2014/06/30 「集団的自衛権反対」を訴え新宿で焼身自殺を図った男性 黙殺するNHKと、ののしる自民党道議会議員  

記事公開日:2014.6.30
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 集団的自衛権の行使容認に向けた閣議決定を2日後に控えた、昨日6月29日日曜日の午後1時頃、休日の人通りの多いJR新宿駅南口で、一人の男性が焼身自殺を図った。

 男性は、南口の歩道橋の鉄枠の上に座り、拡声器を使って集団的自衛権の行使容認や、安倍総理の政策に反対する演説を約1時間にわたって行ったあと、持参したペットボトルに入ったガソリンを頭からかぶり、ライターで火を付けた。

 火は駆けつけた消防隊に消し止められたが、男性は全身にやけどを負い、1~2カ月の重傷だという。幸いなことに、男性は命に別状はなく、他にけが人もいなかった。

 日曜日で多くの買い物客でごった返していたこともあり、周囲は一時騒然となった。TwitterやFacebookなどのSNSに画像や動画が多数投稿され、現場に居合わせた多くの人が、男性の言動の一部始終を世界中に発信。ネット上では、逐一その模様が流され、大きな注目を浴びることとなった。

■NHKは黙殺

 ネットでの大騒ぎとは裏腹に、メディアが報じたのはそれから3時間後、16時をまわってからだった。新聞各紙は事件の概要を報じ、男性の主張については「集団的自衛権の行使に反対する趣旨の話をしていた」などと伝えた。

・新宿駅前で男性が焼身自殺図る? 集団的自衛権で抗議か 6月29日20時39分 朝日新聞
http://digital.asahi.com/articles/ASG6Y55DBG6YUTIL01T.html

・新宿南口で男性が焼身自殺図る 「集団的自衛権の行使容認に反対」演説後 2014.6.29 17:40 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140629/dst14062916150005-n1.htm

(※両紙とも当初はベタ記事として事件の概要を伝え、後に詳細な内容を加筆し、更新している)

 テレビでは、テレビ朝日が現場に居合わせた目撃者から提供された写真や動画をもとに、短いニュースで伝えている。

・新宿駅前 一時騒然…男性が焼身自殺図る(06/29 17:42) テレビ朝日
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000029717.html

 その後夜にかけて、その他の既存メディアやテレビ各社も、同様の尺と報じ方でこのニュースを短く伝えた。

 休日の新宿で多くの衆人環視の中で発生し、ネット上で大騒ぎとなり、新聞・テレビ各社も辛うじて報じたにも関わらず、この事件について一切報じなかったメディアがある。日本の国営放送たる、NHKである。

 普段は自殺関連のニュースや、地方のローカルネタまで詳細に報じるNHKはこの日、この新宿の出来事を一切報じなかったのだ。ネット上ではこの報道姿勢に、「恣意的ではないか?」「情報統制だ」「騒ぎの大きさに比べて一切報道しないのは不自然だ」などという声が相次いだ。

 明けて6月30日、12時過ぎになってもNHKはテレビ・ラジオを通して一切このニュースに触れなかった。NHKはこの事実を認め、その理由を「政治案件だから」と回答した。

 「政治案件」とはつまり、この焼身自殺を図った男性の「集団的自衛権反対」という主張が、安倍政権にとって政治的に「都合が悪い」ものであり、NHKが政権側に配慮した、ということに他ならない。

■「君死にたまふことなかれ」男性の主張

 NHKが黙殺したかった、男性の訴えとは、具体的にどのようなものだったのだろうか。男性は重傷を負い、今も病院で治療にあたっているため、その内容を詳細に知ることはできない。しかし、目撃証言などから、断片的にその主張の一端をうかがい知ることはできる。

 中日新聞によれば、男性は「70年間平和だった」「戦争しない」「政教分離」などと話し、「君死にたまふことなかれ」と、与謝野晶子の詩の一節を口にした後、火を付けたという。

・新宿駅前で焼身自殺図る 集団的自衛権反対を主張 6月29日 20時18分 中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2014062990201443.html

 また、別の目撃証言によれば、最後の言葉は与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」の「人を殺せと教えしや」までを朗読したという。

 「君死にたまふことなかれ」は、日露戦争前夜の1904年、兵隊として招集された弟のことを思い、「弟よ、死なないで下さい」と嘆いた反戦歌である。男性が最期に詠んだ一節は「親は刃をにぎらせて、人を殺せとをしへしや」で、これは「親は刃物を握らせて、人を殺せと(あなたに)教えましたか?」という意味が込められている。

※「君死にたまふことなかれ」の全文を以下に掲載する。

「あゝおとうとよ、君を泣く 君死にたまふことなかれ 末に生まれし君なれば 親のなさけはまさりしも 親は刃をにぎらせて 人を殺せとをしへしや 人を殺して死ねよとて 二十四までをそだてしや

