政府の打ち出すケア労働者の賃上げは月9000円、看護師はコロナ対応した人限定、期間限定で月4000円!!「使命感や責任感だけではもう耐えられない!」~12.13ケア労働者の大幅賃上げを求める現場労働者による記者会見 2021.12.13

記事公開日:2021.12.14取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2021年12月13日午後2時より、東京都千代田区の全国教育文化会館エデュカス東京にて、国民春闘共闘委員会、全国労働組合総連合(以後、全労連)の主催により、「ケア労働者の大幅賃上げを求める現場労働者による記者会見 医療・介護・福祉・保育・幼稚園・学童・保健所で働くすべての労働者の『月4万円以上、時間給250円以上の賃上げを』」が開催された。

 冒頭、全労連の黒澤幸一事務局長は、12月1日に、厚生労働省に対して要請した「ケア労働者の大幅賃上げと職員配置基準の引き上げを求める要請書」を示しながら、次のように訴えた。

 「政府は、看護師、保健師、介護士、そして、障害福祉や保育士などのいわゆる公定価格で規定されるケア労働者の賃金の引き上げについて、今、国会でも審議を行っているということであります。

 ケア労働者の賃金引き上げを積極的に行うということについては、私たちも政府に対して求めて来たことでもあります。しかし、示された額や範囲は大変低く、そして、限定的なものであります。保育士や幼稚園教諭、そして介護福祉職員を対象に収入を3パーセント程度、月額にすると9000円程度の引き上げというふうに打ち出されています。

 あるいは、看護師にいたっては、収入の1パーセント程度、月額にすると4000円程度の引き上げということで、しかも、コロナ対応をした方を、期間限定でというようなことだと思っています。

 これではあまりにも低額であり、限定的だというふうに言わなければいけませんし、私たちが求めているような生活の改善が実感できる水準ではないというふうに思います。また、この額が定期昇給の原資に利用されれば、ほぼ引き上げにはつながりません」。

 黒澤事務局長はまた、ケア労働者の現状について、次のように語った。

 「ケア労働者の皆さんは、いわゆるエッセンシャルワーカーということで、この間、コロナ禍であっても大変な激務を行いながら、この社会の維持、そして、とりわけ、命や生活を守るために働いて来ました。

 『使命感』や『責任感』だけではもう耐えられないというのが、現場の声として上がってきている」。

 この政府への要請事項は、「医療・介護・福祉・保育・幼稚園・学童・保健所で働くすべての労働者の『月4万円以上、時間給250円以上の賃上げを』」というものだが、それぞれの業種、それぞれの職場に特有の問題や課題があり、Zoomで参加した関係職場で働く当事者から説明が行われた。

 その後、質疑応答の時間となったが、IWJ記者は「学童保育」について質問し、登壇者およびZoom参加の当事者と、以下のようなやりとりがあった。

IWJ記者「会場で配られた資料ではなく、全労連さんのHPのニュース(※)を見ての質問なのですが、学童保育について、そのニュースの中に、『学童保育は、児童福祉法上の位置づけも、児童福祉施設として認められず、事業とされている、施設の最低基準も定められずに放置されている』という説明があります。

 この放置の具体的な理由というのは、政府の方から提示されているのか、ということと、あと山田さん(山田正人さん:学童保育指導員・群馬県内学童保育勤務)が日常の業務の中で、抱えている問題があれば、そのことについて教えていただければと思います」。

角田(すみだ)季代子氏(建交労・中央執行委員長)「制度上の問題のご質問だったと思います。お答え致します。

 前回の(会見)の資料にも載せたんですけども、児童福祉法(※)上の位置づけが、学童保育の場合は『放課後健全育成事業』ということで、6条に位置づいてます。

 保育所は、7条ということで、『児童福祉施設』として位置づいてます。『児童福祉施設』に位置づくと、随分緩和されて、ちょっとぼろぼろにはなているかなあ、と私は思いますが、それでも最低基準が定められて、これに違反することはダメだということで、その立て付けにあわせて、いろんなお金の問題もついて来るわけですね。

 6条になりますと、『事業』ですので、基本的に、最低基準を持ち合わせていません。政府が、平成27年3月に、『放課後児童クラブ運営指針』というものを出しまして、ようやく目安を出したということです。

 当初ですね、それでも、学童部の指導員の複数配置と研修を終えた有資格者の配置が基本的に、あっという間に『参酌基準』ということになって、すべてが実際の参考ですよ、というレベルですので、6条と7条の位置づけ方によって、立て付けが違うがために、補助金の仕組みだとか、だから、公定価格にならないんですね、学童保育の場合。

 そういうことで、年収でいくと、我々の組合の調査でも270万円ぐらい。で、全国的にいけば、多分200万円未満の年収の方が、6割から7割近くいるだろうという実態になっているということです」。

山田正人氏(学童保育指導員・群馬県内学童保育勤務)「抱えてる問題は色々あるのですけども、一つには、やっぱり、指導員が定着しない分ですね、そのことによって、保育の質といいますか、経験の蓄積が出来ないということが、一番大きな問題だと思うんですね。

 子どもと信頼関係を築いていって、子どもを深くとらえたりとか、という経験ですね。それがないということは、やはり、保育の質が非常に落ちる、ということが一つの問題だということです。

 ですので、やはり、賃金が非常に安いということが明確になっているかな、と思います。

 それともう一つはですね、今コロナの中で、『三密』を避けなきゃいけないと言われているのですが、もう『三密』を避けようが、やっぱり狭い部屋で保育をしなければならない現状がですね、で、国の基準がですね、1.65平米あればいいんだよ、というような規定なんですね。それでは『三密』は避けられないと思っています。

 だから、こういう意味で、指導員の待遇問題と施設の問題はちょっと重要かなと思っています」。

 冒頭の黒澤事務局長の趣旨説明、関係職場で働く当事者からの訴え、そして、質疑応答の詳細な内容については、ぜひ全編動画にて御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2021年12月13日(月)14:00~
  • 場所 全国教育文化会館 エデュカス東京 ホール(東京都千代田区)
  • 主催 国民春闘共闘委員会、全国労働組合総連合

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