2016/03/23 政治権力を監視し批判するのは、報道のミッション!両論併記は、ありえない~岩上安身による、「ニュースの職人」・鳥越俊太郎氏インタビュー

記事公開日:2016.4.9
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※4月9日テキストを追加しました!

 「納税する国民に代わってメディアが政治権力を監視し批判するのは、報道の義務であり、ミッション。だからこそ、両論併記などというものは、ありえない」――。

 2016年3月23日、IWJ事務所において、岩上安身による鳥越俊太郎氏インタビューが行われた。インタビューの中で鳥越俊太郎氏は、安倍政権下の報道の委縮に警鐘を鳴らしながら、報道の使命について冒頭のように述べた。

 自らを「ニュースの職人」と名乗る鳥越氏は、先月2月29日に、田原総一朗氏、金平茂紀氏、岸井成格氏ら、日本を代表するテレビ報道人5名とともに、「高市早苗総務相による電波発言に対する抗議会見」を行ったばかりだ。会見でも鳥越氏は、安倍政権による報道規制を批判した。

 秘密保護法と安保法案の成立、武器輸出三原則、そして非核三原則の否定――。戦後民主主義のなかで、市民が守り抜いてきた多くのものが、安倍政権下で失われようとしている。3月22日には、共産党は「暴力革命の党」と決めつけられ、破防法適応が相応であると閣議決定がなされたように、ヒトラーの世界は、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。

 危機的な昨今の状況のなかで、萎縮が叫ばれて久しい日本のジャーナリズムに求められるものは、何か――。

 岩上安身による鳥越俊太郎氏への初インタビュー。日本のメディアの「偏向」ぶりだけではなく、ベルギーでの同時多発テロや米大統領選などの世界情勢まで、関連する話題は大きく広がった。続編も決定しているインタビューを、ぜひご覧いただきたい。

※2016年2月29日、東京都千代田区の日本記者クラブで、青木理氏、大谷昭宏氏、金平茂紀氏、岸井成格氏、田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏らテレビ放送関係者が、高市大臣の「電波停止」発言に抗議する記者会見を開き、現安倍政権下での報道圧力と、報道現場の萎縮の実状を語った。こちらも合わせてご視聴を!

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■イントロ

  • 日時 2016年3月23日(水) 13:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

岩上安身 「鳥越さんはわれわれジャーナリストの大先輩」~現場では会っていた!2人の初対談

▲鳥越俊太郎氏。岩上安身からの、初インタビューとなった。

岩上 「本日はビックゲストをお呼びしました。われわれジャーナリストの大先輩であります。最近は、ジャーナリストではなく、『ニュースの職人』と名乗っていらっしゃいます。鳥越俊太郎さんです」

鳥越 「こうしてきちんとお話をするのは初めてですね」

岩上 「仙台の筋弛緩剤事件(注1)の際、鳥越さんはザ・スクープで、そして私もこの事件を追っていて、お互いにデットヒートのようになったこともありました」

鳥越 「現場では何度も会っているんですけどね」

岩上 「なかなか大先輩をお呼びするのはタイミングを考えなければというのもありましたし、がんになられたということで、お身体も大丈夫かなと」

鳥越 「大丈夫ですよ。今が人生で一番元気です」

岩上 「今日は、そんな鳥越さんに、現在の日本の危機について、様々な観点からおうかがいしたいと思います」

(注1)仙台 筋弛緩剤事件
 2000年に宮城県仙台市泉区のクリニックで発生した患者殺傷事件。容疑者である元・准看護師は無実を主張するも、無期懲役が確定している。冤罪の可能性が指摘されている。

ベルギーの首都ブリュッセルでの同時多発テロ――空爆しても、ISはつぶれない~鳥越俊太郎 「背景にあるのは米国によるイラクへの『侵略』。ISは空爆に根をあげないどころか、自爆テロを主に欧州で起こすようになった」

