「何を言ったか聞こえない! 裁判官はもう一度出てきて説明してくれ!」
「安倍政権と同じじゃないか!」
「海老名駅前自由通路訴訟」(通称マネキン訴訟)の第三回口頭弁論が2016年12月12日横浜地裁で行われた。
第三回口頭弁論は、原告の訴訟代理人である大川隆司弁護士が意見を述べている途中にもかかわらず、裁判官がそれを制し、わずか2分で閉廷。裁判官は、本件は本日で結審し、来年2017年3月8日に判決を下すと告げると、すぐに退室した。
法廷内は一時騒然とし、約40席の傍聴席を埋め尽くしていた市民からは、怒号が飛び交った。裁判所の職員から「閉廷しましたので退室してください」と注意をされるも市民の怒りはおさまらず、最後には大川氏が「ここで騒いでもしょうがありませんので」と、なだめる場面もあった。
神奈川県海老名市の海老名自由通路で2016年2月28日、「マネキンフラッシュモブ」と呼ばれるアピール活動が行われた。参加者らは「アベ政治を許さない」「自由なうちに声を上げよう」などと記したプラカードを持って数分間マネキンのように立ち止まってポーズを取るパフォーマンスを実施した。
これに参加した同市議会議員・吉田美菜子氏に対し、内野優・海老名市長は、「海老名市駅前自由通路設置条例」に違反するとして「禁止命令」を下した。これに対し、市長の禁止命令は違憲だとして、市議と市民団体メンバーらが市を相手取って命令の取り消しを求めたのが、「海老名駅前自由通路訴訟」である。憲法が定めた「表現の自由」をめぐる裁判として注目されている。
▲第三回口頭弁論の前に行われたマネキンフラッシュモブ(横浜地裁前)
- 日時 2016年12月12日(月) 11:00~
- 場所 横浜市開港記念会館(神奈川県横浜市)
- 主催 アーティクル21(原告)、マネキンフラッシュモブ@かながわ
「裁判所自身のスタンスとして、『表現の自由を制限するような法令に対しては慎重であるべきだ』という理解が全くない」大川隆司弁護士
口頭弁論後の報告会では、大川氏は、驚きの気持ちを示し、次のように説明した。
「この訴訟で被告側(海老名市長側)の法律上の主張が出てきたのは今日が初めて。『被告の主張に反論する用意があります』と言ったが、それも聞かずに今日、結審。当たり前の話ですが、原告、被告の法律上の主張を尽きさせた上で、公平な立場で審議するというのが裁判所の役どころ。『まだ主張があります』と言っているのに、『聞かなくてもわかっている。もうここで審議は終わり』と言う出方を裁判所がすること自体、異常です」
続けて大川氏は、「裁判所が『表現の自由』というものに対して、敵意を自ら持っているという感じがする」と述べ、「被告の主張がどうあれ、裁判所自身のスタンスとして、『表現の自由を制限するような法令に対しては慎重であるべきだ』という理解が全くない」との見方を示した。
その上で大川氏は、「3月の判決がどういうものであれ、当然、高裁に進む。憲法問題が絡むことであれば最高裁に進む。そこまで視野に入れて私たちは運動を進めている。一つひとつの現象に一喜一憂しないで、遠い先を見据えて、この裁判の意義というものを腹に収めていただきたい」と訴えた。
▲原告訴訟代理人である大川隆司弁護士
IWJは『海老名駅前自由通路訴訟』に関して、提訴の段階から継続して取材を行っている。「表現の自由」に係る、この訴訟が持つ重大な意義とその背景にある海老名市政の問題については、ぜひ下記の記事を併せてお読みいただきたい。
「表現の自由」を敵視する裁判所の姿勢は、自民党が掲げている憲法改正草案の「先取り」にも思える。自民党改憲草案が「公益及び公の秩序」のために、いかに「表現の自由」を抑圧しようとしているかについては、『前夜』をぜひお読みください。
裁判所自身が『表現の自由』に対して敵意を持っている感じがする」――『海老名駅前自由通路訴訟(通称マネキン訴訟)』 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/351812 … @iwakamiyasumi
元裁判官・瀬木比呂志氏が言うように日本の裁判所は「市民の支配のための装置」なのだろう。
https://twitter.com/55kurosuke/status/831441161399070720