【IWJ検証レポート】安倍総理がトランプに売り込むリニアの正体!! リニア実験線で実証された自然破壊と健康被害!! 〜IWJが超党派議員団の視察に密着!!

記事公開日:2016.9.2取材地: テキスト動画独自
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(取材・文:城石裕幸)

「トランプ大統領のリーダーシップによって、今後、高速鉄道など大規模なインフラ投資が進められるでしょう。日本の新幹線を一度でも体験した方がいれば、そのスピード、快適性、安全性は御理解いただけると思います。最新のリニア技術なら、ここワシントンD.C.からトランプタワーのあるニューヨークに、たった1時間で結ばれます。日本はこうした高い技術力で大統領の成長戦略に貢献できる。そして、米国に新しい雇用を生み出すことができます」

▲日米協同記者会見での安倍総理とトランプ大統領(首相官邸HPより)。

▲日米協同記者会見での安倍総理とトランプ大統領(首相官邸HPより)。

 2017年2月10日午後(日本時間11日未明)、ドナルド・トランプ米大統領とホワイトハウスで会談した安倍晋三総理大臣は、米国内での交通インフラ整備を急ぐ方針を示したトランプ大統領に対し、日本のリニア高速鉄道の売り込みをここぞとばかりにはかった。

 10兆円を超える巨額資金と約30年をかけて建設される「リニア中央新幹線計画」。今まで建設された他の新幹線と違い、事業主体であるJR東海が、「純民間プロジェクト」として建設・営業・資金負担をすべて自社でやるということで申請し、認可された。

▲山梨リニア実験線 中央自動車道富士吉田線を横断する小形山架道橋(ウィキペディアより)。

▲山梨リニア実験線 中央自動車道富士吉田線を横断する小形山架道橋(ウィキペディアより)。

 民間が事業主体となるため、国会による審議や検証の対象にならない。しかし政府は2016年9月26日、全線開業の8年前倒しと、国の低利貸し付け制度である財政投融資3兆円をJR東海へ投入するための関連法の改正案を閣議決定。認可の前提だった「純民間」で、国民の税金を使わない。という約束は、いとも簡単に反故にされ、結局のところ国民の税金が投入されるいい加減さに、野党からは反発の声があがっている。

 JR東海が事業主体となり、「純民間」をうたったのは、要するに国会からの厳しい監視の目から逃れるための「偽造工作」であり、政府とJR東海は、はじめから事業予算が膨らんで税投入がなし崩し的に行われることを、当初から見越していたのではないかという疑いも強まっている。

 しかしこのリニアの問題は、JR東海という大スポンサーが関わるため、広告に依存している大手マスコミはほとんどその問題点に触れようとしない。マスコミ界の大きな「タブー」となってしまっている。

 2016年8月31日、「公共事業チェック議員の会『リニア新幹線』視察議員団」が山梨県内でリニア中央新幹線建設予定地の視察を行った。

 視察は、山梨県や東京都、神奈川県在住の市民団体による「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」と議員団との議論の中で実現したという。同行取材のメディアやジャーナリストも含め、一行は、市民団体側が問題のある場所へ議員団を案内するという形で、大型バスに乗って山梨県内6カ所を1日がかりで視察した。

▲山梨県内のリニア実験線と中央新幹線予定ルート(JR東海ホームページより)

▲山梨県内のリニア実験線と中央新幹線予定ルート(JR東海ホームページより)

 また、この日同行したジャーナリストの中には、2015年4月に岩上安身がインタビューを行った樫田秀樹氏の姿もあった。樫田氏にはIWJへの寄稿も頂いている。こちらもあわせてお読みいただきたい。

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▲公共事業チェック議員の会『リニア新幹線』視察議員団参加者左から山添拓参議院議員(日本共産党)石井苗子参議院議員(日本維新の会)畑野君枝衆議院議員(日本共産党)本村伸子衆議院議員(日本共産党)初鹿明博衆議院議員(民進党)穀田恵二衆議院議員(日本共産党)阿部知子衆議院議員(民進党)井上哲士参議院議員(日本共産党)島津幸広衆議院議員(日本共産党)

