「賠償金あるだろ」という脅し文句――被害生徒が最も訴えたかった言葉を教育委員会が「墨塗り」に! 150万円もの「恐喝」をいじめ認定すらしない横浜市と教育委員会に怒りの声!! 2017.1.26

記事公開日:2017.1.27取材地: テキスト動画
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(取材・文:城石エマ 記事構成:岩上安身)

 原発事故で福島から横浜市に自主避難してきた中学1年生の男の子が、小学生のときに、同級生に総額150万円もの大金を巻き上げられてきたとされる問題で、横浜市教育委員会が第三者委員会の報告を受け、2017年1月20日、「いじめと認定するのは難しい」との、信じがたい見解を発表した。

 「関わったとされる子どもたちが『おごってもらった』と言っていることなどから、いじめという結論を導くのは疑問がある」

 150万円もの大金を不当に脅し取られていたら、これは明らかに恐喝事件である。被害者も加害者も未成年とはいえ、「いじめ」というレベルすら超えるその悪質性は、看過していいものではない。にもかかわらず、「いじめ」とすら認定できないとした岡田優子教育長の発表に、横浜のみならず、全国から疑問の声があがっている。

 「これがいじめでないなら、横浜市教育委員会にとって何がいじめなのか!?」

 批判の声を受け、林文子横浜市長は1月25日、急遽記者会見を開き、岡田教育長の発言について「丁寧に趣旨を伝えるべきだった」として謝罪した。

 しかし、依然として150万円の「おごり」についてはいじめと認定されておらず、教育委員会は「第三者委員会の報告を尊重する」との姿勢を崩さない。

 「いじめ」と認定せず、「おごり」と認定するということは、支払わされた被害者の少年の自主的な行為とみなすということである。

 だが、常識で考えて、自分で働いてお金を稼いでいるわけではない小学生が、150万円もの大金を自分の意思で喜んでふるまえるわけがないのは、明白である。「おごられた」側からの強制性がなければ、起こりうるわけがない。横浜市と同市教育委員会、そして第三者委員会は、その程度の常識も持ち合わせないのかと、驚かざるをえない。

 横浜市と教育委員会の「異常」としか思えない対応に、ついに横浜市民が立ち上がった。

 子どもをもつ親、元教師、その他市民たちによって立ち上げられた「横浜いじめ放置に抗議する市民の会」は1月26日、横浜市庁舎にて、林横浜市長と岡田教育長に宛てて、署名と要望書を提出した。

 要望書は、被害生徒が150万円を払わされたことを「いじめ」と認定すること、再調査に乗り出すこと、被害家族への誠意ある謝罪を実現することを求めた。署名は、ネットと直筆を合わせ1898通になった。

▲署名と要望書を受け取った横浜市秘書課担当者

▲署名と要望書を受け取った横浜市秘書課担当者

■ハイライト

  • 日時 2017年1月26日(木) 10:30~
  • 場所 横浜市庁舎(神奈川県横浜市)

「誰か死んじゃわないと、分からないの?」――我が子を思う親たちが横浜市と教育委員会にあてて署名と要望書を提出!

 「今の横浜市教育委員会の委員の中に、被害児童を抱きしめてあげたい、死なないでくれてありがとう、助けてあげたい、本気でそう思う委員はいないのではないかと思います」

 市民の会共同代表の井上菜穂子さんは、記者会見にのぞみこのように述べた。

▲市民の会共同代表の井上菜穂子さん

▲市民の会共同代表の井上菜穂子さん

 重要なのは、被害生徒が昨年11月15日、代理人を通して手記を発表した、その内容だ。

 そこには、「ばいきんあつかいされて、ほうしゃのうだとおもっていつもつらかった。福島の人はいじめられるとおもった」と、原発事故をきっかけとしていじめが行われていた事実が、被害当事者からはっきりと明かされていたのである。さらに被害者は、何度も自殺を考えたことまで明らかにしている。

 「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」

 ここまで明白な被害者の訴えがあるのに、恐喝事件が「いじめ」とすらも認定されないとは、いったいどういうことなのか。

 「150万円をいじめと認定できないという岡田教育長の言葉を、今まさにいじめにあっている子どもたち、いじめている子どもたち、そして福島や被災地に暮らす人々は、どう思うのでしょうか?」

 記者会見で井上さんは、語気を強めてそう訴えた。

 小学校2年生と幼稚園生の女の子を子どもに持つ、共同代表の高野由紀子さんは、時折、声を詰まらせながら次のように述べた。

 「今回の被害者は、自殺していてもおかしくなかったはずです。自分の子どもに置き換えたら本当に辛い。教育委員会はあまりにおかしすぎる。誰か死んじゃわないと、分からないのでしょうか?」

▲共同代表の高野由紀子さん

▲共同代表の高野由紀子さん

 記者会見後、市民の会は横浜市教育委員会総務担当者へも同じく要望書を提出した。「受け取った要望書は、きちんと定例会などで議題にされますか?」との問いに、担当者は「そこはなんとも…」と言葉を濁した。

 この訴えを議題として取り上げない教育委員会とは、いったい何のために存在するのか?

▲共同代表の沼田美紀さん(左)から要望書を受け取る横浜市教育委員会の総務課担当者(右)

▲共同代表の沼田美紀さん(左)から要望書を受け取る横浜市教育委員会の総務課担当者(右)

「賠償金あるだろと言われた」――被害生徒が最も訴えたかったはずの言葉が教育委員会によって「墨塗り」に! 井上さくら市議、「教育委員会は隠している」

 今回の「いじめ」は、2011年3月11日の原発事故によって自主避難を余儀なくされたことによって起きた「いじめ」であった。

 しかし、横浜市教育委員会は、この「いじめ」が原発事故によって引き起こされたものであることを、隠してしまった。

 第三者委員会の報告書の中に書かれた、「賠償金あるだろと言われ、抵抗できなかった」という被害生徒の主張のもっとも肝心な部分を、教育委員会は一般公開の際に黒塗りにしてしまったのだ。

 横浜市教育委員会の人権教育・児童生徒課長の半澤俊和氏は、IWJの取材に対し「個人情報保護条例に基づき黒塗りにしている」と答えたが、これについて横浜市会で「こども青少年・教育委員会」の常任委員を務める井上さくら市議(無所属)は、教育委員会への不信感を隠さなかった。

 「『賠償金あるだろと言われた』というのは、150万円がどういう経緯で取られたかを示しているところなんです。個人情報ではなく被害者側が一番訴えたいところなわけじゃないですか。墨を塗ったのは教育委員会。非常に確信犯的です。お金をどういう状況で取られたのか、原発で避難してきた子どもがこういう目にあった、というところを教育委員会が隠している」

▲井上さくら横浜市議

▲井上さくら横浜市議

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