「民主党代表は日本の民主主義を守る最後の砦だ」~民主党代表選候補者による討論会 2015.1.15

記事公開日:2015.1.16取材地: テキスト動画
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(IWJ・薊一郎)

 民主党代表選候補者の長妻昭・元厚生労働相、細野豪志・元幹事長、岡田克也・代表代行(立候補届出順)3氏による討論会が1月15日(木)11時より、日本外国特派員協会で行なわれた。

 討論会は、まず各候補者が代表選挙に立候補した動機・政治理念・民主党として掲げる政策等についてスピーチを行い、その後、記者からの質問に3氏が回答するという形をとった。

■ハイライト

民主党代表選挙の意義

 「民主党は本来改革政党だ。維新の党にお株をとられた感があるが、改革政党としての狼煙をあげていくことで、それを取り戻して民主党を甦らせ、再建をする。その先頭に立つのに、私がふさわしいと考え立ち上がった」

 長妻氏は、代表選挙の意義と立候補した動機をこのように語った。

 細野氏は、日本の民主主義を守る上で、政権交代が可能な政党としての民主党を復活させるために、次期民主党代表に課せられた使命の重要性を強調した。

 「国民にとって、政権交代可能な仕組みというのは、民主主義の基本的なインフラだ。それを復活させたい。そういう使命が民主党代表選にある。

 したがって、野党の代表選挙ではあるものの、日本の民主主義を守る最後の砦が次の代表だ。それぐらい重要な選挙が今行われている」

 岡田氏も細野氏と同様、政権交代可能な政党として民主党を立て直し、その先頭に自らが代表として立つ決意を、次のように語った。

 「私は20年間同じことを言ってきた。自民党以外にもう一つきちんとした政党を作って、お互いが競い合っていく、政権交代がある政治を実現しなければいけない。

 そういう立場から見ると、今、民主党が国民の信頼を失っている。野党第一党とはいえ、政権を目指せるという状況にない。これは危機的状況で、私自身何のために20年間やってきたのかということでもある。

 やはり私自身がリーダーとして、この民主党を立て直さなければならない。その思いで立候補を決めた」

格差解消への取り組み姿勢

 「代表選に立候補しようと考えた直接のきっかけは、先月(2014年12月)の総選挙だった。多くの人から叫びに似た声をいただいた。多かったのが、格差が限界まで来ている、助けて欲しいという声だった」

 長妻氏はこのように述べ、社会の経済格差拡大が大きな社会問題となっていることを指摘。格差解消のための政策として、「人への投資、人の能力を最大限発揮できる、そういう社会を作る」ことを目指すと主張した。

 具体的には、「所得再分配政策、累進課税をもっと強化していく。金持ちの資産にはもっと課税をしていく。(格差を示す)相対的貧困率削減の数値目標を、きちっと国として出す。そして、消費税を上げるにあたっては、給付付税額控除という制度も入れて、格差を是正していくことが重要」と述べ、格差解消のための政策を打ち出した。

 「共生社会というのは、私の人生と重なり合う部分がある」

 このように語る細野氏は、20年前の阪神淡路大震災でのボランティア活動の経験、自身が大学時代に苦学した経験などから、「私自身が社会に支えてもらって、学問を修めることができたが故に、逆に支える側になったときに、しっかりとその役割を果たす。これが私の生き方だ」と述べた。

 また、細野氏は日本社会の大きな問題として、児童養護施設を取り上げた。

 「4万人の、親に育ててもらえない子ども達の多くが施設で育てられている。彼らの大学進学率は10%だ。彼らが人生を切り開くチャンスを、もっと社会で与えるべきだと思う」

 細野氏はこのように語り、児童養護施設の問題を共生社会という観点から解決していく強い意志を示した。

 「日本はかつては一億総中流と言われた。今は全く夢物語、先進国でも格差の大きい国だ」

 岡田氏は、現在の日本の状況について、このような見方を示し、「これをしっかり変えていく。先進国のなかで格差の少ない国を作り上げる。そのモデルに日本がなる。それが私の目指しているところだ」と述べた。

 具体的な格差是正のための政策としては、長妻氏と同様に、所得税・相続税について、「もう少し累進税率を高めるべきだ」と述べた。また、「子ども子育てに重点予算配分をする。年金の最低保証機能を高める。正社員で働ける仕組みを作る」等の「政策パッケージ」を提示すると語った。

