年間90人の子どもたちが虐待で死亡する現実――すみやかな調査と保護を!NPOが「所在不明児」の照合システム作りを塩崎厚労大臣に要望 2015.5.8

記事公開日:2015.5.11取材地: テキスト動画
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(IWJ・ぎぎまき)

※5月13日に一部テキストを追加しました

 4日に1人のペースで、子どもが虐待死している――。

 厚生労働省が発表している最新データによると、2013年度に虐待で死亡した子どもの数は90人。ほぼ4日に1人という頻度で子どもが虐待死していることになる。その半数近くは、生まれて間もない0歳児で、無理心中で死にいたるケースは3分の1にもおよぶ。主な加害者は全体で見ると実母のケースが圧倒的に多く、子育て中の母親の孤立が深刻化しているとも言える。

 相談対応件数は、児童相談所に寄せられたものだけでも年間7万件を超えるといい、1990年代に子ども虐待の存在が顕在化してから、その数は右肩あがり。これらは厚労省が公表しているデータによるところだが、一方で、児童相談所による一時保護の問題も存在している。実際には親による虐待が行われていない場合でも、一方的な通報により、親の同意なく子どもが突然保護され、その後何年も親子間の面会や通信の一切が謝絶されてしまうという深刻なケースが発生している。職員による子どもへの虐待や、危険な向精神薬の投与なども多数報告されているのだ。しかし、実際に虐待を受け、命の危険にさらされている子どもの安全確保は待ったなしだ。

 2015年5月8日、認定NPO法人「子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク」の理事長であり、医師の山田不二子氏らは塩崎恭久厚生労働大臣と面会。「所在不明児」を照会できるシステム作りを、インターネット上で集まった2万筆以上の署名とともに要望した。

▲児童虐待相談の対応件数及び虐待による死亡事例件数の推移(厚生労働省資料)

■ハイライト

  • 日時 2015年5月8日(金)15:30頃〜(要望書提出)/17:00〜(記者会見)
  • 場所 厚生労働省/厚生労働記者会(東京・霞ヶ関)

「所在不明児」の早期発見が虐待死を防ぐ

 山田氏らが提案する「照会システム」とは何か。

 近年、「所在不明児」が社会問題化し、2014年5月時点では、生活実態が確認できない児童の数は2900人を超えた。その後の追跡調査によって減少したものの、いまだに141人の子どもたちの行方が分かっていない。

 安否を確認できない児童が虐待死するケースが相次いでいることから、山田氏は、「所在不明児」の中には、虐待やネグレクトを受けている子どもが含まれるているだろうと推測する。

 「所在不明児の存在は知られていますが、その中で死亡するケースがたくさん見つかってきています」

 山田氏らは、既存の自治体間の連携には限りがあるとし、自治体から得た「所在不明児」の情報を国が「照会システム」に集約、積極的な調査と保護に乗り出す必要性を訴えた。

死亡から7年が経って発見された虐待死

 2014年5月、食事や水を十分に与えず当時5歳の男児を餓死させたとして、男児の父親が保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された。男児は死亡してから7年が経過しており、白骨遺体で見つかっている。児童の死亡は、厚木児童相談所の職員が厚木警察署に「中学に入学しているはずの男児が入学していない」と通報したことで発覚。同年4月に厚労省が所在不明児童の調査に乗り出したことがきっかけとなった。

 他にも、母親と転居を繰り返していた横浜市の当時6歳の女児が、死後9ヶ月経って、雑木林の中で見つかっている。住所登録のあった千葉県松戸市の職員が、小学校入学前の健康診断を女児が欠席したことで行方を追っていたが、女児の死は防げなかった。

 横浜市の児童虐待・DV対策の担当者は、虐待死を防げなかったことについて、「入学手続きをしていなかったことが分かっていれば、別の対応ができたのではないか」という趣旨の発言をしていることから、自治体間の情報共有が十分に行われていないことが分かる。

虐待の加害者に情報が漏れてしまうケースは多い

 しかし、やみくもに情報を共有すればいいわけではない。そこには特別な配慮が必要だと山田氏は強調する。

 IWJのインタビューに山田氏は、次のようにコメントを寄せた。

 「『所在不明児』の中には、DVや子ども虐待の加害者から逃げ、現在の所在地を知られないようにするために、住民票の移動をしていない人たちが相当数含まれると予想されています。

 その子どもたちを、『所在不明児』と区分けしなければ、DVや子ども虐待の加害者から逃げつつも、健全な生活を送っている親子に対して人権侵害を侵すことになってしまいます」

 つまり、『所在不明児』の追跡調査を行うことで、虐待やネグレクトの被害から子どもたちを救いだせる可能性がある半面、所在を明らかにしてしまうことで、虐待の加害者に子どもの移動先の住所が漏れてしまう危険性もはらんでいるというのだ。

 山田氏によれば、自治体同士が情報を共有してしまうことで、加害者に移動先の住所が漏れてしまった被害者がいるという。だからこそ、「国の照会システムが必要」だと山田氏は強調した。

「住民票を繋げるという既存の仕組みを断ち切る必要がある」

▲認定NPO法人「子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク」が国に要望する「情報管理・照会システム」の仕組み

(…会員ページにつづく)

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「年間90人の子どもたちが虐待で死亡する現実――すみやかな調査と保護を!NPOが「所在不明児」の照合システム作りを塩崎厚労大臣に要望」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    年間90人の子どもたちが虐待で死亡する現実――すみやかな調査と保護を!NPOが「所在不明児」の照合システム作りを塩崎厚労大臣に要望 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/244871 … @iwakamiyasumi
    4日に1人のペースで、子どもが虐待死している。なんという悲しい国だ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/597880285674344450

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