「安倍政治が続くと地方自治が死ぬ」──岩上安身によるインタビューで「社会を根本から変えるには地域、地方自治から」と決意表明~ 第641回 ゲスト 参院選・野党統一候補(島根・鳥取選挙区)福島浩彦氏 2016.4.25

記事公開日:2016.5.7取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

※5月7日テキストを追加しました!

 「政治は住民の幸せのためにある。経済成長のために私たちがいるわけではない。当たり前の政治、経済を実現していく流れを、山陰から広めたい。私はその先頭に立ちたい」――。

 2016年夏の参議院選挙で、島根・鳥取選挙区で野党統一候補となる福島浩彦(ふくしまひろひこ)氏は、2016年4月25日、東京都内で岩上安身のインタビューに応じ、その意気込みを語った。

 冒頭で、「野党が統一されていき、それに市民が結集していく様子はひとつのドラマだ」と切り出した岩上安身は、福島氏に立候補を決意した心境、掲げる政策、活動方針などを訊いた。参院選に向かう野党統一候補へのインタビュー第一弾となる。

▲島根・鳥取選挙区野党統一候補・福島浩彦氏

▲島根・鳥取選挙区野党統一候補・福島浩彦氏

 福島氏は島根県生まれで、千葉県我孫子市長を3期12年間、務めている。市長時代は、全国に先駆けて待機児童問題に取り組み、待機児童ゼロを達成。民主党政権下では、民間人として消費者庁長官に抜擢された経験を持つが、「(当時は)国政にはまったく興味がなかった」と振り返った。

 地方自治専門の学究生活を続けるはずだった福島氏だが、「今回は状況が違う」と断じ、「この安倍政治が続くと、格差問題や憲法改正も含めて、地方自治が死んでしまう。この流れを変えなければいけないと危機感を持ち、国政に出ることを決断した」と出馬の理由を明かした。

 その上で、「従来のようなスローガンを前面に出すやり方ではなく、たくさんの住民と対話をして理解を深めることができないと、内輪だけ勢いづいても全体が盛り上がらない」と述べ、草の根の住民目線による活動方針を語った。

記事目次

■イントロ

  • 日時 2016年4月25日(月) 17:30~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

我孫子市長12年間中に全国に先駆けて待機児童ゼロを達成! 病児保育を含めない少子化対策は偽物だ!

岩上安身(以下、岩上)「参議院選挙の準備が大詰めになってきました。野党が統一されていき、それに市民が結集していく様子はひとつのドラマです。その第一弾として、島根・鳥取選挙区(合区)の福島浩彦さんにお話をうかがいます。

 福島さんが鳥取・島根選挙区から出ることになったのは、鳥取県生まれだからなんですね。我孫子市長選挙に38歳で立候補して当選。3期12年間、市長を務めました。市長時代は、全国に先駆けて待機児童問題の解決に取り組み、待機児童ゼロを達成。さらに、病児保育も開始した。ここが重要です。私も少子化問題を長く取材しましたが、病児保育を含めない少子化対策は偽物なんです。福島さんは、なぜ、病児保育も手がけられたのですか?」

福島浩彦氏(以下、福島・敬称略)「地方自治は、住民の要望から出発するものです。保育問題もそのひとつ。病児保育も欠かせない問題だからです。我孫子市で待機児童ゼロが達成できたのは、保育園の定数割れが問題になっていたことも背景にありました。

 我孫子市は東京のベッドタウンとして、急に大きくなりました。ですから、住民は同世代が多く、子どもの年齢構成に偏りがあった。そのため、一時期は子どもが減って、保育所のほうが過剰になったのですが、(世代が入れ替わり)再び不足すると見越したことが、政策としてよかったのでしょう」

岩上「つまり、自治体の人口動態を把握していれば、これからは小学生が増えるなど、数年後の状況も予想できるということですね。我孫子市長退任後は、東京財団上席研究員に就任された。2010年、民主党の菅直人政権で消費者庁長官に任命(民間人登用)され、2012年8月まで務められた。その時から民主党員ではなかったのですか?」

福島「市長の時は無所属でした。民主党党員だったことは一度もありません。東京財団上席研究員の後、中央学院大学教授を経て、消費者庁長官に任命されました。国政も大事ですが、この社会を根本から変えようと思ったら、地域、自治体からやるしかないと思っていました」

今の安倍政治が続いてしまうと、格差問題や憲法改正も含めて、地方自治が死んでしまうと出馬を決意!