経済政策で長妻・岡田両氏、格差是正のための「分配」を重視、細野氏は中小企業の負担軽減・地方分権を推進

 「分配か成長かどちらかではない。持続的な成長には適切な分配が必要だ」

 長妻氏は、経済成長における「分配」の必要性を強調し、「バブルと格差を生み出す従来のアメリカ型資本主義ではなく、ヨーロッパを参考にして、日本型の資本主義を作り上げていく」方向性を唱えた。

 さらに、日本経済の状況について、次のような見解を述べている。

 「現在の日本経済の最大の問題点は個人消費だ。GDPの半分近くを締める個人消費が上向かない。家計が非常に痛めつけられている。

 今、家計から企業へとお金がシフトする方向が強まっている。事実、16ヶ月連続で実質賃金がマイナスとなっている」

 長妻氏は、消費支出の低迷が経済成長鈍化の原因であると指摘した。その上で、経済格差を解消し、「人の能力の発揮を阻む壁を取り除いていくことで、結果として経済は成長し、パイは大きくなる」と主張した。

 「国民の信頼」を取り戻すためには「過去との決別」が必要だと強調する細野氏は、そのための第一として「経済成長を実現しなければならない」と語る。

 安倍政権が実施する法人税減税について、細野氏は、「これは東京をはじめとした一部の大企業にしか効果はない。ボトムアップの経済政策を我々はやっていきたい」と述べ、法人税減税の効果を疑問視するとともに、中小企業の負担を軽減すべきと主張した。

 「企業が負っている社会保障負担を軽減することで、人を雇っても負担が上がらない仕組みを作りたい。法人税の減税に6千億7千億の財源があるなら、我々はそれを中小企業の負担を軽減することに充てていきたい」

 細野氏は、規制緩和政策としての現在の経済特区について、「これは中央主導である。それぞれの自治体が、規制改革を自らできるような地方分権を行うことによって、地方経済を元気にしていく」と述べ、地方分権による「ボトムアップの経済政策」について力説した。

 岡田氏は、「規制改革や成長戦略が重要になる」という点において安倍政権と認識を同じくすると述べるものの、「問題は、その成長戦略がうまくいっていない。成果が上がっていない」と指摘した。

 「法人税の引下げや、カジノなどが安倍政権の成長戦略と取りざたされているが、私は間違っていると考えている」

 岡田氏は、安倍政権の成長戦略を批判し、「アベノミクスの最大の問題は、成長の果実をいかに分配するかが全く欠落していることだ」と述べ、分配による格差の少ない日本を目指す方針を語った。

安全保障における日本がとるべき姿勢とは? アジア重視の外交政策を強調

 「やはり民間の交流をもっと活発にしないと行けない」

 長妻氏は、日中関係について、ドイツとフランスを例にとりながら、若者交流の後押しをするなどの民間交流の重要性を語った。

 「政治が少しがたがたしても、人とのつながりにより、国と国との人々の信頼は揺るがない。そういう形を徹底して作り上げることが必要だ」

 安全保障の問題に関して、国民が民主党に対して抱いている不信感を、細野氏は次のように代弁する。

 「多くの国民はこう考えている。民主党に政権を任せたら、国の守りが危ない。

 我々は戦後の日本の平和主義を守りたい。この継承者は安倍政権ではなく、我々だと思っている。

 この現実的平和主義に立ちながら、一方で尖閣の問題や、朝鮮半島有事に備えることができるような民主党に変わっていかなればならない」

 細野氏は日本がとるべき「現実的平和主義」について説明した。

 また、日中関係については、今までの政権のやり方を変え、新しいテーマに取組むべきとし、具体例として「エネルギー・環境」を挙げた。

 「PM2.5の問題も含めて、中国にとっても非常にメリットがあるし、日本が貢献することで、わが国にもメリットがある」

 細野氏はこのように述べ、「新しい協力の仕組み」を進めていくべきだと主張した。

 「日本はアジアの中にある。これは日本にとってラッキーなこと」と語る岡田氏は、アジアの中で日本の国益をこのように語った。

 「アジアは非常に可能性のある地域だ。アジアの平和と豊かさを日本が作り、貢献していく。その中で、日本の平和と豊かさを実現していく。これが私の基本的な考え方だ」

 日中関係について、岡田氏は「政治レベルでは緊張があっても、国民レベルでは必ずしもそうではない」と評価。「日中の首脳間で、別に問題解決しなくても、会うこと自身に意味がある」と述べ、会談を重ねることで両国政府間の信頼関係の回復をはかる期待を述べた。

日本における「多様性」のあり方

(…会員ページにつづく)

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