佐々木茂樹氏(景観市民の会)/窪田之喜氏(弁護団)/山内敏弘氏(一橋大名誉教授)/斉藤駿氏(カタログハウス)/佐藤和雄氏(小金井市前市長)/事務局長 小川ひろみ氏(景観市民の会)
- 100人の「呼びかけ人」より発言
吉原毅氏(城南信用金庫相談役)/鎌田慧氏(ジャーナリスト)/小林緑氏(国立音大名誉教授)ほか
- 各地域の勝手連より
ひろ子がんばれネット/景観と住環境を考える全国ネットワーク/昭島・市政ウォッチンング/市民ネットワーク千葉県 ほか
- 歌による応援 ドラゴンママDRAGON MAMA(室田清子氏)
- タイトル “その4,500万円!元市長ひとりに払わせない!!”「くにたち上原景観基金1万人の会」発足&報告集会
- 日時 2017年2月11日(土・祝)18:00〜20:00
- 場所 さくらホール(東京都国立市)
- 主催 くにたち大学通り景観市民の会/くにたち上原景観基金1万人の会準備会(詳細)
「『国に逆らう自治体、政治家は潰します』という前例に国立市民が使われてしまった」――上原氏が市民への萎縮効果を懸念
上原氏は、「『国に逆らう自治体、政治家は潰します』という前例に国立市民が使われてしまった」と悔しさをにじませ、今後市民の意志を受け止めて政治活動をする首長が萎縮するのではとの懸念を募らせた。
▲2月28日が支払期限とする支払通知書を手に説明する上原公子・元国立市長
弁護団団長で「一般社団法人 くにたち上原景観基金1万人の会」理事の一人でもある窪田之喜(ゆきよし)弁護士は、「(今回の判決は)明らかに地方自治を軽視、無視している。このようなやられ方をすると、本当に市民、県民によって選ばれた首長がしっかりと頑張り切ることができるだろうか。萎縮効果はすごいものだと思う。裁判所がとった態度は明らかに恫喝です。絶対これを許してはいけない」と訴えた。
「憲法の精神を本当に受け止めていればこんな判決は起きないはずだ」――「くにたち上原景観基金1万人の会」窪田之喜(ゆきよし)理事が裁判所を糾弾!
さらに窪田氏は「財産権は、これを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める」とある憲法第二十九条に触れた。その上で「上原さんたち国立市民が主張したことは、景観を守るという公共の福祉に、財産権が従属するのだということを主張した。僕らが(今回の)高裁判決に悪意を感じるのは、そういうことを言って(市民が)頑張ること自体に対して、不快感を示したのだと思う。憲法の精神を本当に受け止めていればこんな判決は起きないはずだ」との見方を示し、裁判所の態度を厳しく断じた。
▲被告弁護団団長で「一般社団法人 くにたち上原景観基金1万人の会」理事である窪田之喜(ゆきよし)氏
大企業や政府などの優越者が、公の場での発言や政府・自治体などの対応を求めて行動を起こした権力を持たない個人・市民・被害者に対して、威圧的、恫喝的あるいは報復的な目的で起こすスラップ訴訟。IWJはこのスラップ訴訟についても焦点を当てている。株式会社DHC(本社・東京都港区)と同社の吉田嘉明代表取締役会長から名誉毀損で訴えられた澤藤統一郎弁護士のケースについても取材を行っている。こちらもぜひ、あわせてお読みいただきたい。