岩上「今回、福島さんは民進党の要請を受ける形で、参院選に野党統一候補として出馬することになりました。2015年11月22日、民主党鳥取県連幹部と面会。出馬の可能性を示唆。12月、民主党鳥取・島根両県連や市民でつくる『山陰から日本の流れを変える会』準備会が、立候補を要請――。

 福島さんは『住民目線で政治を変える会・山陰(略称=住民目線の会)』を立ち上げ、共同代表に就任。2016年1月18日、無所属での立候補を表明した。連合鳥取が国政選挙で無所属候補を推薦するのは初めて。…以上は、新聞の報道をまとめたものですが、正確でしょうか」

福島「あまり正確ではありません。これまでにも、民主党から国政選挙への出馬要請は度々ありましたが、即座に断っていました。消費者庁長官退任後も大学に戻り、地方自治の研究を専門にやっていました。

 しかし、今回は状況が違います。今の安倍政治が続いてしまうと、格差問題や憲法改正も含めて、地方自治が死んでしまう。地方自治の前提は平和です。そのために、この流れを変えなければいけないと危機感を持ち、国政に出ることを決断しました。ただし、自民党に勝てる野党はない。また、単純に野党が一緒になっても意味がないとも思っていました」

岩上「それは、野党が一緒になっても数が揃わない、ということなのでしょうか。それとも理念的に政党が合従連衡をやっても有権者はついてこない、という意味なのでしょうか?」

福島「理念的な意味です。今はまだ、本当に国民を代表する野党はできていません。だから、住民自身が政治を動かさなければいけない。それに政党が協力する形をつくりたい。そのため、立候補表明の前に住民の母体づくりをして、出馬を検討しました。住民目線の会の事務所は鳥取県米子市ですが、島根と鳥取の勝手連的なグループの集合体なのです」

岩上「新聞によっては、この団体名に『市民団体』や『市民連合』と呼称がついていましたが(毎日新聞)、立憲デモクラシーの会やSEALDsの動きとは別なんですね?」

福島「別です。市民団体です。市民連合を否定はしませんし、一緒にやりますが、特に方針を受けたりはしていません。(受ければ)住民目線ではなくなりますから。地域の普通の人たちの活動にしたいのです」

岩上「そこは勘違いしてはいけませんね。福島さんは、無所属で立候補しますが、連合の推薦を受けています。出馬を決めた経緯はどういうことだったのでしょうか。我孫子市長を長らく務められたのに、なぜ、今回の選挙区は千葉ではなかったのですか?」

福島「まず、住民の母体を立ち上げて、良い候補者がいれば委ねるつもりでしたが、自分が立たなければ野党共闘が壊れてしまうと懸念して、決めました。

 (千葉から出馬しないのは)そもそも、国会議員になる気持ちがまったくなかったので。しかし、どうしても安倍政治の流れを変えるためには、住民と野党の『共同』を作り出さなければいけないと考えたのです」

「共産党も含めなければ共同の候補にはならない」。参院選の争点の安保法制、憲法、アベノミクス、TPPへの考え方で共産党とは一致している

岩上「オール野党のカギは共産党でした。でも、共産党を嫌う人も多い。そういう中で、共産党と連合、民進党、住民がまとまっていくのは、とても難しかったのではないでしょうか。共産党は公認の新人、遠藤秀和氏を比例区に回すことを決定。福島さんは3月26日、共産党の集会に出席したということですが」

福島「私は立候補の表明をしただけではなく、住民と野党の共同候補を宣言したのです。共産党も含めなければ、共同の候補にはなりませんから」

岩上「衆院補選京都3区では、共産党は候補を降ろしたにもかかわらず、民主党は共産党に不遜な態度をとりました。鳥取・島根の民主党や連合は、共産党アレルギーはあったのでしょうか?」

福島「共産党アレルギーの方はいらっしゃると思います。また、市民の中にも、民進党や労働組合嫌いの方もおられます。自分も、共産党の考えに同意できないところもあります。しかし、今はそんなことを言っている場合ではないのです。今回の参院選の争点である安保法制、憲法、アベノミクス、TPPで、共産党とは決定的な違いはなく一致しています。一緒にできる確信はありました。だから、共産党候補を比例に回してくれたことには、とても感謝しています」

岩上「共産党は、過去3回の参院選鳥取選挙区で得票率7%前後。県議選でも現有2議席を守るなど、支持がある。これは有利だと思いますか」

福島「数字合わせではなく、無支持、自公支持の人たちとも対話ができる場を与えてもらえたことは、とても大きい。保守系の人たちとも、ちゃんと対話ができるかが問われています」

根強い「合区」への反発?郷土愛が強く、政党より県民を最優先する鳥取と島根

岩上「今回の選挙区は保守系が強いですね。鳥取より島根の方が人口が多く、それぞれ郷土愛が強くて、鳥取・島根合区には7割が反対とか。それぞれ県代表を出したい。政党より県民を最優先すると聞きます」

福島「合区は、人口が少ないところにしわ寄せがいくので賛成はしていません。また、自分を鳥取県代表とも思っていません。県民代表という意識も大切ですが、国会で、地元企業や地元政治家の利益を誘導するための代表ではなく、住民の必要性で政治が行われるようにすべきだと思っています」

