2016年8月3日より発足した第三次安倍第二次改造内閣。文部科学省大臣に就任したのは、今回が初入閣となる松野博一氏だ。元文科副大臣、厚労大臣政務官などを経て、今回、大臣としては初就任となる。8月3日、文部科学省記者会見室で、大臣就任の記者会見が行われた。
松野氏は当選6期16年。文科省副大臣、文科委員会理事など、主として教育関連で要職を歴任してきた。「教育が自らのライフワーク」と語る。
(取材:城石裕幸、記事:福田玲子)
※8月5日テキストを追加しました!
2016年8月3日より発足した第三次安倍第二次改造内閣。文部科学省大臣に就任したのは、今回が初入閣となる松野博一氏だ。元文科副大臣、厚労大臣政務官などを経て、今回、大臣としては初就任となる。8月3日、文部科学省記者会見室で、大臣就任の記者会見が行われた。
松野氏は当選6期16年。文科省副大臣、文科委員会理事など、主として教育関連で要職を歴任してきた。「教育が自らのライフワーク」と語る。
記事目次
■ハイライト
■全編動画
松野大臣は今回の任命にあたり、「安倍総理から、『科学技術政策は安倍内閣のもっとも重要な施策』と言われ拝命いただいた」「大きな喜びであると同時に、責任を痛感している」と語った。
教育行政は、憲法改正のための布石のひとつとして、安倍総理がもっとも力を入れている分野のひとつである。そのため、これまでは下村博文氏や馳浩氏など、総理と思想的に近い関係の議員が抜擢されてきた。松野大臣も、日本会議国会議員懇談会所属、神道政治連盟所属である。バリバリの右派といってよい。安倍総理とは思想的同士だ。
今後の方向性として松野大臣は、「前・馳大臣・下村大臣が行った大きな改革を引き継ぎ、これを仕上げていく」とする。具体的にはふたつのことを行うと語った。
「ひとつは改革に呼応する現場の環境づくり。つまり現場力を高める。ふたつめは、各家庭の教育費負担の軽減」
教育費負担の軽減について、松野氏は次のように語った。
「(教育費負担の軽減を)を社会政策として取り組みたい。家計収入400万円程度の家庭が増え、高等進学率に家庭環境で差ができている。日本はOECD加盟国の中でも、高等教育進学率が高くない。どんな環境に生まれても、子どもたちが能力を伸ばし、希望するなら高等教育を受けることができるようにしていかないといけない。
これは未来の日本への重要な投資。教育の本質は、個々の子供たちの可能性を引き出すことと考える。給付型奨学金については、与党の公約のひとつでもあり、29年度の概算要求の中にも盛り込んでいく予定だ」。
さらに、三つ目として、日本の未来の繁栄と安定を確かなものとするために「科学技術に力を入れていく。すでに5か年計画で26兆円の予算を組み、AIなどの研究開発を進めてきた。これをしっかり確実なものにしていく」と述べた。
続いて質疑に入った。まずは北海道新聞社からの質問。教育を司る大臣として、“教育観”についてたずねられると、「教育観というのは、なかなかひとことで説明できるものではない」と語ったが、
「第一義としては、個々の児童の能力と個性を最大限に発揮できる環境を与えていく、もうひとつは、良き社会人をつくる」とした。
良き社会人とは、いったに何であろうか。松野大臣は「良き社会人というのは社会参加の問題もあるが、そこにある日本人としての全員の機会創出に向けて寄与していくものと考える」と続けた。
続いて「教育現場の現場力の強化について。具体的にはどういうことか」とたずねられると、「まずは教員定数の問題」と語った。
現場での教員の絶対数が足らず、教員の長時間労働が常態化している状況への是正だが、これは「平成17年以降、教員定数は法定化された根拠ではなく、予算措置になった」ことが一因、つまりこれが、教育費予算削減からくる、自民党教育政策のつまずきであることを一応認め、「しかし、(状況を鑑みて)ある程度、法定化した中で是正される必要がある」と語るにとどめた。
加えて、具体策として、「教員ひとりひとりの指導能力の向上」「新しい科目が導入されるのでその対応」(つまり道徳科目)、「アクティブラーニングなどの導入およびこれに向けての教員らへの研修」「次期国会へ提出予定である、教育公務員特例法(略して教特法)は現在協議中。この中で、教員養成、教員として必要とされる資質の明確化、その後、現場に立つに際しての研修などを明確にし、教特報を仕上げていく予定」と述べた。
なお、“教育がライフワーク”である松野大臣のブログでは、現場の教員たちが、部活動ほか、さまざまな研修など、本来業務以外の業務が多く、長時間労働も常態化、「持続可能とはいいがたい」状況があることを認め、これに対する提言等を、全国の教員に呼びかけている(馳大臣時代には、陳情書も提出)。
次にIWJが、自民党が先月、参議院選の前日にHPで呼びかけた「学校教育における政治的中立の実態調査」について質問した。
実態調査の結果は最終的に文科省に行くと思われる。では文科省が、誰かが政治的に中立か否かをジャッジするという事態が生じるのか?つまり安保改正や、憲法改正について批判的な言動があると、政治的中立を逸脱すると判断されるのか?これについて松野大臣は、
「それは政党の政治活動の一環で、わたしは現在、行政の立場に立っているので言及は控える」というものだった。そして「強制性をもってなされているかが判断の基準になる」と付け加えた。
その他、もんじゅについては「期間的運用と考えている」、TPPについては、「日本の発展に寄与するもの」であるが、「文科省管轄である著作権法その他については、日本の現在のもので適法」とした。
わずか30分ほどの会見ゆえ、それほど深く諸事に言及できるものでもないが、教育観など教育の方向・精神性についてはあいまい、または言及しないことが気にかかった。これまでも「下村・馳体制」で教育分野に携わっていたというならなおのこと、言及できないわけはないはずだ。言及したくない、のだろうか。右傾批判は、ここは巧みにかわして、ということなのだろうか。