岩上 「ベルギーの首都ブリュッセルで、昨日、現地時間3月22日午前8時過ぎに同時多発テロがありました。まずはこちらのお話からお聞きしたいと思います」

鳥越 「ISによる犯行だろうと言われていますね。これを『テロ』と呼ぶと、単なる犯罪行為だと思わされてしまいます。もちろん、テロが犯罪行為であることに違いはありませんが、歴史的背景を踏まえる必要があります。それなりの歴史的な経緯や事実があります。

 2003年のイラク戦争では、米国が突然国連の制止を振り切ると、「イラクは大量破壊兵器や化学兵器を持っている、このままいくと世界が滅びる」――というようなことを言って、他国を引き連れ、イラクに『侵攻』しました。普通の言葉でいえば、イラクに『侵略』した、と言えるでしょう。

 そして、米国はあっという間にサダムフセインを死刑にして、フセイン政権を支えていた多数派のスンニ派を政権から追い出しました。それから現在に至るまで、シーア派の政権がイラクを治めているわけですが、これが、なかなかうまくいかない。イラク国内から逃げたスンニ派がどうしたかというと、イスラム圏の北方、つまりシリア国境の周辺に集まったわけです。

 そこで、『国境に従わず、自分たちの国をつくろう。国境は帝国主義が引いたものだから、従う必要はないのだ』と、シリアからイラクにまたがる広大な地域を占拠し、国のようなものを作り始めた――。それがISです。

 ISは国家ではない、と主張する人たちもいます。しかし、手段がテロ行為であっても、ISが国家としての体裁を整えてきたことは事実です。このまま、『国』として残ってしまうかもしれない。それを、ロシア、欧州、米国と、各国が空爆しました。しかし、ISは根をあげないどころか、主に欧州で自爆テロを起こすようになったのです」

岩上 「各国の軍隊とISという、戦力でみれば、極めて非対称の戦いですね」

鳥越 「そうです。非対称の『戦争』ですね。空爆だけでは、ISはつぶれないと指摘する人が多くいます」

岩上 「こうした状況のなかで、日本の安倍政権は、集団的自衛権によって、この戦いに関与していこうとしていますね」

ブリュッセルテロの裏側で、イスラエル軍がパレスチナに侵攻――米国大統領選をにらんでの動きか?~人々が他の事件に目を転じているときに行われる、『陽動(ようどう)』に日々注視せよ!

岩上 「さて、ブリュッセルでのテロの裏側で、現地時間3月22日未明、イスラエル軍が東エルサレムを含む西海岸各地に侵攻、少なくとも28人のパレスチナ人が拘束されました。現地メディアは、イスラエル軍がパレスチナ人の自宅や福祉慈善事務所などを襲い、約7789ドル相当の損害を出したと報じています。テロに便乗したのか、事前準備していたのかと思わせる周到さです」

鳥越 「信じられないことですね。イスラエル(とパレスチナ)には一応取り決めがあって(注2)、突然の暴挙はやらないことになっています。それでも(こうした軍事行動を)やるというには、裏になんらかのモチベーションがあると考えざるを得ませんね。タイミングもおかしい」

岩上 「他のニュースに注目が集まっているときにやると。例えば、 ウクライナ上空で民間航空機が撃墜され非常に緊張が高まったとき(注3)にも、パレスチナへの侵攻が行われました(注4)。

 ブリュッセルでのテロすら、陽動(ようどう)のひとつなのではないかと思ってしまいます。さらに酷いのは、イスラエル軍が襲ったのは、福祉慈善事務所で、軍事拠点ではありませんでした。これは一般人の殺害、一般人の財産の破壊ですよ」

鳥越 「まったく、ひどい話です」

(注2)現地時間2014年8月26日に締結されたイスラエル・パレスチナ間の無期限停戦合意のこと。(ロイター通信 2014年8月27日

(注3)現地時間2014年7月17日、内戦の続く東ウクライナ上空でのマレーシア航空機が撃墜された。事故直後から東ウクライナ内戦における親露派およびロシアに一方的に嫌疑がかけられた報道がなされたが、現在に至るまで不明点が多く、詳細は明らかにされていない。下記の”トリセツ”を合わせてご参照ください。

