【統一地方選挙・大注目の北海道知事選を考える】「原発再稼働」が争点に急浮上!TPPをめぐり異変も 〜与野党一騎打ちの行方は 2015.3.26

記事公開日:2015.3.27取材地: テキスト
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(IWJ福岡中継市民 こうの みなと)

 いよいよ、4年に1度の統一地方選が、2015年3月26日告示(4月12日投開票)の知事選挙から始まりました。今回、知事選は10道県で行われますが、与野党対決(自民対民主)の構図となるのは、北海道と大分県の2カ所のみです。この他、奈良県は現職知事と前生駒市長との接戦が予想されていますが、残りの7県(神奈川県、福井県、三重県、鳥取県、島根県、徳島県、福岡県)は、現職が極めて有利な情勢です。

 そして、結果の見えないダントツの大激戦が予想されるのが、北海道です。

 4選を目指す現職の高橋はるみ知事(61)=自民党・公明党推薦と、民主党の支持および、維新の会・社民・共産党・新党大地の支援を受けて初出馬するフリーキャスターの佐藤のりゆき氏(65)との一騎打ちとなります。

 私は福岡に住んでいますが、今年1月に佐賀県知事選挙を取材した経験から、与野党一騎打ちとなる激戦区、北海道に大注目しています。九州の地から、北の大地の知事選を俯瞰し、その論点、争点をまとめていきたいと思います。

北海道政初の4選を目指す高橋氏一番の弱点は「多選批判」か

 これまでの北海道では、3期12年が知事の最長任期でした。史上初めて4選を目指す高橋氏に対し、佐藤氏は公開討論会で、細川護煕氏が熊本県知事退任時に残した、「権不十年(けんぷじゅうねん):権力というものはどんなに健全であっても10年たてば腐る」という言葉を引用し、厳しく多選批判を展開しました。

 これまでの3期にわたる実績を有権者がどう評価するのか、未知数な部分は多いものの、「多選批判」は、高橋氏にとって一番の弱点となることは否定できません。

2年半前から入念な出馬準備をしてきた佐藤氏=野党結集を実現

 佐藤氏は、「北海道のみのもんた」とも称されるほど、地元では知名度抜群のフリーキャスターです。とくに、北海道文化放送の「のりゆきのトークDE北海道」という情報番組は、2012年3月まで17年半にわたり、平日は毎日放送されていました。

 この番組終了後、佐藤氏は「北海道独立研究会」を主宰し、知事選出馬のための土台作りを着々と進めてきました。2014年9月に出版された「佐藤のりゆきの新北海道デザイン」は、北海道内の有識者18人との対談本となっており、佐藤氏の事実上の政策集となっています。

 こうした佐藤氏の入念な準備と抜群の知名度は、民主党をはじめとする野党を突き動かしました。

 民主党は2月まで横路孝弘元氏のもと独自候補の擁立を模索していましたが、最終的には断念し、佐藤氏支持を表明しました。共産党・社民党・維新の会がこれに相乗りし、最後は3月13日に鈴木宗男氏が率いる新党大地が支援を表明したことで、(「オール沖縄)のような政策協定は結ばないものの)保守から革新までの野党が共闘する「道民党」体制が実現しました。

 ただ、新党大地の鈴木宗男代表が「共産党側からの支援は保守票離れを招く」との不信感を表明したことから、3月12日に、共産党から受け取っていた支援状を返上。「今まで通り静かに応援してほしい」と保守層への配慮を示しています。

過去二回の国政選挙結果を踏まえると佐藤氏優勢か

 2014年12月に行われた前回の衆議院議員総選挙・比例北海道ブロックの政党等別得票数を見てみると、自民+公明=約105万票に対し、民主+共産+維新+社民=約129万票となっており、各政党の勢力だけで比較すると、高橋氏よりも佐藤氏が優勢であると言えます。

