電通強制捜査で罰金や責任者の処罰の可能性! 元東京地検・落合洋司弁護士に訊く~元博報堂社員で『電通と原発報道』著者の本間龍氏と元東電社員の一井唯史氏に岩上安身がインタビュー 2016.11.10

記事公開日:2016.11.11 テキスト
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(取材・文 城石エマ)

 「土日も出勤しなければならないことがまた決定し、本気で死んでしまいたい」

 異常な長時間労働を強いられていた、広告大手・電通の新入社員、高橋まつりさんはそうつぶやき、2015年12月25日に社員寮から投身自殺した。彼女の自殺は、2016年9月30日、三田労働基準監督署に過労死と認められた。

 電通で過労死が問題になったのは、これが初めてではない。1991年には入社2年目の大嶋一郎さんが過労自殺し、2000年に最高裁が電通側の責任を認める判決をくだした。その後2013年にも30代の男性社員の病死が過労死と認められた。

 電通の過労死については、IWJ代表の岩上安身が、元博報堂の営業マンで、『電通と原発報道』『原発プロパガンダ』著者の本間龍氏にインタビューを行っている。本間氏は、会社のプレゼンの直前には、3日間の徹夜を強いられるような労働環境だったことを明かした。

 社員の過労死を繰り返しても、電通の労務実態は改善しないのか――。2016年11月7日、東京・汐留の電通本社ビルと3支社に厚生労働省の労働局と各地の労働基準監督署が強制捜査に入った。

 電通という巨大な「ブラック企業」に、ついに捜査のメスが入った。このタイミングで、岩上安身が11月11日に、本間氏へインタビューの後編を行う。今回の捜査の件についても、くわしくお聞きする予定である。

★岩上安身による「電通と原発報道――巨大広告主と大手広告代理店によるメディア支配のしくみ」著者 本間龍氏インタビュー 続編
[日時]2016年11月11日(金)14:30~

 過重労働の問題は、広告業界だけの問題ではない。東電では、社員の一井唯史さんが、福島第一原発事故の損害賠償業務を担当する中でうつ病を発症し、労災申請をした。睡眠時間が毎日3~4時間になることもあったという。

 一井唯史さんには、岩上安身が11月14日にインタビューを行う予定である。こちらのインタビューにもぜひ、ご注目いただきたい。

 過労で心や身体を壊す人が跡を絶たない中、今回の電通への強制捜査はどのような効果をもたらすだろうか? IWJは、元東京地検検事の落合洋司弁護士に操作の見通しについて話をうかがった。

記事目次

捜査次第で会社に罰金請求、労務管理者らは責任を問われる可能性が――元東京地検検事・落合洋司弁護士が分析!

――電通は過去にも過労死が何件も出ています。今回の捜査で違法性があると認められる可能性はどの程度あるのでしょうか?

落合弁護士「過労死というより、法定労働時間を超過して働かせていた、そこが問題です。ABCマートやドン・キホーテも違法残業で立件され、罰金で処理されました(※)。会社の責任が認められれば、電通に罰金を払わせることになるでしょう。すごく重い処罰になるときは、きちんと刑事的に立件して、書類送検して、世間に対して責任があることを知らしめることになります」

※労務管理の責任者だった店長や役員らの書類送検も行われた。

――罰金はどのくらいの額になるのでしょう?

落合弁護士「ABCマートとドン・キホーテの2件は、各社50万円でした。相場はそのくらいです」

――社長の責任が問われる可能性はありますか?

落合弁護士「捜査の対象にはなっているでしょう。ただし、上にいけばいくほど、個々の現場については把握できていないはずです。刑事責任というのは、具体的に把握している故意犯でなければいけないので、故意に法定労働時間を超えて労働をさせていたとならなければ、刑事罰にはなりにくい。そうすると、社長など、現場から遠い人たちには及びにくい面があります。

▲落合洋司弁護士

▲落合洋司弁護士

 だからこそ、組織罰の議論がさかんになっています。例の福知山線脱線事故(2005年)でも、個人の責任だけで、会社自体の責任は刑法で処罰されませんでしたから」

――責任を問われるとすれば、どのような人たちが問われるのでしょう?

落合弁護士「労務管理をやっていた人とか、役員とか、役職者であれば、責任を問われる可能性はあります。ただ、その人たちが公判請求をされるかというと、そこまではいかない可能性が高いでしょう」

――電通では過去にも過労死や自殺がありました。2000年には最高裁が会社の過失を認める判決を出しています。そういうものが、今回の捜査に与える影響はありますか?

(…会員ページにつづく)

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