今後も続くのか!? 政府による「行政不服審査法」の濫用〜辺野古新基地建設をめぐり防衛省の主張に変化が! 長さ300メートルの「仮設岸壁」の設置が頓挫する可能性 2015.5.13

記事公開日:2015.5.17取材地: テキスト動画
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(IWJ・ぎぎまき)

※5月17日テキストを追加しました!

 「今度は国土交通大臣の名前で、『執行停止』の手法に出ることが予想される」

 沖縄防衛局(以下、防衛局)が大浦湾に海底に設置したコンクリートブロックが、岩礁破砕許可区域外でサンゴ礁を破壊した可能性が高いとして、翁長雄志沖縄県知事は2015年3月23日、防衛局に対し海底ボーリング調査などの海上作業を停止するよう文書で指示した。防衛局は、翁長知事のこの指示を不当とし、農水省に対し「指示取り消し」の審査請求を求め、林芳正農水大臣はこれを容認。翁長知事の指示効力を停止する、「執行停止」の措置を決定した。

 現在も、不服審査請求の調査は継続中で、翁長知事の指示効力は一時停止したままだ。

 「農水大臣の名前で翁長知事の指示の執行停止を決めたわけだが、県はああいった手法が使われるとは全く予想していなかった。たじろいだのではないか」

 「辺野古の海をこわすな」と題した市民集会で2015年5月12日、連日、海上行動に出ている北上田毅氏が沖縄から駆けつけ、マイクを取った。北上田氏は、政府による「行政不服審査法」の濫用を批判し、今後の展開は当初の想定よりも厳しいものになると指摘。農水大臣の次に、国土交通大臣が同様の手法で、知事の権限の停止を決定するだろうと予測した。

▲緊急集会には沖縄選出の糸数慶子議員のほか、赤嶺政賢、玉城デニー両議員も駆けつけた

■ハイライト

  • 9:30~10:30 集会/10:45~12:30 政府交渉(防衛省、農水省)

「行政不服審査法」は一方的な公権力の行使から国民を守るための法律

 この日の緊急集会を主催した国際環境NGO FoE Japanの満田夏花氏は、冒頭、防衛局による「行政不服審査請求」とそれを認めた農水省の「執行停止」の決定について異議を唱えた。

 「行政不服審査法」は1962年、もともと、一方的な公権力の行使から、国民を守るための法律として制定された。今回、防衛局が同法を使って翁長知事の決定に不服を申し立てことは、法の解釈の歪曲であり、恣意的な濫用だと満田氏らは批判した。

 3月30日、IWJはこの件で農水省に問い合わせている。

 防衛局という行政庁が国に対し、「行政不服審査法」を使い申し立てを行なうことはおかしいのではないか。この問いに対し、担当の水産庁増殖推進部栽培養殖課・早乙女氏は、防衛局を「事業者」と同等という判断をしたと回答。国ではあるが、事業実施者でもあるため、行政不服審査上、申し出る資格を持っていると判断したというのだ。

 社民党の福島みずほ参議院議員も30日、予算委員会でこれを問題にし、国会で追及した。

 福島議員の質問に対し、中谷防衛大臣は「県知事の許可が必要であり、私人と変わりがないために、国に申し立ての適格があるものと認められた」と答弁。福島議員は「裁判官と原告を同じにしてはいけない」と厳しく問いつめている。

 農水省は執行停止決定書の中で、辺野古基地建設が遅れ、日米両国間の信頼関係に悪影響を及ぼすことで外交、防衛上の損害が生じ、重大な損害を避ける緊急性があると主張しているが、満田氏はこれについても、農水省は「水産資源保護法にもとづき、水産資源の保護といった観点から判断を行なうべき」だと反論した。

林農水相の次は、太田国土交通相の登場か?

 現在、新基地建設に伴う埋め立て承認を検証する第三者委員会が、仲井眞弘多前沖縄県知事の承認に法的な瑕疵がなかったかを検討しているが、結論が出るのは7月の見通し。

 北上田氏によれば、高い確立で埋め立て承認の法的な瑕疵が認定されるだろうと話すが、一方で、たとえ翁長知事が承認を取り消したとしても、今の国の姿勢からすれば、知事の決定に簡単には従わないだろうと推測する。

▲緊急集会後の政府交渉で、防衛省職員を追及する北上田氏

 「翁長知事は7月の結果に基づいて、仲井眞前知事が出した埋め立て承認の取り消しをする、と言われている。おそらくそうなると思います。ただ、国が本当にひどい脱法措置という手法を使って露骨なやり方を始めているが、場合によって、翁長知事が埋め立て承認を取り消したとしても、今度は監督官庁である国土交通省の名前で、また、『行政不服審査請求』をして大臣が(翁長知事の指示効力を)取り消す。

 そういった手法に出ることは、かなりの確立で予想される。以前、考えていたような期待はできなくなっている」

 さらに、5月11日から、県独自の潜水調査の実施計画を、外務省を通じて米軍に要請している沖縄県だが、もし、立ち入りが許可され、サンゴ礁の破壊が岩礁破砕許可区域外で確認されたとして許可を取り消した場合でも、政府はすでに強気の姿勢を見せている。

 許可取り消しを不服として、抗告訴訟を提起する方針をすでに固めている政府は、行政不服審査法に基づく不服申し立てを行うことも視野に入れていると明言しているのだ。

仲井眞前知事による岩礁破砕許可証には条件が付いていた!

 しかし、それ以前に、2014年8月28日、仲井眞前知事が出した埋め立て本体部分の岩礁破砕許可証にはある条件が付けられていたことを、北上田氏は改めて指摘した。

 「県は無条件で防衛局に岩礁破砕許可を出したわけではありません。許可証には『本申請外の行為をし、又は付した条件に違反した場合は、許可を取り消すことがある』、『公益上の事由等により、別途指示する場合は、その指示に従うこと』といった条件がつけられていました」

 北上田氏が入手したという許可証のコピーには、それらの条件がはっきりと盛り込まれていた。

(…会員ページにつづく)

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