【IWJウィークリー第7号】自由を求めて「米国へ亡命」する時代から「米国から亡命」する時代へ ~迫りくるサイバー時代のファシズム[岩上安身のニュースのトリセツ] 2013.6.13

記事公開日:2013.6.17 テキスト
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 1週間に起こった出来事の中から、IWJが取材したニュースをまとめて紹介する「IWJウィークリー」。ここでは、6月17日に発行した【IWJウィークリー第7号】から「岩上安身のニュースのトリセツ」を一部公開します。

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 “Big Brother is watching you.”(ビッグ・ブラザーがあなたを見つめている)――

 これは、1948年に刊行されたジョージ・オーウェルのSF小説『1984年』のなかの一節です。

 この小説では、独裁者「ビッグ・ブラザー」率いる党が支配する近未来の全体主義社会が描かれています。人々は、「テレスクリーン」と呼ばれるディスプレイによってあらゆる思想と行動が監視され、一切のプライバシーが禁止されています。

 そんな近未来の監視社会を描いた『1984年』が、いま、アメリカで再び読まれているといいます。その背景には、エドワード・スノーデン氏が、米国政府機関による市民のインターネットや電話記録の監視を暴露したことがあるとみて、まず間違いないでしょう。

 スノーデン氏が暴露した、米政府機関の情報収集の実態とはどのようなものだったのでしょうか。まずは経緯を振り返っておきましょう。

 「米国家安全保障局(NSA)が、数百万人の市民の通話記録やインターネット上の情報をひそかに収集していた」。2013年6月5日、英ガーディアン紙が、衝撃のスクープを発表しました。

 政府機関による盗聴の是非を判断する「米外国情報監視裁判所」が4月、米通信大手ベライゾン社の利用者数百万人を対象に、通話履歴の収集を認める機密令状を出したと報じたのです。

「米当局が市民の通話履歴を極秘収集、テロ対策で数百万人を対象」
(2013年 06月 7日ロイター)

 ガーディアン紙は、この情報は業務に関係の深い内部関係者からリークされた、と伝えました。この報道に対し、ホワイトハウスのアーネスト報道官は、「NSAは法にもとづき裁判所が認めた情報活動を行っている」と弁明。また、米下院情報特別委員会のロジャース委員長は、「米国内のテロ攻撃を食い止めるための目的で行われるものであり、市民の自由を侵害するものではない」と、火消しに追われました。

 そして、6月9日には、その内部告発者が自ら名乗りを上げたことで、事件はさらに大きな展開を見せました。

 その内部告発者とは、29歳の元CIA技術者で、現在は情報コンサルタント企業ブーズ・アレン・ハミルトン社の従業員である、エドワード・スノーデン氏。ハワイのNSA施設に出向していましたが、告発を行なった後、NSAによる情報収集を裏付ける関連資料を持って、香港に出国しました。事実上の「亡命」です。

「米政府の情報収集、暴露は元CIA職員 亡命求める」
(2013年6月10日日本経済新聞)

 スノーデン氏はガーディアン紙とのインタビューで、「政府がプライバシーやインターネットの自由を破壊するのを許せなかった」と語り、「私は自分の身元を隠すつもりはない。自分は何も悪いことをしていないと確信しているからだ」と、告発の理由を明らかにしました。

 一方、NSAは、「重大な機密漏洩」だとして、司法省に捜査を依頼。オバマ大統領も、「リークは歓迎しない」と不満を表明し、テロリストなど米国を攻撃しようとする相手に情報を与えてはならない、と語りました。

 米政府は、中国側にスノーデン氏の身柄引き渡しを要求しています。逮捕され起訴されれば、厳罰を科される可能性があります。これに対しスノーデン氏は、「国家の犯罪行為を嫌というほど見てきた。その政府が犯罪として捜査すると言うことは、偽善そのものだ」と反論し、「アイスランドのような、表現の自由を信じる国(*)に政治亡命を求めたい」と語りました。

(*)アイスランドのような、表現の自由を信じる国:
アイスランド議会は2010年6月、「アイスランド現代メディア法案」を承認。メディアなどに情報を提供・公開した人物を保護し、報道の自由や情報公開を促進する政策に向けた指針の策定を行なっている。これは、ウィキリークス運営者がアイスランドを「世界で最も報道の自由が保障された国」にするための法案づくりを提案したことが出発点。(朝日新聞2010年8月17日

