2013年1月16日(水)19時から、大阪市此花区の大阪市立此花区民ホールで「東日本大震災により生じた廃棄物の試験処理結果及び本格処理にかかる説明会」が開かれた。大阪市環境局の玉井局長や大阪府環境農林水産部の大江環境政策監らが登壇し、試験処理の結果を踏まえながら、震災がれき受け入れの安全性を何度も訴えると、続く質疑応答では、観客席から休みなく怒号が飛び、会場は騒然とした雰囲気に包まれた。
(IWJテキストスタッフ・富田/澤邉)
2013年1月16日(水)19時から、大阪市此花区の大阪市立此花区民ホールで「東日本大震災により生じた廃棄物の試験処理結果及び本格処理にかかる説明会」が開かれた。大阪市環境局の玉井局長や大阪府環境農林水産部の大江環境政策監らが登壇し、試験処理の結果を踏まえながら、震災がれき受け入れの安全性を何度も訴えると、続く質疑応答では、観客席から休みなく怒号が飛び、会場は騒然とした雰囲気に包まれた。
■全編動画
・1/3(18:28~ 2時間16分)
・2/3(20:44~ 27分間)
・3/3(21:12~ 1時間21分)
玉井氏は「東日本大震災の発生から、間もなく2年となるが、被災した3県の沿岸市町村における廃棄物のうち、処理済みとなっているのは34%程度と聞いている」と述べ、岩手県からの要請を受けて大阪市は、国や大阪府と連携して、災害がれきの広域処理を行うための取り組みを進めてきたことを改めて示した。そして、昨年11月に実施した大阪市の舞洲工場での試験処理の結果を、「放射能濃度など、定められた安全基準を大幅に下回った」とした上で、「この1月下旬に岩手県宮古港から搬出を開始し、2月1日には、わが市の舞洲工場で処理を開始することを考えている」と表明。「主に木くずを運び、安全性が確認されたもののみ舞洲工場で焼却し、その灰を北港処分地へ埋め立てる」とも話した。
大江氏は「大阪府は、岩手県からの要請を踏まえ、大阪府民の安全が大前提との立場で支援すべきと考え、大阪市と連携で取り組んでいる」と語り、「昨秋に実施した試験処理の結果は、全項目でわれわれが策定した基準値を十分に下回っていた。放射線の専門家による審議会でも、安全処理が可能との確認が得られた」と報告した。その上で「大阪府として本格処理を始めたいと考えている」と明言し、2月の舞洲工場での処理開始に向けてのスケジュールを示した。
大阪府環境農林水産部の矢追室長は、試験結果を詳しく説明した。全体の処理概要と岩手県宮古港藤原埠頭や大阪港夢洲コンテナ埠頭、積替施設での調査結果を資料として配布し、「全項目で処理指針の基準を十分に下回っており、安全に処理できることが確認された」と強調した。なお矢追氏はアスベストの問題にも触れ、「受け入れる廃棄物の破砕・選別作業を行う際、屋外作業場の風下2地点で、大気中のアスベストの測定を岩手県が実施している。結果は処理指針の基準を大幅に下回った」などと報告した。
舞洲工場と北港処分地での試験結果については、大阪市環境局の蓑田施設部長が「焼却中、工場内、焼却炉周辺、灰設備周辺、灰ピット周辺など、敷地境界の空間放射線量を測定した結果、どこも基準を下回っていた」などと安全性を力説した。
また本格処理の概要については、「岩手県宮古地区の宮古市、岩泉町、田野畑村の木くずを中心とする廃棄物を、2014年3月末までに上限3万6000トン処理する」と述べ、本格処理時の安全性の確認については、「運搬や焼却などの各工程で、府の処理指針に基づき安全性確認の測定を実施する。結果はすみやかにホームページに公開する。また宮古市に大阪府の職員2人を常駐させ、受け入れる廃棄物の放射性セシウム濃度などが基準を下回っているかを確認する」と表明した。なお、測定回数については、「試験処理の結果で、全項目が処理基準を十分下回る、不検出が続くなど、十分安全性が確認された場合は、規定に基づき来年度の測定回数を減らす」とした。
最後には矢追氏がやや語気を強め、「以上、試験処理を行った結果からも、科学的に安全処理が可能であると確認されている。被災地の復旧・復興を支援するために、府民の安全を大前提にしながら、廃棄物の受け入れと処理に取り組んでいく」と締めくくった。