 同様に、2013年7月に行われた議院議員選挙・北海道ブロックの候補者別得票数でも、自民+公明=約90万票に対し、民主+大地+共産+みんな=約147万票という結果でした。

 しかし、2011年4月に行われた高橋氏3期目の知事選挙では、自民+公明の推薦だけで約185万票も獲得しており、一概に国政選挙の結果を知事選に当てはめることはできません。

最新の世論調査では、「泊再稼働」が最大争点に急浮上

 北海道新聞社は、3月23日、知事選に関する最新の世論調査を発表しました。

 「北海道電力泊原発の再稼働の是非」が前回調査(2月28日、3月1日実施)よりも11ポイント増え、最多の27%に浮上しています。

▲泊原子力発電所

 3月3日に発表されていた前回の世論調査では、「北海道電力泊原発再稼働の是非」(16%)は3位の争点にすぎず、告示直前の20日間あまりで急激な世論の変化があったと言えます。この原因として、佐藤氏が、公開討論会で再稼働反対の姿勢を鮮明にしたり、北海道電力がこれまで2015年11月としていた再稼働の目標を断念したことなどが考えられます。

 高橋氏は、「原発に依存しない北海道を目指す」とした上で、再稼働の是非は「予断を持ってイエスともノーとも言うべきではない」と発言し、原発再稼働についての曖昧・慎重戦略を貫いています。これに対し、佐藤氏は「脱原発・泊原発の再稼働には反対する立場」という姿勢を鮮明にし、高橋氏に対して、方針を明確にするよう強く迫っている形です。

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 しかし一方で、北海道民の大多数が泊原発再稼働に反対しているのかと言えば、そうとは言い切れないデータもあります。泊原発再稼働の賛否を問う世論調査(3月4日発表)では、「反対52%、容認47%」となっています。つまり、その差はわずか5%で、世論は現在、真っ二つに割れている状況に変化はないと考えられます。

 再稼働を強力に推し進める安倍政権の影響からか、4年前の3.11以降、容認派は着実に増えてきており、今後の情勢次第では、容認派が反対派を逆転することも十分にありえます。

「景気・雇用対策」「医療・介護・福祉など社会保障政策」なども重要な争点

 知事選争点に関する「原発再稼働問題」(1位)以外の争点としては、「医療・介護・福祉など社会保障政策」(2位)が前回比4ポイント増の25%。前回調査で最多だった「景気・雇用対策」(3位)が‐17ポイントと大幅に減少し24%。「人口減少問題への対応」が2ポイント増の8%(4位)。「食や観光などの産業振興政策」が1ポイント減の7%(同5位)、「現職の4選の是非」が前回と同じ7%(同5位)となっています。

 「原発問題」が一番の争点に浮上したものの、依然、「景気・雇用対策」「医療・介護・福祉など社会保障政策」などの一般的な政策も重要な争点であることに変わりはありません。地域経済の疲弊や過疎化の進行にどう歯止めをかけ、雇用・産業を創出していくのかが大きく問われています。

 産業振興策について、両氏は、具体的な数値目標を掲げ政策をアピールしています。高橋氏は「道産食品輸出1000億円をめざす(2013年度で約580億円)」とし、佐藤氏は「道内総生産50兆円(11年度で18兆2630億円)」を目標に掲げています。しかし、両候補とも、具体的に「いつまで」という記載がないのは残念な点です。

 道と市町村との連携については、高橋氏が「北海道型地域自律圏」の形成を掲げ、振興局におけるモデル的な取り組みの実施などを掲げています。一方、佐藤氏は「市町村長道政顧問会議」の設置や、地域ごとのブロックにわけて、現場に即した地域活性化、住民サービスを提供することなどを主張しています。

 また、両氏共に観光振興予算の増額を掲げており、高橋氏は「2020年の東京オリンピックをターゲットに、外国人観光客300万人を目指す」としています。一方、佐藤氏は、「観光立国・北海道をめざし、日本人を含めた来道観光客を年間800万人に増やす」としています。