岩上「山陰に取材旅行に行った時、島根県の人から道路自慢を聞かされたことがあります。地元の青木幹雄元参議院議員の力で、公共事業で潤った記憶が強く残る県です」

福島「ところが、鳥取と島根間の山陰道はつながっていないんです(注)。住民重視だったら、つなげることが最優先事項です」

注:高速自動車道で整備されている区間は、松江玉造IC─出雲ICのみ。大半の区間は、高速自動車国道に並行する一般国道自動車専用道路として整備されているが、すべてではない。

内輪だけ勢いづいても全体が盛り上がらない!スローガンを前面に出す活動ではなく、住民と対話をして理解を深める草の根運動をする

岩上「衆院補選北海道5区は、オール野党共闘の試金石になった初めての選挙ですが、和田義明氏が13万5862票(4月24日投開票。池田真紀氏12万3517票)で当選しました。この結果については、いかがですか」

福島「池田氏は残念でしたが、前評判では『和田圧勝』だったのが接戦になった。野党共闘への期待感の現れだったと思います。ゆえに、方向性は正しかった。安倍政権が支持率を維持しているのは、他に受け皿がないからという声も多い。決して、積極的な支持者ばかりではないのです。今回、それが池田候補に流れたのではないでしょうか」

岩上「もし、北海道5区で共産党と民進党がバラバラだったら、ここまで競り合うことはなかったでしょう。参院選の島根・鳥取選挙区では(青木幹雄氏の長男)青木一彦参院議員が自民党的闘いをすると思います。福島さんには、北海道の池田候補以上のものが必要になるのではないか。その点については、どのようにお考えですか」

福島「池田候補の活動、総括、反省は参考にしたい。従来のようなスローガンを前面に出す活動ではなく、たくさんの住民の人たちと対話をして、理解を深めることができないと、内輪だけ勢いづいても全体が盛り上がらない。そこはきちっとやっていきたいと思っています。

 島根と鳥取で大集会や座談会など、できるだけ多くやろうとしています。直接話せる人たちは限られているので、共感の輪をどれだけ拡散できるかがカギ。街頭演説にも取り組みますが、小さな辻立ちをできる限り多くやろうと思います。ドブ板は利益誘導を連想させるので、草の根で」

アベノミクスは格差を助長するだけ。年金受給者に3万円支給の財源は3000億円。民主党の高校無償化は300億円。どっちがバラまきか!?

岩上「次に、政策に移ります。福島さんは格差社会の解消を目指すとおっしゃっていますが、具体的にはどういうことでしょうか?」

福島「アベノミクスは格差を助長するだけです。マイナス金利政策は最後のあがきでしょう。実質賃金は5年間で6%下がり、年収1000万以上の人が増えたが、年収200万円以下の人も増えました。雇用も、正社員数は減り、非正規が増加。安倍政治の株価や為替レートで引っ張る経済は、富を集中させて格差を生むだけです。GDPを上げる目的ではなく、地域を活性化させ、サービスや住民の生活を向上させ、実体経済を良くする方向にしないといけません」

岩上「政府は、熊本の地震に23億円拠出すると言いながら、パナマのモノレール建設のために3000億円の円借款を打ち出す。安倍政権は30兆円を海外にバラまいています」

福島「私は東日本大震災の時、消費者庁長官として政府側にいました。震災が起きて、各省庁は今までの事業を縮小して復興財源を捻出するのだろうと思ったら、まったく違った。むしろ震災復興の看板を掲げて、さらなる利権を多く取るために動いたのです。それを煽ったのは自民党で、乗っかったのが民主党政権だった。本当に住民が求めているところに、ちゃんと拠出する姿勢が必要です」

岩上「労働者派遣の歯止め、非正規労働者への社会保険拡大、同一労働・同一賃金を推進、地域循環型経済をつくる、とおっしゃっていますね。少子化対策は、次の働き手を育てる政策です。今は大学で勉強するのも経済的負担が大きい。若い世代が子どもをつくれません。その点はいかがですか」

福島「前提として、地域で循環する経済をつくることですが、今の安倍政権にはその志向はない。とても難しいが、それを実現するために、みんなで知恵を出す。

 民主党政権は問題も多かったが、所得制限なしの高校無償化は評価すべきです。格差是正を言う時、弱者を特定してそこに金を出すことは、中心政策にはなりません。セーフティーネットは必要ですが、弱者の中に分断を生む。地域全体を底上げして格差をなくすことが大切です。

 その点で高校無償化は効果がありました。まんべんなく生活の不安を取り除き、地域を担う人材を育て、かつ可処分所得が増えて経済波及効果につながる。全体の不安を取り除かずに、弱者だけにお金を出しても、それは貯蓄に回り、消費には向かわない。

 自民党は、民主党の高校無償化をバラまきだと批判した。ところが今回、年金受給者に3万円を1回だけバラまく。その財源は3000億円です。高校無償化は300億円。どっちがバラまきで、どっちが未来への投資か。教育はとても大切で、経済波及効果もあるのです」

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