民主党の枝野幹事長は、12月2日の公示日を目前に控えた11月27日(木) 17時から、学生やアルバイトの若者たちでにぎわう秋葉原で街頭演説した。
「アキバ」で活躍している「地下アイドル」グループも応援に駆けつける中、若い世代にエールを送るとともに、安倍政権やアベノミクスの現状に関する問題点を挙げ、民主党としての政策や自身の思いを訴えた。
(IWJ・細井正治)
特集 総選挙2014
民主党の枝野幹事長は、12月2日の公示日を目前に控えた11月27日(木) 17時から、学生やアルバイトの若者たちでにぎわう秋葉原で街頭演説した。
「アキバ」で活躍している「地下アイドル」グループも応援に駆けつける中、若い世代にエールを送るとともに、安倍政権やアベノミクスの現状に関する問題点を挙げ、民主党としての政策や自身の思いを訴えた。
記事目次
■ハイライト
※以下、発言要旨を掲載します
枝野幸男民主党幹事長(以下、枝野・敬称略)「民主党幹事長の枝野幸男です。衆議院が解散され、まもなく公示されます。『なんで解散するのか、よくわからない』ということで、選挙に対して関心を持ちにくい、と言われています。ましてや、どの選挙でも大体、年齢マイナス10ぐらいが投票率、つまり20代なら10%台、70代は60%台などと言います。
でも『政治』というのは選挙を通じて国民の一票で方向、方針が決まるもの。関心を持たない、投票しないということは、『政治がどんなことを決めてもしょうがない』という『白紙委任』なのです。
本当に今のまま『白紙委任』をしてしまっていいのかどうか、特に若い世代のみなさんにお訴えをさせていただきたい。たとえば財政の問題です。今の経済の問題や、約束された定数削減が実現されていないことなどで、どの党も消費税延期では一致しています。
しかし、だからこそ、ますます若いみなさんに考えていただきたい。というのも、『おまかせ』政治の結果、すでに日本はこれまで積み重ねてきた借金だけで1千兆円にもおよぶのです。これは若い世代のみなさん、さらにその子ども、孫の世代までかけても返していく。
少なくとも利息は払わなければいけない。少しずつ返済もしていかなければならない、そうしたツケの問題です。これから長い間、この日本で税金を納め、暮らしていくでしょう若いみなさんこそ、この国の抱える借金に、誰よりも利害関係があるわけです」
枝野「何年かに一回しかない国政選挙のこの機会に、国が抱えている借金、ツケをそんなに膨らませていいのか。テレビ新聞で伝えられている選挙の争点は、多くの政治的課題の一部だけです。この2年間、それこそ安倍政権が発足してからジワジワ推し進められていること。
たとえばこの秋葉原は、漫画やアニメのファンのみなさんにとっても1つのつどいの場所です。この漫画やアニメなどの『表現の自由』に対して、規制をしていこうという動きが15年ほど前から、あらわれてきました。
これは憲法上の権利でもあり、第三者に迷惑をかけない限り、自由なはずです。民主主義国では『自分に関心がない』とか『嫌だから』といって、公権力で規制してはいけないんです。しかし、この2年間、ジワジワと強められてきています。
こうした流れにも『白紙委任』をしてしまうことになりかねない。新聞やテレビではあまり大きく取り上げられてきていないテーマですが、私自身、衆議院の法務委員会などに長く属して、この問題に直面し、表現規制と闘ってきた者としてしっかり訴えたい。
岸和田だんじり祭かの時にお会いしたご縁で、『仮面女子』というアイドルのみなさんに、さきほど激励していただきました。この秋葉原では、夢を持ち、夢に向かって全力で努力をしている若い子たち、子どもたちがたくさんいます。
『努力は必ず報われる』という言葉があり、夢をもって頑張っている若者たち子どもたちにとって、大事なことなんです。そう信じて努力をしなければ、報われることはないでしょう。でもそれは、自分の夢に向かって心の中で決意をし、信じて頑張るための言葉。
しかし現実には『努力しても、なかなか報われない』人もいくらでもおられる。どんなに頑張っても、極端なケースでは事故に遭ったり病気や怪我だってありえます。しかし、安倍さんは『頑張れば必ず報われる』と勘違いしているのではないかと危惧しています」
枝野「若いみなさんが『社会人になり、給料を稼ぎ、結婚をして家庭を営み、子どもを生み育てたい』、これこそが私の夢だ、という方も多いと思います。ところが、安倍総理は『自民党政権に戻って、雇用が増えた』と威張っていますが、大きな問題があります。
実は、こうした『普通』の暮らしができるような『正規雇用』はどんどん減っています。年収100万、150万。『いつクビを切られるかわからない』不安定な『非正規雇用』や若者たちを、逆に大幅に増やしてしまっているのです。
そうした中で、若者たちに『夢を持て! 努力は必ず報われる』と、発破をかけることは無責任だと思います。努力が必ず報われるように、さまざまな条件をできるだけ整え、運悪く努力が報われない人も『自業自得』などと放り投げ、切り捨ててはいけない。
しっかりとしたセーフティネットを張って、再チャレンジの機会を作る。そうした社会にすることで、若いみなさんに『夢を持て! 努力は必ず報われる』と、発破をかけることができるんじゃないでしょうか。残念ながら、この2年間の政治はそうでなかった。
