「京都で野党共闘はできない」と断じる福山哲郎議員に白井聡氏が徹底反論。「安倍政権を倒すと言いながら『従来の政治の形を崩したくない』という姿勢がわからない」 2016.4.3

記事公開日:2016.5.7取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

※5月7日テキストを追加しました!

 「なぜ、白井先生はそんなにムキになるのか。安倍政権に対する姿勢は、皆さんと変わらない。安倍政権を倒すような政治家をいっぱい出す方が大事ではないか」──。

福山哲郎参議院議員は、京都で進まない野党共闘を厳しく糾弾した白井聡氏に対し、独自の見解で反論に出た。

 2016年4月3日、京都市内のキャンパスプラザ京都で、「オール関西 平和と共生」が主催する集会「市民の総力で京都から安倍政権を打倒しよう!」が開かれた。弁護士の辻恵氏(元衆議院議員)、憲法学者の小林節氏(慶應義塾大学名誉教授)、政治学者の白井聡氏(京都精華大学専任講師)に加え、ゲストに参院選の京都府選挙区予定候補者の大河原壽貴(おおかわら・としたか)氏(共産党)と、民進党の福山参議院議員が招かれ、京都における野党共闘について意見を交わした。

▲(写真左から)白井聡氏、小林節氏、辻恵氏

▲(写真左から)白井聡氏、小林節氏、辻恵氏

 京都では、7月の参院選の前哨戦として注目される衆議院議員補欠選挙(京都3区)が4月24日に行われ、民進党公認で泉健太氏(前衆議院議員)が当選を果たした。夏の参議院選挙では、京都2人区で福山氏と自民党・二之湯智(にのゆさとし)氏が改選。共産党は、大河原壽貴(おおかわら・としたか)氏を公認し、3人で争う見込みだ。

 小林氏は、安倍政権が続いているのは野党第一党の民進党が悪いからだとし、「良識ある無党派層を掘り起こし、行き場のない人々の受け皿を作る」と意気込んだ。また、インターネット上で、過去に小林氏と反社会勢力とのつながりがあったと取り沙汰されていることについて、「実際、彼らの弁護活動はしたが、金銭授受も接待もなく、違法行為はまったくない」と明言した。

 白井氏は、野党共闘の流れに反するような、京都での民進党の「共産党外し」を厳しく断じ、「京都から変えようではなく、京都が変わらないといけない」と語気を強めた。また、民進党の野党共闘を邪魔しているのは(民進党の支持組織である)連合の幹部だと指摘。さらに「経済成長の手段には戦争しか残っていない」と考えている軍事産業企業が、連合の中枢にいることに懸念を表した。

 福山氏は、昨年の国会での安保法制審議を振り返り、「安倍政権への危機感は共有している。(選挙で勝つには)安保法制だけではなく、格差で苦しむ人たちも巻き込まなければならない。市民運動のさらなる盛り上がりを祈念する」と話し、民進党の「共産党外し」に関しての言及は避けた。

 しかし、小林氏、白井氏から「共産党外し」の真意を問い質された福山氏は、追及をはぐらかしきれずに、「参院選は2議席を自民、民進、共産の3人で争うので共闘のしようがない。長年の歴史から見ても、京都で野党共闘はできない」と開き直るように言い切った。

 京都において、なぜ民進党は共産党との共闘をかくまで拒むのか。IWJでは代表の岩上安身が両者へ取材を申し込み、民進党(当時・民主党)の京都府連のリーダーは取材に応じず、共産党の渡辺和俊・京都府委員長だけが取材に応じた。当事者の主張を聞いた貴重なインタビューなので、ぜひご覧いただきたい。

