【岩上安身のニュースのトリセツ】集団的自衛権という「暴挙」と危険な子宮頸がんワクチンの接種継続という「異常」とに共通する「米国CSISからの圧力」(後編) ~ワクチン推進のためには「メデイア監視」が必要? 2015.8.19

記事公開日:2015.8.19 テキスト
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(取材・調査:佐々木隼也・藤澤要、文責:岩上安身)

 「岩上安身のニュースのトリセツ」前編では、集団的自衛権行使容認の閣議決定に反対し、首相官邸前に集まって抗議の声をあげた人々の声を、ドキュメント形式でお伝えし、続く中編では、集団的自衛権、さらに原発再稼働、TPP交渉参加など、様々な日本の施策が、ジャパンハンドラーたちの巣窟・CSISの「指示」に沿っていることをお伝えした。

 そして、CSISはさらに、思いがけない分野について口を出してきた。子宮頸がんワクチンの積極的勧奨(日本政府が積極的に接種を国民に勧めること)の再開をせよ、というレポートを、2014年5月に発表したのである。

 このレポートにも書かれている通り、子宮頸がんワクチンは、日本においては2009年に承認されたが、接種開始直後から全国各地で重篤な(場合によっては死亡するケースもある)副反応被害が報告され始めた。

 IWJでは、2013年初頭からワクチンによる副反応被害の問題について追及を始めた。CSISが2013年6月に副反応について広く報道されるようになったと書いているように、主要メディアが大きくこの問題を取り上げるようになる半年前から、先行して報じ続けてきた。

 微力な我々IWJの報道の影響がどの程度のものであったかわからない。しかし、ネットやSNSによって、懸念の声は確実に広がってゆき、大手メディアをも動かし、その被害の実態が新聞・テレビなどでも報じられるようになると、同年6月に厚労省は「接種の積極的な推奨の一時中止」を発表することとなった。

 そうした決定に対して、CSISのレポートは、不満を露わにする。

 「WHOによりHPVワクチンが安全であると発表した翌日の2013年6月14日、日本の厚生労働省は、12歳から16歳までの少女に対するHPVワクチンの無料接種を引き続き行う一方で、積極的に接種を推奨、呼びかけるべきではないという内容の通知を全国に発表した。厚生労働省専門部会の桃井真理子座長は、『(副作用が)どのくらいの頻度で発生しているのかを正確に把握するため早急に情報を収集する必要がある』と述べている」

 WHOを引き合いに出し、あたかも日本が世界の「文明」的な趨勢から遅れた国であるかのように印象づける書き方である。専門部会の座長の個人名まであげるのは、強いプレッシャーになるだろう。

 彼らはこう続ける。

 「同日、Vaccine Adverse Reactions Review Committee(ワクチンによる有害事象の審査委員会:VARRC)によって開かれた大規模な記者会見では、ワクチンによる副作用の影響を受け、けいれん、発作、重度の頭痛、部分まひの症状が見られたとされる女児について取り上げられ、会見は1時間にもおよんだ」

 「まひの症状が見られたとされる女児」という表現に、少女たちが訴える副反応が真実のものか疑わしい、とみなす態度がありありとあらわれている。そして、こうしたまひで苦しむ少女の姿や訴えが、情報として流通してゆくこと自体への苛立ちを隠さない。

 CSISのこのレポートは、こう続ける。

 「ワクチン接種に反対する団体、ならびに子宮頸がんワクチン接種の『被害者』の保護者の団体は、勢力を得ており、日本国内だけでなく、世界的にも世間の注目を集めている」。

 「勢力を得ており」という表現からは、CSISが、副反応に苦しむ被害者の団体を、まるで反社会勢力が率いているかのように、敵対心・警戒心をもって捉えていることが感じ取れる。

 「これらの団体のひとつは、Cervarix接種後、娘が歩行能力を失い、現在車椅子生活を余儀なくされていると主張する保護者が運営する団体である」

 ここでも、「車椅子生活を余儀なくされていると主張する」と、あたかも確認された事実ではなく、当事者がそう主張しているに過ぎない、と言わんばかりの記述がみられる。

 実際には、副反応被害にあった人々は、筆舌に尽くしがたい苦しみを味わっている。実在する被害者に直接取材してきた我々IWJとしては、CSISのレポートの書き手らが、被害者に対して、あたかも症状を大げさに言い立てる「詐病者」のように印象づけていることに、到底、承服できない。

