元軍人や軍人の家族、賛同者で構成されるベテランズ・フォー・ピース(平和を求める元軍人の会)。そのメンバーで米軍出身の2人と東京新聞論説編集委員である半田滋氏によるシンポジウム「戦争のリアリティとは?~『駆け付け警護』『宿営地共同防護』を前に、米国の元軍人と考える」が、2016年11月17日(木)、東京都千代田区の弁護士会館で行われた。
(取材・文:城石裕幸)
元軍人や軍人の家族、賛同者で構成されるベテランズ・フォー・ピース(平和を求める元軍人の会)。そのメンバーで米軍出身の2人と東京新聞論説編集委員である半田滋氏によるシンポジウム「戦争のリアリティとは?~『駆け付け警護』『宿営地共同防護』を前に、米国の元軍人と考える」が、2016年11月17日(木)、東京都千代田区の弁護士会館で行われた。
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■ハイライト
自衛隊の新任務「宿営地共同防護」と「駆けつけ警護」について、先月(10月)24日、防衛省は陸上自衛隊第9師団(青森)の岩手県岩手山演習場での訓練の様子を報道陣を呼んで公開したが、武器使用の場面はなかった。その事実を明かした半田氏は、「前日(23日)、稲田防衛大臣が(同演習場を)視察した際には自衛隊と群衆が撃ち合う場面もあった。報道機関を通じて自衛隊が海外の人と撃ち合う姿を見せた場合、南スーダンPKOから撤退すべきだという話になることをおそれたのではないか」との見方を示した。
また、政府は「駆けつけ警護は原則邦人保護のため」だとしているが、現地には、大使館員と国連職員の日本人が20名足らずいるだけだ。半田氏は「厳重な警戒のもとにある大使館員や国連職員に対して、およそ自衛隊が駆けつけ警護をする場面はないだろう」と語った。
そのうえで、「むしろ危険なのは宿営地共同防護のほうだ。現地では雨季が明けて乾季に入る。2013年12月にマシャール副大統領派が蜂起したのもこの季節だった。国連の報告書を見ると、『南スーダンは非常に不安定化している。特に危ないのが(自衛隊のいる)ジュバのまわりだ』と書いてある。日本政府が検討すべきは新しい任務の付与ではなく、治安状況を冷静に判断していつ撤収させるかということではないか」と危惧した。
日本政府は南スーダンの治安について、冷静な判断ができているのか。10月8日に現地を視察した稲田朋美防衛相は「ジュバの状況は落ち着いている」と国会で答弁しているが、防衛省が出した「ジュバ市内の情勢」というペーパーはすべて黒塗りで提出された。さらに、稲田大臣の認識に反し、国連のアダマ・ディエン事務総長特別顧問は今月11日、ジュバで会見を開き、内戦はジェノサイドに発展する恐れがあるという懸念を示している。
さらに半田氏は、自衛隊の現地での活動について一般にあまり知られていない点を次のように指摘した。
「稲田防衛相が現地を視察した際、雨で道がぬかるみ車が思うように進めず、移動に大変な時間がかかった。だが、そこは自衛隊が最近簡易舗装の工事をしたばかりの道路だった」
つまり、せっかく自衛隊が道路を整備しても、雨季の間にたちまち簡易舗装は流され、ぬかるんだ穴だらけの悪路に逆戻りしてしまうのだ。
「まるで『賽の河原』だ」と、半田氏はこう続けて語った。
「石を積み上げても積み上げても鬼が来て崩してしまう。稲田大臣はそれに気付くべきだった。しかし彼女は『新任務を付与する』ことで頭がいっぱいで、そこまで思いが及ばなかったのだろう」
2001年の9.11同時多発テロをきっかけに、米陸軍攻撃部隊の特殊部隊に入隊したロバート・ファニング氏。聴衆の前で自身の経験を語り、「米軍によって世界がより危険な状態になっていった」と、「世界を安全な場所にしたかった」という思いとは裏腹な15年だったことを明かした。
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