(注4)現地時間2014年7月17日、イスラエル軍がパレスチナのガザに地上軍侵攻した。7月31日の時点で、パレスチナ側の死者は1430人を超え、過去最大だった2008年 – 2009年のガザ侵攻での死者数を上回る規模となり、戦闘は8月1日の72時間の停戦をはさみながら、(注2)の無期限停戦合意まで続いた。

親イスラエルの立場を明確にした米共和党・トランプ大統領候補~日米関係のリバランスを要求し、日本にも様々な負担の肩代わりを要求してくる?!

鳥越 「ベルギーでのテロを意識してというのはもちろんあると思いますが、僕としてはおそらく米国の大統領選挙をにらんでの動きではないかと思います」

岩上 「米国大統領選といえば、共和党のトランプ候補は、資産家であり、ロビー団体から資金調達する必要がないという理由から、今まで好き勝手なことを言ってきました。

 トランプ氏の言動には、その内容はともかくとして、米国で最大の影響力を持つイスラエルや軍産複合体のロビー団体から選挙資金をもらうといった、今までの米国の政治とは一線を画す自由さが見られたことも事実です。そこで、イスラエルロビーとトランプ氏との関係はどうなのかと、注目されていました。

 ところが、3月21日、トランプ氏は、 イスラエル人の有力団体(※米イスラエル広報委員会=AIPAC)を前に、親イスラエルの立場を明確に宣言しました(注5)。さらに、オバマ大統領がイランとのあいだで結んだ核合意をすべて破棄する、とも明らかにしたのです(注6)。これは、非常に大きいと思います」

鳥越 「これは大きいですね。イランとの核合意は、オバマ大統領による、中東政策での唯一の功績ともいえる、非常に前進的な措置でした。それをトランプが大統領になって潰してしまうとしたら、喜ぶのは誰なのだろうかと――。それは、イスラエルでしょう」

岩上 「イスラエルロビーの前で拍手喝さいを受けながら、親イスラエルと核合意の破棄、この両方を発表したのです。同時にトランプは、『米国は貧しい国だ』と、主張しています。要するに日米関係のリバランスをといって、基地負担などの肩代わりを日本に要求する動きが、トランプ候補が大統領になれば、より強まるでしょう」

(注5)トランプ氏、イスラエルとの強固な同盟を公約 米大統領選に向け(ロイター通信 2016年3月22日)

(注6)トランプ氏、外交政策「最優先はイラン核合意破棄」(AFP BBNEWS 2016年3月22日)

鳥越俊太郎 「1977年、ダッカ日航機ハイジャック事件で、福田赳夫政権は、『人命は、地球より重い』とダッカで犯人を逃がした。安倍首相には、人命を確保する気がまったくない」!

岩上 「次は、ヌスラ戦線(注7)に拘束された安田純平氏のニュースです」

鳥越 「福田赳夫(たけお)――つまり、福田康夫 元・首相の父ですが、この福田赳夫政権のときは、『人命は、地球より重い』ということで、ダッカで犯人を逃がしました(注8)。それに対して批判はありましたが、僕は日本らしい、ひとつのやり方だったと思います。

 他方、安倍首相は、人質を取られているのにイスラエルで発言しました(注9)。あんなことを言ったら、ISを怒らせるに決まっているでしょう。この人には、人命を確保する気が全くないんです」

岩上 「安倍首相は、後藤さんら人質事件を政治利用したと言えますね」

鳥越 「自分たちの意に沿わないものは自分で責任を取れ、と。自民党に共通している価値観です」

岩上 「辛坊治郎氏は、2013年6月に太平洋をボートで横断中に漂流し、救助されました。にもかかわらず、自己責任論を撤回しない鉄面皮もすごいですね。特権層はいいのか?という話です」

