2015/06/17 【IWJ寄稿・特別寄稿】暴走するアベのマイナンバー 〜「カジノ入館」にまで!? 政府が描く、国民総背番号制の驚愕の“未来図”の正体 黒田充(大阪経済大学非常勤講師)  

記事公開日:2015.6.17
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 5月31日の夜、「『ちょい飲み』二軒目。知らない人とも仲良くなれます。マイナンバーカードは、クレジットカードの機能も持つ事が出来ます。ちょい飲みは、チケット制ですがマイナ。」(注1)と書かれた投稿がFacebookにあるのが目に留まった。投稿は前日の21時18分、土曜日の夜だ。

マイナンバーカードにクレジットカードの機能?

 マイナンバー制度が来年1月にスタートする。10月には住民登録のある国民と在留外国人(以下、「国民等」)に個人番号が付番され、番号通知が市町村から届く。投稿にあるマイナンバーカード、正式名称「個人番号カード」は、ICチップのついたプラスチック製のカードで、来年1月から希望する国民等に市町村が交付する。

 個人番号カードにクレジットカードの機能がつく話などあっただろうか。内閣官房が提供しているマイナンバー制度のウェブサイト(注2)のどこにも、クレジットカードの機能が付くとは書かれていない。また、サイト内の「よくある質問(FAQ)」(注3)にも、個人番号カードについては「本人確認のための身分証明書として使用できるほか、図書館カードや印鑑登録証など自治体等が条例で定めるサービスに利用でき、またe-Tax等の電子申請等が行える電子証明書も標準搭載されます」、「レンタル店などでも身分証明書として広くご利用いただけます」とあるものの、クレジットカードとして使えるとの記述はない。

 とすると、「クレジットカードの機能がつく」という投稿は、事実ではないことをどこかの誰かが適当に書いただけのものなのだろうか。

番号制度担当室の一職員が酔った勢いで書いた?

 ところがどっこいそうではない。「クレジットカードの機能も持つ事が出来ます」の投稿の主は内閣官房番号制度担当室が運営している公式アカウントの「マイナちゃんのマイナンバー日記」だったのだ。

内閣官房のウェブサイトには「マイナちゃんのマイナンバー日記」の説明として、内閣官房番号制度担当室は、マイナンバー制度に関する「より一層の広報活動の充実を図るため、Facebookページアカウントを取得し、Facebookが持つ情報の拡散性や情報の即時性を活かした発信」を行うとある(注4)

 ということは、内閣官房番号制度担当室が「マイナンバーカードは、クレジットカードの機能も持つ事が出来ます」と、Facebookを使って国民に向け公式に広報したことになる。決まっていないことを、さも決まっているかのように政府機関が広報する、これは一体どういうことなのか。

 一つ前の投稿(5月30日19時21分)には、「商店街振興の一環として『ちょい飲み』が流行っているようです。参加しながら、マイナンバーの説明をしてます。あと、二軒は、はしごしますマイナ。」(注5)との投稿がある。これを見て番号制度担当室のFacebook担当職員が、「ちょい飲み」で酔ってしまって、「クレジットカードの機能も」などと勝手に書いてしまった、個人的に暴走してしまったのではと、この時点では私はそう受け取っていた。

 この投稿を見つけた私は、Twitterの自分のアカウントで「内閣府の中の人的には、マイナンバーの個人番号カードにクレジットカード機能を付けることは、もう議論の段階ではなく、既に決定事項だと言うことなのだろう。国会軽視もはなはだしい。」(注6)などと直ちにツイートした。番号制度担当室の誰かは、このツイートを見ているであろうから、翌日の月曜日、出勤してきた担当者は上司から叱責を受け、Facebookへの投稿は直ちに削除されると、そう思っていたのだ。

 ところが消されなかった(この稿の執筆時点でもまだ残っている)のだ。いや、それどころか6月10日には、今度は「電子お薬手帳の勉強会。紙の手帳持たないで、マイナンバー制度を使って、服薬履歴を管理出来たら便利ですマイナ。」(注7)と、さらに書き込まれたのだ。

 マイナンバーで服薬履歴を管理する話など内閣官房のウェブサイトにはないし、そもそも制度の根拠法である「番号法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)」(注8)にもそんなことは書かれていない。

 ここで、ああそうかと気づいた。「クレジットカードの機能」の投稿も「服薬履歴」も、一職員の暴走によるものではなく、番号制度担当室そのものが暴走しているのだ。まだ決まっていないこと、法で規定されていないことを、既成事実のごとく彼らは「業務」として広報しているのだ。