記事目次

リーク資料に書かれていた、驚愕の内容

 スノーデン氏が暴露した情報は、驚くべきものでした。

 スノーデン氏によると、NSAは、2007年に「PRISM(プリズム)」というプログラムを開発し、米国のインターネット企業から随時個人データを集めているといいます。ガーディアン紙とワシントンポスト紙は、同プログラムのもとで、マイクロソフト、グーグル、フェイスブック、アップル、ヤフー、スカイプ、YouTube、PalTalk、AOLといった米インターネット大手企業9社のサーバーから、動画や写真、電子メールをNSAが収集していたと報じました。

 この事態に対し、グーグル、フェイスブック、アップル各社はそれぞれ声明を発表。「政府に対して、直接あるいは裏口から自社のサーバーにアクセスする権限は渡していない」として、「PRISM」への関与を否定しています。

 しかし、今回、スノーデン氏によりリークされた機密資料には、「PRISM」はインターネット企業のサーバーに直接アクセスして、情報を得ることができると記載されているといいます。

※TechCrunch 「米国家安全保障局、Google、Apple、Microsoft、Facebook等のサーバーから直接データを収集」(ワシントンポスト報道 2013年6月7日)

 さらに驚くべきことに、NSAには「Boundless Informant(無限の情報提供者)」と呼ばれる情報収集ツールが存在し、米国だけではなく世界中の通信記録を集めていたことも判明しました。

 その数は2013年3月時点で970億件にものぼり、イランで140億件、続いてパキスタンが135億件、ヨルダンは127億件、エジプトは76億件、インドは63億件もの機密情報が収集されていたと、ガーディアン紙は報じています。米国が作戦行動を仕掛けたり、仕掛けようとしている中東の国々が大半ですが、歴史的には世界中の国々の国民から情報収集が可能であり、日本国民にとっても対岸の火事ではすまされません。

※ 「エドワード・スノーデン氏、機密暴露の理由語る NSAの収集データは970億超」(ハフィントンポスト 2013年06月10日)

米司法省によるメディアへの盗聴事件

 オバマ政府による情報収集が暴かれたのは、実は今回が初めてではありません。2013年5月には、米司法省が2012年の4月から5月にかけて、米AP通信の記者やデスクの通話記録をひそかに収集していたことが報道されました。

 米司法省は、現時点でその動機について明らかにしていませんが、AP通信によると、同社が2012年5月7日に報じた、「アルカイダがイエメンで計画したテロを、CIAが未然に防いだ作戦」についての情報源に、当局が関心をもっているのではないか、と考えられています。

※「【視点】産経新聞論説副委員長・樫山文夫 APの通話録収集」(産経新聞 2013年6月4日記事リンク切れ)

 AP通信は司法省に対し、「秘匿されるべき情報源が暴露される恐れがある。取材活動について、政府に知る権利はない」という内容の抗議書簡を送りました。

 それに対し、オバマ大統領は5月16日、透明な手続きによる調査を捜査当局に義務付ける「メディア保護法」(*)の整備を約束しました。しかし、通話記録の収集に関しては、「安全保障に関わる情報漏れは米国民を危険にさらす」と指摘し、「謝罪しない」との声明を発表しています。

(*)メディア保護法:司法当局による報道機関への介入を制限する法案。当局の調査要請に対し、記者らに情報源の開示を拒否する権限を認める。2009年に上院で提出されたが、成立しないままとなっている。

「AP問題で米大統領『謝罪せず』、メディア保護法整備は支持」
(ロイター 2013年5月17日)

「米政権、不祥事収拾急ぐ 通話収集でメディア保護法検討」(日本経済新聞 2013年5月16日)

テロ対策の名目で行われる、個人情報収集と隠蔽

 NSAは、米国防総省の諜報機関で、海外情報通信の収集と分析を主な任務としています。CIAがスパイを使った諜報活動を担当するのに対し、NSAは電子機器を使った情報収集活動とその分析、集積、報告を担当します。

