【解散総選挙プロジェクト『争点・沖縄』】 注目の沖縄「自民党裏切り5人衆」は辺野古移転を掲げて敗北した仲井真と同じ道を辿るのか 2014.11.20

記事公開日:2014.11.20 テキスト
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(IWJ原佑介 記事構成・岩上安身)

 2014年11月21日。衆院が解散される。

 安倍総理は18日、記者会見を開き、消費税率の再引き上げを1年半延期したうえで、その判断について国民に信を問うとして、衆議院を11月21日に解散すると表明した。「大義なき解散総選挙」である。

 何のための選挙かわからない国民は、自然と選挙への関心を薄めるだろう。どこに注目していいかわからない。誰に投票すればいいかがわからない。そんなぼやきが列島中から聞こえてくる。投票率が下がれば、組織票を持つ自民、公明両与党に分があるとでも踏んだのだろうか。

 この選挙で自公が過半数を取れば、向こう4年間、安倍内閣は安泰である。来年10月は見送るが、3年後の2017年には必ず行うと断言した消費税再増税も、TPP参加も、辺野古の新基地建設も、各地の原発再稼働も、秘密保護法の妥協なき運用も、集団的自衛権行使による自衛隊の海外派兵も、すべて国民から「信任を得た」として、ゴリ押しで進めることだろう。石破茂氏をはじめ、党内のライバルも封じ込めることができる。

 しかし、安倍政権は苦戦を強いられることになるかもしれない。11月16日の沖縄県知事選の結果からもその兆候が垣間見える。県知事として辺野古移転を承認し、移転推進を掲げて県知事選挙戦に臨んだ自民党推薦の現職・仲井真弘多氏が、辺野古移転反対を掲げ、県知事選史上初の「保革共闘」を実現した翁長雄志前那覇市長に、10万票もの大差をつけられて惨敗した。

 仲井真知事も「県外移転」を公約に掲げたことで再当選を果たしてきたが、仲井真知事が手のひらを返し、辺野古埋め立てを承認してしまった以上、県民は仲井真氏の続投を許さなかった。今回の選挙でも、沖縄県民は、「辺野古新基地建設を認めない」という民意をはっきりと示したのだ。

 日米安保の「要石」となる土地での首長選で、歴史的な大敗を喫した安倍政権。辺野古をめぐる沖縄県民の民意は明らかだ。沖縄県における解散総選挙の行方にも当然、影響が出るだろう。

 しかし、そんなことはお構いなしと言わんばかりに、辺野古埋め立て工事が強制的に再開された。

県知事選から3日 再び動き出した辺野古埋め立て工事

 翁長氏が沖縄県知事選を制してから3日後の19日、沖縄防衛局は、県民の神経を逆なでするかのように、キャンプ・シュワブ沿岸にオイルフェンスや浮桟橋を設置した。準備が整えば22日にも海底ボーリング調査に使用する仮設桟橋の工事に着手する。砕石を敷き詰める工法で、事実上の「埋め立て」が始まる。

 翁長氏が正式に新知事に就任するのは来月12月10日。仲井真県政下であるうちに、可能な限り工事を進めようという政府の焦りがみてとれる。

 キャンプ・シュワブの第1ゲート前で警戒にあたっていた市民らは、資材搬入を阻止しようと、トラックの進入経路に立ちふさがった。警察官と民間警備会社の警備員はトラックの進路を確保するため市民らを囲い込み、現場は一時、騒然となった。

 19日午後には、当選後、初めて翁長氏がシュワブゲート前を訪れた。「翁長さん勝ったぞ!」「県政変えよう!」などのコールと拍手で出迎えられた翁長氏は、新基地強行に抗議を続ける座り込み参加者に選挙結果を改めて報告。

 「辺野古新基地は造らせないという公約を実現するためにも、10万票差の民意をしっかり日米政府に届けたい。粛々と進めると繰り返す両政府に、本当の民主主義国家というものを沖縄から問いかけていく」と訴え、参加者を激励した。

※ 参照 しんぶん赤旗 11月20日 「翁長氏が辺野古訪問 新基地反対の座り込み激励」

 12月9日までは、辺野古埋め立てを承認した仲井真体制が続く。国や仲井真県知事は、翁長氏が新県知事のポストに就く日まで、一歩でも埋め立て工事を進め、「辺野古新基地建設は決定事項であり、もう後戻りはできない」という既成事実化を急いでいるのではないか――。基地建設に反対する県民の間はこうした見方が広まっている。

緊迫する現場 84歳の女性が頭を打って救急搬送

 現場は緊張に包まれたまま、衝突は翌20日も続いた。午前9時45分ごろ、工事用トラックの進入を止めようとする市民と、それを制止しようとする機動隊がもみ合いになった際、地元・辺野古住民の島袋文子さん(84)が倒れて道路に頭を打ち、救急車で病院に運ばれた。

 「おばあを倒したら、死んでしまうかもしれないじゃないか、手を出したのは誰だ!」

 シュワブゲート前は大きな怒りに包まれ、状況はさらに緊迫。島袋さんに意識はあり、病院で検査を受けたというが、頭部の怪我は高齢者にとって致命傷になりかねない。辺野古埋め立てをめぐる攻防戦がさらに熱を帯びれば、今後は怪我ですむ保障はない。