 因みに、「マイナちゃん」は内閣官房によると、広報用ロゴマークとして2014年5月に公表したもので、「国民の皆さまに親しみを感じていただけるように、ウサギが番号(数字の1)を大切に掲げている姿をデザインしたもの」(注9)とのこと。

マイナンバー制度利活用推進ロードマップ

 さて話は変わるが、「マイナンバー制度利活用推進ロードマップ(案)」と表題の付いた絵【図1】がある。2016年から2020年にかけてマイナンバー制度をどう活用していくかを示したものだ。

第9回 マイナンバー等分科会議事次第の資料6より

 例えば「個人番号カードICチップの活用」として、2016年には「国家公務員身分証(1月~)」とともに、「ICチップの民間開放(4月)」、「民間企業の社員証 民間のポイントカード(4月以降)」と書かれている。これまた番号法にないこと、聞いたこともないことだ。この絵はどこかの好き者が何かの冗談で作ったものなのだろうか。

 実は、こちらもそうではないのだ。5月20日に開催された政府のIT総合戦略本部のマイナンバー等分科会(注10)において福田峰之・内閣府大臣補佐官が提出した資料なのだ。

 先に紹介した「よくある質問(FAQ)」には、個人番号カードには公的個人認証サービスによる電子証明書が標準搭載されるとある。電子証明書は「インターネットを通じたオンラインの申請や届出を行う際、他人による成りすましやデータの改ざんを防ぐために用いる本人確認の手段です。個人番号カードに搭載される電子証明書を用いて、申請書などの情報に電子署名を付すことにより、確かに本人が送付した情報であることを示すことができます。現在は、国税電子申告・納税システム(e-Tax)など、国や地方公共団体の様々な手続で利用されていますが、平成28年1月以降は、総務大臣の認定を受けた民間事業者との手続きにも利用できるようになります」(注11)としている。

 「ロードマップ(案)」には、この2016年1月の電子証明書の民間開放を受け、2017年~2019年に「個人番号カードをデビッドカード、クレジットカード、キャッシュカード、ポイントカード、診察券などとして利用 ⇒ワンカード化の促進⇒スマホ等のデバイスにダウンロードして代用できるよう研究・関係者との協議のうえ実現」と書かれている。

Facebookへの投稿は「ロードマップ(案)」がもとだった

 Facebookへの「マイナンバーカードは、クレジットカードの機能も持つ事が出来ます」の投稿がされたのは、マイナンバー等分科会での「ロードマップ(案)」についての議論から10日後の5月30日だ。番号制度担当室は、この分科会での議論をもとに、それがもう決まったことであるかのようにFacebookを使って広報したのだ。

 また「ロードマップ(案)」の2020年には、カードの利用として「カジノ入館規制」、「オリンピック会場入館規制(7・8月)」と書かれている。オリンピックはともかく、カジノの入館とは何事か。言うまでもないが、カジノはまだ存在してないし、カジノを許す法律も、法案すら含めてまだ日本には存在していない。にもかかわらず、こんな絵が政府の機関で正式に堂々と議論されているのだ。

 さらに、2018年には「個人番号カードと運転免許証との一体化」、「個人番号カードと医師免許との一体化」、「個人番号カードと教員免許との一体化」、「学歴証明(卒業証明書)」といった信じられないような文字が並んでいる。さらに「健康保険証オンライン資格確認(4月目途)⇒個人番号カードを健康保険証として利用」、「個人番号カードをお薬手帳として利用」とある。Facebookに書かれた「マイナンバー制度を使って、服薬履歴を管理出来たら」も、分科会での議論を受けたものだったのだ。

 さらに、2019から2020年には「医療機関、介護施設等の間での医療・介護・健康情報の管理・連携⇒無駄のない、高品質な医療の実現、ビッグデータの活用で医学に貢献」、「死亡ワンストップサービスの実現⇒予め本人が登録した事業者等と死亡情報を共有し、相続手続等を円滑化」とまである。政府の考える利用範囲の拡大は留まることを知らないようだ。

 なお、「ロードマップ(案)」には、2016年3月末「カード1,000万枚」、2019年3月末「カード8,700万枚」とも書かれている。マイナンバーの利用範囲を拡大し、カードを多機能化することで、カードを持たなければ生活が出来ない社会を政府は構想しているのだ。