解散になりましたが、この臨時国会でも、ますます、正社員を非正規雇用に置き換えやすくする『労働者派遣法』の改悪法案が提出されていたのです。しかし幸い、ここまでは2度にわたって廃案に追い込むことができました。
万が一、この選挙で安倍政権がまた圧倒的多数を得れば、『国民の信任を得た』として、この法案が再提出され、今度は少数の野党の立場で抵抗しても、通されてしまうかもしれない。ますます『普通に暮らしたい』という当たり前の夢さえ、かなわなくなってしまう。
努力してもかなわない、私はそのことを当事者である若いみなさんたちのためだけでなく、この日本社会が崩壊をしてしまう、そうした危機だと思っています。さらに言えば、その先には、『残業代をゼロにしよう』という制度も進んでいます」
枝野「『残業するのは本人の努力と能力が足りないからだ。だから残業をいくらしようとも、初めから決めた給料しか払わない。一生懸命がんばって仕事を終えれば、早く帰れるのだから、いいでしょう』と『ホワイトカラー・エグゼンプション』を推進しています。
本当に、みなさんの職場で『自分の仕事さえ片付ければさっさと帰れる』というような環境、どれくらいありますか。残業代をゼロにするような法律ができたら、逆に仕事、『サービス残業』、挙句は『過労死』も増えるのではないか? そんな懸念もしています。
こうした流れは、上から、強い者、豊かな者ばかりに目を向け、全体から集めた資源をそこに集中投与し、より強く、より豊かにすれば、社会全体が引っ張られていく、という今の安倍政権の手法です。4、50年前は、そんな成功体験も確かにありました。
『この道しかない』と自民党はポスターに大書きをされるそうです。でも、本当にそうでしょうか。株をもっている人、大きな輸出企業が潤うことで喜んでいる人もいるのでしょうが、サービス残業で過労死の危機にある、非正規雇用で苦しんでいる人の方が多い。
『あの時代』に比べて日本は今、もっともっと大きく重たい社会になっています。重たすぎるものを上から引っ張れば、ひもがプチンと切れてしまいます。いま日本に必要なのは、重たい社会を『下から押し上げていく』こと。
夢を追いながら頑張っている若い人たちが、『努力すれば必ず報われる』と信じて努力できるためには、『この道』以外にもある、少なくとも、唯我独尊でなく、世の中にはいろいろな人、考え方、生き方がある。
さまざまな立場、視点からの声、意見に耳を傾けながら、社会全体をしっかり押し上げていく。そうした流れへと、『今こそ変える時』であると思っています。
労働法制は緩和ではなく、安定的な雇用を確保するため、むしろ規制強化して少しずつでも非正規の人たちを正社員へと移行させていく。老後や子育ての安心を充実させていく。ちゃんとした仕事に就けていない若者たちに必要なトレーニングの機会を与える。
いろいろな形で社会が力添えして押し上げ、『分厚い中間層』、希望をすれば結婚をし子どもを生み育てられる『普通』の暮らしを当たり前にできる、そうした3、40年前、誰もが信じ、そして多くが叶えられた日本の社会を取り戻していく努力こそ今、必要です」
枝野「自分たちの手法しかない、他の意見、反論、代案もあるのに、国民の声、実情に耳、目を向けることなく、唯我独尊で進んでいる安倍政権に、さらに4年間の『白紙委任状』を渡すようなことにならないよう、私たちも国会の中に緊張感を取り戻します。
安倍さんたちだけの思い込み、手法で暴走はダメです。まさに今こそ、その緊張感をつくらなければいけないという責任を感じています。是非とも多くのみなさんに、今の暮らしを再認識していただき、この流れに対する声をあげていただきたいと思います。
ちなみに、よく『野党は批判ばかりして、もっと建設的な話をしてもらわないと困る』という批判、ヤジも浴びせられます。でも、みなさん、どうでしょう。この一週間ほど、安倍さんは口を開けば、民主党の批判に一生懸命です。
『民主党の時は景気が悪かったから、せっかく良くしたのに、またあの時代に戻すのか』など。確かに私たちは政権の運営をうまくできなくて、みなさんのご期待に十分にこたえられませんでした。でも安倍さんの言うとおり、結果、事実をちゃんとみてください。
民主党政権3年3ヶ月で実質GDP約5%成長させました。途中に『東日本大震災』という未曾有の国難をはさんでも。その経済実績をボロカスに言っている安倍政権は2年間でよっぽど経済成長させたのかな、と思って調べてみたら、実は1.7%だけでした。
どちらが成長させているのか。子どもでも分かる算数です。民主党政権のほうが安倍政権よりもずっと経済成長していたのが『事実』です。まさに『結果』が物語っています。先入観とイメージにとらわれることなく、その現実をしっかり見比べ、選んでください。
国民のみなさんの選択で『流れ』を変える。私たちもそのために全力で闘うことを決意し、お約束申し上げて、秋葉原のみなさんへのお願い、お訴えとさせていただきます。たくさんのみなさん、寒い中、足を止めていただき、ありがとうございました」
(…会員ページにつづく)