【IWJブログ】関東甲信越を襲った未曾有の雪害 現場からの声をレポート(第一弾:山梨編) 2014.2.19

記事公開日:2014.2.19取材地: テキスト
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(取材・文:佐々木隼也 ぎぎまき  岩上安身)

 2月14日(金)15日(土)、16日(日)の週末にかけて、関東甲信越地方と東北各県に、記録的な被害をもたらした今回の大雪。電車やバスといった各種交通機関がまひした他、各主要道路も遮断され、各地で数千世帯が孤立するなどといった大規模な雪害が生じた。

 政府の対策と既存大手メディアの報道が後手に回るなか、私とIWJスタッフはツイッターアカウント@iwakamiyasumi@IWJ_sokuhouで、15日から夜を徹しての情報の収集と発信を開始した。以後、24時間休みなく情報の収集と発信を続けてきた。

 雪に埋もれ立ち往生している車の中の人、停まってしまった電車の中で車中泊している人、避難所を見つけられない人、孤立集落で身動きが取れない人、そうした人々の安否を知りたいお身内の方々、雪害で困っている方々は局所、局所に散らばって存在している。

 そうした人々の助けを求める声を拾い上げるとともに、被災者の方々に、避難所のありかや炊き出し情報、交通情報などを拡散し、届けたりするには、3.11の震災の経験から、SNS、とりわけツイッターが有効であると思われたからだ。

岩上ツイート

 そうしたツイッターでのリアルタイムでの発信を行いながら、実際に現地で今回の大雪の被害にあわれた方と直接コンタクトを取り、電話取材を行った。現地の被災体験者からの生々しい声である。道路状況などが改善されつつあるとはいえ、まだ雪に閉じ込められている人もいる。現在進行形のレポートである。第一弾では、山梨県北杜市、山梨県甲府市から寄せられた声を紹介するとともに、山梨県の対応について検証する。

(岩上安身)

山梨県北杜市須玉町下津金・松下 耕さん(東京都八王子在住)からの声

 山梨県の最北端に位置する山梨県北杜市は、今回の大雪で積雪量が1メートルを超えた地区である。東京都八王子に住む作曲家の松下耕さんの母親は一人、北杜市下津金でブルーベリー農園を営んでいる。今回の大雪の被害について、松下耕さんに話を聞いた。

 「最初は、自分の家の雪かきで精一杯で、母の方の被害については意識していませんでした。テレビや新聞が大きく報じ始めたのは、16日日曜日になってからでしたよね。その前日の15日土曜日、ツイッターを通じて山梨県内の被害の深刻さを知って、そこからインターネットで情報を集めました」

 松下さんは、孤立した集落の中心に閉じ込められた母の安否を気づかいながら、この現実を広くツイッターで知らせている。その発信を岩上安身がキャッチしてリプライし、応答が続いた。その「まとめ」は以下の通りである。

 「その15日の夕方、電話で母親の安否を確認することができました」

 松下さんの母親は、家屋の外の積雪で、家に閉じ込められた状態だったという。松下さんは次のように語る。

 「こんなに被害が出ているのに、安倍総理は羽生結弦選手に電話をしたという情報が出回っていて、母は失望していました。舛添都知事も、その前の週の8日の大雪の際に、『こういうのはたいした事はない。一日で終わる話ですから』と発言していたとかで、置いてけぼりを食ったと感じましたね」

 国が支援の姿勢を示さなかったことに憤りを感じたという松下さんだが、一方で、山梨県選出の国会議員らが超党派で支援活動に動いてくれたことを「感謝しています」と話す。

 「みんなの党の中島克仁さん(衆議院議員・山梨3区)から電話をもらいました。彼は、北杜市にある『ほくと診療所』の院長でもあるんですね。母は心臓病を患っているんですが、それを心配してくれて、『大丈夫ですか』って。嬉しかったし、本当に心強かったですね」

 松下さんは、もう1つ感謝したこととして、地域の連携の強さをあげる。

 「近所の皆さんが自力であぜ道の雪をかき、母を訪ねてくれたんですね。私が電話した時、母はそのことを元気な声で話してくれました。孤立した母を訪ねることができない歯がゆさがあったんですが、元気な母の声が救いになりました」