 番号法は、附則において「政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況等を勘案し、個人番号の利用及び情報提供ネットワークシステムを使用した特定個人情報の提供の範囲を拡大すること並びに特定個人情報以外の情報の提供に情報提供ネットワークシステムを活用することができるようにすることその他この法律の規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、国民の理解を得つつ、所要の措置を講ずるものとする」としている。

 「法律の施行の状況等を勘案し」とあるから、見直し作業は、法が施行される2016年1月以降だと思うのが普通であろう。しかし、政府はそうではなく、カードと番号の利用範囲の拡大を、すでに具体的に検討しているのだ。そして、「国民の理解」もそっちのけに、案に過ぎないものを決まったもののごとくあっけらかんと広報しているのだ。これを暴走と言わなければ、いったい何と表現すればいいのか。国民はまったく不在のものとして、無人野を行くがごとくの「独走」だろうか。

マイナンバーでも暴走する安倍政権

 安倍政権は、集団的自衛権、戦争法案を巡って、国民世論も憲法も無視し暴走を続けているが、実はマイナンバーでも暴走していたのだ。

 今国会に、預貯金口座や特定健診の結果などにも番号が使えるようにする番号法の改正案(注12)が提案されている。日本年金機構の個人情報漏えい事件を受けて採決が延びてはいるが、安倍政権は今国会中に可決するつもりだ。

 当然、安倍政権は、なぜこんなに急ぐのかの疑問が出て来る。しかし、安倍首相自身、いや少なくとも政府の担当者には、急いでいる、自分たちが暴走しているという認識はきっとないであろう。マイナンバー制度は、いわゆる国民総背番号制度だが、これが初めて俎上に昇ったのは1968年、奇しくも安倍晋三の大叔父にあたる佐藤栄作が首相だった時である。そこからマイナンバーまで50年近い年月を要したのだ。憲法改悪と同様に、彼らには急いでいるという実感はなく、むしろ時間をかけ過ぎてしまったと思っているのではないだろうか。

 もともとマイナンバーは、小泉政権時の社会保障番号導入構想がもとになっている。当時、社会保障費をどう削るかが問題となっていた。国民全体に影響が出るような一律的な削減では反発が大き過ぎる(実際、小泉政権が倒れた原因の一つは、社会保障を毎年2,200億円削減したことなのだが)から、全体にではなく、様々な条件を加味して個別に削減していく、国民を個別撃破していこうとして出てきたのが社会保障番号なのだ。所得や資産だけではなく、病歴や通院歴、さらには、これまでどれだけの保険料を払い、どれだけ給付を受けたのかといった個人情報を、番号を使って集め、「真に手を差し伸べるべき人」なのかどうかを判定する、裏返せば「手を差し伸べる必要のない人」を給付対象から排除していこうというものだった。

 こうした考えは、マイナンバーに継承されている。5月22日の参議院本会議での辰巳孝太郎議員(日本共産党)の質問に対し、麻生太郎財務大臣は「社会保障制度を維持していくためには、負担能力に応じた公平な負担を求めることが必要」、「4月27日の財政制度審議会では、こうした観点から、医療・介護分野において、高齢者に対して利用者負担を求める際、マイナンバーも活用しつつ、所得のみならず預貯金等の金融資産も勘案して負担能力を判断する仕組みとする必要があるのではないかと議論がされた」と答えている。

 マイナンバーは、こうした社会保障番号の考え方に、さらに税制調査会の「昭和54年度の税制改正に関する答申」以来の悲願である納税者番号の機能を加えたものなのだ。正確な所得の把握に役立てばと思う人も多いかも知れないが、徴税強化の対象となるのは、資産家ではなく、専ら庶民なのだ。

 国税庁のウェブサイトにあるマイナンバーの解説には「番号を利用しても事業所得や海外資産・取引情報の把握には限界」(注13)があるとしている。海外資産や取引で利益を上げるのは、どう考えても資産家であろう。庶民には関係のない話だ。その一方、個人番号を年末調整の書類や源泉徴収票等に書かせることで、扶養控除や、学生のアルバイト収入、サラリーマンなどの副業による収入などの申告が正しく行われているかどうかを調べるには、マイナンバーは大きな威力を発揮するのだ。庶民から搾り取るためのマイナンバーなのである。

 政府にしてみれば、預貯金口座などの資産把握や、医療や介護分野での利用は、もともと想定していたものであり、当初から番号法に盛り込みたかったものなのだ。しかし、さすがに最初からそこまで広げてしまえば国民の反発が大きいだろうと考え、仕方なく「小さく産んで大きく育てる」という方法をとったのだ。

