「沖縄戦で米軍に半身を焼かれた85歳のおばあを、機動隊は突き飛ばした」――辺野古・高江のこれから 2014.11.21

記事公開日:2015.1.20取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

※ 1月20日テキスト追加しました!

 「知事選で翁長氏が圧勝し、政府や沖縄防衛局の動きは沈静化すると思われたが、再び辺野古での事業を強行してきており、反対運動は熾烈になっている。本土では報道されないだろうが、注視していてもらいたい」──。

 政府による強引な基地建設の準備が進む名護市辺野古で、抗議船の船長を務めた北上田毅氏が、辺野古新基地建設阻止行動の現在を語った。

 2014年11月21日、京都市下京区にあるキャンパスプラザ京都で、「県知事選後の沖縄 ~辺野古・高江のこれから~ 現地報告会」が開かれた。辺野古の埋め立てに反対する北上田毅氏、抗議行動のカヌー隊に参加した片岡希望氏ら若者3名が、沖縄県知事選と知事選後の辺野古および東村・高江の状況について報告を行った。

 沖縄知事選と県会議員補欠選の結果を振り返った北上田氏は、「県議会の議席48のうち25議席を革新が確保し、翁長陣営が与党となる」と喜ぶが、沖縄防衛局が申請している設計概要の変更を、仲井真知事が任期中に駆け込み承認してしまうのではないか、という懸念も示した。

 仲井真知事は任期切れ間際の12月5日、「工事用仮設道路」「中仕切護岸」について承認し、「土砂運搬方法の変更」については審査継続とした。

 関西から沖縄に行き、抗議活動に参加していた片岡氏は、外から来た者が単純に正義感を振りかざしてはいけないと感じたエピソードを語り、「基地の反対運動に参加する際は、沖縄の過去と現実とを理解して活動しなければならない」と続けた。

■ハイライト

  • (※はじめに上映されたDVD「速報・辺野古のたたかい」は録画に含まれません)
  • 報告 北上田毅氏/片岡希望氏
  • 質疑応答

「仲井真さんに良い正月は迎えさせない!」が合言葉

 沖縄県名護市の辺野古新基地建設へ向けて、強硬手段に出る政府に対し、現地での座り込みや海上での抗議行動を繰り広げる沖縄の人々の闘いを記録したDVD『速報 辺野古のたたかい』を上映したあと、辺野古の海上で埋め立てに反対する抗議船の船長を務めた北上田毅氏の講演が始まった。土木の専門家である北上田氏は、5年前に京都から沖縄に移住し、沖縄平和市民連絡会のメンバーとして活動している。

 「今年(2014年)7月から、辺野古基地建設に向けて強引な調査が始まった。10月中旬から11月の沖縄知事選にかけては一時中断していたが、翁長候補が勝利した3日後の11月19日から再開された」と前置きして、北上田氏は今回の沖縄知事選の模様を次のように語った。

 「私たちは『仲井真前知事に良い正月を迎えさせない』を合言葉にして、最後まで気を抜かずに闘った。結果は、翁長氏が仲井真氏に10万票の差をつけるという圧倒的勝利に終わった。投票が締め切られた20時直後に、あらゆる報道機関が翁長氏の当確を伝え、『翁長勝利』の新聞号外も配送されてきた」

沖縄県議会の議席48のうち25議席を革新陣営が確保

 同日11月21日に行なわれた、沖縄県議会議員補欠選挙については、「前回、名護市長選で破れた末松文信氏が、自民党公認で名護市選挙区で立候補した。それはいかんと、急遽、具志堅徹氏が告示直前に立った。そんな具志堅氏の勝利は、実は予想外だった」と明かした。また、那覇市選挙区でも、共産党の元市議の比嘉瑞己氏が勝利したことを報告した。

 そして、「沖縄市選挙区の島袋恵祐氏は残念ながら落選(自民党の花城大輔氏が当選)した。しかし、県議会では議席48のうち25議席を翁長革新陣営が確保して与党となった」と述べ、今回の衆議院解散総選挙について、「沖縄の4区すべての調整ができた。沖縄から、すべての自民党国会議員を追い払う意気込みでいる」と語ると、聴衆から拍手が起こった。