※動画は、会員ページのみの公開になります。

  • 司会 大川一夫氏(弁護士)/主催挨拶 辻恵氏(元衆議院議員、弁護士)
  • 講演 小林節氏(慶應義塾大学名誉教授)/白井聡氏(京都精華大学専任講師)/辻恵氏
  • ゲスト 大河原壽貴(おおかわら・としたか)氏(弁護士、日本共産党参議院選挙予定候補者)/激励ほか
  • ゲスト 福山哲郎氏(参議院議員、民進党参議院選挙予定候補者)/激励ほか
  • まとめ 辻恵氏
  • タイトル 市民の力で、京都から安倍政権を打倒しよう!
  • 日時 2016年4月3日(日)15:00〜
  • 場所 キャンパスプラザ京都(京都市下京区)
  • 主催 オール関西 平和と共生 (AKPnC)(詳細、Facebook)

小林節氏「安倍内閣の支持率が下がらないのは、野党第一党の民進党が悪いから!なぜ共産党と組んで自民党を倒そうとしないのか!?」〜岡田代表を筆頭とする民主党の執行部が熱心に進めた維新の党との合流で、逆に支持率が下がった皮肉

 冒頭で辻氏が、「夏の参議院選挙に勝たなければならない。『オール関西 平和と共生』は小林節氏を軸に、参議院での与党3分の2議席を阻止すべきとして結成した。国民の関心は1%の富裕層支配と、原発やTPPへの懸念だ」と述べた。

 さらに、「2009年の政権交代のような、権力基盤を引きずったままの失敗は許されない。そのためにも、共産党とも共闘が不可欠だ。民主党政権下での小沢潰し(陸山会事件)のようなことを、検察は再び仕掛けてくるだろう。権力とのぶつかり合いを覚悟しなければならない」と続けた。

▲慶応大名誉教授・小林節氏

▲慶応大名誉教授・小林節氏

 小林氏は、「民進党は、維新の党との合流で支持率が下がった(政党支持率8%。前回の調査で民主党と維新の党が得た支持率の合計10.5%を下回った。2016年2月26日~27日・共同通信調査)」と述べ、安倍内閣の支持率が43%、不支持が38%であることについて、こう分析した。

 「国民の6割は、安倍政権が売りにしている政策──安保法制、TPP、原発再稼働、子育て支援、辺野古基地建設、アベノミクスに反対だ。にもかかわらず、内閣支持率が下がらないのは、野党第一党の民進党が悪いからに他ならない。民進党は『反共産党』を表明しているが、なぜ、共産党と組んで自民党を倒そうとしないのか!?」

 小林氏は今後、良識ある無党派層を掘り起こし、行き場のない人々の受け皿を作るとし、次のように意気込んだ。

 「憲法を蹂躙して、やりたい放題の現政権は許せない。なぜ、(集団的自衛権行使で)アメリカの2軍になって、金と命を差し出さなければいけないのか。なぜ、北朝鮮が怖いと言いながら、日本海に並ぶ原発をそのままにするのか。われわれは、政権交代で安倍政権の嫌う自由と民主主義を取り戻し、マナーとして、櫻井よしこさんのような意見が異なる人も排除せずに、議論を戦わせられるような社会にする」

 なお、小林氏は、市民で新団体を設立し、「参院比例区に10人の独自候補を擁立する」と明言し、自身の出馬の可能性も否定していない。IWJはこれを独自スクープとして報じ、大きな反響を呼んだ。

「京都から変えようではなく、京都が変わらないといけない」と苦言を呈する白井聡氏、共産党との共闘を拒み2議席を「自民と民進でいいや」と考えている民進支持者に喝!~自民候補の二之湯智議員は刑事告発されている!? 二之湯議員の「疑惑」を暴いた上脇博之教授へのインタビューを初公開!

