【IWJブログ】国土強靭化計画の矛盾 防災計画で見逃されている「原発×戦争」リスク 2014.7.12

記事公開日:2014.7.12 テキスト
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(IWJ・原佑介)

 台風一過である。今日(7月12日)、東京は青空が広がっている。台風が去ったあと特有の高気圧が張り出し、真夏日を記録しそうな勢いだ。史上最強ともいわれ、非常に警戒された台風は、最終的には被害は最小で食いとめられた。不幸中の幸いである。

 沖縄県を暴風域に巻き込み、気象庁が「命を守る行動を」と呼びかけた、今回の台風8号の襲来。2013年8月30日の運用開始以降、2度目の「特別警報」が発令された。「特別警報」は、警報の発表基準をはるかに超えるような、甚大な災害が発生するおそれがある場合に適用されるものだ。

 備えを固め用心するに越したことはない。が、それにしても予測と現実のこの落差がどうして生じたのか、気象庁には原因を解明して、説明し、次に活かしてもらいたいと思う。

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国土強靭化計画をアピールする自民党

 ところで、7月13日日曜日の投開票に向け、激戦が繰り広げられている滋賀県知事選では、この台風8号の発生を受け、各候補者らが「災害対策」をめぐり、舌戦を展開しているので、ご紹介した。

 自民・公明・維新の会推薦の小鑓隆史(こやり・たかし)氏は、「台風被害で明らかになった河川の整備の必要性、幹線道路の渋滞、教育の改善。滋賀県の『地の利』をもっと磨かなければならない」と訴えた。

 小鑓氏の応援演説に駆けつけた古屋圭司防災担当大臣は、6月3日に閣議決定した国土強靭化基本計画について、「40ほどある基本計画の中でも、最上位にあたる。この計画の基本理念は、人命の保護、国家や社会に致命傷を負わせないこと。被害はできるだけ食い止め、すみやかに復旧させること」と語った。

 「これを基にして政策に優先順位をつけ、すみやかに実行する。常に政策の見直しをやり、税金を使うだけでなく民間活力も利用する。平時にも、災害などの有事にも使い、成長政策につなげていく。決してバラマキではない」

 さらに、「地方版の国土強靭化計画を作ることも明記した。今後、知事が地方版の国土強靭化計画を策定していく必要がある。小鑓候補は経産省や内閣府にいた経験から、滋賀県ならではの地域版強靭化計画を、きちんと策定して実行できる。ぜひ、投票に行ってほしい」と呼びかけた。

防災計画において本当のリスクは想定されているのか

 小鑓氏や古屋大臣が唱えるインフラ強化による災害対策の必要性は、もっともらしく聞こえる。大規模公共事業によって地元も潤うというのでは、という期待感も膨らむ。しかし、重大な欠落もある。目と鼻の先にある若狭湾。そこに広がる「原発銀座」の存在について、まったく触れていないのだ。大規模災害時、原発に事故が発生するリスクについて、どう考えるのだろうか。

 現職の嘉田由紀子滋賀県知事が後継者に指名し、民主党が推薦する三日月大造(みかづき・たいぞう)候補は、街頭演説で「原発再稼働の動きもあるが、避難計画が十分ではないし、安全対策にも納得がいかない。福井で原発事故があれば、滋賀県は被害地元になる」と述べ、「原発銀座」と呼ばれる福井に立ち並ぶ原発のリスクに言及した。

 続けて、「3.11を教訓にして、原発を動かさなくていいエネルギー社会を、この滋賀から作りたい。県内ではすでに、太陽光発電やバイオマス発電、川の流れを利用した水力発電にも取り組んでいるが、さらに進めていきたい」と述べ、省エネと再生可能エネルギーの推進に意欲を見せた。

 三日月候補の言うように、福井県の原発が万が一過酷事故を起こせば、滋賀県は間違いなく被害地元となる。滋賀だけでなく、京都、大阪、神戸の約1450万人の住民の水源となっている琵琶湖までは、「原発銀座」からわずか20キロしか離れていない。

