原発事故によって夫を失ったとし、菅野バネッサさんら遺族が2013年5月30日、東電を相手取り、約1億2千万円を求める損害賠償訴訟を起こした。夫である福島県相馬市の酪農家・菅野重清さんは、福島第一原発事故の3ヶ月後、「原発さえなければ」と自身の堆肥小屋のベニヤ板の壁に書き残し、自殺した。
バネッサさんは現在、福島県・伊達市在住。8才と6才の息子を一人で育てている。バネッサさんの住んでいた相馬市は避難区域ではないため東電からの補償はない。小さな子どもを抱えているため、仕事も出来ず、遺族年金と児童手当、夫の生命保険などを使い、一ヶ月10万円の生活をしているという。
バネッサさんらは東京地裁に訴状提出後、司法記者クラブで会見を開いた。「東電には、怒っているのではなく、助けてほしいだけ。私と子ども、交代交代で身体を壊す。風邪も治りにくくなっている」。東電に対する思いをバネッサさんはこのように語り、次男が気管支喘息を患っていることからも、放射線量の低い地域へ引っ越したい考えだ。
当初、東電に直接賠償を求める方向だったが、東電側が、事故と自殺の因果関係を証明する資料の提出を求めたため、二度手間にならぬよう裁判に持ち込んだと話す。訴訟代理人を務める保田行雄弁護士は、「因果関係の立証に尽くし、早期に賠償を実現させたい」と語った。