「決定文は高浜3、4号機が危ないと言っているだけではなく、今の規制基準で再稼働すること自体が『誤り』であることを指摘している」――。

　福井地裁は4月14日、関西電力・高浜原発3、4号機（福井県）の再稼働を認めない決定を下した。再稼働差し止めを求める住民の仮処分申請が認められた。仮処分で原発の運転を禁止する決定は初で、関電は異議申し立てなどによってこの決定が覆されるまで２基を再稼働できない。

　地裁の決定を受け、住民側の弁護団らは同日、記者会見し、新規制基準のもとでの再稼働は許されないと主張。規制委に対し、規制委に基準の作り直しと、原発の審査を停止するよう、翌朝までに申し入れると明かした。

河合弁護士「『世界一厳しい基準』などと言っているのは安倍さんだけ」

　福井地裁は今回の決定で、規制委の策定した原発新規制基準について、「安全性は確保されていない」と厳しい見方を示した。

　「新規制基準に求められるべき合理性とは、原発の設備が基準に適合すれば深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な内容を備えていることであると解すべきことになる。しかるに、新規制基準は上記のとおり、緩やかに過ぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない。新規制基準は合理性を欠くものである」

　また、「そうである以上、その新規制基準に本件原発施設が適合するか否かについて判断するまでもなく、債権者らが人格権を侵害される具体的危険制即ち被保全債権の存在が認められる」と認定した。

　仮処分決定後には報告集会を兼ねた記者会見が開かれた。

　「新規制基準」が「世界でもっとも厳しい基準」とされていることについて、住民側の弁護士を務める河合弘之氏は、「世界一厳しいと言っているのは安倍さんだけ。（規制委の）田中俊一委員長も安倍さんの発言は『政治的な発言』だと言っている」と指摘し、「世界一」の根拠など存在しないと一蹴した。

「地裁は今の規制基準で再稼働すること自体が誤りだと指摘している」

　また、河合氏は、福井地裁の決定が「新規制基準は合理性を欠く」と認めていることについて記者に問われると、「決定文は高浜3、4号機が危ないと言っているだけではなく、今の規制基準で再稼働すること自体が誤りであることを指摘している」と回答した。

　同じく住民側の弁護士である海渡雄一氏は、今回の決定について、「新規制基準を作り直しなさい、ということだろう。作り直さない限り、安全性は保障できない、と（地裁は）言っている」と読み解いた。

　海渡氏はさらに、「田中委員長自身が（新規制基準を満たしたからといって）『安全』だとは言っていない。今回は、規制委員会がこれまでそう言ってきたことを逆手に取った。この決定が確定したら、新規制基準を根本から作り直す事態になる」と述べた。

　河合氏は「明日の朝までに、原子力規制委に基準の作り直しと、審査をやめるように申し入れる」と明かした。

菅義偉官房長官、原発再稼働「粛々と進める」

　福井地裁の決定について、福井に隣接する滋賀県の三日月大造知事は同日、記者団に対し、「人格権や原発の安全性に重きをおいた決定で、原子力行政にとって重大な問題提起だと思う」とコメントした。

　同じく福井に隣接し、一部が高浜原発の３０キロ圏内にかかる京都府の山田啓二知事は、「国や事業者は安全性について、国民に丁寧かつ明確な説明を行うべき」だとの認識を示した。

　他方で菅義偉官房長官は同日午後の定例会見で、「原子力規制委員会が専門的見地から十分に時間をかけて基準に適合すると判断した。その判断を尊重して再稼働を進める方針に変わりはない」と話し、「粛々と進める」と強調した。