▲福井県嶺南地区、若狭湾に浮かぶ「原発銀座」とXバンドレーダーの位置

「Xバンドレーダー」と「ヤマサクラ」

 もうひとつ、この若狭湾には、非常に気になる問題がもちあがっている。高浜原発から、直線距離にして約40キロ弱西方へ向かったところの京都府京丹後市の経ヶ岬にある航空自衛隊基地には、米軍の「Xバンドレーダー」が設置されようとしているのだ。「Xバンドレーダー」とは、弾道ミサイル防衛システムの一部をなす施設である。戦争になれば、真っ先に攻撃対象となる類のものだ。そんなシロモノが、「原発銀座」の目と鼻の先に建設されようとしているのである。

 集団的自衛権行使の必要性を説明する際に、日本政府が用いた用例の中には、米国本土に向かう北朝鮮のミサイルを日本がミサイル防衛システムによって撃ち落とすという事例が含まれていた。現実味のない事例と考えられているが、万が一、日本政府の説明が正しく、そうした事態が起こり得るのだとしたら、北朝鮮はまずこの経ヶ岬のレーダー基地をミサイルで叩いてから、米国本土向けの弾道ミサイルを発射するであろう。むざむざ途中で撃墜されるのを黙って見過ごすはずはない。

 米国の戦争に追随してゆく集団的自衛権の行使容認、それが現実にかたちとなってあらわれたのがXバンドレーダー基地の建設であり、政府の想定通りなら、この地は真っ先に戦場となるのである。

 日本政府、そして米軍が想定しているのは、その程度にとどまらない。中国軍、北朝鮮軍との全面戦争、そして中国軍らによる日本列島上陸のシナリオも本気で想定され、検討されている。

 IWJ代表の岩上安身が資料を入手し、たびたび言及している日米合同軍事演習シミュレーション「ヤマサクラ61」。この演習は、東日本大震災直後の2011年6月末に日米合同で行われたものである。中国軍とおぼしき敵軍と日米合同軍が開戦し、敵軍が日本列島に上陸。それを水際で迎え撃ち、上陸を許してしまったあとも、列島内で防衛戦を戦う、というシナリオだ。想定されているその上陸地点が、原発の立ち並ぶ「若狭湾」である。

▲日米合同軍事演習シミュレーション「ヤマサクラ61」

 日米の軍関係者らは、日本海側に原発を抱えたまま、日本が戦争に突入することを想定して戦争準備をしているのであり、その湾内の西の端に位置する経ヶ岬に米軍のレーダー施設の建設を進められているのである。

 ミサイルの着弾でも、陸上部隊の上陸とその攻防戦でも、若狭湾一帯は甚大な被害を被るだろう。原発の建屋に砲弾や爆弾が直撃しなくても、送電線や周辺施設が破壊され、全電源喪失という事態に陥る可能性は十分にある。一基でもそんな状態に陥ったら、もうお手上げである。

 自民党は国土強靭化計画を打ち上げ、防災のための公共事業に大幅な予算を割くというが、その一方では、中韓との外交的対立を深め、米国への軍事的な依存をますます強めて、原発を抱えたままでの軍事国家化を駆け足で進めている。だが、原発過酷事故や、レーダー基地へのミサイルの着弾や、「ヤマサクラ」のような戦闘を想定した上での、住民の避難計画や防災計画は考えられているのだろうか。そんな話は聞いたことがない、というのが現実である。

 今回の台風8号は、大災害をもたらすまでには至らなかったが、昨年9月、この若狭湾を含む、京都、福井、滋賀一帯を襲った台風18号は、大きな被害をもたらした。

 IWJは昨年、この台風18号の被災地を現地取材し、現場からレポートをお伝えした。そこで明らかになったのは、大災害に見舞われた過疎地のあまりにも悲惨な状況と、災害被害を過小評価し、リスクを甘く見積もる自治体の姿だった。以下、前回の台風被害についてのレポートを、コンパクトにまとめて再掲載する。

(…会員ページにつづく)

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“【IWJブログ】国土強靭化計画の矛盾 防災計画で見逃されている「原発×戦争」リスク” への 1 件のフィードバック

  1. @piano_tuner_fさん(ツイッターのご意見より) より:

    こういった現実を掘り下げられるからIWJは素晴らしいと思う。と同時に、危険極まりない真実。

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