 実は、NSAは2005年にもブッシュ大統領の秘密命令の下、令状なしに米国民らをターゲットに、Eメールや電話などの盗視・盗聴活動を3年もの間続けてきたという過去があります。2005年12月16日付、ニューヨーク・タイムズ紙が暴露しました。

 諸外国に関する非常に高度な機密を扱うという性質上、NSAは組織や活動内容、予算については明らかにされていない部分も多く、極めて秘匿性の高い組織なのです。

「Bush Lets U.S. Spy on Callers Without Courts」(ニューヨーク・タイムズ 2005年12月16日)

 米国政府による自国民に対するスパイ活動は、米国の憲法はもちろん、国内で情報収集活動を行うにあたって裁判所からの令状交付を義務づけた「外国情報監視法(FISA)」にも違反します。

 他方、2005年には、FBIの公安警察として「連邦捜査局国家保安部(NSB)」が発足され、CIAが禁じられている、国内での反体制活動の監視や工作活動が可能となりました。

 今回、スノーデン氏により暴露された「PRISM」も、「米国に住む米国民は対象外であり、プログラムは議会および外国情報監視裁判所によって承認されている」と、オバマ大統領は説明しています。

 しかし、スノーデン氏は、「私が渡さなかった文書の中にも、公開すれば大きな影響を及ぼしたと思われるものがいろいろある」と語っています。もし、このプログラムを通じて、企業から政府に米国民の情報提供が行われているとしたら、個人のプライバシー侵害だけではすまされません。プログラムの違法性が問われる事態となります。

 また、日本を始め、米国民以外の個人情報が勝手に米国政府に握られているとしたら、プライバシーを巡っての国際問題にもなりかねないでしょう。

「米国へ亡命」するのではなく、「米国から亡命」する時代へ

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日本にもNSAを作るよう提言する「ジャパンハンドラー」

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その先にある「監視社会」「戦争社会」

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復興予算「無駄遣い」問題で意外な展開 堺市は手すらあげていなかった!

 日本政府が国民に対する情報統制を強める一方で、環境省によるあまりにお粗末な情報のやり取りが明らかとなりました。

 復興予算の交付金の「無駄遣い」が、いま問題となっています。2011年から2012年度、復興予算から「がれきの広域処理を目的に」支払われた交付金のうち、約9割が、がれき受け入れを検討しただけの自治体などに配分され、無関係な事業に使われていたのです。今年に入り大手マスコミも一斉に報道し、その中でもその大半を受け取る大阪府堺市に批判が集まっています。

 がれき未処理ながら、新規のごみ処理場建設費用として、復興予算から86億円を受け取る堺市の竹山修身市長は「財源確保は首長の責務。ありがたくいただきたい」などと市議会で発言。これに対し、堺市の住民からも「被災地で困っている人に返すべきだ」「一市民として腹が立つ」などの声が相次ぎ、全国から寄せられた批判は約400件にものぼりました。

 しかしここへきて、この問題は意外な展開を見せています。実は堺市は「手すらあげていなかった」のです。「がれき処理を検討するから復興予算を」という申請すらしていませんでした。にも関わらず、今年になって環境省から堺市に「がれき予算」が支払われたのです。まるでミステリーのような話です。

 疑問を抱いた市民の側が、堺市に情報開示請求をしました。そして、そこで明らかとなった堺市と環境省とのメールのやり取りは、驚くべきものでした。

【開示されたメールのやり取り】

 2012年1月、堺市は新規のごみ処理場の建設で、「従来の枠組みの交付金」の申請を予定していました。すると同年2月から、環境省は再三にわたり「(がれき受け入れを念頭においた)復興予算からの交付金」に切り替えるよう堺市に要請していたのです。しかし堺市の側は何度も「従来の交付金でお願いします」と、その要請を拒否しています。

 要請の際に環境省は、「現状受け入れの計画はないが、今後諸条件が整った場合には受け入れが可能と考えられる施設」ならば「復興予算からの交付金」に該当すると提示しています。つまり、がれきを受け入れるかどうかは考えていないが、今後がれき受け入れの可能性もゼロとは言い切れない、というレベルでも「復興予算に該当する」と環境省は誘っています。さらに、「がれきを受け入れなくても、交付金は返還しなくても良いですよ」とまで言っているのです。