堺の街のあきびとの 旧家をほこるあるじにて 親の名を継ぐ君なれば 君死にたまふことなかれ 旅順の城はほろぶとも ほろびずとても何事ぞ 君は知らじな、あきびとの 家のおきてに無かりけり

君死にたまふことなかれ すめらみことは戦ひに おほみずから出でまさね かたみに人の血を流し 獣の道で死ねよとは 死ぬるを人のほまれとは おほみこころのふかければ もとよりいかで思されむ

あゝおとうとよ戦ひに 君死にたまふことなかれ すぎにし秋を父ぎみに おくれたまへる母ぎみは なげきの中にいたましく わが子を召され、家を守り 安しときける大御代も 母のしら髪はまさりぬる

暖簾のかげに伏して泣く あえかにわかき新妻を 君わするるや、思へるや 十月も添はで 別れたる 少女ごころを思ひみよ この世ひとりの君ならで ああまた誰をたのむべき 君死にたまふことなかれ」

■「迷惑極まりない犯罪行為だ」痛烈に批難する自民党地方議会議員

 これに対し、迷惑行為だ、犯罪行為だ、と批難する声もあった。突出していたのは、自民党の北海道議会の小野寺まさる議員である。

 自らの主張のため、市ヶ谷の自衛隊駐屯地を占拠し、自衛隊の決起を呼びかけ自決した三島を持ち上げ、今回の焼身自殺を図った男性をここまでののしる。理解できない。

 どんな理由であれ、自殺はしてはいけない、といわれる声は、それはそれで理解ができる。しかし自衛隊、軍事、安全保障をめぐって、まっこうから対立する考え方であれ命をかけて自身の主義主張をした人物の、他方を礼賛し、他方をここまで侮辱するということは考えられない。(岩上安身)

■6月30日官邸前抗議行動
2014/06/30 「戦争反対」「憲法守れ」「安倍はやめろ」 7月1日閣議決定直前、官邸前で集団的自衛権反対の抗議

■岩上安身によるインタビュー記事

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10件のコメント “2014/06/30 「集団的自衛権反対」を訴え新宿で焼身自殺を図った男性 黙殺するNHKと、ののしる自民党道議会議員

  1. もうNHKは、国民が一体となって、受信料不払い運動で強烈な圧力をかけて、BBC化させるしかない。

  2. 迷惑行為だ、犯罪行為だ、と批難する声もあった。突出していたのは自民党の北海道議会の小野寺まさる議員

  3. 人が焼身自殺を計ったことに対して、公職に身をおく者が迷惑だと発言。
    あなたはどう思いますか?

  4. 行為を云々するTwitterが多いけど、彼の言わんとすることをしっかりと聞くのが先決。

  5. ネットにおいてもこの事件と官邸前デモについてYahoo!ニュースが黙殺を続ける異常な状況。

  6. 自民党議員、まず人としてどうなのか。

  7. 「君死にたまふことなかれ」について。

    反戦歌として有名ですが、戦争というより、弟の出征(戦死)への反感を詠ったのだと山本夏彦が書いていました。。
    士族(江戸時代までの武士階級)でもない「あきびとの家」(実家は和菓子屋)の子である弟が戦争に行かされるなんて……というわけです。
    当時、大町桂月が「家が大事也、妻が大事也、国は亡びてもよし、商人は戦ふべき義務なしといふは、余りに大胆すぐる言葉」と批判したのも、この解釈で通っていたことの現れだと思います。

    晶子は桂月へ「歌はまことの心を歌うもの」と反論しています。良くも悪くも、その時の感情を詠んでいる、という意味ではないでしょうか。
    その後の晶子がこんな歌を詠んでいることも考えると、晶子の『反戦』には、それほど一貫性がありません。

    ・水軍の大尉となりて我が四郎 み軍にゆくたけく戦へ
    ・子が船の黒潮越えて戦はん 日も甲斐なしや病する母
    ・子が乗れる軍船のおとなひを 待つにもあらず武運あれかし
    ・いまは戦ふ時である 戦嫌ひのわたしさへ 今日此頃は気が昂る

    (「四朗」「子」=晶子の子)

    浅学ながら、私は「与謝野晶子」「君死にたまふことなかれ」で反戦を掲げるのは不適切だと考えています。
    晶子が本当に私たちが考えるような、それでいて一貫した『反戦』の思想を持っていたことを裏付ける歌や逸話を御存じの方がいらっしゃいましたら、お教えください。

  8. まさるさんの「迷惑極まりない」暴言は叱られませんでしたとさ。

  9. IWJの記事に、「NHKはテレビ・ラジオを通して一切このニュースに触れなかった。NHKはこの事実を認め、その理由を「政治案件だから」と回答した」とあるので、今しがたNHKの視聴者窓口に問い合わせたところ、「そのように答えることはあり得ない」と言われました。IWJさんはNHKのどこから聞き出したのでしょうか?

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