(注7)ヌスラ戦線
2011年に「イラクのアルカイダ」(AQI)の支援を受けて,AQIのシリアにおける関連組織として結成されたスンニ派過激組織。主な活動範囲をシリアに置く。現在にいたるまで、外国人の拉致と身代金要求を重ねてきた集団であり、ISのように政治的主張のために人質を殺害する可能性は低く、交渉の余地があると考えられている。(日本経済新聞 2016年3月18日

(注8)ダッカ日航機ハイジャック事件
日本時間1977年9月28日に起きた日本赤軍によるハイジャック事件。当時首相だった福田赳夫(たけお)は、身代金600万ドルの支払いと獄中メンバーなどの引き渡しを決断した。

(注9)2015年1月20日、イスラエル訪問中だった安倍総理は人質ビデオの報を受け現地で会見。「国際社会は、断固としてテロに屈せずに対応していく必要がある」、「今後も、人命を確保する上において、全力で取り組んでいく考えであります。いずれにせよ、国際社会は決してテロには屈してはならない」と発言した。

両論併記など、あり得ない!~鳥越俊太郎 「納税する国民に代わってメディアが政治権力を監視し批判するのは、報道の義務であり、ミッション」

▲岩上安身(左)、鳥越俊太郎氏(右)

岩上 「次は、高市早苗総務相の電波停止発言についておうかがいします。現実にテロへの参加をTVが呼びかけたことなんてあったでしょうか。国家の暴力として、大日本帝国がラジオや新聞で(戦争への参加を)呼びかけ続けたことはありましたが…」

鳥越 「メディアの役割というものを、高市氏は全く理解していませんね。そもそも、税金を払っているのは私たちです。近代市民社会の義務として市民が税金を収め、政府がその税金をうまく裁量することで、政治が行われています。国民は性善説を取りながら、『政治家は悪いことをしないだろう』という前提で納税するわけですが、現実的には、政治家は悪さをします。それは、歴史的に見ても明らかです。

 それではいかんということで、メディアによる権力のチェックという考え方が生まれました。間接的に新聞記者が権力を監視し、選挙のとき市民が判断できるようにする、というわけです。これは、米国で始まりました。戦後は、憲法第21条で表現の自由が保障されましたが、戦前の日本にそういったチェック機能は存在せず、すべての報道は検閲により、大本営発表になってしまいました。

 報道の自由とは、税金がちゃんと使われているかどうかをチェックする権利ですから、報道で政治批判するのは当たり前なんですよ」

岩上 「われわれ市民は、税金を納めるオーナーですからね」

鳥越 「だからこそ、汚職についての両論併記なんてありえません。田中角栄の汚職事件(※ロッキード事件)があった当時、メディア各社は両論併記なんてしていたでしょうか?納税する国民に代わってメディアが政治権力を、政府与党のあり方を監視し批判するのは、報道の義務であり、ミッションです。高市氏は、単に放送法のことを見ているだけで、報道は何か、という本質を理解していません」

(構成:山本愛穂)

電波停止発言に、沈黙するTV関係者~『アベドルフ政権』の「戦争できる国にしたい!」は、岸信介の悲願をかなえようとしているだけ

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コメント “2016/03/23 政治権力を監視し批判するのは、報道のミッション!両論併記は、ありえない~岩上安身による、「ニュースの職人」・鳥越俊太郎氏インタビュー

  1. IWJ御中

    本記事(http://iwj.co.jp/wj/open/archives/293152)に誤植の可能性のある部分がございました。
    「免罪の可能性が指摘」→「冤罪の可能性が指摘」
    「民間航空機が追撃され」→「民間航空機が撃墜され」
    「マレーシア航空機が追撃され」→「マレーシア航空機が撃墜され」
    「ロビー団体から資調達」→「ロビー団体から資金調達」
    「非常に前身的な措置」→「非常に前進的な措置」

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