 そして、「原発問題」も立地自治体からしてみれば、切実な「景気・雇用問題」だということを忘れてはなりません。原発に対する世論が割れる中で、両氏は非常にナーバスな選挙戦を強いられることになります。

消された最大争点「TPP」の謎

 ここまで読んで、「あれ?」と思われた方が多いのではないでしょうか。この北海道新聞の世論調査では、北海道とは切っても切れない一番の争点、「TPPの是非」が質問項目に入っていないのです。

 「農業・酪農王国」である北海道ではこれまで、TPPは最大の懸念事項でした。TPPによって関税が撤廃(もしくは切り下げ)されれば大打撃を受けることは間違いなく、それは都市部を含めて、先の世論調査の項目にある北海道全体の「雇用」、そして「社会保障制度」にも大きな影響を与えることは間違いありません。最大の争点になりそうなものですが、しかし、この世論調査では「TPP」は項目から外されています。なぜなのでしょうか?

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 そして、これまでTPPを強行に反対してきているJAの動きにも、疑問符が付きます。北海道内の農協(JA)組織でつくる政治団体・北海道農協政治連盟(道農政連、会長・飛田稔章JA北海道中央会会長)は3月11日、高橋氏を推薦することを決定しました。同様に、道内の漁協組合長らでつくる北海道水産政治協会も1月に、高橋氏に推薦状を出しています。

 北海道内のJA数は110団体に上り、組合員数約44万人(組合員数72,685人+准組合員266,309人:平成22年度時点)にのぼり、組合員の投票行動が選挙結果を大きく左右することは言うまでもありません。

 農業・酪農王国の北海道で、TPPを手放しで賛成することはあり得ない選択肢です。高橋氏も佐藤氏も、もちろんTPPに賛成はしていません。

 道農政連は、高橋氏推薦の理由として、TPP交渉や国の農協改革に対する姿勢が、道内の農協組織と一致していることをあげています。

 確かに高橋氏はこれまで、「重要5品目の関税維持」などを道内の農協団体などと共に、国に強く要請しています。明確に「TPP参加反対」を表明している、佐藤氏と比較するとトーンダウンするものの、高橋氏は政策集の中でも、「国会決議を遵守し、毅然とした姿勢を貫くことを国に求めるとともに、わが国の食料自給率向上を支えていくため、本道の立場をしっかりと主張していく」とも述べています。

 しかし、先にも触れましたが、安倍政権のTPP推進姿勢や農協改革によって、JAは大打撃を被ります。それにも関わらず、なぜJA北海道は自民党推薦の高橋氏の支持にまわったのか。今、北海道で何が起きているのか。

 こちらは、IWJとして稿を改めて詳細にレポートする予定です。

 4月12日の投開票日に、果たして北海道民がどのような審判を下すのか、全く目が離せそうにありません。私も九州の地から、その行方を見守っていきます。

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“【統一地方選挙・大注目の北海道知事選を考える】「原発再稼働」が争点に急浮上!TPPをめぐり異変も 〜与野党一騎打ちの行方は” への 2 件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    【統一地方選挙・大注目の北海道知事選を考える】「原発再稼働」が争点に急浮上!TPPをめぐり異変も 〜与野党一騎打ちの行方は http://iwj.co.jp/wj/open/archives/240695 … @iwakamiyasumi
    嫌な動きが水面下で起きているようだが、道民は民意を見せつけてほしい。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/581380756590583808

  2. 谷口 真也 より:

     道民です。GOOD REPORTだと思います!
     道知事選がもう盛り上がっているかといえば、そんな感じは受けません。しらけきった感じでもないでしょう。
     道民が自らの一票で知事を選べるようになったのは、戦後のことです。それ以前は、国から北海道長官が送られてくるシステムでした。道知事という存在は「戦後生まれ」で、日本国憲法と同級生みたいなものです。大事です。
     だから、政権から送り込まれただけみたいなことをされたら困るので、注目しててください。
     

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