記事目次

■ハイライト

  • 参加議員 (日本共産党)本村伸子氏、穀田恵二氏、畑野君枝氏、島津幸広氏、井上哲士氏、山添拓氏、(民進党)初鹿明博氏、阿部知子氏 、(日本維新の会)石井苗子氏
  • 日時 2016年8月31日(水) 8:30~随時中継
  • 場所 山梨県大月市、笛吹市、甲府市、中央市、南アルプス市、早川町

民間事業の宣伝施設を山梨県が作っている!?山梨県立リニア見学センター「どきどきリニア館」〜都留市

 最初に一行が訪れたのは、山梨県立リニア見学センター「どきどきリニア館」。ここはその名の通り山梨県が県の税金を使ってJR東海の事業を宣伝するために立てた施設だ。館内にはミニリニアやジオラマ、超電導リニアの仕組みを解説する装置などが展示されている。真横を実験線が通っていて、この日も実際に走る姿を見ることができた。

▲山梨県立リニア見学センター「どきどきリニア館」

▲山梨県立リニア見学センター「どきどきリニア館」

 施設を見学した日本共産党の山添拓参議院議員は「一企業の事業を県がここまで推進してPRしているのは、なんだか不思議な話だ」と、また、同じ日本共産党の畑野君枝衆議院議員は「ここへだけ来ても地域への影響も何もわからない。デモンストレーションでもないし、ただのイメージアップですね」と、感想を語った。

▲山添拓参議院議員(日本共産党)

▲山添拓参議院議員(日本共産党)

 民進党の初鹿明博衆議院議員は、「財投債(国債の一種)1兆5000億円を出すことを補正予算で決めるわけですからね。それなのにJR東海は公共事業じゃないという。これ(見学センター)だって県立でこういう施設を作っているということですからね。相当に公的な支援を受けていることは間違いない」と語り、私企業の事業だと言いながら実際には国策として国民の税金が投入されることに懸念を示した。

 そもそも民間事業だと言いながらも、リニアは「全国新幹線鉄道整備法」という国策に従って審議された中央新幹線計画にもとづいて行われる事業であり、JR東海も用地取得や残土処理については地方公共団体の協力なくしては進まないと考えているはずだ。そのときどきで「民間事業」と「公共事業」という立場を都合よく使い分けようとするJR東海の態度の一端が垣間見えた。

■山梨県立リニア見学センター

【解説】
 「公共事業チェック議員の会」事務局長である初鹿議員の話によると、事前にJR東海に今回の見学会の案内と説明を要請したが、JR東海は「公共事業ではないので、対応しません」と拒否したという。国民の血税を使いながら、国民の代表者である国会議員のチェックを受けないという態度のあらわれなのだろう

▲ミニリニアに乗る初鹿議員、阿部議員

▲ミニリニアに乗る初鹿議員、阿部議員

実験線の高架真下に位置する農家!日照被害の補償は30年間でたった500万円弱!〜笛吹市

 続いて一行が訪れたのは、笛吹市で果樹農園を営む雨宮融さんの自宅兼作業所。家の真上をリニア実験線の巨大な高架が通る。見上げるとかなりの圧迫感だ。

▲農家の真上を通るリニア実験線の高架

▲農家の真上を通るリニア実験線の高架

 作業所内で、雨宮さんは議員団にこう語った。

 「ここに住んでいて一番大きな問題は日陰。11月15日くらいから1月いっぱい、まるまる2か月間は建物に全然陽が当たらない

 雨宮さんには夫婦2人分の補償として、JR東海から灯油代・光熱費などの暖房費が支払われた。その額は30年間で500万円以下(1ヶ月で1万円ちょっと)。地方の大きな農家である雨宮さん宅を見ると、とても十分な金額とは思えない。

 雨宮さんは議員団に「情けない金額だ。30年間でそんな金額、納得できない。毎日毎日、(秋になって)日陰が迫ってくるのを見ていてストレスになり、円形脱毛症になった。そういうストレスの補償なんか、全然ない」と訴えた。