 ここまでの気味の悪いほどの「好条件」を半ば強引に押しつけられながら、それでも堺市は最後まで「復興予算からの交付金には該当せず」と、環境省の誘いを拒否していました。

 しかし2012年4月、環境省は一方的に「復興予算からの交付金」を内示しました。この決定に対して堺市は5月、「復興予算を適用しないよう貴省にお願いしてあります」と要請を行いましたが、環境省は「復興予算の対象と判断しました」と認めませんでした。

 堺市は再度「従来の交付金への変更は出来ないのか」と要求しましたが、環境省は「不可能である」と回答しています。しかも、環境省は「復興予算で申請するのに、がれきの受け入れ表明はしなくてもいい」とまで言ってきたのです。

 堺市側は何度も断っているのに、環境省側が強引にあの手この手で押し込んでいる構図が、このメールのやり取りで明らかになりました。しかし不可解なことに、堺市を批判的に報じた大手メディアは、環境省による復興予算の流用の「押し込み」「押し売り」という不可解な事実について、いまだに報じていません。私は、6月12日に放映された「ニッポンダンディ」のなかで、この話題を取り上げましたが、これとIWJの報道をのぞき、皆無です。

 今年の6月11日、みどりの風の平山誠議員が石原伸晃環境大臣に、「手もあげていない、表明もしていない堺市に、なぜ86億円という巨額の復興予算が交付されたのか? 事実関係を調査すべきではないか」と国会で質問しました。これに対し、石原大臣は「これは前政権の判断だった」などと答弁しました。

 しかし、堺市に交付金が支払われたのは、2013年になってから、つまり安倍政権下です。おかしな交付金があった場合は調査しなければならない、という法律(※)があります。そして、環境省はこの法律に則って、きちんと精査したうえで支払う義務があります。「前政権の責任にするのはおかしい。現政権がきっちり調査すべきでは」と、6月3日、この問題を追及する院内集会も開かれ、IWJは中継しました。

 平山議員は6月11日の石原環境相への国会質問のあと、会計検査院に調査を要請。その後、緊急記者会見を開き、「国会議員としては調べていかなくてはならない。国としても調べるよう要請していかなければならない」と語りました。しかし、大手メディアでこの記者会見に来たのは共同通信の記者1人だけで、その後、共同通信も報じた気配がなく、この件はIWJ以外に、報じられた形跡がありません。

米中首脳会談 〜尖閣問題は議論されたのか

 オバマ大統領と習近平国家主席による初めての米中首脳会談が、6月7日と8日の2日間にわたって行われました。

 米側は西海岸のバームスプリングスにある最上級の保養所を会談用にセッティングしました。オバマ大統領は、東海岸のワシントンからわざわざ大陸を横断し、この首脳会談に臨みました。共同会見も夕食会もなかった日米首脳会談とは、まったく異なる歓待ぶりでした。

 報道によれば、サイバーセキュリティー、北朝鮮問題、人権問題など、さまざまな課題について議論された模様ですが、日本にとって最大の懸案の一つである「尖閣問題」についても触れられたようです。

 中国の習近平国家主席は「尖閣諸島について、中国にとっての『核心的利益』だとオバマ米大統領に表明」し、それに対し、オバマ大統領は「『対立をエスカレートさせず、外交的に対話で解決するよう求める』と促した」といいます。

※「習氏「尖閣は革新的利益」米、日本に会談内容明かす」(朝日新聞 2013年6月12日 記事リンク切れ)

 また、共同通信は、会談の中でオバマ大統領が習国家主席に対して、尖閣諸島の領有権主張を強める中国の対日姿勢を非難し、「米国の同盟国である日本が中国から脅迫されることをわれわれは絶対に受け入れない」と述べたと報じています。

※「米大統領、中国の対日姿勢非難 尖閣めぐり習主席に」(共同通信 2013年6月14日 記事リンク切れ)

 ホワイトハウスのホームページには、米中首脳会談の議事録は掲載されておらず、現時点で会談の全容は明らかになっていません。なので、これらの報道の真偽は確かめられない、というのが現状です。尖閣問題について具体的にどのような議論が行われ、どのような合意がなされたかについての情報は、現在では極めて限定的であると言わざるを得ません。

「尖閣諸島の領有権問題は存在する」 日中両方に釘を刺す米国の「あいまい戦略」

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