TPPは「ぼったくりバー」「国の形態や文化を根底からひっくり返すもの」 ~TPPを考える全国フォーラム~TPPウォッチャー志願者のためのオープンフォーラム 2013.5.11

記事公開日:2013.5.11取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・久保元)

 2013年5月11日(土)13時30分、愛知県名古屋市の名古屋YWCAビッグスペースにおいて、「TPPを考える全国フォーラム~TPPウォッチャー志願者のためのオープンフォーラム」が開かれた。このフォーラムには、TPP問題に警鐘を鳴らしている市民団体や有識者など、TPP問題専門家が7名出席したほか、この問題に関心のある市民らが多数参加し、問題点を共有した。

 西濃環境NPOネットワークの神田浩史氏は、「後から入った国は、それまでに決められたことに関して意見を言えないというのがTPPの原則なのに、『民主党だから交渉できなかった、自民党は交渉できる』などと言っている」と批判した。

 AMネットの武田かおり氏は、「かつて、TPPの前身とも言えるMAI(多国間投資協定)も秘密交渉で協議が進められたが、情報のリークによって世界中で反対運動が起き、協定自体が頓挫した。まだTPP加入は決まったわけではない。過去に止まった例がある。とにかく情報収集が重要だ」と述べた。

 アジア太平洋資料センターの内田聖子氏は、「TPPは、秘密とウソばかりの『ぼったくりバー』である」と痛烈に批判した。南山大学講師の池住義憲氏は、「TPPは、国家主権を否定し、国の形態や文化を根底からひっくり返すもの」と警鐘を鳴らした。

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2分~ 開始/11分~ 神田氏/21分~ 武田氏/30分~ 近藤氏/35分~ 谷山氏/40分~ 松平氏/46分~ 内田氏/1時間8分~ 池住氏/1時間21分~ 会場アンケート

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  • フォーラム参加者
    内田聖子氏(アジア太平洋資料センター 事務局長)/近藤康男氏(TPPに反対する人々の運動)/谷山博史氏(日本国際ボランティアセンター 代表)/池住義憲氏(南山大学非常勤講師)/神田浩史氏(西濃環境NPOネットワーク 副会長)/松平尚也氏(AMネット 代表理事)/武田かおり氏(AMネット 事務局長)
  • 日時 2013年5月11日(土)13:30~
  • 場所 名古屋YWCAビッグスペース(愛知県名古屋市)

主催 市民と政府の意見交換会実行委員会/名古屋NGOセンター 政策提言委員会・不連続学習会チーム&横のつながりをつくる勉強会/泉京・垂井(詳細 名古屋NGOセンター)

※配信状況により、録画が一部欠けております。何卒ご了承ください。

 西濃環境NPOネットワークの神田浩史氏は、「後から入った国は、それまでに決められたことに関して意見を言えないというのがTPPの原則なのに、『民主党だから交渉できなかった、自民党は交渉できる』などと言っている」と批判した。また、「自民党は、総選挙において『TPPには絶対反対』と言って大量の票を集め、議会の多数を占めたのに、安倍首相はいち早くTPP参加を表明した。民主党政権の時であれば、マスメディアによって『公約違反だ』というレッテルが貼られ、キャンペーンが張られたはずだが、現状においてはそういったこともない。全国紙の社説では、あたかもTPPに入るのは当然という論調になっている」と述べ、マスメディアの姿勢にも苦言を呈した。

 AMネットの武田かおり氏は、「かつて、TPPの前身と言えるMAI(多国間投資協定)も秘密交渉で協議が進められたが、情報のリークによって世界中で反対運動が起き、協定自体が頓挫した。まだTPP加入は決まったわけではない。過去に止まった例がある。とにかく情報収集が重要だ」と述べた。また、民主党政権の頃から、外務省などへの要望活動や情報収集に取り組んできた経緯を語った上で、「官僚の中には、TPPに反対なんだろうなという人や慎重な姿勢の人もいたが、自民党政権になってから(彼らの態度が)変わってしまった。(官僚は)組織の人だから、言いにくいのだろう」と述べ、さらに、「衆議院選挙で、TPPに反対している議員を私たちは大量に落としてしまった。安倍政権の支持率が上がっている。TPP反対の議員をいかに応援していくか、見極めていくか、どういう社会を作っていくのか考える必要がある」と続けた。

 「TPPに反対する人々の運動」の近藤康男氏は、「かつて、金融危機の問題があった際、マレーシアが金融規制策を採り、他国に比べて安定した金融状況を維持したことがあったが、TPPに入ると金融危機でも金融規制ができなくなる」と問題を提起した。また、日本では義務付けられている遺伝子組み換え食品や食品添加物の表示について、「前回のシンガポールでのTPP交渉で、取り払う方向の提案がなされたと聞いている」と紹介し、「TPPは強きを助け、弱きをくじくもの」「決めなければならないことを決めないで、決めてはいけないことを決めるもの」と批判した。

 日本国際ボランティアセンターの谷山博史氏は、「いま、世界では大きく言って2つの構造的な問題が起きている。『有志連合』による戦争政策と、経済のグローバル化である。これらは構造的に密接に結びついている」と述べた。その根拠として、「2007年から2008年にかけて世界で食料危機が発生したが、これは、食と農の行き過ぎたグローバル化によって生じた事態である」と語った。その上で、「食の商品化・資源化が進み、企業化・工業化すると、途上国のみならず、日本をはじめ世界全体で、農民から土地や水をはじめとする地域資源が奪われる。TPPに見られるグローバル化が、途上国だけではなくて日本の地域社会にとても大きな影響を与える」と懸念を示した。

 アジア太平洋資料センターの内田聖子氏は、「TPPは、秘密とウソばかりの『ぼったくりバー』である」と痛烈に批判した。また、「何でも吸い取ってと言わんばかりに色々なものをアメリカに渡し、TPPに入りたいと言っている。この精神構造は異常」と斬り捨てた。その上で、「事前協議は日本側の完敗。なのに、『アジアの成長を獲り込むのだ』『ルールメイキングは自分たちができるのだ』など、まったく根拠のないことを持ち出してきて『大丈夫だ』とウソをついて安心させようとしている」と述べた。さらに、アメリカの豚肉輸出業界のトップが「これだけの内容を勝ち取れて、目まいがするほど嬉しい」と語った新聞報道を紹介した。

 南山大学講師の池住義憲氏は、TPP加入の問題点として、(1)農業が壊滅することによる地下水や生態系など環境への影響 (2)遺伝子組み換え食品や食品添加物の表示義務撤廃や基準の大幅緩和。ハーモナイゼーション(調和や一致)の名の下、マイナスの方向に合わせて国際スタンダードになり、食生活に影響する (3)TPPによって全面的に関税がなくなることで、フードセキュリティ、食料主権が実質的に否定される (4)低賃金労働者が海外から流入し、日本人の雇用が脅かされる (5)国民皆保険が実質的に崩壊する――という点を指摘した。また、自治体の事業入札に外国企業の参入を認めなければならなくなることや、海外資本による土地の買占めなどの懸念材料も挙げ、「国家主権そのものが否定され、国の形態そのものがひっくり返ってしまう」として警鐘を鳴らした。

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