 また、日照不足により、池の水温が下がり、そのショックで飼っていた鯉が20匹くらい全部死んでしまったという。

 日照は、ブドウ栽培にも大きな影響を与えていて、生育不足についてJR東海からは十分な調査も真摯な補償もされていないことに雨宮さんは憤る。

▲議員団に被害の説明をする雨宮さん

▲議員団に被害の説明をする雨宮さん

 被害は日照の問題だけでは済まない。雨宮さんが説明している中、その声を遮るような轟音とともに、ちょうど試験運転のリニアが通過した。

 「この実験線が将来延伸して行った時、(営業運転の本数は) 1時間に10本とも言われている。それが上り・下りになると、こんな音じゃ済まない。車輌も新幹線並みに12輌とかになる。音量も通過時間も、もっとひどくなる。磁場の問題に関しても、測ってもらったことがあるが、その数字を見ても本当のところがよくわからない

 そして雨宮さんは、議員団にこう語った。

 「我々も実験線みたいなものだ

■笛吹市

沢の水が枯れ、トンネル出口から溢れ出した水が毎分30トン!住民説明会なく進む営業線計画

 一行は雨宮さんの案内で近くの御坂トンネルの出口付近を訪れた。

 この先の山では、約10km続く御坂山地を貫くトンネル工事のため、沢の水が枯れてしまった。そしてその水が毎分30トン、このトンネル出口付近から溢れ出したため、水路を作って川へ流している。水路はザァザァと大きな音を立てている。流れが速い。

 山の水の流れが変われば、自然界への影響も大きい。雨宮さんはこう説明した。

▲トンネル工事によって毎分30トンの水が出たために作られた水路

▲トンネル工事によって毎分30トンの水が出たために作られた水路

 「沢に水がなくなったので、サワガニを始め、いろんな動植物が全部ダメになった。生態系がだいぶ変化している。今までいたトンボなんかもほとんど見かけなくなった。そしてイノシシとかシカ、山の動物が水を飲みに人里に下りてくるようになったため、この辺りは農作物への被害が大きい」

 被害はそれだけでは済まない。雨宮さんによると工事によって、水脈だけでなく気流も変化しているという。

 「ここは桃の栽培地帯ですから。桃に、風で運ばれてくる病気が増えてきている。目に見えない被害が、相当あると思う」

 実験線が営業線になるにあたっては、地域への同意も説明会なども何もなく、なし崩し的に計画が進んでいるという。雨宮さんは「あくまでも実験線は実験線。私たちの地域では営業線には反対している」と語った。

■御坂トンネル

 山梨県のリニア実験線が着工されたのは1990年(平成2年)だった。開設されたのは1996年(平成8年)のことである。それまでの宮崎県での実験線の成果を受け、当時の石原慎太郎運輸大臣のもと、将来的に営業線に転用できる見込みも視野に、1987年(昭和62年)、新実験線の候補地選定に入った。山梨への誘致には元自民党副総裁である故・金丸信氏が大きな役割を果たしたとされる。

 山梨県は、134億円の無利子貸し付けおよび工事に際して発生した残土の廃棄場など総額200億円ほどの支出を行った。総延長42.8キロメートルの実験線全線が完成したのは2013年(平成25年)である。

山梨県駅予定地は地盤の弱い地震の巣!しかも雨が降れば水没する地盤沈下地帯!近隣農家には浸水に備えて舟がある!?〜甲府市

 次に一行は山梨県駅の建設予定地である甲府市を訪れた。施設の一部が路線の予定地にふくまれているという山梨県工業技術センターの6階で、議員団を出迎えた甲府市議会議員の山田厚氏(社民党)が説明を始めた。

 「甲府盆地の一番低いところが、ここになります。盆地の水が砂と一緒に溜まった沖積層といって、かなり地盤が弱いところです。向こうに見える盆地の山の裾野のところは、曽根丘陵活断層群と呼ばれています。駅から活断層群まで約1.5km。そして活断層群ともクロスして走るように、ルートが決まっています

