「『民主党政権は経済政策がよくなかった』と安倍さんが言いますが、民主党3年3カ月で日本のGDPは実質5%増。一方、安倍政権は2年で1.5%弱。それも上位1%の企業に8割ほど集中している収益と株価で、逆に実質賃金は15カ月連続マイナス」――。
衆議院が解散した11月21日、民主党の枝野幸男幹事長が東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見し、選挙へ向けて、自民党との「違い」を訴えた。
(IWJ・細井正治)
特集 総選挙2014
「『民主党政権は経済政策がよくなかった』と安倍さんが言いますが、民主党3年3カ月で日本のGDPは実質5%増。一方、安倍政権は2年で1.5%弱。それも上位1%の企業に8割ほど集中している収益と株価で、逆に実質賃金は15カ月連続マイナス」――。
衆議院が解散した11月21日、民主党の枝野幸男幹事長が東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見し、選挙へ向けて、自民党との「違い」を訴えた。
記事目次
■ハイライト
枝野幸男幹事長(以下、枝野・敬称略)「民主党の幹事長、枝野です。海外のメディアの皆様にお話できることは大変ありがたく思っています。おそらく外国メディアは日本の方以上に、『今なぜ解散なのか』、疑問に思っておられるでしょう。
おそらく政治家の中で私だけが『年内選挙がありそうだ。早ければ11月』と9月から言っていました。それは安倍さんの立場で考えた時、もっとも都合がいいからです。来年(2015年)は『集団的自衛権』関連法案の審査に入り、国論を二分する大激論になり支持率はマイナスに。
また、経済もこれまでより悪くなり、2年残した今、4年分先取りすることは安倍さんの損得だけで考えれば充分ありうると。ただ、それなりの『大義』をどうするかと思えば、見い出し難かったようで、『解散』自体が争点になってしまったのは想定外かと」
枝野「もう一つ、安倍総理の見込み違いは、消費税増税に対する民主党の姿勢でしょう。3党合意を自公だけで破り、延期を決めて民主党に突きつければ、党内議論が長引き『まとまらない、バラバラ』のイメージを植え付けられると期待していたのではないか。
しかし、民主党はタイミングよく『延期やむなし』でまとまり、逆に2年前の国会で党首討論し、代議士から身を切る定数削減などの『約束』を破った、安倍さんの『必ずやります』が嘘だったこと、そして『生まれ変わった民主党』を実際に示すことになりました。
政策の違いは、集団的自衛権をめぐる憲法解釈、特定秘密保護法、原子力政策の問題など多々ありますが、安倍さんが自信を持って訴えるであろう経済でしっかりカウンターをうち、説得力もって訴えたいと思います。1つは『結果』の問題を指摘しなければいけません」
枝野「よく『民主党政権は経済政策がよくなかった』と安倍さんが言いますが、民主党3年3カ月で日本のGDPは実質5%増。一方、安倍政権は2年で1.5%弱。それも上位1%の企業に8割ほど集中している収益と株価で、逆に実質賃金は15カ月連続マイナスです。
ちなみに消費税8%で急に悪化したとかでなく、増税して7カ月ですから、その8カ月も前から安倍内閣で実質賃金、多くの国民の生活はずっとマイナスのままなのです。私たちが3年3カ月チャレンジしたように、経済を安定的に成長させるには、家計を下支えし、中間層の厚みを増し、内需を拡大すること。地方は今、米価の下落で農家は大変困っていますから、私たちが進め、安倍政権が後退させた『所得補償』、また、地方が自由に使える『一括交付金』で、再生を進めます。
民主党は女性や若者を中心とした非正規雇用を、正規に切り替えさせていきます。解散直前、国会での最大の争点がまさに『労働者』の扱いでした。資本が派遣労働、不安定雇用をしやすくし、『格差拡大』させて強者を助け、その『オコボレ』を期待する手法なのか、もしくは、しっかり家計や社会を下から押し上げる民主党の方法か。民主政治では『選択肢』がなければ無意味ですし、選挙は『白紙委任』ではなく民意を踏まえ、議論を闘わせ、適切な判断・決定がなされるためにも、政権に緊張感をもたせる野党議席が不可欠。
安倍さんも政権を失ってから復権まで4年かかった。民主党はまだ2年。今回すぐに『政権交代』できると思えないが、政権に横暴・怠慢させないためにも、民主を応援しなきゃ、というところにはもっていかなければいけないと思っています」
続いて、質疑応答。
ドイツの金融紙記者「目標議席はいくつですか? また、ドイツでも憲法は重視され、裁判官が違憲とした選挙制度を直さないまま選挙をしようとしたら、国民は怒り立ち上がると思うが、なぜ争点にならないのか」
枝野「まず後者から答えます。日本とドイツでは、違憲に対する規制・手続きが憲法上違います。違憲といっても無効とはなかなか言わないことも含め、日本の憲法。ただし任期半分以上、余裕ある時点で解散し、強行することの政治的問題は追及していくことになります。
目標数の質問ですが、選挙とは『ルールに基づき、血を流さない戦争』のようなものです。これからだというのに『全員、勝ち抜く』つもりでなければ始まりません」
ブルームバーグ記者「民主党の代表について、党内からも批判が出ていたと思うが、これから選挙を迎えるにあたり、もっとも適切な党首、正しいリーダーのもとで戦える自信はどれぐらいあるか」
枝野「少なくとも私が幹事長になった9月半ば以降、そういう声は大きくありません。また民主党のような組織の場合、リーダーは、一人だけの責任でなく、執行部全体をみていただきたい。『最強の布陣』だと思います。違うとしたら幹事長(枝野氏自身)ぐらいかと」
日本人記者「2年前の選挙で民主党は大敗したが、その最大の原因は何か。また、それは解決されたか。福島原発事故の(『吉田調書』など)政府事故調の報告書が早く公表されていれば、民主党の透明性、支持も上がったのでは?」
枝野「敗因はいろいろ絡んでいますが、一番はせっかく期待をいただいたのに応えきれなかった、その原因は党内のガバナンスの問題で、2年間で飛躍的に改善し、この2カ月は完全に結束できた。しっかり国民に信用していただくには、一定の時間が必要だと思います。
政府事故調査会の件は当時、政府の中枢自体が調査対象とされており、その運営に政府首脳がコミットすること自体が調査の信頼性を損なう恐れがあるため、完全に彼らに委ねていましたし、公開する・しないについても同様でした」
(…会員ページにつづく)