 松下さんの母親が住む北杜市下津金では15日、48歳の男性が凍死した状態で発見されている。雪の影響で車が動かなくなり徒歩で家へ向かっていたさなかの出来事だ。死体を検死しようにも、道が塞がれていて思うように現場に足を踏み入れることができない状況の中、男性の死体は数日間放置されていたと、松下さんは母親から聞いた。被害の甚大さを物語っている話だ。

 松下さんに電話でインタビューをしたのは、18日の午前中。「今日、母の所には除雪が入る予定。それがどうなるか」と話していたが、夕方7時頃、松下さんから連絡が入った。

 「母の家の近くの道は、お陰様で今日除雪されたとのことです! これで母の家から国道141へのルートが確保されました。皆様のご協力に心から感謝いたします。母は元気です。皆々様によろしくと申しておりました」。

山梨県甲府市国母・玉川眞奈美さんからの声

 山梨県甲府市国母に住む玉川眞奈美さんに、18日、被害状況を聞いた。玉川さんは栄養士や料理研究家として活躍されている女性である。大雪の直後から、被害状況を撮影するなどし、県内や県外に向けて、今も情報発信を続けている。

 「120年間、誰も経験したことのない雪ですから…」

 今回の大雪は120年に一度の大雪と言われている。とくに雪から縁の遠い山梨県民は、雪に不慣れだ。除雪作業もままならない。

 「15日、まず甲府市役所に電話して、除雪のお願いをしました。でも、除雪作業が行われなかったので、地域の仲間と一緒になって雪かきをしたんですね。

 どこも雪でいっぱいで、除雪した雪を持っていく場所ありませんでした。道に放置すれば道を塞ぐことになってしまいますし、ドブ川に捨てれば雪で詰まってしまいます。だから、手作業で空き地まで雪を運ばなければいけませんでした。本当に大変でした」

▲玉川さん撮影 JR身延線甲府国母駅の様子 2月15日午後6時

玉川さんのツイート:JR身延線 甲府国母駅はこの通り…事務所周辺の自治会の方々と除雪しておりますが、よける場所がもうありません。道路や河川に投げ込むことだけはしないように声かけ合って除雪中。(2月15日)

▲玉川さん撮影 甲府国母駅周辺の様子 2月16日午後4時

玉川さんのツイート:甲府盆地。国母駅周辺です。庭の雪を道路に出したり、河川への投下は控えて…単身の方へのお声かけを。国母のスーパーは駐車場が大変な状況と聴いています。(2月16日)

▲玉川さん撮影 2月17日午後6時

玉川さんのツイート:本日の除雪。甲府市国母近隣高齢者宅前の道。通常業務の合間なので除雪進行が遅く、介護食提供し明日の準備。(2月17日)

 玉川さんはツイッターの情報拡散力を駆使し、甲府市の情報を連投し続けてきた。

 「3.11で、情報共有がどれだけ大事か身にしみていました。大雪の後の15日と16日は、行政もメディアも機能していませんでしたから、自分で被害の状況を集め、役に立てばと情報を発信してきました。Twitterの拡散力は本当に早いですから。

 それに、自分たちにメリットがない県外の人たちが、ここの状況を気にかけて、何かしようとしてくれることが本当に心強かったですね」

 甲府市内は週が明け、18日(火)になっても、大雪の影響で物流ルートがままならない状態だという。 「土曜日着予定だった荷物も、まだ届いていません。コンビニも品薄で、パンや弁当もほとんどないんです」

 しかし、日頃から災害に対する意識が高かった玉川さんは、米や味噌、野菜を始めとする食材のほか、簡易コンロを確保。いつでも炊き出しができる準備をしているという。すでにレトルトカレー800食分も提供した。

 他にも、立ち往生した車両を動かす術も身につけ、車3台を動かすなど、頼もしく動き回る玉川さんだが、「今、一番心配していることは」と聞くと、「情報の受発信ができない人たちの孤立化」だと言う。

 「山梨県には限界集落が多くて、住んでいるのは高齢者ばかりです。そうしたお年寄りに、ちゃんと支援は行き届いているのでしょうか」

 甲府市には18日夜現在で、284世帯が孤立したままだと報告されている。他にも、市内の母子家庭や若い単身者の状況が心配だと話す玉川さんは、お互い声をかけあうようTwitterでも呼びかけている。

 玉川さんのツィッターアカウントは@Infinivalue。災害に役立つ情報やメディアでは報道されない情報を日々発信し続けているので、ぜひ注目してほしい。

災害対策本部の設置が遅れた山梨県

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