 つまり、地震の巣のような場所に巨大な駅を立てようという計画だ。さらに山田氏は衝撃的な話を続けた。

 「ここは地盤沈下地帯に指定されています。毎年3〜4ミリ、約20年間で6〜7センチ沈んでいるところです。地盤が非常に弱いところなので、ここには江戸時代から家はほとんど建てられませんでした。

 なおかつ、ここは川に挟まれていますから、2〜5メートルの浸水地帯でもあります。ちょっとした雨や台風で冠水してしまうことで有名です。向こうのあたりの農家では、今でも納屋に舟があるんです。すぐに冠水してしまうということで、昭和30年代までは、小学校まで舟で行ったなんていう思い出のある人がいっぱいいます。

 見渡す限り緑のところずっと、24ヘクタールが駅周辺設備になる予定で、アスファルトやコンクリートで覆われます。今は畑や田んぼだからいいですが、水が浸透しなくなると地盤沈下が進行すると言われています。

 ですからこんなところに大きな建物を建てるのは、危険です。この甲府盆地一帯は岩盤にまで30メートル以上の杭を打ち込まないと安定しないと言われていますから、ずいぶん大変な工事になります。上は30〜40メートル。下も30〜40メートルの大工事になるわけです。

 地盤沈下、地震、浸水。そういうところです

▲一面緑の水田が山梨県駅予定地。大雨が降れば水没するため近隣農家の納屋には舟がある

▲一面緑の水田が山梨県駅予定地。大雨が降れば水没するため近隣農家の納屋には舟がある

 ただでさえ巨大な駅と周辺施設を作るためには巨額の税金が必要なわけだが、ことさら難しい場所に建てるためには、いったい通常の予算の何割増しの予算が必要になるのだろうか?営業開始以降、果たしてその巨額投資に見合う売り上げが上がり、採算がとれるのだろうか?

 しかも計画はこれだけでは終わらなかった。山田氏はこう続ける。

 「高速道路の向こう側にスマートインターチェンジと駐車場を作るという話です。規模がどんどん大きくなっていきます。

 今、地元で議員さんも含めて盛り上がっているのは、この周辺に4万人規模の大サッカースタジアムを作りたいということです。(隣の)中央市も含めて、国際賭博場(カジノ)を作りたいという話も出ています

 どうやら地元では、膨大な予算をかける一方で採算も何も考慮されず、イメージだけが優先で経済効果を期待して盛り上がっている、ということのようだ。

 山田氏はさらに続けた。「全席指定で1000人(が乗るリニア中央新幹線)で、1時間に1本しか止まらないローカル駅に、4万人のスタジアムを建てても、スタンドが埋まるまでには1泊2日くらいかかりますよ

■甲府市

 平成23年(2011年)5月12日に出された国土交通省の「交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会中央新幹線小委員会」が取りまとめた答申「中央新幹線の営業主体及び建設主体の指名並び に整備計画の決定について」によると、中央新幹線整備の意義について、第一に「中央新幹線及び東海道新幹線による大動脈の二重系化をもたらし、東海地震など東海道新幹線の走行地域に存在する災害リスクへの備え」、第二に「地域が主体的かつ戦略的な活性化方策を実施することとあいまって、地域振興に寄与することが期待される」ことがあげられている。

 しかし、1854年の安政東海地震の被害報告を集めた資料である「都司嘉宣・編集『防災科学技術研究資料第36号 東海地方地震津波史料』」中の「嘉永七年寅年十一月 地震潰家取調帳」によると、「大津村 家数50軒うち3軒無事で残りはみな潰れる」との記述が見られる。大津村というのは現在の山梨県駅の予定地である。中央新幹線小委員会やJR東海が東海地震により想定される被害をどこまで真剣に検証しているか大変疑問だ。

 また、地域振興については、いわゆる「ストロー効果」による中継地駅周辺中小都市の観光客減、人口流出、経済衰退が、すでに東北新幹線、北陸新幹線沿線で現れている。

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