 さらに、こう続く。

 「別の女児の保護者は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)が疑われている娘に対する補償を要求しようと試みている。(中略)2013年4月にこの症例が杉並区議会で報告された後、自治体は被害者団体により非難され、マスコミによる激しい取材を受けたため、杉並区は補償を提供することに合意することとなった(ただし、まだ支払いは行われていない)。国民はこれを罪を認めたとみなし、この問題が現在のワクチンに反対する感情の転換点となった」

 CSISが、他国である日本国内の薬害被害者の動きまで仔細に観察し続けている点が、実に不気味である。しかも、彼らのまなざしに、気の毒な副反応被害者へのいたわりや同情、共感はみじんも感じられない。「ワクチンの犠牲者」なのに、あたかも「ワクチンの敵」をにらみすえるような厳しいまなざしである。

記事目次

子宮頸がんワクチン接種 の積極的勧奨のためには、「メディア監視」が必要である?

 さらにこのレポートで注目すべきは、子宮頸がんワクチンに対する懸念の高まった原因として、メディアの報じ方、特にネットメディアやSNSを批判していることである。

 「日本のソーシャルネットワーク経由でも、HPVワクチンに関する懸念の声が広がっている。女性政治家の池田利恵議員は、被害者を支援する団体である全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会の事務局長を務めている」

 ここでも、CSISは、特定の人物を名指して、ターゲットにすえる。

 「池田議員は、ツイッターのアカウントやフェイスブックのページを利用して、被害者団体の懸念に対して理解を求めている」CSISのレポートは、池田議員がSNSを利用することが問題であるかのように記したあとに、驚くべき文章を続ける。

 「日本にはメディアを監視する機関がなく、名誉棄損に関する法律が比較的緩い。これはつまり、新聞、テレビのニュース番組、ソーシャルネットワーク、そして被害者支援団体が、HPVワクチン接種後に有害事象に苦しんでいると主張する女児に関する、信憑性を確認できない話や動画を公開できることを意味する」

 IWJでも被害者の母親の悲痛な訴えや、被害に苦しむ女児の痛ましい副反応の様子などを報じ続けてきた。CSISのレポートは、こうした報道について「信憑性を確認できない話や動画」と切り捨てつつ、なんと「メディアを監視する機関」や「名誉毀損」によって規制すべきだと、推進派(もしくは政府・権力)に対してそそのかしているのである。

 現実に副反応被害に苦しむ少女、その家族、支援する人々はもちろん、その支援の輪を広げているネットメディアやSNSでの情報拡散まで、「敵視」し、裁判に訴え、権力によって規制せよ、と「提案」しているわけである。

■子宮頸がんワクチン副反応の実態

 被害を訴える少女たちの存在を、「信憑性を確認できない話」と、あたかも「都市伝説」のごとく取り扱うCSISのレポート筆致には、無神経さや厚かましさを超えて底知れない悪意すら感じる。

 SNSでのこうした報道の広がりが、ワクチンに対する反対の感情が強まる原因としたうえで、その影響で日本政府がワクチン接種の推奨を中止したことについて、「世界の科学界を困惑させている」とか「政府による(積極的勧奨再開の)決定が下されないことは、疑念と不信感の広がりを助長する」などと、日本政府の態度に対して、CSISはこっぴどく批判を加える。ワクチンは安全である、という前提のもと、政府が推奨を再開しないことが「疑念と不信感の広がりを助長する」と言いきっているのだ。

 「インターネットソーシャルメディアのおかげで、日本政府がHPVワクチン接種を積極的に推奨することを中止したというニュースは、海外の人にまで伝わることとなったが、多くの場合、事実が曲解されていたり、曖昧であるものも含まれている。

(中略)

