「命を奪わず、平和に生きることも愛国心だ」 ~戦後・被爆70周年に向けて―平和への作戦会議 韓国での世界ヒバクシャ展の報告 2013.8.31

記事公開日:2013.8.31取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「反戦、核廃絶、反原発。反対するのはいいいが、それでは止めたあと、どういう世界にしたいのか。具体的なビジョンと議論がない」と森下美歩氏は語った。

 2013年8月31日(土)14時、「世界ヒバクシャ展@京都」を開催中の、京都市上京区の相国寺承天閣美術館において、関連イベント「戦後・被爆70周年に向けて―平和への作戦会議」が行われた。世界ヒバクシャ展の発起人であり、広島・長崎の原爆被爆者を40年にわたり撮り続けてきた写真家、森下一徹氏の娘で、同会代表の森下美歩氏が、活動への思いや、韓国で開催した世界ヒバクシャ展の様子などを話した。

 「世界ヒバクシャ展@京都」は、2013年8月6日~9月8日まで、相国寺承天閣美術館において、金閣寺、銀閣寺、京都仏教会などの賛同で開催された。出品写真家は伊藤孝司氏、桐生広氏、豊崎博光氏、本橋成一氏、森下一徹氏、森住卓氏。

■ハイライト

  • 講演 森下美歩氏(NPO法人世界ヒバクシャ展代表)
  • フリートーク(録画には含まれません)

世界で起きた核被害のほとんどを抱えている日本

 はじめに森下代表が、核被害マップの説明をした。これは、世界で起こった核被ばくと世界の原子力発電所の数(日本は第3位)、核実験の数などを示した地図で、以下のような、出品作家のメッセージも添えられている。豊崎博光氏「安心の毎日を」。本橋成一氏「俺は生き物だ。原発は天敵だ」。森住卓氏「核と人類は共存ができない」。伊藤孝司氏「写真の力で核のない世界を目指す」──。

 森下代表は「ブラジルで写真展を行った時、現地の女性から『日本は原発を再稼働するというが、大丈夫なのか』と言われた。ラオスでは『原爆、第五福竜丸、福島原発事故など、世界で起きた核被害のほとんどを受けている日本はクレイジーだね』と笑われて、悔しい思いをした」と語った。

 続いて、主催者から写真を借りて埼玉で写真展を開催した女性が、今回は展示されなかった、森住卓氏の写真を示しながら話をした。発災後の福島第一原発、双葉町、誰もいない双葉病院、二本松の避難所、津波行方不明者の捜索現場、飯舘村の子どもたち、殺処分にされる牛たちなどの写真である。

原爆を思いださせるフラッシュは使わない

 次に、40年以上にわたって広島と長崎の被爆者を撮り続けた森下一徹氏の、「ヒバクシャの思いを世界へ」と題した映像メッセージを上映した。

 映像の中で森下一徹氏は、「写真学校を卒業後、原水禁世界大会の取材から、被爆者をテーマにしようと決めた。被爆者の悲惨さを伝える写真は多くあったが、楽しく生き抜く被爆者を伝えようと思った。被爆者の姿を知らせることで、核廃絶を訴えながら、同様の思いを持つ写真家たちと共に、世界ヒバクシャ展を発足させた。福島第一原発事故には忸怩たる思いがあるが、この活動が、これからも続いていくことを願っている」と語った。

 森下代表は、父親の一徹氏について、「父は、被爆者たちと10年以上かけて人間関係を築き、それから初めて撮影をした。カメラのフラッシュは、原爆の閃光を思わせるので使用しなかった」などと語り、一徹氏が旧ソ連の「人間と平和」展でグランプリを受賞した作品「被爆者」を紹介した。

韓国で「なぜ、日本人はもっと怒らないのか」と励まされた

 「私の祖母も祖父も明治生まれだが、戦争に反対して投獄されたりした。100歳になる祖母は『韓国に行ったら、自分の戦争責任の分も謝罪してきてくれ』と言う。愛国心とは、祖国日本、家族を守ること。しかし、命を奪わず、平和に生きることも愛国心だ」と話した森下代表は、韓国訪問時のエピソードを次のように語った。「韓国の被爆一世の収容施設に行き、『お詫びに来た』と言うと、その人たちから『もう終わったことだから気にするな。それより、日本と平和にやっていきたい』と言われた」。

 続けて、韓国で開催した世界ヒバクシャ展の光景をスクリーンに投影し、「韓国の小学生たちは、とても真剣に見ていた。福島から保養に来ていたグループもいて、写真を見た彼らは泣き出してしまった。また、たくさんの人が集う商店街でも開催した。福島第一原発事故を謝罪したら、韓国の人に『これは世界の問題だ。日本の人たちが心配だ。なぜ、日本人は怒らないのか』と逆に励まされた」と振り返った。

 最後に、戦争に反対して投獄され、拷問を受けた経験のある100歳の祖母の映像を上映した。森下代表は「自分は、平和活動をする3代目になる。もう、やめにしたい。平和になれば、こういう活動をしなくてすむのだから」と述べ、その上で「反戦、核廃絶、反原発。反対するのはいいいが、それでは、止めたあと、原発がなくなったあと、戦争がなくなったあと、どういう世界にしたいのか。そういう具体的なビジョンと議論がないと思う」と問題提起をした。そして、「まず、笑顔で『戦争やめよう』『賛成』と言うようにしませんか」と呼びかけた。

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