2013年9月2日(月)、日本外国特派員協会で、田中俊一原子力規制委員会委員長の記者会見が行われた。田中委員長は冒頭の挨拶で、当初予定していた今年7月に施行された新規制基準の説明を変更し、福島第一原発の汚染水問題について説明すると断りをいれ、会見がはじまった。
(IWJ・石川優)
※記者会見の全文文字起こしを会員ページに掲載しました。
2013年9月2日(月)、日本外国特派員協会で、田中俊一原子力規制委員会委員長の記者会見が行われた。田中委員長は冒頭の挨拶で、当初予定していた今年7月に施行された新規制基準の説明を変更し、福島第一原発の汚染水問題について説明すると断りをいれ、会見がはじまった。
■ハイライト
田中委員長は、仮設タンクから漏れている汚染水問題に注目が集まっているが、地下水の汚染も深刻な状況であるとの見方を示した。今年5月から敷地内の観測孔から高い濃度のトリチウムとストロンチウムが検出され、 海岸近くでのトリチウムの値も上昇していることから、田中委員長は汚染水が地下を通じ海に流れているのではないかとの推測をしている。
しかし、会見での質疑応答の序盤において、汚染水が海へ流れている状況ではないと強調し、外国メディアへの理解を求める場面もあった。現時点では海への汚染はないとの見解の一方、今後の海の汚染の可能性は捨てきれず、引き続き注視していくと話した。
汚染水の今後の対処については、「必要であれば基準値以下のものは、海へ出すことも検討しなければならないかもしれない」と話した。過去、海洋放出を示唆するかのような発言をし、誤解を招いたことがあったことについては、汚染水問題を真剣に考えての事だったと釈明した。海洋放出の前提については、「もちもん基準値を超えるものは出させない」と断言した。
また田中委員長は、東京電力が、昨年一年間で20兆から40兆ベクレルのトリチウムを放出したと発表していることを紹介。そのうえで、「このトリチウムをトリチウム水として考え、計算すると『最大で35グラムである』」と語ると、海外記者からは失笑が漏れた。
危険性が指摘されている、福島第一原発4号機の核燃料の取り出し作業について田中委員長は、「基本的には今までにやっている同じ作業。十分安全は確保できる」と安全性を強調した。東京電力は早ければ今年11月にも作業を始める予定。
最後に、放射線の汚染の表現を巡り、「ミリシーベルトという言い方はしない」と東京電力が使う表現を誤りだと指摘し、メディアの発信にも問題があると注文をつけた。
■田中俊一委員長のスピーチ
ご紹介いただきました、原子力規制委員会委員長の田中でございます。今日はお招きいただきありがとうございます。皆さんご承知の通り、当委員会は発電用原子炉に対する規制、新しい規制基準を策定し、この7月4日から、この基準のもとでの審査をスタートしました。現在申請のあった複数の原子力発電所について、公開で審査を進めています。
今日は本来であれば、この新しい規制基準の内容を説明する予定でしたけれども、急遽内容を変更して、皆さんのご関心が高い、というか、国際社会にも大変ご心配を掛けている、福島第一原子力発電所の汚染水の問題に焦点を絞って、お話させていただきたいと思います。
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