 アメリカでは、Age of Autism等ワクチン接種に反対するいくつかのウェブサイトにおいて、脳障害を含むワクチン接種後の有害事象の数と接種が詳細に記述された日本人内科医かつ心臓医の佐藤佐太郎医師によって書かれた報告書が引用されている。

(中略)

 厚生労働大臣田村憲久大臣宛ての請願書についても記載されている。

(中略)

 また、歩行障害と発作に苦しむ女児の動画が上映された2013年の日本の記者会見へのリンクが貼られている。PRウェブサイトの記事には『他国の厚生労働者や保護者が懸念を示しているのに、アメリカ疫病管理予防センター(CDC)と食品医薬品局(FDA)がなぜそこまでGardasilを強く推奨するのか分からない』と記述されている」

 誰であれ、いぶかしく思うはずだ。目の前で副反応の犠牲者が苦しんでいるのに、それを冷やかにやり過ごしながら、ワクチンの接種を強く勧めようとする米国政府のこの異様な熱心さは何なのだ、と。

 そうした困惑や反発は織り込み済みだと言わんばかりに、米国政府(とおそらく製薬会社)の意向を代弁するCSISのレポートの記述は続いてゆく――。

 「ワクチン接種に反対する多くのサイトには、製薬メーカーと政府は腐敗しており、日本の厚生労働省は、HPVワクチンを信用していないと主張する読者からのワクチン反対のコメントの長いリストが掲載されている」

 「要するに、HPVワクチン接種を推奨することを中止した日本の対応は、主にワクチンに反対する団体から称賛され、その一方で世界の科学界を困惑させていると言える。ワクチンに反対する感情は主要なメディアでは広く取り上げられてはいないが、先に述べたようなソーシャルネットワーク経由で拡散し、反対の感情が強まる結果となっている

 要するに、被害者の生の声と、その声を社会に広げるソーシャルネットワークこそが、彼らの主要な「標的」なのである。

「聖戦化」される「がんとの戦い」

 ここまで読んできて、気づくことがある。

 これは「テロとの戦い」のロジックとそっくり同じではないか、ということである。自分たちは「がん」という「テロ」と懸命に戦っているのだと「がん撲滅との戦い」がまずは「聖戦化」される。そしてその目的のためには、ワクチンという兵器を、すべての少女へ半強制的に接種させる、という、「無差別爆撃的な使用」が正当化される。

 その結果、「兵器」は大量に消費され、製薬会社という「がん撲滅の戦い」のための「兵器」製造メーカーは大いに潤う。株主もたんまり儲けられるだろう。その過程で、起きる副反応被害は、「テロとの戦い」を掲げたアフガン侵攻やイラク戦争で何十万人にも罪のない一般市民が巻きぞえ被害の犠牲になっても「仕方のないこと」として片づけられてきたように、あっさり看過され、さらには、そうした被害情報が出回らないようにと情報統制が呼びかけられる。

 おそろしいことではないか。

 米国に追随して戦争に巻き込まれてゆく集団的自衛権行使容認が、米国の支配層の利益と、それに追随しておこぼれをもらう日本の一部支配層の利益のためでしかないのと同様に、子宮頸がんワクチンもまた、一部の人間の利益のために、罪のない人々が犠牲になる仕組みなのである。たとえがんの発生率が低下しようとも、副次的な被害が生じるならば、使用を禁止しなければならないのは、当然の理屈である。

 「テロとの戦い」がグローバルなものであると同様に、「子宮頸がんとの戦い」もグローバルなものであることが、このCSISのレポートには宣言されている。

 「HPVワクチン接種後に報告された有害事象に直面している国は日本だけではない。インドやイギリス、フランス、オーストラリア等、多くの国でHPVワクチンにまつわる懸念が提起されている。あらゆるワクチン医薬品と同様に、HPVワクチンにも有害事象のリスクを伴うが、通常それらは深刻ではない

 犠牲者はつきものだ、といわんばかりの開き直りである。犠牲は出るが、深刻ではない、と、被害を過小評価するのだ。

 そのあとに続く一文には、驚きとか呆れとかを通り越して、肌が粟立つような寒気を覚えさせられる。

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