「築地市場の来年11月移転は東京オリンピックのため?」未解決の土壌汚染、交通不便、ハゼも棲まない海水利用——ずさんな豊洲移転計画に仲卸業者から懸念続出! 2015.11.25

記事公開日:2015.12.29取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

特集 築地市場移転問題
※12月29日テキストを追加しました!

 「2016年11月7日に、豊洲市場を開場すると誰が決めたのか。具体的な市場の運用も決まっていない中で、なぜ、わざわざ繁忙期に、慣れないところへ移転しなくてはならないのか」。

 2015年11月25日、東京都千代田区の厚生会館にて、築地市場の水産仲卸業者らによる集会が行なわれた。会場は満員となり、この問題への関心の高さを如実に示していた。情報量の少なさ、コロコロと言い分の変わる組合と東京都の対応、さらに保健所、消防署、東京都の間で意見統一も見られない移転計画のずさんさ──築地で働く当事者たちは、移転への不安を口々に訴えた。

 冒頭で主催者から、「今日は(築地市場の)移転反対のための会ではない。働きやすい市場、客が来やすい市場を作るために意見交換をし、問題意識を共有する場である」という主旨が伝えられた。豊洲新市場について、「2016年11月7日という開場時期」「物流および店舗設備」「市場に出入りする交通アクセス」「高潮、災害の避難などの安全対策」の4つの懸案点で意見を出し合った。

 新市場の開場日は、東京都からの通達で決まったという。これについて、「なぜ、繁忙期の11月にするのか」という不満が表出した。また、築地から豊洲への移転期間が4日間とされている点にも、「トラック9000台以上が晴海通りを埋めることになるが、4日間で済むのか。また、3000トンの商品を4日で冷蔵庫に収められるのか。移転してすぐには商売ができない」との懸念する声が上がった。

 新市場の使い勝手についても疑問が相次いだ。店舗の敷地が、今の23ヘクタールから42ヘクタールになったにもかかわらず、1店舗の間口が1.5メートルと狭く(奥行きは4.3メートル)、床の積載荷重制限で重さ1トン以上の水槽は禁止など、ひとつひとつの店舗の利便性に配慮した店舗設計になっていないという。

 また、豊洲市場への交通アクセスは、2019年にシャトルバスの運行と環状2号線開通が予定されているが、2016年から3年間は、公共交通機関はゆりかもめしかない。参加者からは、「こういう不便さはどうするのかと、東京都に尋ねても返事がない」という発言があり、移転計画のずさんが次々に浮き彫りになった。

■ハイライト

  • 日時 2015年11月25日(水) 12:30〜
  • 場所 厚生会館(東京都千代田区)

トラック9000台分の荷物、3000トンの冷蔵商品を4日間で移す!?

 まず、「2016年11月7日、豊洲市場開場」というスケジュールに対して、仲卸業者たちの疑問が噴出した。「物流が決まっていない中で、1階で購入した商品を3階で引き取るなどというが、本当に可能なのか」「(この開場日は)東京オリンピックに間に合わせるためと聞いたが、われわれには関係ない話」「(お客である)買い出し人のことを中心に考えなければならない。運用も決まらず、不慣れな状態で、年末の繁忙期の11月に開業する必要はない」。

  また、築地からの移転期間が4日間しかないことに対して、「メインルートになる晴海通りをトラック9000台以上で移動する大規模な引っ越しが、果たして4日で完了するのか。現在、3000トンある冷蔵食材を、スムーズに搬入できるのか」と心配する声が上がった。

店の間口が1.5メートル。床の積載荷重は1トンまで

 物流および店舗設備に対して、冷凍マグロなどを扱う業者は、「大きな冷凍ストッカーを現場で使うためには、排気設備を自費で負担しなくてはならない。さらに、豊洲移転の2〜3年後には店舗配置の抽選があるので、原状復帰費用や設備費が再び必要になる」と話す。

 別の業者も、「複数店舗をまとめた前提の造りになっていて、1店舗ごとに利便性の高い店舗設計ではない。安全性や衛生面で齟齬をきたすにもかかわらず、衛生(保健所)、消防署、造作(東京都)の3者合同の協議はやらないという。法律の基準ばかりを気にして、実際の使い勝手を考慮していない」と批判した。

 ほかにも、「4日間の移転期間中、お客さんたちの商品確保はどうするのか」「店の敷地が(23ヘクタールから42ヘクタールに)広くなるのに、なぜ、今より使いづらくなるのか」「今になって、いろいろ条件変更を押しつけられる」「11月18日に店舗見学会があったが、参加は1店舗1人に限定されていた。残念だ」「店舗の間口が1.5メートルで狭い(奥行きは4.3メートル)。また、床の積載荷重制限のため1トン以上の水槽は置けない」などの不満が噴出した。

シャトル・バスと環状2号線開通まで3年間、交通手段は「ゆりかもめ」のみ!?

 従業員、納入・配送業者、買い出し人など、新市場で働く人のための交通アクセスは、どうか。ある参加者は、「2019年にシャトル・バスを運行、環状2号線が開通するというが、2016年からの3年間は、交通手段はゆりかもめしかない。そこをどうするのか、東京都に尋ねても答えない」と話す。

 築地には入場門が6ヵ所ほどあるが、豊洲新市場では2ヵ所になり、渋滞が懸念される。また、豊洲の場内駐車場の高さは、2トン車がギリギリなほど低い。さらに、豊洲に行くには、時間も交通費も築地よりかかる。シャトル・バスの開通が2019年では遅いこと、ゆりかもめの始発が6時で、市場関係者の通勤には遅すぎるとの指摘もあった。ある仲卸業者は、バイクや自転車を使う買い出し人たちの不便さを述べ、「(市場が豊洲になったら)買い出しを止める、との声も聞いた」と憂慮した。

ハゼも棲まない海の水で鮮魚保存!?

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