質疑応答に入ると、会場に集まった市民の不満が怒りの声となって一気に表出。ある男性は「橋下市長や松井府知事は、なぜ会場に来ないのか。此花区民を馬鹿にしている。2月1日の開始ありきで、こんな説明会を開くのはおかしい」とまくし立てた。
「アスベストによる影響(健康被害)はすぐには表面化しない。長い年月をかけて症状が出るのだ」などと、行政サイドがこの日も強調した「安全宣言」を疑う意見もあった。発言を行った男性は「健康被害が出た場合、役所はどう責任を取るのか」と壇上に詰め寄った。
この男性以外にも、健康被害が発生した折の国や大阪府・市の責任の取り方を問いただす市民がいたが、演壇の職員たちは、基本的には試験処理結果が示す安全性の指摘に終始し、そのたびに、参加者からは怒号がわき上がった。自分は重いアレルギー体質と告白した女性は「2日間の試験焼却時に目が痛くなったが、市の環境局に問い合わせると、安全だから大丈夫の一点張りだった。症状は人それぞれではないか。症状が出て苦しんでいる人を、どこの病院が受け入れるといった体制も整っていないのに、本格処理に踏み切るのは納得がいかない」と訴えた。
この日会場には、震災がれき受け入れ反対を表明している阪南大学准教授の下地真樹氏の姿もあった。マイクを握った下地氏は「受け入れの基準が緩すぎるという話は何度も出ている。私は10月30日に環境省に出向き、『1立方メートル当たり20~30ベクレルのセシウムが出ても大丈夫とされているが、それは息を吸っても大丈夫ということか』と訊いたら、対応した職員は『基準値内だから大丈夫だ』と応じた。その程度の認識の人たちが、広域処理の政策を進めている時点で、すでに信用できない」と主張した。
そして下地氏は壇上に向かって、「あなた方は先ほど、健康被害は出ないと決めつけていたが、それは出ないという前提で調べているだけだ」と批判し、「私の妻も試験焼却時に目に異常が生じた。長らく一緒に暮らしてきたが、あんなことはかつてなかった。今後、住民に健康被害が出たとしても、因果関係がはっきりしなければ、あなた方は『がれき処理とは関係ない』といい張るのではいか」と畳み掛けた。
その後も下地氏は、「災害廃棄物安全評価検討会の当該議事録隠匿の疑いがある」「試験焼却時の、呼吸器などに悪影響があるとされる微粒子、PM2.5の発生とアスベストの扱いに関する疑問点がある」「木くずは比較的汚染度が低いのに加え再利用もしやすいため、現地ではむしろ外に出さずに使いたいとの話がある」などの点について、矢継ぎ早に疑問をぶつけた。これに対しては、大阪府・市の職員たちが代わる代わる返答を行い、議事録隠匿の疑いについては環境省の職員が、「われわれの不徳の致すところで、そもそも当該回の議事録を取っていなかった」と釈明した。
ひどいものだーーひと言で言えば、コレに尽きる。が、立ち止まっていられない。
ここからどうするかーー。
前回の11月13日には4人の逮捕者(1人釈放、3人起訴)の出た、大阪市によるがれき焼却にまつわる住民説明会。当然のことながら、今回は、逮捕などはなかった。
が、”説明会”であるはずなのに、大阪市は、相変わらず震災がれきの本焼却へ向けての理解を求めるための説明をしようとはしない。一方的に「安全」を強調する報告書を読み上げるのみ。
質疑応答で、焼却施設・舞洲(まいしま)工場のある地元此花区の方が、「なぜ此花区で燃やすのか。市長も府知事も来ていないのはなぜか」と切実な問いを投げかけても、”木で鼻をくくった”答弁に終始。岩手にはすでに広域処理すべきがれきがないのではないか、試験焼却前に岩手県と契約を締結していたのはおかしい、廃棄物処理法上”再々委託”である今回のケースは法律違反なのではないかーー大阪市民がどれだけ的を射た質問を投げかけようと、終始、噛み合ない。
ある意味、「見物」である。
どのように「予め決められたこと」が(暴力的にすら見えるほど)粛々と強引に進められるか。
と同時に、非常によく勉強している大阪市民により「がれきの焼却処理」の問題点が明示され、”がれき問題”について勉強になる。
”安全”を言い募るだけの行政と、事実を積み重ね、杜撰さや危険性、利権のありようを指摘する市民。
何かと似ていないだろうか。
これは、がれき、および大阪市だけの問題では、もちろんない。
ぜひ、ご自分の目で確かめてほしい。