2013年3月23日(土)13時半より、群馬県前橋市のベイシア文化ホールで、「安田美絵さん講演会『TPPでどうなる!? 私たちの食と暮らし』」が行われた。安田美絵氏(料理研究家、『サルでもわかるTPP』著者)は、TPPが食の安全を奪うこと、医療、労働など国民の暮らしが大変な打撃を受けるだけでなく、ISD条項によって完全に企業に支配される植民地になってしまうことを、わかりやすく説明した。
その上で、政府などの推進派が、TPPを農業問題に矮小化したり、「聖域」を守ることが可能なことのように話していることを検証し、注意を促した。最後に、これを一人でも多くの人に伝え、国会議員に意思表示をし、食の選択から社会を変えていこうと会場に呼びかけた。
- 日時 2013年3月23日(土)13:30〜
- 場所 ベイシア文化ホール(群馬県前橋市)
- 主催 止めようペテンプロジェクト(TPP)市民の会
はじめに、安田氏は「TPPは、環太平洋パートナーシップ協定などと翻訳されているが、実はトランスパシフィックとは環太平洋ではなく、太平洋の向こう側、という意味。アメリカから見て、太平洋の向こう側にあるアジアの国を取り込むということだ」と話し、TPPの本質は、アメリカがアジア、特に日本の市場をねらい撃ちする協定だと指摘した。
安田氏は「そもそも、TPP参加国は交渉内容を公表しない合意があり、交渉文書は4年間秘匿することが義務付けられている。このようなTPPの秘密性が問題である」とし、「知られたら、国民に反対されるからこそ、秘密にしている」と語った。
交渉が秘密裏に行われるだけでなく、牛肉のBSE検査月例制限の引き上げのような「事前協議」が、まだ交渉に参加もしていないのに、アメリカ産業界の要望を入れた形で、官僚によって進められているのも特徴だという。
「TPPに入れば、農薬の使用基準をアメリカ並みに引き上げられ、ポストハーベストや遺伝子組み換えの表示義務は撤廃させられ、学校給食に多国籍企業の参入を許すおそれがある。今は関税に守られている稲作が、関税撤廃によって海外から安い米が流入すれば、日本の農家は離農が進み、わが国では主食の米も確保できなくなり、生殺与奪権を外国に握られてしまう」と安田氏は言う。
さらに、安田氏は「医療、労働、デフレなど、普通の庶民の暮らしへのTPPの影響は計り知れないが、特に、外国の投資家や多国籍企業の利益を、国民の暮らしを守る国内法より優先させるISD条項によって、日本の国家としての主権が喪失し、企業による完全な植民地へと日本が進んでいく」と述べ、TPPが単なる貿易協定ではなく、国の形を変えてしまうものだと強調した。
その上で、安田氏は「日本政府は、早期交渉で有利な条件を勝ち取るとして、TPPへの参加を表明したが、日本より先に交渉入りしたメキシコやカナダが不利な条件をのまされている。日本が有利になるわけがない」「日米首脳会談で安倍首相が『聖域』を認めさせたかのように言っているが、日米共同声明には、そのような文言はない」と列挙して、TPPに関する最新情報をもとに、政府の嘘を明らかにした。
しかし、「まだ、私たちにできることはたくさんある」と安田氏は語り、「メディアが伝えないTPPの姿を、一人でも多くの人に伝え、反対の意思表示をすることだ。特に、国会議員への陳情は有効なので、STOP TPP!! 市民アクションのホームページや私の著書にある陳情書の例文を活用してほしい」と訴えた。また、「朝昼晩とお米を食べ、日本食中心の食生活へシフトすれば、薬に頼らず健康になれるし、食の自給率を上げることができる。銀行やカフェ、食べ物も、テレビで宣伝しているような大手企業ではなく、地元のものを支援するなど、暮らしを変えることでTPP推進派に対抗できる」と聴衆を励ました。