 結局、この日は1台のトラックもキャンプ・シュワブ内に入ることはできなかったようだ。海上には、基地建設に反対するカヌー隊20艇が繰り出し、作業再開に抗議。海上には沖縄防衛局の旗を掲げた警戒船7隻が配置されているが、20日午前の段階では浮桟橋周辺など沿岸部での作業は行われなかったという。

※ 参照 琉球新報 11月20日17時20分 「工事車両の進入阻止 シュワブ前 市民と機動隊、衝突」

辺野古埋め立て工事をめぐる「官製談合疑惑」

 辺野古の埋め立て工事には、無視できない「黒い疑惑」がある。

 『しんぶん赤旗』(8月10日/17日合併号)によるスクープで、辺野古新基地建設の「本体準備工事」を、大成建設に極秘発注していたことが明らかになっている。

 赤旗に暴露したゼネコン関係者は、「6月上旬に入札が行われ、大成建設が50数億円で落札した」と証言。やがて公開された入札結果で、本土ゼネコンによる官製談合疑惑が浮上した。

入札日が2014年6月6日。応札企業と入札金額は

・大成建設  55億2000万円
・鹿島建設  60億2400万円
・清水建設JV 60億5000万円
・大林組JV  72億円

 予定価格は56億3558万円。つまり、大成建設以外は、予定価格を超過しており、自動的に大成建設の落札が決定した。官製談合と疑われても仕方がない。

 公共工事の入札は公開が義務付けられており、入札契約適正化法に抵触する可能性もある。

 仲井真知事が埋め立てを一転して承認したことで予定を早め、沖縄県知事選で知事が交代する前に何としてでも工事に着手したかった。防衛局は、こんなシナリオを描いていたのではないか。

 そのうえで、市民らが救急搬送されるほどの強制的な排除を展開し、工事を押し進める。赤旗のスクープが事実であれば、防衛局のやり方はあまりにも暴力的で、非民主的だと強く批判せざるを得ない。

「裏切り5人衆」の行方

 21日には、いよいよ衆院が解散となる。

 沖縄で注目されるのが、仲井真県知事と同様、普天間飛行場の「県外移設」を公約に掲げて選挙戦に臨みながら、当選後に手のひらを返し、辺野古新基地建設容認にまわった自民党議員5人衆の行方である。

 国場幸之助衆議院議員(沖縄1区)、比嘉奈津美衆議院議員(沖縄3区)、西銘恒三郎衆院議員(沖縄4区)、島尻安伊子参院議員(沖縄選挙区)、宮崎政久衆院議員(沖縄2区で落選、比例九州で復活)。

 彼ら自民党5人衆は、当時の自民党幹事長・石破茂氏に転向を迫られたといわれている。会見では、石破幹事長の後ろに並ばされた。その様子を見た沖縄県民の多くは、「まるで琉球処分だ」と憤りをつのらせた。沖縄の多くのウチナンチューの目には、自民党の強引なねじ伏せ方は、「ヤマトの侵略」の再現と映ったのである。

 しかし、あわれな5人衆に多少の同情が寄せられようとも、県民からすれば、公約を反故にしたことは、「裏切り」以外の何ものでもない。当選したいがために「辺野古埋め立て反対」という嘘をついて、沖縄の有権者を騙したという事実は消えることはない。

 島尻氏は参院議員なので、今回の解散は関係ないが、残る4人は、今回の選挙をどう戦えばいいのかと、頭を抱えて嘆いているのではないだろうか。わずか数日前に仲井真県知事があれだけ見事に「斬られた」のだ。「次は自分たちの番だ」と感じ、震えているのではないか。

 他方、翁長氏ら「保革共闘」の「オール沖縄」勢力は20日、総選挙に向けた初会合を開催し、県内全4選挙区に辺野古新基地建設に反対する候補者を統一して擁立する方針を決定した。

 沖縄1区は、前回選挙区から出馬し、比例復活した日本共産党の赤嶺政賢氏、2区は現職の社民党・照屋寛徳氏、3区は前回選挙区から出馬し、比例復活した生活の党・玉城デニー氏をそれぞれ支援する。4区からは新たに無所属で擁立する。

 沖縄県知事選に続き、保革の対立を超えて協力しあう。「反辺野古」で候補を一本化し、対立候補を出さず、票を集中する。共産党を含めた保革共闘が成立するのは、ここ沖縄以外には考えられない。彼らの戦いは全国から注目を集めるだろう。共産党まで含めた保革共闘の一本化によって、自公の分厚い壁を崩せるなら、同様の動きが他の都道府県に波及してゆくかもしれない。

 IWJは今年1月、名護市長戦の取材のおりに、赤嶺議員、照屋議員、玉城議員の3人全員にロングインタビューを敢行している。非常に聴き応えのあるインタビューである。是非、ご視聴いただきたい。

 「名護市長選も、沖縄県知事選も、どのような結果が出ようと新基地建設計画に影響はない、辺野古埋め立てはすでに決まったことなのだ」

 菅官房長官は一貫してこのように主張し、沖縄県民の突きつける「ノー」という意思表示をはねのけてきた。沖縄県民は、民意の否定ともいうべき、こうした政府の姿勢をどう受け止め、応答するのか。その答えは民意の否定ともいうべき、5人の「裏切り」議員の当落によって明らかになるだろう。

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