 衆院選の結果、沖縄の全選挙区で自民党候補が敗れ、辺野古移設計画に反対する4人の「オール沖縄」候補が当選した。

機動隊に突き飛ばされ、入院した85歳のおばあ

 北上田氏は「翁長氏の圧勝で、政府や沖縄防衛局の動きが沈静化すると思われたが、再び辺野古での事業を強行している。これまでは海上保安庁のゴムボートが7隻(1隻に6人乗船)程度だったのが、今朝は沖合に巡視船13隻、ゴムボート33隻、述べ200人もの海上保安官が集結しているという。また、キャンプ・シュワブのゲート前でも、工事車両を阻止するための座り込み抗議行動が熾烈になっている」と語る。

 すでに、辺野古ではケガ人も発生する事態になっているとし、「85歳のおばあ、島袋文子さんが機動隊に突き飛ばされ、頭を打って入院した。島袋さんは沖縄戦の際、米軍の火炎放射器で半身を焼かれた人だ」と憤り、このように決意を語った。

 「ゲート前から排除されたら、国道329号線の中央に座り込む。明日は、実質的な埋め立て開始になる採石投入の恐れがあるので、現地は緊迫している。早朝から座り込み、抗議行動を行う予定で、政府が強行するなら米軍車両も止める勢いだ。本土では報道されないだろうが、注視していてもらいたい」

当初の計画からどんどん変わる辺野古新基地の建設

 次に、辺野古工事区域の説明に移った。当初は、臨時制限区域に立ち入った場合に、刑特法違反で逮捕すると警告されていたが、「今、それは完全に吹っ飛んでいる」と北上田氏は言う。そして、もっとも懸念されているのが、仲井真前知事が承認した埋立について、変更申請が出されていることだ。

 公有水面埋立法に基づき、前知事は埋立申請を承認したが、9月に沖縄防衛局は、4点の設計概要の変更を申請している。1つは辺野古ダムの水路の切り替え工事。辺野古ダムは名護市の所管で、稲嶺進市長はそこでの工事は認めない方針だ。そのため計画を変更し、水路として1000メートル以上の暗きょを作るという。2つ目は、埋め立て用の200万立方メートルの土を辺野古ダムから運ぶ方法を、ベルトコンベア式から大型ダンプでの搬送に切り替えるという点だ。

 北上田氏は「そもそも最初の計画は、『環境保全に配慮した』として承認されたものだ。それを覆す変更は、本来ならば認められない。しかし、仲井真知事は12月9日までの任期中に、変更を承認して逃げるのではないか」と危惧した。

 さらに、変更申請にも環境アセスにもなかった、工事用仮設桟橋を作る計画がもち上がっているという。それは、大浦湾に大量の捨て石を投入し、桟橋を建設する工事で、「防衛局は、これは(申請の不要な)仮設の施設で、将来、採石は撤去すると白々しく言うが、深度のある大浦湾で撤去できるはずがない。完全な違法行為だ」と北上田氏は指摘する。そして、これが実行された場合、公有水面埋立法違反で防衛局を告発する考えを明かした。

アスベストの恐怖が残る兵舎解体

 さらに、北上田氏はもうひとつの懸念として、辺野古移設に関連して解体工事が予定されている米軍兵舎で、アスベストが見つかった問題に触れた。「かつて米軍はアスベスト使用を隠し、そのために労働者が亡くなるなど、大きな社会問題になった。今回、防衛局はアスベスト除去の必要手続きなしで解体を進めようとした。そこで県に抗議し、解体工事は9月末まで一時ストップした」と経緯を説明した。

 北上田氏らは、アスベスト問題についての住民説明会の開催と、法律に基づいた工事内容の告示の徹底を訴えているが、それを無視してアスベスト除去作業が始まり、年内に15棟の宿舎が解体される予定だ。

 また、解体で発生する5万8000立方メートルもの大量のコンクリート殻は、再生砕石として利用することになったが、これを大浦湾に投入するのではないかと、北上田氏は危惧する。

 このままでは翁長氏の知事就任後も、防衛局は工事を強行するだろうから、承認そのものを撤回、取り消しするしかないと力を込めた北上田氏は、このように言葉を重ねた。

 「承認取り消しとは、承認行為そのものに瑕疵があった場合。承認撤回とは、承認後に状況が変化した場合だ。翁長氏は『10万票差で前知事に勝ったという事実が、沖縄県民の意思表示。撤回の大きな理由になる』と話している。12月10日に知事に就任したら、できるだけ早く承認の撤回または取り消しをやってもらわないと、事業は止まらない。そしてまた、事業そのものを止めるためには、私たちも現場でとことん闘うしかない」と訴えた。

まだまだ予断を許さない辺野古と高江

(…会員ページにつづく)

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