 残念なことに、マイナンバーへの国民の関心は低く、反対する声も広がっていない。こうした状況が続けば、安倍政権は安心してマイナンバーの暴走を続けることになる。そして、その先には、ありとあらゆる個人情報がマイナンバーによって集約される暗黒社会が訪れるだろう。暴走にストップをかけるには、「個人情報が漏れたら困る、怖い」だけに留まらず、マイナンバーが出て来た背景や、真の狙いが何かを明らかにしていくとともに、安倍政権が進めている戦争の出来る国づくりとの関係についても考えることが必要ではないだろうか。

■注

  1. https://www.facebook.com/mynadiary/posts/840912409322185:0
  2. http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/
  3. http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/faq/faq3.html
  4. http://www.cao.go.jp/bangouseido/sns/facebook.html
  5. https://www.facebook.com/mynadiary/photos/a.839879212758838.1073741830.835530476527045/840874355992657/?type=1&theater
  6. https://twitter.com/mitsuru_kuroda/status/605025182885900289
  7. https://www.facebook.com/mynadiary/photos/a.839879212758838.1073741830.835530476527045/846457175434375/?type=1&theater
  8. http://law.e-gov.go.jp/announce/H25HO027.html
  9. http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/logo.html
  10. https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/number.html
  11. http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/faq/faq3.html#q3-4
  12. http://www.cas.go.jp/jp/houan/150310/siryou3.pdf
  13. https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/gaiyo.htm

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4件のコメント “2015/06/17 【IWJ寄稿・特別寄稿】暴走するアベのマイナンバー 〜「カジノ入館」にまで!? 政府が描く、国民総背番号制の驚愕の“未来図”の正体 黒田充(大阪経済大学非常勤講師)

  1.  SF小説を読んでるのかと思った。ある日、申し込みも登録もしないクレジットカードが送られてくる。「このカードで納税・年金・借金すべてオーケーよ!」、なんて説明が蚤のように小さな文字でびっしり記載された説明書とともに。このカードには公務員か民間人か、ご先祖の由来まで記録されているばかりでなく、NHKの受信料を払っているかとか海外に何回転出したとかも、すべて記録されていて便利。誰にとって便利なのか? 
     若い頃に鑑賞したSF映画、『未来世紀ブラジル』は、こうした登録を作成する過程に蝿が飛びこんだため、マイナンバー上の名前が一字誤植されたために起こる悲喜劇を描いた作品だが、年金情報が筒抜けの有様のこの国では、もっとひどい混乱がおこるんじゃあないの?ご免こうむりたいね。

  2.  来年1月にスタートするマイナンバー制度は、以前から計画があるサービサー(取立て専門会社)やクレジット会社に税金や年金や保険料の取立てを委託する素地を作ったのではないだろうか。当然ながら個人情報はこれらの企業に筒抜けで、一旦これらの企業に入った情報は二度と無くなることはない。
     クレジット会社に入った個人情報は、クレジットカードの金利に影響する。返済計画が遅れがちだか最終的には返済する客が、実はクレジット会社にとっては元金と割り増し金利をキッチリ返す“太い客”なのだ。別の言い方をすると良いカモだ。当たり前だが、情報を漏らされた個人の人生は、同じ生活をするにもカネを無駄に使う損な人生になる。もちろんだ、こういう客はきちんと期日どおりに返済するときも高い金利を払わされることになる。最初から契約時に金利を高くするからだ。
     公的資金の回収を依頼するサービサー(取立て専門会社)やクレジット会社だが、これは米国の会社の日本参入要求から出たものだろう。ここでも、日本人の稼ぎが米国に流出するわけである。小泉内閣以降の急激な外国企業への市場開放によって、日本人がいっそう貧乏になる。その一連の流れから出てきたものだと思う。
     

  3. クレカ機能付与は100%の集金、取り立て委託目的で間違いありません。
    暗に税理士から耳に入れました。
    知ってる人はとっくに知ってます。
    どうかさらなる取材を

  4. 【特別寄稿】暴走するアベのマイナンバー 〜「カジノ入館」にまで!? 政府が描く、国民総背番号制の驚愕の“未来図”の正体 黒田充(大阪経済大学非常勤講師) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/249621 … @iwakamiyasumi
    徴税強化の対象は、資産家ではなく、僕ら庶民なのだ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/611137667934216192

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