 白井氏は、「京都から変えようではなく、はっきり言って、京都が変わらないといけない」と開口一番、辛辣な言葉で語り始めた。

 衆院の京都3区補選に立候補予定の泉健太氏の勝利を確信している、とする一方で、「反安倍の民進党だから無条件で支援するのではない。私たちの要求を受け入れ、それを真摯に実行するか否かが重要だ」と釘を刺した。

▲京都精華大学専任講師・白井聡氏

▲京都精華大学専任講師・白井聡氏

 さらに白井氏は、福山氏が連合の新年会で発した、「共産党と徹底的に戦う」といった言葉を問題視。福山氏が、SEALDsの奥田愛基氏、弁護士の倉持麟太郎氏らと対談した書籍『2015年安保 国会の内と外で──民主主義をやり直す』(岩波書店)の中では、「政治家、政党の側に古い論理が残っていて、市民の大きな動きを見て(新しい動きを)受け止めることができていない」と発言していることと矛盾がある、と憤った。

 夏の参院選・京都選挙区(定数2)に関しては、自民党候補の二之湯智議員(現職)、民進党の福山哲郎議員(現職)、共産党新人・大河原壽貴(としたか)が立候補予定で、この3人がふたつの議席を争う。

 「二之湯さんと福山さんが勝つのが望ましいのか、福山さんと大河原さんが勝つのが望ましいのか。福山さんに関係している支援団体の多くは『自民と民進でいいや』という思考回路だ。この現状を打破しなければいけない。そういうものの考え方で動いている団体が『戦争法反対』『原発反対』など、寝言だ。共産党と安倍政権、どっちが『嫌』なのか。共産党のほうが嫌だなどと言うなら、『戦争法反対』などは寝言だから言うな。そういう寝言をいう人に私は、今後も断固たる攻撃を加えていきたい」

 こう断言する白井氏に対し、会場からは拍手がおきた。

 ちなみにこの二之湯智議員には、「政治とカネ」のスキャンダルが持ち上がり、刑事告発が行われている。告発したのは、神戸学院大学・上脇博之教授が共同代表を務める、「政治資金オンブズマン」だ。岩上安身は、この二之湯議員の行状の悪さを暴くべく、神戸で上脇教授にインタビューを行なった。5月10日、このインタビューを初公開する。

※【録画配信・Ch1 シリーズ特集・政治とカネ~自民党の正体13】
野党共闘の進まぬ京都選挙区、野党に追い風なるか!? 自民・二之湯智議員が「政治資金の私物化」で刑事告発! 岩上安身による神戸学院大学・上脇博之教授インタビュー
[収録日時] 2016年4月5日(火)12:00~
[配信日時] 2016年5月10日(火)19:00~

野党共闘を拒んでいるのは連合、一番の問題は軍需景気を期待する三菱重工やIHIなど~「経済成長のため、軍事産業を日本の根幹産業に急速転換させる政策への判断で、連合は必ず戦争へ向かう。これから国民一人ひとりが問われる」と白井聡氏

 野党共闘を拒んでいるのは官邸に頻繁に出入りする連合の幹部ともいわれているが、白井氏は、連合も一枚岩ではないと指摘する。「たとえば、原発推進派の労組の電機連合に対しては、『脱原発政策でも、廃炉事業で何十年間も雇用確保ができる』という説得の仕方は可能だ。一番の問題は、連合の中核を動かす三菱重工、IHIなどの軍事産業企業だ」とし、このように続けた。

 「アベノミクスも世界経済もドン詰まりの中、成長戦略には戦争しか残っていない。ゆえに、防衛産業を日本の基幹産業に急展開する政策をとり、それに乗り遅れるな、という流れ。こういう政策への判断は、これからの労働者一人ひとりにも問われる時代だ。連合はどっちに流れるか。必ず戦争へ向かう。市民運動で重要なことは、こういう背景を先読みして対策を準備しておくことだ」。

遅れて到着した民進・福山議員、登壇。「安倍政権への危機感は共有できる。格差で苦しむ人たちも巻き込まなければならない」

 共産党参議院選挙の京都選挙区候補者の大河原壽貴(おおかわら・としたか)氏がスピーチに立ち、「京都の2議席を、安保法制反対勢力にしたい」と強い決意を示した後、遅れて到着した福山氏が登壇した。

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