築地市場移転先の豊洲新市場用地、都のずさんな土壌汚染対策の実態が発覚――法が定める帯水層底面調査を333区画で未実施 2015.6.23

記事公開日:2015.7.3取材地: テキスト動画
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(石川優)

特集 築地市場移転問題
※7月3日テキストを追加しました!

 東京都が来年2016年11月に開場を予定している豊洲新市場。中央区の築地市場を江東区の豊洲へ移転する計画だが、移転予定地が東京ガスの工場跡地であることから、環境基準をはるかに超える汚染物質が見つかっている。環境学者からも「日本最大級の汚染地帯」と指摘する声が聞かれている。

 築地市場移転による豊洲新市場計画に反対するシンポジウムが2015年6月23日、明治大学駿河台キャンパスで開かれ、この問題に詳しい有識者らが、豊洲新市場計画の数々の問題を指摘した。

 一級建築士の水谷和子氏は、自身が調査した結果から、都が法律で定められている「帯水層底面調査」を実施していなかった実態を暴露。都は、土壌汚染対策工事は終了したと発表していたが、333もの区画で未実施だったことが発覚し、そのうちの69区画では、調査が未実施であるにも関わらず、汚染対策が完了したことになっていた事実を明かした。

記事目次

■ハイライト

移転推進派の大物も豊洲新市場計画に困惑している実態

 東京中央市場労働組合書記長の中澤誠氏は、この日のシンポジウムの前々日に、築地市場の仲卸業界のある大物と話す機会があったという。中澤氏が問題山積の豊洲新市場の今後について、その人物に尋ねると、「俺にもわからない」と応じたと話し、「それだけ酷いことになっている」と、移転推進派の発言からも豊洲新市場計画が杜撰であることがうかがわれるとした。

卸売市場とは何か――セリ制度とは?

 中澤氏は、卸売市場の顔は仲卸だと力説する。

 「セリは少なくなったが、本当に良い制度だと思う。セリで値段をつけて買うわけだが、そこで目利きということになるが、セリ制度というのは、品質を競争条件にしている。これが消費者に対して大事なことになる。品質で競争しなさいとなると、生産者は良い品質のものを作ろうとする。良い品質の魚を獲ってこようとする。いろんな努力をしようとする。それによって消費者は良い品質のものを食べられる」

 セリ制度にはこのようなメリットがあるが、その一方で、セリ制度は少なくなり、相対取引がそのほとんどを占めてきているという。

 相対取引によって、品質の競争から価格競争へと変わり、卸から仕入れる仲卸の資本力の競争となってしまっているのが現状だ。

 中澤氏は、「安いこと自体は消費者にとって良いが、安いことが本当に良いことなのか。良い品質のものが運ばれてきて、それが安いことは構わないが、安いことだけを競争するのはどうなのか」と、価格競争が支配的になる相対取引への懸念を口にした。

 卸売市場には、セリの他にも、消費者にとってメリットになる点があるという。

 「卸売市場は、仲介業者が入ることで(商品の価格が)高くなり、消費者が損をするという指摘があるが、最近、新潮社から出版された本(※)でも指摘されている通り、卸売市場の流通は非常に効率が良い。産直の方が効率が良いと思う人は、今日の晩飯を自分で産直をやってみるといい。宅急便のお金がいくらかかるか。

 今、規制緩和で卸売市場を通らなくてもいいことになっているが、国内産は85%が卸売市場を通っている(青果物データ)。規制がないのに、85%も卸売市場を通っているということは、効率が悪かったら誰も通すわけがない。効率が良い証左だと思う」

築地ブランド、そのメカニズムとは

 過去、沖縄のマグロに高値がついたことがある。一般的にマグロといえば、大間というイメージがあるが、沖縄で獲れたマグロで高値がつくということには、どんな意味があるのか。

 中澤氏は、「これは凄いこと。本当のプロで、本当に信用されているから可能。沖縄はマグロのブランドの場所ではない。しかし、沖縄の生産者はこれによって、やる気が出る。良い品を持ってくれば、沖縄でも、築地では適正な評価をして、きちんとお金が回る。ブランドのない生産地でもやる気が出る。これが築地ブランドなんです」と力説した。

豊洲新市場の施設使用料「机ごとひっくり返す」ほどの莫大な金額で怒り心頭の関係者

(…会員ページにつづく)

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